口腔衛生学会雑誌
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51 巻, 2 号
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論説
原著
  • 森下 真行, 徐 淑子, 原 久美子, 松本 厚枝
    2001 年51 巻2 号 p. 145-149
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    高校生が学校歯科健診の結果をどのように認識しているかについて,質問紙により調査したところ,う蝕については95%の者が診断を正しく認識していたが,歯肉炎については42%にしかすぎなかった。また,治療勧告書を受け取ったにもかかわらず,約半数の生徒は歯科医院を受診していなかった。そこで,高校生の歯肉炎に対する認識を向上させ歯科医院への受診を促すため,歯科健診の機会をとらえ歯科保健指導を行った。また治療勧告書について検討し,その内容を変更した。その結果,歯科保健指導を実施することにより歯肉炎と診断されたことを正しく認識していた生徒の割合は,50%から72%と高くなった。また歯周疾患要観察と診断された生徒については,「歯肉炎があった」と正しく認識していたのは26%から73%と高くなった。歯科健診結果を認識していた生徒のうち,う蝕治療のために受診した生徒はわずかに増えたが,歯肉炎については受診率は向上しなかった。歯科健診の際に保健指導を行い,治療勧告書を改善することによって,歯肉炎に対する生徒の認識を向上させることができた。しかし,健診結果を認識していても,それが必ずしも受療行動と結び付かないことも明らかになった。以上のことから,今後は歯科保健だけにとらわれず高校生の生活習慣全体をとらえ,ヘルスプロモーションを基盤とした健康教育を導入する必要があると考えられた。
  • 埴岡 隆, 松森 由希子, 小島 美樹, 田中 宗雄, 雫石 聰
    2001 年51 巻2 号 p. 150-155
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    喫煙は歯周病の発症,進行,予後のリスクファクターであることが示されている。しかし,喫煙が歯列組織破壊に関与する生理学的機序については,明確に説明されていない部分が多い。本研究では,喫煙者と非喫煙者の歯肉組下温度を比較することにより,喫煙による歯周組織破壊の経路について生理学的な面から検討することを目的とした。喫煙者46名および非喫煙者53名の上顎前歯の歯肉組下温度を測定した。歯種,プラーク指数,歯肉炎指数別に歯肉組下温度には有意差が認められなかった(p=0.6835,0.6464,0.0730)。非喫煙者では歯列ポケットが深くなると歯肉組下温度も上昇した(p=0.0033)が,喫煙者では歯周ポケットの深さにより有意差は認められなかった(p=0.2807)。歯列ポケットの深さが3mm,4mm,5mmの部位では喫煙者の歯肉組下温度(35.2±0.7で,35.5±0.6℃, 35.7±0.8で)は,非喫煙者の歯肉組下温度(34.3±0.9℃,34.6±1.1℃,34.9±1.1℃)より有意に高かった(p=0.0048,0.0129,0.0457)が,6mmの部位では喫煙者(35.6±0.4で)と非喫煙者(35.8±1.1で)との間に有意差は認められなかった(p=0.2627)。以上のことから,喫煙者の歯肉組下温度は,非喫煙者に比して浅いポケットで高いことが示された。喫煙が関連する歯周組織破壊の前あるいは初期の段階において,歯肉組下温度の上昇が関与していることが示唆された。
  • 友利 隆俊, 古賀 寛, 眞木 吉信, 高江洲 義矩
    2001 年51 巻2 号 p. 156-167
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    小児から成人・老人に至るライフステージに応じた齲蝕予防として実施されているフッ化物応用の有効性と安全欧の基準設定に必要な基礎データを検討するために,本研究ではわが国の市販乳児用食品摂取に基づいた乳児の一日平均フッ化物摂取量を推定し次の結果を得た。1.乳児用食品摂取に基づいた一目平均フッ化物摂取量は,月齢3〜4ヵ月の乳児では0.166mg,5〜6ヵ月では0.202mg,7〜8ヵ月では0.266mgとなることが推定された。2.これらの月齢における体重1kgあたりの一日平均フッ化物摂取量は0.023〜0.029mg/kgの範囲にあり,乳幼児の一日フッ化物摂取基準を提唱したOphaugらの許容量0.05〜0.07mg/kgの約2分の1であった。以上の成績から,わが国における乳児用食品中フッ化物の一日摂取量は,外国の文献値と比べて同等かまたは価値にあることが推定される。したがって,わが国のフッ化物応用においては,本報告の資料にみられる一日フッ化物摂取量の基準値の科学的な設定が望まれる。
  • 市橋 透, 武藤 孝司
    2001 年51 巻2 号 p. 168-175
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    職域における歯科保健活動の効果を把握するため,歯科および医科の「外来医療費(以下,医療費)」,「外来通院日数(以下,通院日数)」の追跡調査を行った。対象は,歯科保健活動を実施している某事業所の男性従業員357名である。1992年から1997年までの当該事業所での歯科保健活動への参加回数別に診療報酬明細書をもとに1992年から1998年までの歯科,医科の医療費累積値および通院日数累積値の追跡調査を行い,次の結果を得た。1.歯科保健活動への参加回数「2-3回」,「4-6回」群では「O-1回」群と比較して歯科医療費,歯科通院日数が少ない傾向にあった。2.歯科保健活動への参加回数「2-3回」,「4-6回」群では「O-1回」群と比較して歯科を除く医科医療費,医科通院日数も少ない傾向にあった。3.総医療費では,歯科保健活動への参加回数「4-6回」群は「O-1回」群と比較して97年,98年には有意に少なく,総通院日数では「2-3回」,「4-6回」群は「O-1回」群と比較して少ない傾向にあった。4.本研究で行った一人当たり約20分間の歯科保健活動(口腔内診査,歯科保健指導,歯石除去)は汎用性が高く,歯科保健活動として有効な方法であると考えられた。以上のことから,職域における歯科保健活動の実施は歯科医療費,歯科通院日数だけでなく総医療費,総通院日数の抑制にも寄与し,その有用性が認められた。さらに,歯科と医科の関連性が示唆され,歯科保健指導も含めた総合的な健康教育の重要性が考えられた。
  • 藤村 克成, 加藤 恭裕, 笠井 幸子, 粟野 秀慈, 安細 敏弘, 竹原 直道
    2001 年51 巻2 号 p. 176-184
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は矯正治療必要度の自己評価法として,Index of Orthodontic Treatment Need (IOTN)の審美的評価法であるAesthetic Component (AC)スケールが,わが国でも使えるかどうかを検討することである。平均年齢21.3歳の177名の学生のうち,歯科矯正治療を経験していない173名を調査対象とした。不正咬合の自己評価法としてACスケールを用い,歯科医師による疫学的評価法としてAC,IOTNの機能的評価法であるDental Health Component (DHC)およびDental Aesthetic Index (DAI)を用いた。その結果,1.疫学的評価法により歯科矯正治療が必要と判断されたものはACで19.1%,DHCで45.1%,DAIで41.6%であり,DHCおよびDAI両方で必要と判断されたものは32.9%であった。2.対象者がACスケールを用いて自己評価したところ,治療が必要なカテゴリーを選択したものは2.3%であった。以上を総括すると,AC,DHCおよびDAIによる疫学的評価結果は,ACによる自己評価と異なる傾向が認められ,矯正治療必要度の評価方法そのものの再検討が必要であることを示唆している。
  • 鴨井 久博, 小倉 喜一郎, 佐藤 勉, 丹羽 源男, 鴨井 久一
    2001 年51 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2017/12/08
    ジャーナル フリー
    亜鉛(Zn)は必須微量元素の1つで,その摂取不良は成長遅延や免疫低下,味覚異常など多岐にわたる臨床症状を示すことが知られているが,Zn欠乏時の臨床症状の発現機構やZn代謝については不明な部分も多い。このため,本研究では口腔粘膜組織,おもに歯列組織周辺に対するZn欠乏の影響を調べる目的で,生後4週齢のWistar系雄性ラット12匹を対照群とZn欠乏群の2群に分け,特殊精製粉末飼料にて3週間飼育した。その結果,Zn欠乏群において体重増加は対照群に比べ緩やかであり,実験開始2週目ころより腹部,頸部などにおける脱毛がみられ,血清Zn濃度,血清ALP活性ともに価値であった。走査電子顕微鏡観察においては,Zn欠乏群に異物の蓄積や不規則な形態を呈した。また光学顕微鏡観察では今回の実験においてZn欠乏群に歯局組織の変化はみられなかったが,口蓋部における粘膜表層の角化や歯肉境移行部付近から頬粘膜にかけて錯角化が観察された。
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