口腔衛生学会雑誌
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27 巻, 4 号
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  • 内村 登
    1978 年 27 巻 4 号 p. 261-274
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    乳幼児期の成長発育にとって大きな役割を果たす乳歯は, 乳歯列が完成する以前からう蝕に罹患していく傾向が強い。このため今まで歯科医が行なってきた個人衛生的な指導から, 社会全体に働きかける公衆衛生的な考え方でう蝕予防を推進していく必要があり, そのためには乳歯う蝕を疫学的に正しく把握することが基本的に必要であると考える。
    乳歯う蝕の疫学的研究は従来より数多く報告されているが, 低年齢児を対象としたものは少なく, また多くは断面的資料に基いている. そこで低年齢児を連続観察すると同時に, 歯牙年齢およびう蝕罹患型による分類法を用いることにより, 個人の追跡を1口腔単位に〓え, 臨床的に評価することを試みた。
    資料は神奈川県横須賀市北部保健所管内の幼児205例 (男児100例, 女児105例) であり, 1年時から3年時まで毎年う蝕罹患の追跡調査を行なった。
    その結果, う蝕罹患状態は増齢的に増加し, とくに2年時で急増する傾向がみられた。歯種別では歯牙年齢I型で乳中切歯にう蝕が初発し, II型を除きI型からVI型までは上顎乳中切歯のう蝕罹患率が最も高かったが, VII型では下顎第2乳臼歯の方が高率を示した。歯面別では1年時は上顎乳中切歯唇面の罹患率が最も高く, 2年時では上顎乳中切歯近心面が, 3年時では下顎第2乳臼歯咬合面の罹患率が最も高かった。また1年時および2年時う蝕発症者のうち, df歯率, df歯面率が増齢的に減少した例は少なく, 大部分は漸増していた。う蝕罹患型でみると1年時は乳前歯にう蝕が限局したb型が多く, 3年時では上顎あるいは下顎乳前歯と乳臼歯がう蝕に罹患したc型が多かった。1年時b型のものは3年時でもb型のままであった例はなく, 3年時では広範性う蝕となる傾向が強く認められた。
  • 二上 捷之, 清重 達夫, 山崎 洋治, 丹羽 源男
    1978 年 27 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    Chaetomium gracile由来のDextranaseの歯垢さらに頬粘膜に対するin vitroの吸着およびDextranase洗口後の酵素の口腔内滞留性に関する検討を行なった。
    Dextranaseを1320, 6600および13200単位量in vitroで歯垢に作用させた場合, おのおの2.9, 10.8および15.1単位の酵素が歯垢 (mg乾燥重量) に吸着された。また, 頬粘膜に16800単位のDextranaseを作用させた揚合にもmg乾燥重量当り約6単位の酵素の吸着が認められた。
    13200単位のDextranaseで30秒間洗口した後, 唾液中の酵素活性は急速に減少し, 約90分後にはほぼ完全に消失する。しかしながら各被験者の歯垢中にはDextranase活性が残存していた。
  • 大西 正男, 奥村 富佐子, 村上 淑子
    1978 年 27 巻 4 号 p. 279-287
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    喫茶でう蝕の公衆衛生的予防が可能かどうかを試験する目的で, 国内・国外から得た190サンプルについて浸出した茶のフッ素濃度を測定した。
    茶のフッ素濃度は乾燥重量1kg中15mgから1800mgのように非常に大きな差があった。
    茶のフッ素濃度はすくなくとも三因子, すなわち生産地, おそらくフッ素を含む土壌の性質, 品種, および葉令であった。
    このために, 品質の良い商業的な茶は適当でなく, 古葉から作る安価な番茶はより適切であるようだ。茶の漬物を咬むことは, アジアに多い小窩裂溝う蝕予防に良好であるかも知れない。
  • 五十嵐 康夫
    1978 年 27 巻 4 号 p. 288-296
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歯科関係者と特別の関わりを持たないごく普通の日常生活の現場で, 小児が成長とともにどのような経過をたどって歯みがき習慣を獲得し, 何が問題点となっているかを記述する目的で調査を行った。方法は, 川喜田が体系化した野外科学方法論に従った。この結果小児の歯みがき習慣形成経過は, 開始期, 遊戯期, 移行期, 定着期, 習慣期に区分された。この経過の中で, 開始期に歯ブラシを与え, 移行期に歯磨剤を与える経過が一般的であった。移行期に該当する小児を持つ母親はいろいろな内容の不安感を持っていた。また, 小児の歯みがき回避行動は, 3型に分けられた。以上の事柄は, 保健指導上考慮すべきことと思われる。野外科学方法論は, 複雑な諸因子が雑多に絡む日常生活の様相を総合的に記述することにすぐれており, 多因子性疾患といわれている齲蝕の発病と関係する日常生活の把握や記述の手段として有効であろうと思われた。
  • 岩倉 政城, 島田 義弘
    1978 年 27 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    探針の鋭さは齲蝕検出率に影響を及ぼすから, 探針先端の形態の変動の大きさを評価するために, 国内四社で製造された探針について万能投影機を用いて計測を行ったが, その尖鋭度にかなりの変動があることが分った。そこで, これらの中から鋭い探針と鈍い探針を選んで齲蝕の検出の差があるかどうかを調べるために12歳児の37名を探針について診査者をblindしたくりかえしの歯科検診を両種の探針を用いて行った。この結果, 鋭い探針は鈍い探針より一人平均DMFTで, 0.22, 一人平均DMFSで0.19だけ多く齲蝕を検出した。初期齲蝕の検出に限ってみると, 鋭い探針は鈍い探針よりも30%以上齲窩を検出し, この差は危険率1%以下で統計学的に有意差であった。そこで探針の規格化について提案し, また規格化された探針の児童1名から6名までの使用による磨耗についても検討した。以上から, 歯科用探針の先端の均一化は疫学的な齲蝕研究に必須であり, この条件を維持するために探針は毎3人の検査ごとに基準形に再研磨すべきであると結論した。
  • 島田 義弘, 高木 興氏, 井上 博之, 馬場 利郎
    1978 年 27 巻 4 号 p. 305-318
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    咬合面の歯苔量と齲蝕の有病状況との関係を検討するため, 網地島と一関市の小, 中学生829名 (6歳~15歳) について口腔診査を行った。咬合平面に達し, 且齲蝕も充填もない小, 大臼歯の咬合面について, 染め出し液で染められた歯苔の面積に応じて0~3の点数を与えた。基準は: 歯苔がなく, 小窩裂溝内容物が線状に染ったのみが0点, 染め出された歯苔で咬合面の1/3未満が覆われたものが1点, 2/3未満が覆われたものが2点, それ以上が3点である。個人について同一歯種の点数平均を求め, これを個人のその歯種についての咬合面歯苔 (垢) 指数 (O.P.I.) と呼び, 個人のO.P.I. の平均を集団のその歯種についてのO.P.I. と呼んだ。その歯種は第1大臼歯, 第2大臼歯, 全大臼歯, 小臼歯, 小・大臼歯である。
    すべての集団O.P.I. 値は完全萠出直後にすでに高い値を示し, 数年間にその値は低下する。その低下は第1大臼歯で弱く, 小臼歯ではきわめて著明であった。性による差については, 大臼歯についてのO.P.I. 平均値が常に女性で高かったが, 小臼歯ではその傾向がなかった。
    各種O.P.I. とDMFTならびにDMFS数との間の相関係数を求め, 統計学的検討を加えた。その相関は基本的にはすべて正の関係にあると思われ, 萠出直後期を除くと多種のO.P.I. において屡々統計学的有意な相関関係を認めた。高度に有意な相関を大臼歯のO.P.I. においては非常に屡々認めたが小臼歯では稀だった。もっとも高い相関係数は小学校5~6年生においてDMFS数と第1大臼歯ならびに全大臼歯のO.P.I. との間で得られ, その理由は高いO.P.I. 値を示すほとんど全員が平均よりも多くの齲蝕に罹患していたためである。
    以上から, 学童において第1大臼歯ならびに全大臼歯のO.P.I. は齲蝕の有病状況と高度に有意な相関関係を持っていると結論した。
  • 高橋 昭記, 斉藤 邦男
    1978 年 27 巻 4 号 p. 319-331
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    通常の市販の歯磨剤と, これより高いpolishing値をもつ歯磨剤, 低いpolishing値をもつ歯磨剤の計3種類を, 均等に層別した3群の被検者45名にわりふり, 約2ヵ月間連続使用させた。
    そして, 前歯歯面上の沈着物の汚染状況を0日, 13日, 26日, 42日, 62日目に各々写真撮影を行ない, 0日目の写真と比較した。
    またこれら3種類の歯磨剤についてin vitroに於ける代用特性としてのpolishing値をSb板上で歯刷子と共に10000回往復運動させたときのSbの減重量で求め, 臨床に於ける効果と対比してみた。
    その結果, in vitroのpolishing値と臨床的汚染除去効果との間にY=1/X+Cなる関係が存在するようであり, 先人の報告を再現する知見を得た。
    また, polishing値の低い歯磨剤 (B歯磨剤) 使用群では, 約2週間後に歯牙汚染の増加が著しく認められ, 先人の成績と一致し, 歯磨剤が歯刷子と共に歯口清掃に大きく寄与していることを示した。
  • 有田 正俊, 山田 茂, 三島 洋, 久野 敏行, 中村 清隆, 相田 孝信
    1978 年 27 巻 4 号 p. 333-336
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    大高酵素 (O.E.) は任意の植物から抽出した多数の酵素であって, 口腔粘膜の炎症に治癒効果があり, また殺菌効果もあることが報告されている。これらの研究成績から, 歯垢抑制効果と歯肉炎の予防, あるいは治癒効果が期待される。
    われわれは女子高校生徒を対象とし, 予め刷掃方法の訓練を行なった39名にO.E. 含有歯みがき剤を, 他の43名にplaceboを使用し, 1週間刷掃を行なわせ, 実験開始前と実験終了後の歯面清潔度, PMA指数を比較した。実験群, 対照群ともに歯面清潔度とPMA指数は改善傾向を示したが, 実験群が有意の差をもって勝っていた。実験群が勝っていたことは, O.E. 含有歯みがき剤使用に関係あるものと考えられる。
  • 西村 英明, 奥田 博久
    1978 年 27 巻 4 号 p. 337-345
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    今回, 口腔内投与におけるin vivo, ウサギ血液に対する最大Na F安全投与量を求めたいと考え, 食道結紮を行ったウサギ口腔内への局所適用および皮下投与により種々用量のNa Fを投与し, 血液に対する影響を検討した。測定項目としては, 血中F濃度, 血中カルシウム量, 血糖値および血中乳酸量を, また, 赤血球の形態変化について, 電子顕微鏡を用い観察した.
    その結果, 12.5mg/kg Na F (F: 2800ppm) の15分間口腔内投与において, 最高血漿F濃度は1時間後に到達し, その値はコントロール値に比較し1.69ppmの上昇であった。しかし, 血中カルシウム量および赤血球形態に対しては, なんら影響を与えなかった。
    口腔内投与時, 著しい高血糖の発現と血中乳酸量の変動がNa F処置およびNa F非処置動物の場合を問わず, 同様に現われた。それらは四肢緊縛, 手術侵襲, 全身麻酔のストレス負荷によると思われた。したがって, 血糖値に対する影響は12.5mg/kg Na F口腔内投与時の血漿F濃度に相当するNa Fを皮下投与することにより検討した。その結果, 血糖値に対するNa Fの影響はなんら認められなかった。
    臨床使用量 (F: 500ppm) をウサギに1分間口腔内適用した場合, 最高血漿F濃度は30分後にみられ, コントロール値に比較し, わずかに0.06ppmの上昇であった。そのF濃度は12.5mg/kg Na F (F: 2800ppm) の15分間適用時の上昇分1.69ppmに比較し, 著しく低く血液解糖系に影響はないと思われる。
  • 相良 徹, 増井 富久, 橋本 良幸, 長谷川 泰啓, 福原 幹二, 杉本 源衛, 竹内 良伯
    1978 年 27 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歯科用模型作製のための印象採得に際して, 印象面の滑沢性や操作性, 粘稠度を得るためにアルギ。酸印象材に添加されている鉛量を知るために, アルギ。酸印象材中の鉛量を原子吸光計で測定し, 同時に練和時における飛散粉塵粒子数をRoyco 202 particle counterを用いて測定した。また練和前後の重量を秤量し, その差から飛散粉塵の重量を測定した。その結果 (1), アルギ。酸印象材中の鉛量は1種 (国産) を除いて他は5~35μg/gであり, ペースト状の2種 (国産) では7μg/gで最も少なかった。次で外国製 (アメリカ) の4種が平均16.2μg/gを示し, 国産の3種では平均26.2μg/gであった。最も多量に含んでいた1種 (国産) は9.7mg/gと極めて高い値であった。(2) 練和時に飛散する粉塵粒子の粒度では0.6μ以下のものは見られなかった。飛散粉塵粒子数は14.7×103~44.9×103個/lで, 0.8~10.0μ未満のものが52.9~72.7%を示し, 他は10.0μ以上であった。(3) 練和時の飛散粉塵は重量では1回の使用量中146.13~343.12mgで全体の0.81~1.55%であり, そのなかの鉛量は5.11~8.23μgを示した、アルギン酸印象材の使用に当っては含鉛量についての注意が望まれる。
  • 丸田 英夫
    1978 年 27 巻 4 号 p. 351-359
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    鉛中毒に対する生体の感受性の差異については年齢因子の影響が大きいことはよく知られているが, その理由はまだ充分解明されていない。また実験動物を用いて, この感受性の差異について検討した研究も少ない。著者は歯と大腿骨への鉛とり込みと年齢との関係があるかいなかを明らかにするため210Pbをトレーサーとして実験を行なった。実験動物として, 3週齢, 3カ月齢, 22カ月齢のウイスター系ラットを使用した。210Pb10μci/kgと種々の濃度の硝酸鉛溶液をラットの腹腔内に1回投与後, 3日目の大腿骨と歯の鉛摂取率を算出した。
    結果は以下のとおりであった。
    (1) 鉛の排泄様式は, 微量鉛 (210Pb10μci/kg単独) 投与時は指数函数的に減少したが, 1mg/kg投与時には直線的に減少した。21日間の尿および糞中総排泄率は, 前者で39.8%, 後者で24.3%であった。また糞中排泄率は常に尿中排泄率より多かった。
    (2) 投与鉛量が増すにつれて, 硬組織の鉛摂取率は低下した。とくに10mg/kg, 100mg/kg投与時の鉛摂取率は著しく低下し, この傾向は老年ラットできわめて著明であった。
    (3) 対照群の大腿骨, 切歯, 臼歯の平均鉛摂取率はそれぞれ, 3週齢で6.52%, 0.81%, 0.55%。3ヵ月齢で2.52%, 0.76%, 0.17%, 22ヵ月齢で2.28%, 0.97%, 0.21%であった。
    (4) 1mg/kg群の大腿骨, 切歯, 臼歯の平均鉛摂取率はそれぞれ, 3週齢で2.50%, 0.37%, 0.19%。3ヵ月齢で0.80%, 0.17%, 0.05%。22ヵ月齢で0.22%, 0.07%, 0,02%であった。
    (5) 対照群の場合硬組織1g当りの鉛量は, 幼若ラットでは大腿骨にきわめて多かったが, 成熟および老年ラットでは切歯の鉛量がもっとも多かった。
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