フッ化チタン化合物のエナメル質に及ぼす影響を検索する目的で, 歯エナメル質粉末ならびにIntact Enamelを材料として, フッ化チタンアンモニウム ((NH
4)
2 TiF
6) ならびにフッ化チタンストロンチウム (SrTiF
6・2H
2O) 溶液 (フッ素濃度9000ppm, pH 3.2~3.4), さらに比較のために酸性フッ素リン酸溶液 (APF溶液, フッ素濃度9000ppm, pH 3.4) を用いて
in vitroにおける作用実験を行った。
エナメル質粉末についての実験では, 化学分析によるエナメル質へのフッ素取込みの測定, エナメル質Ca/Pモル比についての検討, X線回折法による反応生成物の同定と結晶性の検索を行い, Intact Enamelについての実験ではX線マイクロアナライザによる元素分析, 酸溶解性試験ならびに走査電子顕微鏡によるエナメル質表面の観察を行った。
その結果, エナメル質粉末についての実験では, 高フッ素濃度フッ化チタン化合物溶液作用により, エナメル質のフッ素濃度は増加した。しかしCa/Pモル比はControl Enamelに比較して差は認められず, APF溶液作用と異なり, エナメル質にフッ化カルシウム生成のないことが認められた。また他の反応生成物もなく, フッ化チタン化合物溶液作用後のエナメル質は, アパタイト構造を保持しており, 結晶性の向上が認められた。Intact Enamelについての実験ではフッ化チタン化合物溶液作用においては, エナメル質表層にフッ素とチタンが取込まれ, フッ化チタンストロンチウムではストロンチウムも取込まれることが認められた。またフッ化チタン化合物溶液作用により, エナメル質の高い耐酸性獲得が認められた。さらにエナメル質表面の走査電子顕微鏡による観察では, チタンの影響によリエナメル質表面に“Glaze”の形成が認められ, 酸処理面では明らかな酸抵抗像が観察された。
以上のことからフッ化チタンアンモニウム, フッ化チタンストロンチウムは, フッ化物歯面塗布法の薬液として臨床応用の可能性があることが示された。
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