口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
Print ISSN : 0023-2831
ISSN-L : 0023-2831
58 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 鈴木 奈央, 米田 雅裕, 内藤 徹, 吉兼 透, 岩元 知之, 廣藤 卓雄
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 2-8
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    福岡歯科大学では,口臭クリニック受診患者に対して初診時に自己記入式の口臭問診票を用い,口臭の診断と治療に役立てている.本研究では,これまでに得られた回答結果をまとめて臨床診断別に分類し,患者の自覚症状や生活習慣について検討した.その結果,仮性口臭症患者では,口臭を意識したきっかけが「自分で気づいた」である者が真性口臭症患者に比べて多く(ρ<0.05),また口臭を意識するために社会生活や対人関係に支障をきたしている傾向が認められた.口腔内自覚症状では,口腔由来病的口臭患者に歯肉出血や齲蝕などの歯科的項目に高い訴え率が認められ,仮性口臭患者では「痛い歯がある」や「変な味がする」など感覚的な訴えが特徴的に認められた.生活習慣に関する質問では,仮性口臭症患者に集中できる趣味をもたない者が多くみられ(ρ<0.05),また半数以上が口臭以外にも身辺に悩みがあると回答した(ρ<0.05).さらに仮性口臭症では「あなたのまわりに口臭の強い人はいますか」という質問に対して「はい」と答えた者が真性口臭症よりも少なく(ρ<0.01),仮性口臭症患者には実際の口臭を知らない者も多いことが示唆された.今回口臭問診票の結果を検討したところ,臨床診断別に特徴のある回答が得られ,これらが患者情報の把握と口臭の診断や治療計画に役立つことが明らかになった.
  • 葭原 明弘, 高野 尚子, 宮崎 秀夫
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    近年,介護予防事業の重要性が認識されてきている.本調査の目的は,65歳以上を対象とした特定高齢者の判定項目における口腔の情報と他の情報との関連を整理し,今後の事業展開における基礎情報を提供することである.65歳以上の住民で基本健診の全受診者,852名を分析対象とした.質問紙法により,全身的な健康状態に関する,生活機能,運動機能,栄養,閉じこもり,認知症,うつ,および口腔症状に関連する,「食べにくくなった」「むせる」「口が渇く」について,全25項目の情報を得た.それぞれの要因について,質問に対し身体状態に課題が認められる方向の回答に対し1点,その他の回答を0点を与えた.その後,生活機能,運動機能,栄養,閉じこもり,認知症およびうつについて合計点数を算定し,口腔症状との関連性を評価した.これら全身状態に関する6要因のいずれにおいても,「食べにくくなった」「むせる」「口が渇く」の症状のある人のほうが点数が高かった.特にうつ,および認知症に関する要因については,平均値の差はいずれの口腔症状についても統計学的に有意であった.本調査より,口腔に関連する症状は,生活機能,運動機能,栄養,閉じこもり,認知症,およびうつと関連していることが明らかになった.
  • 青山 貴則, 相田 潤, 竹原 順次, 森田 学
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 16-24
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    一般歯科医院において,修復物の生存期間とそれに関連する要因を検討することを目的とした.札幌市内の歯科医院にて,1991年1月1日から2005年3月31日の間に修復物を用いた治療を受け,その後,定期健診やその他の治療目的などで再来院した患者を対象とした.コンポジットレジン,メタルインレー,4/5冠,メタルクラウン,メタルブリッジの生存期間とそれに関連する因子をKaplan-Meier法と,Cox比例ハザードモデルを用いて検討した.総計95人,649歯の修復物について分析した結果,平均生存期間では,メタルインレーが3,804日と最も長く,次いでコンポジットレジン3,532日,4/5冠3,332日,メタルクラウン3,276日,メタルブリッジ2,557日であった.10年の生存率を推定した結果,メタルインレー67.5%,4/5冠60.5%,コンポジットレジン60.4%,メタルクラウン55.8%,メタルブリッジ31.9%であった.再治療の原因では二次う蝕によるものが多く,特にコンポジットレジン(78.2%),メタルインレー(72.4%)で著明であった.Cox比例ハザードモデルを用いて,修復物の生存期間の長さに影響している因子を検討した結果,アイヒナー分類で生存期間と有意な関連(p<0.05)がみられ,アイヒナー分類B1,B2,B3が予後不良であり,ハザード比はそれぞれ1.88 (1.16-3.05),3.18 (1.93-5.25),2.44 (1.31-4.53)であった.年齢,歯種,治療時の歯髄状態と生存期間との間に有意な関連は認められなかった.以上の結果から,メタルブリッジの生存期間が最も短く,また咬合の要因が生存期間と関連していることが示唆された.
  • 藤山 友紀, 村田 貴俊, 宮崎 秀夫, 花田 信弘
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 25-32
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    口臭を訴える方々には,歯周組織学的に健全である場合がしばしば認められる.そこで,歯周組織学的に健全な者の口気中の揮発性硫化物(以下,「VSC」という)と舌苔の関係に焦点をあて研究を行った.健康な成人6名を対象とした.機械的歯面清掃,歯口清掃指導を実施し,歯周組織の状態が改善された後,ガスクロマトグラフィにて口気中のVSC濃度を測定した.その直後,歯肉縁下のクリーニングをすべての歯に対しを行い,VSC測定を行った.引き続き,舌クリーニングを行い,再びVSC測定を行った.その後,舌クリーニング時に採取した舌苔中の細菌を,血液寒天培地上にて37℃嫌気下で培養し,グラム染色を行った.舌クリーニング後には,VSC濃度の明らかな減少が認められた(P<0.05).舌苔中の細菌数とVSC濃度との間には関係は認められなかった.また,グラム陽性桿菌とVSC濃度との間の関係はp=0.08であった.これらの結果から,歯周組織学的に健全な者に認められる口臭の主な原因は,舌苔であることが示唆された.また,歯周組織学的に健全な者に口臭が認められる場合,舌苔の細菌叢がVSC濃度に影響を与える可能性があることが示唆された.
  • 古川 清香, 森 智恵子, 植野 正之, 品田 佳世子, 川口 陽子
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 33-43
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    口腔疾患が日常生活に障害を引き起こすことが報告されているが,日常生活の障害と喫煙行動との関連については明らかにされていない.また,タバコをとりまく環境が変化している現在,労働者の意識や知識を喫煙対策に反映していく必要もある.そこで,喫煙と日常生活への障害,人々のタバコ対策への意識およびタバコの害への知識を明らかにすること,そして,職域における歯科保健活動における喫煙対策の必要性を探索することを目的として本研究を行った.対象者は,2004〜2005年に,歯科健診および質問票調査に参加した電子機器メーカの事務および技術職の男性従業員855名(平均年齢42.1±6.4歳)である.健診項目は,歯の状況(DMFT),歯周組織の状況(CPI),歯垢の付着,口腔粘膜,咬合・歯列,顎関節の異常の有無,質問内容項目は,歯科保健行動,口腔に関連する日常生活の障害,タバコ関連の質問である.その結果,本研究の対象者は,喫煙者38.7%,過去喫煙者12.9%,非喫煙者48.4%であった.口腔に関連した日常生活の障害は,「見かけが気になる(20.6%)」が最も多く,次に「おいしく食事ができない(13.7%)」,「話しづらく感じる(10.1%)」,「仕事に集中できない(6.1%)」,「よく眠れない(3.5%)」であった.ロジスティック解析において,喫煙習慣と口腔に関連する日常生活の障害のうち3項目について関連がみられた.喫煙者は非喫煙者に比べて1.60倍「見かけ」が気になり,喫煙者は2.03倍,過去喫煙者は1.98倍,非喫煙者に比べて「おいしく食事ができない」と感じ,喫煙者は非喫煙者に比べて4.01倍「よく眠れない」と回答した.会社における禁煙支援が不十分だと回答したのは23.7%,会社における歯科専門家からの禁煙支援が必要だと回答した人は29.3%であった.労働者のタバコ関連疾患の認識は,肺がん95.4%,口腔癌67.1%,歯周病54.6%であった.以上の結果,男性労働者の喫煙行動と口腔に関連する日常生活の障害の間に強い関連があること,労働者は禁煙支援が必要だと考えていること,タバコに関連する情報の提供が必要であることが明らかとなった.それにより,職域における口腔保健活動に禁煙支援活動が必要だと考察された.歯科専門家は職域においても積極的に禁煙支援活動に携わるべきである.
  • 鉛山 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    鹿児島県A町に居住する40歳以上の成人183名を対象に,歯周病原性細菌に対する血中IgG抗体価と歯周疾患の重症度との関連性について調査した.ELISA法によりAggregatibacter (Actinobacillus) actinomycetemcomitansの各血清型(a〜e)の全菌体,およびPorphyomonas gingivalisの全菌体,同精製線毛に対するIgG抗体価を測定した.各々の抗原に対する抗体価間では,A. actinomycetemcomitansの各血清型に対する抗体価間すべてに有意な正の相関が認められ,c型,e型に対する抗体価は抗P. ginggivalis全菌体抗体価とも有意な正の相関を示した.抗P. gingivalis線毛抗体価はP. gingivalis全菌体抗体価とA. actinomycetemcomitansのa型全菌体に対する抗体価に相関を示した.歯周病重症度とはA. actinomycetemcomitansの血清型aとeの全菌体,P. gingivalisの全菌体,同線毛に対する抗体価が有意な相関を示した.P. gingivalisとA. actinomycetemcomitansはともに歯周病原菌として知られているが,その病態は異なっており,各々の菌に対する抗体価を併用することで,より正確な歯周病診断が可能になるものと思われる.
  • 酒井 怜子, 川崎 弘二, 神原 正樹
    原稿種別: 本文
    2008 年58 巻1 号 p. 51-61
    発行日: 2008/01/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    唾液糖タンパク質であるムチンの存在下において,フッ化物がエナメル質初期う蝕の再石灰化に及ぼす影響を明らかにするため,QLF法を用いて検討した.脱灰溶液に48,96時間浸漬して作製した初期脱灰試料をムチン非添加および3種類の異なる濃度(0.29mg/ml,0.87mg/ml,2.70mg/ml)になるようにムチンを添加した再石灰化溶液に28日間浸漬した.2種類の脱灰程度の初期脱灰試料のうち,それぞれ半分の初期脱灰試料に対して,フッ化物配合歯磨剤処理を行った.フッ化物配合歯磨剤処理は,フッ化物配合歯磨剤を4倍に希釈したフッ化物配合歯磨剤溶液に1日3回5分間初期脱灰試料を作用させた.その結果,フッ化物配合歯磨剤処理を行わなかった場合,48,96時間脱灰試料ともに再石灰化溶液中のムチンの濃度が高くなるに従って再石灰化の程度は低くなった.フッ化物配合歯磨剤処理を行うと48,96時間脱灰試料ともに0.87mg/mlまでのムチンの存在下においては高い再石灰化が観察された.また,フッ化物配合歯磨剤処理を行っても48,96時間脱灰試料ともに2.70mg/mlのムチンを添加した場合においてはほとんど再石灰化しなかった.このように,再石灰化の程度はムチンの濃度に依存することから,ムチンはエナメル質の再石灰化現象をコントロールしていることが明らかとなった.
feedback
Top