口腔衛生学会雑誌
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19 巻, 1 号
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  • 加藤 寅郎, 酒井 清六, 奥山 輝美, 長浜 満男, 秋吉 敏子, 佐々木 冨美, 栗山 純雄, 本村 静一
    1969 年19 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    この報告は, 幼児の間食の摂取状態とう蝕罹患との関係について述べたものである。調査検討した対象は, 東京ライオンファミリー歯科診療所を訪れた者の中の2歳児84名, 3歳児71名である。う蝕の診査は, 歯鏡および探針をもつて行い, 間食の調査は口答で記入法を説明した上一週間にわたって食事以外に飲食した食品すべて記入させた。記入事項の不明瞭な点については, 回収時に直接記入者に質問し, 追加または訂正した。対象は各々の家庭で生活しており, 間食の摂取状態には大きな個人差がみられ, 同時にう蝕罹患にも差がみられた。検討の結果次のような事が解つた。1. 間食として摂取した食品の主な栄養素は炭水化物であり, 幼児個々の間食熱量が所要熱量に占める割合は5~60%の範囲にあつた。2. 摂取された炭水化物の中から, 精製された糖質によつて作られている食品をとり出し, それの熱量とう蝕罹患歯率間の相関を検定すると, 2歳児ではr=0.29,3歳児ではr=0.45となりいずれも危険率1%で有意であつた。3. 牛乳および果物など, 精製されていない糖質でなる食品とう蝕罹患歯率間には, 2, 3歳児とも相関関係は認められなかつた。4. 幼児の間食摂取には個人差がみられるが, 彼らの多くは所要熱量の30%以上に値する熱量を間食から摂つており, 食品の種類としては, 年齢, 季節を通じて菓子類が最も多く改善すべき問題点が認められた。5. しかしながら, 間食に対する意識調査を行つた母親達の回答によれば, 関心は極めて低く, 日常間食は幼児らの欲求のままに不規則に与えている者が70%を占めていた。
  • 岩井 直信
    1969 年19 巻1 号 p. 9-31
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の蔓延は齲蝕とともに著しい高率を示している。この疾患の原因は複雑であるが, 日常の習慣でこれを予防する場合, 重要視しなければならないのは, 歯ブラシと歯磨を用いて歯口清掃を適正に行うことである。ここにおいて, 歯牙付着物除去と歯肉疾患の予防や治療に効果あると思われる3薬剤を歯磨中に添加して, その薬剤の効果について比較検討した。研究対象および研究方法としては, 健康なる成人女子を選び, その中の21名にアラントインを, 24名にイプシロンを, また25名にジヒトロコレステリンをそれぞれ添加した歯磨を28日間連続使用せしめた。そして, 使用直前と使用後7日間おきに5回, 歯周組織の健康診断を行い, 自・他覚的症状を観察した。その結果, 歯牙付着物や口臭の除去および歯牙動揺感の消失にはジヒドロコレステリンが, 歯肉の炎症の軽減にはイプシロンがともに特長ある効果を示した。また歯肉からの出血, 歯肉腫脹の減少感にはいずれの薬剤も特に差を認めなかった。以上, いずれの薬剤入りの歯磨も, その使用期間中の自・他覚的症状の減少率からみて, 歯周疾患予防歯磨として, 被検歯磨間に上記のような差異は認められるが, それぞれの効果は期待できるものである。
  • ヒノキチオール入りクリームについて
    高田 幸雄
    1969 年19 巻1 号 p. 32-50
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    日常の歯周疾患の予防として, その疾患に効果あるマッサージ用クリームを使用して, 手指で歯肉をマッサージすることは, 簡単でかつ大衆に歯周疾患に対する予防や治療という観念を持たせる有効な手段である. このような意味から, ヒノキチオール入リクリームの歯周疾患に対する予防, 治療効果について検討した. 研究対象としては, 歯周疾患に罹患し, かつ現在その治療を行つていない成人女子27名を用いた. そして, その対象にヒノキチオール・マッサージクリームを用い1日, 朝, 夕各1回, 36日間, 毎日, 前歯部歯肉を手指でマッサージさせ, その効果について観察した. 観察方法は, 他覚的症状として歯周疾患の疫学的調査に関係あるIndexを, 自覚的症状としてはアンケート調査をそれぞれ行つて観察し, かつ病理的検査も併せ行つた. その結果, 他覚的症状では本マッサージ実施前と後を比較すると, いずれのIndexとも実施後のものは実施前より著るしい減少を示し, その最も高いものはOHIで次いで口腔不潔度, PMA index, Periodontal indexの順に低くなつた. また, 自覚的症状では他覚的症状と同様に実施後は前より, それぞれの症状の所有者率は低くなり, その減少率の最も高いものは口臭で次いで腫脹, 歯肉からの出血, 歯牙動揺であつた. 病理的所見では実施前, 後の歯肉付着部上皮下の処見を比較すると, 後の方が好転していた. 自・他覚的症状の経過からみて28日以上連続使用すると著しい効果が期待できることが判つた.
  • とくにフッ素の離乳仔への移行について
    鈴木 隆男
    1969 年19 巻1 号 p. 51-70
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    低フッ素基礎飼料 (F0.45ppm) を与えながらF濃度それぞれ0, 0.5, 1, 10および50ppmの飲用群をつくり, Sprague-Dawley系雌雄ラットを2代にわたり飼育して, 体重, 血球数, 血清ALP, GOT, 出産率, 哺育率を比較した。さらに0および10ppmの2レベルは3代まで観察を続行した。また硬組織のF濃度を最新のFイオン電極法で測定し, 世代の問, 親仔の間のF濃度の推移を追求した。その結果は, 体重の増加の抑制が50ppmおよび第2代の10ppm群にみられた以外は血球数, 血清酵素などについてF投与レベル問に有意の差を認めなかった。第1代雄成育仔の組織F濃度は, 大腿骨14.1, 切歯15.1ppmまで低下したが (市販固形飼料飼育のそれぞれ3%および9%の低値) その仔, すなわち第2代生育仔との間には有意の差を認めなかつた。世代を重ねても組織濃度が低下しない原因は, 試作飼料の除Fが十分でなく, 離乳後飼料より摂取したFが蓄積して, 一定期間後は, ほぼ同一水準に達するためと考えられる. F投与群は飲用F濃度に比例して有意の体内蓄積を示すが, 投与Fレベル0~1ppmの範囲では離乳仔の骨濃度は常に9~10ppmに止り, 胎盤, 乳腺に生理的barrierがあることを示す。しかし10ppmより高レベルでは, 仔の硬組織濃度は親の10%を保持するが, 移行した絶対値は投与量に比例して当然高くなり, 単なる物理化学的濾過に止まると考えられる。
  • VI. 実験裂溝う蝕にみられる有病鼠率と平均う窩数の関係
    大西 正男, 尾崎 文子
    1969 年19 巻1 号 p. 71-83
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    5カ年間Pb-鼠を用いて行つた13種の実験 (各実験は2乃至6群, 一群は9乃至67匹鼠即ち41群1106匹) に誘発された裂溝う窩を統計して, 各群の有病鼠率 (P) と平均う窩数 (E) の問にP=0.502 log10E+0.426の関係のあることを知つた。 この式はう蝕発生箇所の感受性の差異に基づくものであることが解析され, 有病鼠率とは最高感受性部の罹患率であことを意味している。 またこの函数的関係は人間のう蝕でもみられた。 従つてこの式は有病率平均う窩数間の普遍的な標準関係を現わすものであるから, 実験値はこの式によて補正してから, 実験結果を考察するのが望ましい。 それで13実験に加えられた因子がそれらの実験で対照となつている6PMVのう蝕誘発力に与える影響を補正値で考察した。 ビタミンB1, Gelatin, フッ化物の歯牙萌出後の投与, 2.0のCa-P比等が明確なう蝕抑制的因子であつた。 この様な場合有効であることの有意性は推計学的に確かめることになるが, 本研究により平均う窩数は有病鼠率より精密な尺度であることの理由は存在しないことが明らかとなつたので, 有病率が1以下の範囲は寧ろ有病鼠率で差の検定をする方が便利であると思われた。 そして有病率が1以上となると, う窩数出現頻度を対数正規分布として平均値の差の検定を行うことがよいと思われた。
    以上の結果は人う蝕にも適用出来る。 人う蝕の有病率平均う歯関係式は, 歯牙年齢を無視出来る集団に対してはPh=0.465 log10Eh+Cと推定されるが, 小学児童 (7歳より12歳) ではPj=0.677 log10Ej+0.495であった。 また二群の有病率に有意な差のないときでも, ビタミンB1或はGelatinの例のように, 投与量と抑制度の問に一定の量的関係を得ることが出来たものでは, その有効性が確認できた. 有病鼠率一平均う窩数式で補正することと或る因子の作用様式を考察することは各種う蝕予防因子の生物学的検定の出発点となると思われた。 補正値を使つて実験結果を考えることは測定の尺度を変えると, 同じ因子の効果が逆転するようなこともなく便利である。
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