口腔衛生学会雑誌
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55 巻, 1 号
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原著
  • 藤好 未陶, 筒井 昭仁, 松岡 奈保子, 埴岡 隆
    2005 年 55 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    歯科保健教育の受け手側である小学生のブラッシング行動に関連する諸要因を検討し, 学齢期の歯肉炎対策に効果的な教育プログラムの開発に供することを目的とした.福岡市某小学校5年生81名を対象に, 児童のブラッシングに関連する知識, 意識と行動, 心理学的要因および歯肉炎と歯垢付着の状況を調査し, 関連性を検討した.93.3%が1日1回以上ブラッシングを行っていたが, 歯肉に炎症が認められたものは85.1%と多かった.歯肉の炎症度と歯垢付着度との間には相関性がみられた(r=0.515, p=0.0001)が, ともにブラッシング行動との関連性は認められなかった(p>0.05).心理学的要因のセルフエスティームは5つのブラッシング行動関連項目と, 自己管理スキルは8項目と有意な関連性を示した(p<0.05).因子分析の結果2因子が抽出され, 自己管理スキルは両因子に対して高い因子負荷量(0.526, 0.716)を示した.これらのことから, 小学生ではブラッシング行動は定着しているが歯肉炎に関する情報や意識が不足しているために有所見者率が高いこと, ブラッシング行動の背景として心理学的要因, 特に自己管理スキルが関与することが示された.歯肉炎対策には, 良好なブラッシング技術を伴ったブラッシング行動を定着させる歯科保健教育プログラムの開発が必要であり, その際には自己管理スキルの育成に着目する必要があることが示唆された.
  • 広瀬 弥奈, 福田 敦史, 八幡 祥子, 松本 大輔, 五十嵐 清治
    2005 年 55 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    歯垢の齲蝕誘発能における口腔内部位特異性を明らかにするために, 上下顎前・臼歯部, 頬・舌側面の8部位から採取した2日目歯垢の緩衝能を測定し, 部位の差を比較検討した.その結果, 初期pHには部位間に有意差が認められ, 下顎前歯部舌側(LAL)が最も高く, 下顎臼歯部頬側(LPB)と上顎前歯部唇側(UAB)が最も低かった(p<0.0001).緩衝能については, pH6.5&acd;5.5, pH5.5&acd;3.0の範囲においていずれも部位の差が認められ, LALが最も高い値を示した(p<0.01).なお, pH6.5&acd;5.5ではUABとの間に危険率5%で, またpH5.5&acd;3.0では上顎臼歯部口蓋側(UPL)との間に危険率5%で有意差が認められた.以上の結果は, 齲蝕は下顎前歯部に少なく, 上顎前歯部に多いという齲蝕発生における部位特異性と類似していた.LALの初期pH, 緩衝能が最も高かった理由として, LALは, 安静時唾液分泌量の約70%を占める顎下腺, 舌下腺開口部に近接し, 絶えず新鮮唾液にさらされているため, 唾液クリアランス能が高く, ほかの部位に比較してpHが低下しにくい環境にあるためと考えられた.また, 唾液量が多く, 移動速度も速いため, pHサイクルに伴う歯垢成分の遊離と沈殿を繰り返す過程で, 歯垢内液は過飽和状態を維持しやすい.その結果, タンパクやミネラルなど, 緩衝作用をもつ成分が歯垢中に沈殿しやすくなるためと思われた.
  • 安藤 雄一, 瀧口 徹, 深井 穫博
    2005 年 55 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    わが国におけるフッ化物洗口・家庭応用法の全国的な普及状況は不明である.そこで, これを明らかにすることを目的に, 歯科医師を対象とした質問紙調査を実施した.対象は日本歯科医師会の一般会員から抽出した3, 026名の歯科医師とし, フッ化物洗口に関して指導の有無・人数などに関する質問紙調査を郵送法にて行った.分析の指標としてフッ化物洗口による齲蝕予防管理の実施の有無と実施人数(ここ1年間に指導を行った実人数)を用い, 基礎統計量を算出した後, 要因分析を行った.さらに, これらの分析結果をもとに全国的な実施人数を推計した.質問紙の回収率は, 61.5% (1, 862/3, 026)と高かった.自院患者にフッ化物洗口の指導を実施している歯科医院は19.9%(95%信頼区間18.1&acd;21.7%), 実施人数の平均値は28.0人(標準偏差48.4, 95%信頼区間19.6&acd;36.4)であった.以上の結果をもとにして, 全国4&acd;14歳のフッ化物洗口・家庭応用法の実施人数を推計したところ, 34.7万人であった.95%信頼区間を考慮して推計した全国実施人数は, 22.1&acd;49.3万人であった.本報告は, わが国フッ化物洗口・家庭応用法の普及状況を初めて明らかにした調査である.今回確認されたいくつかの問題点を検討し, より精度を高めた全国調査を今後も継続実施していく必要がある.
  • 渡辺 猛, 安藤 雄一, 金崎 信夫, 埴岡 隆
    2005 年 55 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    「高齢者の1人平均現在歯数の多い市町村で1人あたり歯科医療費が高い.その理由は高齢者の歯科受診率が高いためである」という仮説を立てて, 地域相関研究により検証することを目的とした.静岡県内62市町村の市町村国民健康保険1999年5月歯科診療分における市町村別高齢者1人あたり歯科医療費を目的変数に, 高齢者1人平均現在歯数・人口10万あたり歯科医師数・人口密度・老年人口割合・第一次産業就業者割合・第三次産業就業者割合・1人あたり市町村税額を説明変数に, 65歳以上の被保険者数を重みづけ変数にして重回帰分析ステップワイズ法を行った.その結果, 高齢者1人平均現在歯数はほかの地域特性を示す変数を調整しても統計学的に有意(p<0.01)であったので, 1人平均現在歯数の多い市町村で1人あたり歯科医療費の高いことが認められた.次に, 市町村別高齢者の, 1人あたり歯科医療費は, 歯科受診率・診療報酬明細書1件あたり診療日数・診療1日あたり歯科医療費の影響を受け, 歯科受診率・診療報酬明細書1件あたり診療日数・診療1日あたり歯科医療費のそれぞれは人口密度と1人平均現在歯数の影響を受ける, という前提で作成したモデルに従ってパス解析を行った.その結果, 高齢者1人平均現在歯数の多い市町村で, 高齢者の歯科受診率が高く, 高齢者1人あたり歯科医療費の高いことが認められた.よって, 冒頭に掲げた仮説を検証することができた.
  • 高島 隆太郎, 川崎 弘二, 上村 参生, 酒井 怜子, 川上 富清, 小室 崇, 西島 典幸, 田治米 元信, 多名部 実, 小室 美樹, ...
    2005 年 55 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    ヒトエナメル質を用いて初期う蝕低脱灰試料群(低脱灰群)および, 初期う蝕高脱灰試料群(高脱灰群)を作製し, 異なるフッ化物イオン濃度(0 ppmF, 0.1 ppmF, 1 ppmF)の再石灰化溶液に15日間浸漬し, 再石灰化の過程をQLF (quantitative light-induced fluorescence)法により経日的に観察した.その結果, 再石灰化溶液浸漬15日後には, 低脱灰群において0 ppmF群は47%, 0.1ppmF群は43%, 1ppmF群は89%の回復率, 高脱灰群において0ppmF群は33%, 0.1ppmF群は39%, 1ppmF群は52%の回復率の回復率を示した.今回のin vitro研究においては, 再石灰化溶液中の1ppmFフッ化物イオンが低脱灰群のヒトエナメル質初期う蝕に対して, 特に再石灰化を促進していることがわかり, QLF法はエナメル質試料における脱灰/再石灰化観察に有用であることがわかった.
  • 榊原 健治, 今井 敏夫, 岩上 徳志
    2005 年 55 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2005/01/30
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    近年, チタン製顎修復インプラントあるいは歯科インプラントは臨床応用されている.しかし, これら材料からチタンイオンが遊出することが知られているが, チタンイオンの骨原性細胞に対する影響は不明な部分がある.そこで本研究は, シュウ酸チタンカリウム(TiK)の骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1の細胞増殖およびアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性に及ぼす影響について検討した.MC3T3-E1細胞の増殖は, 0.1mMより高濃度で濃度依存的に抑制された.TiKと培地との混和により結晶様物質が析出したが, 結晶様物質を除いた培地でも細胞増殖は抑制された.細胞のALP活性は0.1mMより高濃度のTiKで抑制されたが, 細胞から抽出したALP酵素自体の活性は抑制されなかった.細胞に0.1mM TiKを作用させても細胞形態に明らかな変化は認められなかった.以上のことから, 0.1mMよりの高濃度TiKは骨芽細胞の増殖および分化を抑制し, これにはチタンイオンが関与している可能性が示唆された.
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