秋田県某市H地区では,う蝕リスク評価に基づく継続的な保健指導を重視し,幼児歯科健康診査にカリエスリスクテストを導入した.本研究では,3歳児までの歯科健康診査の継続受診児245名を対象として,dftおよびその推移,質問項目の結果,Dentocult®-Strip mutans(Dent-SM)スコアを比較し,3歳児のdftと関連する要因について分析し,以下のような結果を得た.3歳児までのdftの推移で対象者を群別したところ,0歯群58.0%(142名),2歳児までに罹患群17.6%(43名),3歳児までに罹患群24.5%(60名)となっていた.Dent-SMスコアが「2,3」の幼児は,2歳児以降に増加し(25.7%),1歳6か月児との間に有意差(p<0.01)が認められた.Dent-SMスコアの推移パターンと3歳児のdf者率とを比較した結果,スコアが悪化する時期が早いほど3歳児df者率は高く,1歳6か月児から継続してスコア「2,3」だった群では3歳児dft者率は70%を超え,他群との間で有意差(p<0.01)が認められた.dftの推移群別にDent-SMスコアおよび各質問項目の回答とを比較した結果,2歳児までに罹患群で「仕上げ磨き」ほか全項目で「要指導」となる回答者の割合が増加し,0歯継続群との間に有意差(p<0.01)が認められた.3歳児のdftを従属変数としてロジスティック回帰分析を実施したところ,2歳児Dent-SMスコア(6.524,p<0.01),3歳児Dent-SMスコア(4.000,p<0.01),3歳児間食規則性(3.284,p<0.05),2歳児飲料内容(2.582,p<0.05)でオッズ比が有意となっていた.これら結果から,2歳児までのミュータンス菌が増加する時期を捉え,食生活指導や仕上磨きの指導等を充実させることが重要との示唆を得た.
抄録全体を表示