口腔衛生学会雑誌
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31 巻, 5 号
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  • 森本 和夫
    1982 年 31 巻 5 号 p. 400-402
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • IV. 連続的摂取によるラット臼歯の咬合面の変化
    東 昇平, 小高 鉄男, 中川 勝洋, 川原 哲子, 花井 美智子
    1982 年 31 巻 5 号 p. 403-414
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    市販されている乳酸菌飲料水 (カルピス, ヤクルト) を, SD系ラットに生後5週から連続的に摂取させた。比較観察を容易にするため, 同腹子 (♂6匹) を3群に分け, 飲料水としてカルピス (20%溶液, pH3.4), ヤクルト (25%溶液, pH3.7), 対照には水道水 (pH7.4) を与えた。また, 固型飼料は通常の飼育に用いられるもの (オリエンタル酵母社製) を使用した。12週間, 一部は9週間飼育屠殺後, 下顎臼歯の咬合面について実体顕微鏡, microradiography, 走査電子顕微鏡による形態観察を行った。
    カルピスを摂取したラットは, 対照ラットと比べ, 左側あるいは右側臼歯の咬耗の程度に著しい差が生じた。ヤクルトを摂取したラットでは, 咬耗の程度は前二者の中間を示した。このような咬耗の症状は, 乳酸菌飲料水による酸蝕作用, ラット臼歯の咬合作用, およびラットの給水ビンのくわえ方の習性によって生じたと考えることができる。
    臼歯裂溝部エナメル質では, カルピスを摂取したラットの裂溝壁に脱灰層を認めたが, ヤクルトを摂取したラットと対照ラットとの間には差は認められなかった。一方, 裂溝下象牙質には, カルピスあるいはヤクルトを摂取したラットとも, エナメル象牙境にそって脱灰層が出現し, 比較に用いたWister系ラットでは, さらに明瞭に観察された。象牙質の脱灰層は, 乳酸菌飲料水などが裂溝下エナメル質内を浸透, あるいはエナメル葉を通路として浸入して生じたものと推定される。しかし, 裂溝部の脱灰作用の主な要因が, 乳酸菌飲料水の酸蝕によるものなのか, 口腔内細菌やヤクルトの生きたLactbacillusが関与した初期齲蝕によるものなのかは, 明らかにしえなかった。
  • 森主 宜延, 薬師寺 毅, 古賀 敏比古, 花岡 美那子, 井上 昌一
    1982 年 31 巻 5 号 p. 415-422
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ヒトのプラーク中にはデキストラナーゼを産生する細菌が棲息することが知られている。本研究の目的は, プラークの形成過程におけるデキストラナーゼ産生菌の役割の一端を明らかにすることにある。成人男子の上顎大臼歯頬側面に研磨清掃後3時間で形成されたプラークから, ブルーデキストラン寒天平板法により, デキストラナーゼ産生菌を分離した。被験者8名中5名の初期プラーク標品から, デキストラナーゼ産生菌が検出され, その総培養コロ二ー数に対する検出率は0.16-2.57%であった。強いデキストラナーゼ産生能を示す代表株3株を選び, その性状を調べたところ, 何れもStroptococcecs mitisと同定できるように思えた。何れの菌株の細胞もヒトの全唾液上清によって凝集し, 未処理あるいは唾液で被覆したハイドロキシアパタイトに吸着した。スクロース培地中においてStreptoceccus mutansの1株と混合培養すると, 2株のデキストラナーゼ産生菌はS. mutansのスクロース依存性ガラス壁付着を著明に抑制したが, 他の1株は殆んど影響を与えなかった。以上の成績から, 初期プラークに棲息するデキストラナーゼ産生菌の齲蝕原性S. mutansの歯面への定着における役割について考察した。
  • 短期実験う蝕系におけるう蝕発生ならびに微生物動態の連続的観察
    安井 利一
    1982 年 31 巻 5 号 p. 423-436
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    短期飼育のラットう蝕実験系を用いて, 日数経過に伴うラット臼歯の初期う蝕発生状況を検索してう蝕発生様相を解明するとともに, 口腔微生物の生化学的性状変化および量的な動態をも検索し, う蝕発生の初期状態における口腔環境の解明を行った。
    う蝕発生様相に関しては, シヨ糖添加のう蝕誘発性飼料投与開始後すみやかにう蝕病巣が出現し始め, 以後急速に増加し実験開始後15日目には全裂溝の80%にう蝕病巣が認められた。さらに, その発生増加は, 初期発生から約6日間は等比級数的な増加を示すことが見出された。また, シヨ糖非添加の飼料で飼育した群では, 実験群と比較してう蝕罹患が明らかに低く, 短期飼育実験でも投与飼料による本質的なう蝕発生の差が認められた。
    一方, 口腔微生物の動態を知るために, 歯牙に存在する数種の微生物について検索したところ, ある種の微生物について経時的な出現率の変化を認めた。ところで, S. mutansについては, その出現率および菌数の点からもう蝕罹患の低いシヨ糖非添加群に少ないという結果は得られなかった。次に, 糖分解能を中心にした生化学的検索によると, シヨ糖添加飼料飼育群から釣菌したS. mutans株はシヨ糖を強く分解するのに対して, シヨ糖非添加飼育群から釣菌したS. mutans株はシヨ糖を余り分解せずむしろブドウ糖やデンプンに対してpHを強く低下させていることが判った。
    以上のことから, 急速な初期う蝕病変の発生進行には微生物の数よりもその生化学的性状変化がより大きく影響すると推察され, 口腔内に絶えずシヨ糖が存在するような環境下では, 口腔微生物はその環境の影響を強く受けて生化学的性状を変化させ, う蝕の発生進行に強い影響を与える可能性が示唆される。
    したがって, う蝕の予防や抑制の観点からは, 食餌環境や口腔微生物をはじめとする口腔内環境の早期の把握とその評価がきわめて重要であるといえる。
  • 森岡 俊夫, 森田 恵美子, 鈴木 和雄
    1982 年 31 巻 5 号 p. 437-441
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究はQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを用いることにより歯石・歯垢を含む歯面付着物や歯質着色が安全に, かつ容易に除去しうるかどうか研索したものである。これらの付着物や着色の除去は予防歯科学領域での関心事である。
    エネルギー密度1.2~2.7J/cm2/パルスのレーザー光を歯面着色, 歯質着色, 歯石・歯垢付着, 小窩裂溝内容物を有するヒトの抜去歯牙39歯のエナメル質に照射すると, 付着物や着色の部位や種類により除去の難易性に若干の差異はあるが, これらの物質は有機性窩溝内容物を含めいずれも除去された。また臼歯部の小窩裂溝についても, 有機性の窩溝内容物は除去され, 窩溝壁や深部が部分露出した。Q-スウィッチを使用しないノーマル発振の同レーザー光では, このような結果は得られなかった。除去後のエナメル質表面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で調べると, 歯面の照射部位にチョーク様のスポットやクレーターは認められなかった。これらの結果からQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを歯石・歯垢などの歯面付着物, 歯面・歯質着色および小窩裂溝内容物除去の目的に臨床的に用いうる可能性が示唆された。
  • 森岡 俊夫, 森田 恵美子, 鈴木 和雄
    1982 年 31 巻 5 号 p. 442-448
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    GP発振のNd-YAGレーザーをヒトの生活歯に照射するとどのような歯髄反応や自覚症状が現われるかを, 2名の被検者について検討した。予備実験として, ヒト抜去歯牙を用いてNd-YAGレーザーを歯面へ照射した時の歯髄腔内および歯牙表面での温度上昇値を測定し, この値を基にin vivoでの照射量が設定された。
    ヒト抜去歯牙を用いたin vitroの実験で, Nd-YAGレーザー (照射エネルギー密度10.83J/cm2/pulse) 照射により惹き起こされた歯髄腔側壁の温度上昇値は, 大臼歯群で2.34±2.00℃, 前歯群で8.32±3.35℃であった。また, 歯牙表面での温度上昇値は照射中心より1mmの点で7.4~9.0℃であった。
    つぎに, 被検者の生活歯についての照射実験では, 自覚症状発生の閾値に個人間および歯牙間でばらつきはあったが, エネルギー密度10.83J/cm2/pulse以下では不快症状の発生は認められなかった。
    また, レーザー照射と同時に行なわれた臨床的歯髄診査 (視診, 打診, 温度診および電気診) から, レーザー照射をうけた全歯牙について照射による異常は認められなかった。
  • メリケン針の直径の差による検出う窩率の相違について
    佐藤 誠, 志村 則夫
    1982 年 31 巻 5 号 p. 449-452
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    メリケン針 (双鳩) No. 1 (直径1.14mm) とNo. 4 (直径0.89mm) によって作製した探針を用い, 小学校児童295名を対象に, 永久歯の臼歯咬合面小窩 (下顎第1, 第2大臼歯の頬面小窩を含む), 前歯舌面小窩のう蝕診査を行なった。学年別に検出う窩率を算出した結果, No. 4探針による検出う窩率は, No. 1探針の場合に比べて, 各学年とも高く, 1.7~2.5倍の数値を示し, この差はいずれも0.1%以下の危険率で統計学的に有意であると判定された。
  • NaFによる増殖促進
    小黒 章, 小泉 信雄, 堀井 欣一
    1982 年 31 巻 5 号 p. 453-460
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    Cercopithecus aethiops (vervet monkeyアフリカミドリザル) 腎組織由来のVero株細胞を用い細胞増殖に及ぼすフッ素イオン (NaF) の効果を2度にわたり調べた。最初の実験において培養液中のフッ素イオンに換算して0.1, 1, 10, 100ppmのNaFを添加し, 次いで2度目の実験では低濃度部分を細分し, 0.1, 0.2, 1, 2, 5, 10, 20, 50, 100ppmのNaFを添加した。勝田等になるSimplified replicate cultureを調製し, 5日間前後培養し, 細胞核数算定法により細胞増殖度を評価した。対照群, 被験群の細胞増殖度から細胞増殖と培養液中のフッ素イオン濃度の関係に, 統計学的, 及び細部における検討を加えた。
    最初の実験では1-10ppmのフッ素イオン濃度において細胞増殖は17-18%促進された。第2の実験では2ppmにおいて最も高い細胞増殖度を示し, 22.6%の増加でありそれより高い濃度では漸時細胞濃度を減少し, 100ppmにおいて第1, 第2の実験共細胞は殆ど死滅した。
  • 飯野 新太郎
    1982 年 31 巻 5 号 p. 461-476
    発行日: 1982年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化チタン化合物のエナメル質に及ぼす影響を検索する目的で, 歯エナメル質粉末ならびにIntact Enamelを材料として, フッ化チタンアンモニウム ((NH4) 2 TiF6) ならびにフッ化チタンストロンチウム (SrTiF6・2H2O) 溶液 (フッ素濃度9000ppm, pH 3.2~3.4), さらに比較のために酸性フッ素リン酸溶液 (APF溶液, フッ素濃度9000ppm, pH 3.4) を用いてin vitroにおける作用実験を行った。
    エナメル質粉末についての実験では, 化学分析によるエナメル質へのフッ素取込みの測定, エナメル質Ca/Pモル比についての検討, X線回折法による反応生成物の同定と結晶性の検索を行い, Intact Enamelについての実験ではX線マイクロアナライザによる元素分析, 酸溶解性試験ならびに走査電子顕微鏡によるエナメル質表面の観察を行った。
    その結果, エナメル質粉末についての実験では, 高フッ素濃度フッ化チタン化合物溶液作用により, エナメル質のフッ素濃度は増加した。しかしCa/Pモル比はControl Enamelに比較して差は認められず, APF溶液作用と異なり, エナメル質にフッ化カルシウム生成のないことが認められた。また他の反応生成物もなく, フッ化チタン化合物溶液作用後のエナメル質は, アパタイト構造を保持しており, 結晶性の向上が認められた。Intact Enamelについての実験ではフッ化チタン化合物溶液作用においては, エナメル質表層にフッ素とチタンが取込まれ, フッ化チタンストロンチウムではストロンチウムも取込まれることが認められた。またフッ化チタン化合物溶液作用により, エナメル質の高い耐酸性獲得が認められた。さらにエナメル質表面の走査電子顕微鏡による観察では, チタンの影響によリエナメル質表面に“Glaze”の形成が認められ, 酸処理面では明らかな酸抵抗像が観察された。
    以上のことからフッ化チタンアンモニウム, フッ化チタンストロンチウムは, フッ化物歯面塗布法の薬液として臨床応用の可能性があることが示された。
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