口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
Print ISSN : 0023-2831
ISSN-L : 0023-2831
23 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • フッ素イオン電極法
    矢崎 武, 奥寺 元, 飯塚 喜一
    1973 年 23 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ素 (F) の定量において, アルミニウム (Al) はこれを妨害する最も大きな因子の一つである。今までのAI存在下でのF定量法は, Alを除去するために操作が複雑になるなど, 実用上多少の難点があった。今回, フッ素イオン電極を用いてAl共存下でFの定量を行なう方法を考え, 実験を行なった結果, 測定法, 測定感度ともに満足できる成績を得ることができた。すなわち, AlF68-を強アルカリ下で破へいし, Al-Oxine錯体をつくらせ, Fを遊離させた後, pHとイオン強度を調整しフッ素イオン電極で測定を行なった。その結果, OxineあるいはAl-Oxineを抽出除去することなく, 4ppmのAl存在下で, F 0.1ppm (5.3×10-6M) 以下まで直線の検量線を得, Al, Oxineの存在しない測定法とかわらない精度が得られた。1 ppmのFは1OOppmのAlの共存下でも, ほぼ100%の回収が得られ, また人工氷晶石へのF添加実験でも良好な結果が得られた。
  • (I) Cd, Pb, Ag, Cuイオン電極について
    飯塚 喜一, 矢崎 武, 大橋 勝美, 横田 嘉郎, 松沢 昭生, 加藤 増夫
    1973 年 23 巻 3 号 p. 182-191
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    オリオン社のCdイオン電極, Pbイオン電極, Agイオン電極, Cuイオン電極について, それぞれの検出限界, pHや他のイオンによる影響などを検討し, 十分満足できる性能を有するものであることを確かめた。
    すなわち, 最低検出限界もCdで0.001, Pbで0.002, Agで0.001, Cuで0.0006 ppmぐらいを示し, かなりの低濃度域にも応用できる。また, pHや他のイオンの影響も比較的受けにくい。
    一方, 尿のような生物試料中のこれらイオンの測定にも応用してみた。妨害イオンに対しては, 適当なmasking agentを用い, Known Addition Methodを応用することにより, 直接尿中のこれらイオンを定量することが可能である。したがって, 唾液, 血清, 水, 下水などの中のこれらイオンの直接定量にも応用しうるばかりでなく, 歯牙なども, 適当な抽出法を応用すれば, 十分定量が可能なものと考えられる。
  • 山本 十糸子, 大塩 英雄
    1973 年 23 巻 3 号 p. 192-207
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    近時, 測定法の進歩につれて, 歯質中の微量元素もかなり多数検出され且つ定量されるようになった。
    著者らは, 今回歯質中の微量元素に関する研究の一環としてカドミウム (Cd) , 亜鉛 (Zn) , 鉛 (Pb) の定量を計画したわけだが, 3元素の検出限界あるいは測定操作上の利点等を考慮して, 定量法としては原子吸光分析を採用することとした。そこで本方法を歯質に応用した場合の基礎的条件を多角的に検討し, 3元素の同時定量法を次のように確立することができた。
    すなわち, 歯牙 (乾燥定量で200~550mg) を硝酸一過酸化水素水を用いて湿式灰化し, アンモニア水でpH 3に調整後, 液量をほぼ25mlとし, APDC 3%溶液5mlを加える。更にMIBK 10mlを加え, 抽出分離後, 3000rpm. で5分間遠心分離し, 原子吸光分析をおこなう。ただし, 亜鉛は抽出液を100倍に希釈して測定に供する。なお, 標準液は, Cd, Zn, Pbの混合溶液を用いることとする。
  • 東京および富山地区における歯種別含有量の比較
    大塩 英雄
    1973 年 23 巻 3 号 p. 208-222
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歯質中の微量金属に関する研究には, 歯牙の特異性, つまり歯牙が生理的交替 (turnover) に乏しいことを利用して生体負荷 (body burden) の指標としようという分野がある。この分野は金属類の公害問題とも関連して注日されるところである。特に乳歯は先人の業績からも推察できるように, 環境条件をかなり良く反映することが考えられ, しかも資料収集も容易であり, かかる研究には適切な資料といえるであろう。
    そこで著者は, 東京・富山両地区より収集された乳歯785本について, カドミウム (Cd) , 亜鉛 (Zn) , 鉛 (Pb) の含有量を測定し, 地域差, 石灰化期の哺育栄養差および歯種差を比較することを計画した。3微量金属の定量には原子吸光分析法を用い, カルシウム (Ca) の定量はEDTA-2 Na法によった。
    結果の要約は次の如くであった。
    2. CaおよびCd, Zn, Pbいずれも地区別, 哺育栄養別に有意差は認められなかった。
    3. Caの歯種別含有量は, 乳切歯の方が乳臼歯に比べ低い値を示す傾向が認められた。それぞれの平均値 (mg/g) は次の如くである。乳切歯307, 乳側切歯312, 乳犬歯318, 第一乳臼歯325, 第二乳臼歯334mg/g.
    4. Cd, Zn, Pbともに乳切歯の含有量が高く, 乳臼歯において低い値を示した。この傾向は特にPbにおいて顕著で有意差が認められるものであつた。それぞれの平均値 (ppm) は次の如くである。
    Cd: 乳切歯1.14, 乳側切歯1.11, 乳犬歯1.07, 第一乳臼歯1.01, 第二乳臼歯1.04ppm.
    Zn: 乳切歯133, 乳側切歯135, 乳犬歯125, 第一乳臼歯118, 第二乳臼歯119ppm.
    Pb: 乳切歯8.16, 乳側切歯8.24, 乳犬歯7.60, 第一乳臼歯6.20, 第二乳臼歯6.50ppm.
  • 嶋村 克美
    1973 年 23 巻 3 号 p. 223-243
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本論文は, 著者の「乳歯齲蝕の疫学的発病形態に関する研究」の続編であって, 用いられた研究対象, 方法は原則的には同一のものである。
    異なる点は, 口腔診査時ごとに, 隣在する2歯間に, 直径0.5mmの針金を用い, それが挿入し得た場合を間隙ありとし, 挿入し得なかった場合を便宜上, 接触と称した。又, ある一歯に, それに対応する隣在歯が萠出した時点から以後の期間を隣在年齢と称し, これによって集計を行なったことである。
    集計にさいしては, Table 1の基準により, 連続して間隙又は接触状態であったもののみを用いた。
    診査歯面数と集計された歯面数はTable 2の通りであり, 得られた成績はTable 3の通りである。
    pが20kg前後の時期を代表する, 歯牙の種類別の接触状態および間隙状態であった場合の隣接面を単位とするCx傾向線を始めとする齲蝕指数曲線を得 (Fig. 2) , これらはいずれも基本的には指数的確率積分曲線に一致することを認めた。間隙状態のMxは接触状態のおよそ2~3割 (Table 5) であった。
    Walsh & Smart, Perfittらによる従来の乳歯隣接面齲蝕の人の年齢によるパターンや筆者の歯牙年齢によるパターンと対比し, 隣接面齲蝕のパターンを明解に説明することができた。
  • 可児 端夫, 藤岡 三之輔, 長嶺 陽子, 冨士 公子, 可児 徳子, 松村 敏治
    1973 年 23 巻 3 号 p. 244-250
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化物は歯牙エナメル質表層に作用して, 歯牙のう蝕抵抗性を高めることは疑う余地のない事実である。
    フッ化物による局所的なう蝕予防法としては, 現在, フッ化物歯面塗布法が最も広く実施されており, う蝕予防効果を上げている。
    しかしながら, フッ化物歯面塗布法は, 歯科医師, 歯科衛生士といった専門家によってのみ, 実施されうるものであるために, 対象者数が限られ, 全国的に広く多数の小児に応用するには, 非常な困難がある。
    その点, フッ素含有洗口液による洗口法は, 極めて簡単に, 速かに, 誰もが苦痛もなく, そしてより多の対象 (小児) に応用が可能であり, 公衆衛生上, う蝕予防を考える上に, 有意義な方法である。
    そこで, 吾々は, 昭和44年4月より3年間, 大阪府下の某小学校児童を対象にフツ素含有洗口液による洗口法を実施し, そのう蝕抑制効果を確認した。即ち, フッ素イオン濃度5OOppm F-, pH 5.0の燐酸酸性フッ化ソーダ洗口液10mlを用いて, 毎学校給食後に30秒間洗口を実施した群では, 対照群に比較して約20~30%の, う蝕抑制効果を認めた。このことは, フッ素含有洗口液による洗口法は公衆衛生的にう蝕予防を行なうのに非常に有効な方法であることを示唆したものである。
  • 大杉 利幸, 井上 昌一, 森岡 俊夫
    1973 年 23 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    唾液固有の抗菌因子の中でその実態が最もよく研究されているもののーつに唾液過酸化酵素がある。本酵素の抗菌活性は過酸化水素の存在下で酵素的に生成されたチオアシン (SCN-) の中間酸化産物によって発現するものとされている。このチオシアン過酸化酵素 (thiocyanate peroxidase, TPO) は, 人および数種の哺乳動物の唾液のみならず, 人, ラット, モルモットおよび牛の唾液腺抽出液にも存在するが, 血清にはその活性が認められていない。
    このようにTPOの作用機序ならびにその分布については既に報告されているが, TPOのoriginと出現の時期については未だ追究がなされていない。そこで本研究は, マウス胎児ならびに新生児の唾液腺ならびに組織培養した同唾液腺を用いてTPOのorignとその出現時期を検索したものである。
    本実験の結果, TPOはマウス顎上腺では胎生17日より, また耳下腺では生後2日で出現し, マウスの発育が進むにつれてTPO活性は増強することが明らかになった。しかしながらこのTPOはマウス胎児ならびに成長マウスの舌下腺には認められない。他方マウス胎児の顎下腺, 舌下腺および耳下腺をRoseチャンバーで培養すると, 培養5日間は腺細胞の増殖と腺組織の分化が認められ, マウスの3唾液腺の培養に成功した。これら培養腺組織の過酸化酵素をStrausのbenzidine法で染色したところ, 顎下腺と耳下腺では培養3日で, 腺房組織の分化に伴って青色顆粒状の酵素反応陽性物質の出現が認められた。しかしながら舌下腺においては, この現象は全く認められなかった。このような所見は, マウス唾液腺のTPOがマウス胎児の出生前後の時期 (周産期) において唾液腺の腺房細胞で産生されることを強く示唆するものである。
feedback
Top