口腔衛生学会雑誌
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54 巻 , 2 号
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報告
  • 中村 譲治, 森下 真行, 堀口 逸子, 中川 淳
    2004 年 54 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    広島県豊田郡安浦町において,MIDORIモデルに従って歯周病予防を目指した成人歯科保健事業に取り組んだ.事業の企画に先立って実施した質問紙調査の結果,歯周病の自覚症状をもつ人の割合が,年齢とともに増加していることが明らかになった.そこで,このようなQOLの問題を解決するために必要な保健事業を企画するため,住民も加えた「考える会」を立ち上げた.考える会において健康教育プログラムを作成していく過程では,住民も参加してグループワークを行い,プログラムや保健行動の優先順位を決定し,評価の指標や目標値を決めていった.その結果,30代女性において,「歯間清掃用具を使用している人の割合を増やす」,「年1回以上定期健診を受けている人の割合を増やす」の2つの最優先プログラムと目標値(それぞれ30%および50%)が決められた.「歯間清掃用具の使用」については「ひよこ歯科健診」を充実させることと,町内の保育所や幼稚園の保護者会を利用することの2種類の健康教育プログラムを策定した.健康教育の内容は,教育・組織診断によって得られた準備・強化・実現因子を考慮し,グループワークのなかで決定した.このように,MIDORIモデルを応用することで解決すべき要因が抽出・整理され,安浦町のニーズと現状にあった成人の歯周病予防のための事業計画を策定することができた.
原著
  • 森下 真行, 中村 譲治, 堀口 逸子, 中川 淳
    2004 年 54 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    広島県豊田郡安浦町で展開された成人歯科保健事業の成果を評価する目的で,MIDORIモデルに従って評価を行った.経過評価は2000年度の終わりに行い,影響評価および結果評価は,1999年8月に実施した質問紙調査を2002年9月にも実施し,両者を比較することにより行った.その結果,歯科医院などで歯磨き指導を受けたことがあると答えた者のうち,「とてもよかった」と答えた者の割合は,27から43%と有意に増加した(強化因子).また,フロス・歯間ブラシの技術については,「だいたいうまくできる」および「うまくできる」を合わせたものが,すべての年代において有意に増加していた(実現因子).保健行動のうち歯間清掃用具を使用している者の割合は,いずれの世代も増加した.また定期健診を受けている者の割合はいずれの年代においても増加しており,特に30代では14から22%,50代では12から25%と有意に増加していた(影響評価).「歯みがきをすると血がでますか」という問いに,あると答えた者の割合は,30と50代では有意に減少していた.そのほかの自覚症状については変化は認められなかった(結果評価).成人歯科保健事業において,MIDORIモデルに従ってプログラムを策定,実施し,さらに評価を行うことは,ヘルスプロモーションの実践に有効であることが示された.
  • 川村 浩樹, 久保田 裕子, 鴨井 久一
    2004 年 54 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    歯科用ユニット内部の循環水の細菌汚染に対する対策として,残留塩素補正消毒システム『エピオス02』をユニットと水道水の配管の間に取り付けた.また,実験群の一部については,ユニット配管内のチューブをフッ素樹脂加工チューブに交換し,以下の条件で実験を行った.対照群:No.1ユニット:今まで通りの使用実験群:No.2ユニット:チューブのみ交換No. 3ユニット:『エピオス02』接続のみNo. 4ユニット:『エピオス02』接続,チューブ交換その結果,実験開始2週間後では,実験群すべてに循環水中の残留細菌は検出されなかった.また,チューブ内面の走査電子顕微鏡による形態学的観察では, No.1ユニットでは実験期間中を通じて,無機質の結晶様物質や菌体,またバイオフィルム状の物質が認められた.No. 2ユニットでは,細菌の菌体がわずかに認められた.No. 3ユニットでは,バイオフィルム状の物質,無機物の結晶様構造などに形態的な変化が認められた. No. 4ユニットではこれらのいずれもが認められなかった.これらのことから,残留塩素補正消毒システム『エピオス02』が,歯科用ユニットの循環水汚染に対して有用であることが示唆された.
  • 内藤 真理子, 鈴鴨 よしみ, 中山 健夫, 福原 俊一
    2004 年 54 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    口腔疾患は,局所的な疼痛や咀聯機能障害を招くだけではなく,心理社会的,経済的に影響を及ぼす一要因として看過できないものである.近年,これらの視点から検討を行ううえで必要となるQOL尺度の重要性は増している.そこで,心理社会面の反映に優れ,かつ対象集団や状況に応じて補完項目やほかの尺度の併用を考慮できる包括的口腔関連QOL尺度開発を目的として,General Oral Health Assessment Index(GOHAI)日本語版作成に着手した.原作者から日本語版作成の許可を得た後,翻訳者による尺度の順翻訳を開始した.順翻訳された項目を基に,フォーカス・グループを通して討議を行い,暫定版尺度を作成した.この暫定版を使用して地域住民を対象にパイロット・スタディを実施し,その結果から質問紙の再検討を行った.質問文の長さや表現の難解さ,逆転項目の存在が問題点として示されたことから,可及的にオリジナルに忠実であるように配慮しながら,暫定版に修正を加えた.さらに,レイアウトや字体に関する検討を完了した後,逆翻訳作業を行った.原作者による逆翻訳の確認および最終的な了承を得て,GOHAI日本語版Version 1.0を完成させた.
  • 河村 誠, 笹原 妃佐子
    2004 年 54 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,プリシードプロシードモデルを基にした歯科保健モデルと地域における現状とのギャップを解明することを主たる目的とした.はじめに,「口腔保健7要因調査」票を作成し同モデルに基づく因果モデル(みどりモデル:模式的仮説)を構築した.次に,東広島市とその周辺地域で同質問紙による調査を行った.みどりモデルと現状との一致性を検討した結果,適合度の目安であるGFI値は0.90を超えたもののAGFI値は0.77と低く,現実を反映するモデルとしては不十分であった.より現実的なモデルと考えられる修正モデルのGFIは0.97,AGFIは0.93を示し,ともに適合度の目安である0.90をクリアした.修正モデルは「準備因子」や「歯科保健行動」を強化することでQOLが向上することを示していた.また,モデルを検証しないままの健康教育は,行動変容の実態に沿わない可能性のあることが示唆された.
  • 晴佐久 悟, 筒井 昭仁, 境 憲治, 劉 中憲, 金崎 信夫, 埴岡 隆, 柏木 伸一郎, 三島 公彦, 鎮守 信弘, 小川 孝二
    2004 年 54 巻 2 号 p. 122-131
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    産業歯科健診に,口腔健康教育の効果および歯科保健意識と行動変容因子との関連性を検討した.事業所従業員208名に対し,口腔内診査後,歯肉辺縁部清掃技術,歯間部清掃用器其の使用法の指導,定期管理受診の説明を行い,介入前,直後,1ヵ月後,1年後に質問紙による調査を行った.歯肉近縁部を磨く認識のある者の割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,55,62%であり,介入前の35%と比較して有意に増加した.歯間部清掃用器其の使用割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,40,31%であり,介人前の24%と比較して,1ヵ月後には有意に増加したが,1年後では有意差は認められなかった.介入直後,歯科医院での定期管理受診希望者は87%であったが,1ヵ月後,定期管理受診者は15%であった.ロジスティック解析の結果,歯肉近縁部を磨く行動と歯肉近縁部を磨くという行動変容の定着には汁その部位を確実に磨く」という自信の因子が単独で関連した.歯間部清掃用器具を用いる行動では,「むし歯を予防できると思う」,「爽快感が感じられる」,「歯間ブラシ人手容易」が単独で関連した.口腔保健教育の目的とする行動変容の程度,それぞれの行動に影響を及ぼす要因について違いがみられた.このことから,変容を期待するそれぞれの行動に対する効果的な教育・指導内容を用いて,介入を行う必要性が示唆された.
  • 内山 章, 井上 志磨子, 谷沢 善明, 落合 良仁
    2004 年 54 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は新たな化学的ステイン予防・除去方法を開発することであり,本報では薬剤によるペリクルの除去,および薬剤によるペリクルの除去メカニズムについて検討を行った.ハイドロキシアパタイト(HA)ディスクはマウスピースに取り付け,健常な被験者の口腔内に保持した.経時的に形成されたin situペリクルはフロキシンにより染色し,そのa値を色差計にて測定した.また,タンパク量はニンヒドリン法によって定量した.紅茶変性ペリクルは紅茶を含漱して形成し,化学的薬剤を含む溶液でブラッシングして残存したペリクルの量および形態を評価した.HA粉体は希釈唾液を2時間処理した後,ピロリン酸塩を添加して,HAに吸着したピロリン酸量と脱離した唾液タンパク量を測定した.ペリクルのa値とタンパク量の間に相開開係がみられた(r = 0.95, p<0.01) . 3名の被験者のペリクル量は経時的に増加し,約2時間後プラトーに達した.ピロリン酸ナトリウム溶液でブラッシングしたペリクルのa値(Mean±SD = 0.73±0.35)は,コントロール(6.28±0.28;p<0.01)よりも有意に低く,試験薬剤のなかで最も小さいa値を示した.走査型電子顕微鏡による観察から,ピロリン酸塩でブラッシングされたペリクルは化学的に脱離され,歯磨剤希釈放でブラッシングされたペリクルは物理的に除去されていることが推察された.ピロリン酸塩のHAへの吸着等温線はLangmuir型吸着を示し,またHAに吸着したピロリン酸量と脱離されたタンパク量の間に比例関係が確認された.以上の結果から,ピロリン酸塩はペリクルの除去に有効であり,ピロリン酸塩はHA表面に吸着し,ペリクルとHA間のイオン的結合を切断することが示された.本研究によってピロリン酸塩がステインドペリクルの除去薬剤としてのポテンシャルを有することが示された.
短報
資料
  • 近藤 武, 笠原 香, 中根 卓, 樋口 壽英, 藤垣 佳久
    2004 年 54 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー
    わが国の水道水のフッ素基準値は,0.8 mg/l 以下である.しかし,宝塚市は中等度の斑状歯の発生抑制を目的として,国の基準より低い0.4〜0.5 mg/l 以下で給水している.この基準の妥当性は,この濃度の飲料水を出生時から摂取した児童・生徒の,中等度の斑状歯所有率の減少によって証明される.今回,宝塚市水道局から公表されている,水道水中フッ素濃度の経過と,宝塚市教育委員会から公表されている児童生徒の歯科健診結果から調査した.管末のフッ素濃度は昭和55年度(1980)以降平成12年度(2000)まで,年平均濃度は暫定管理基準を超える濃度はみられなかった.昭和56年度(1981)から63年度(1988)の間に出生した児童・生徒について,斑状歯所有率の経過をみると,平成8年度(1996)では5.3%であったが,平成12年度(2000)には2.3%と減少した.むし歯のない者の割合についてみると,経年的に増加がみられたが,全国的にも同様の傾向がみられたことから,その関係ははっきりしなかった.
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