日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
38 巻, 5 号
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原著
  • Takefumi Yoshida, Takaho Tanaka, Yoshito Akagi, Shoichiro Arai, Takato ...
    2013 年 38 巻 5 号 p. 939-943
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    Purpose:Perforation occurs more often with appendiceal diverticulosis than with acute appendicitis;thus, confirming a diagnosis of appendiceal diverticulosis is critical. We compared the clinicopathological features of 12 appendiceal diverticulosis cases (3 confirmed preoperatively) and 321 acute appendicitis cases (excluding catarrhal) and investigated the pathological features specific to appendiceal diverticulosis.
    Methods:Over a 7.5-year period, 12 of 392 patients with appendiceal disease were diagnosed with appendiceal diverticulosis (3 confirmed preoperatively). Findings from physical examination, abdominal ultrasonography and/or computed tomography, surgery, and histopathology were statistically analyzed.
    Results:Onset age was significantly later for appendiceal diverticulosis than for acute appendicitis (p = 0.0176) (average, 54.3 years). Perforation occurred more frequently with appendiceal diverticulosis (p < 0.001). There were no significant gender differences. Moreover, 11 patients had appendiceal diverticulitis. The average preoperative white blood cell count and C-reactive protein levels were 11929/µL and 7.15 mg/dL, respectively. Appendectomy (6 cases), partial cecal resection (4), and ileocecal resection (2) were performed. Pseudodiverticula were confirmed histopathologically in all cases (mesenteric, 10;bilateral, 2). Six patients suffered perforations. The average number of diverticula was 2.5.Conclusions:Excision is recommended when appendiceal diverticulosis is suspected or the presence of acute appendicitis is unclear.
  • 田島 雄介, 隈元 謙介, 伊藤 徹哉, 松澤 岳晃, 石畝 亨, 熊谷 洋一, 馬場 裕之, 石橋 敬一郎, 芳賀 紀裕, 岩間 毅夫, ...
    2013 年 38 巻 5 号 p. 944-949
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    原発巣の切除を施行した大腸癌893例を対象に,診療録からみたリンチ症候群(LS)の診断手順の第1次スクリーニングに用いられるアムステルダム基準Ⅱ(ACⅡ)あるいは改訂ベセスダガイドライン(rBG)の有用性と問題点について検討した.患者または第1度~第2度近親者に多い大腸癌以外の関連腫瘍では,胃癌が23例と最も多かった.1例もACⅡを満たさなかったが,146例(16.3%)がrBGを満たした.第1~第2度近親者の関連腫瘍の診断時年齢が正しく聴取されていれば,ACⅡ,rBG各々最大で3例(0.3%),87例(9.8%)が1次スクリーニングの候補として上乗せされることが判明した.リンチ症候群の1次スクリーニングには,第1度近親者の診断時年齢に留意したrBGを用いるのが望ましいと考えられた.
  • 大本 智勝, 遠藤 俊吾, 日高 英二, 中原 健太, 高柳 大輔, 竹原 雄介, 向井 俊平, 石田 文生, 田中 淳一, 工藤 進英
    2013 年 38 巻 5 号 p. 950-954
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    他臓器浸潤大腸癌における治療方針決定の一助とすることを目的とし,大腸癌手術症例2,090例のうち肉眼的他臓器浸潤陽性168例を検討した.組織学的他臓器浸潤陽性は68例であり,肉眼的他臓器浸潤症例の40.8%(68/168)であった.占居部位別にはS状結腸30.0%,上行結腸26.8%,盲腸10.1%の順で多く.浸潤臓器は腹壁,小腸,膀胱の順で多かった.高分化型腺癌と中分化型腺癌を合わせた分化型腺癌と,低分化型腺癌と粘液癌などのそれ以外組織型の2群間で肉眼的ならびに組織学的他臓器浸潤率を比較したが有意差はなかった.根治手術を施行した組織学的他臓器浸潤例と他臓器浸潤のない壁深達度pSS・SE・Aの症例との間に予後の差はなかったが,Stage別ではpStageⅢで他臓器浸潤例の予後は不良であり,根治度Aが得られた組織学的他臓器浸潤症例の再発様式は半数以上が血行性再発であった.さらには鏡視下に切除した症例は開腹手術を行った症例と比べて予後不良であった.
  • 澤崎 翔, 佐伯 博行, 稲垣 大輔, 林 茂也, 高田 賢, 大沢 宏至, 藤澤 順, 利野 靖, 益田 宗孝, 松川 博史
    2013 年 38 巻 5 号 p. 955-961
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】当科のStage Ⅳ大腸癌症例を臨床病理学的に検討し,予後規定因子を明らかにする.
    【方法】1999年8月から2009年8月に当科で治療した大腸癌症例のうちStage Ⅳと診断された115例を対象としてretrospectiveに臨床病理学的検討を行い予後規定因子を解析した.
    【結果】115例の生存期間中央値は14.2カ月,5年生存率は9.9%であった.各臨床病理学的因子について5年生存率を比較したところ,単変量解析では年齢(75歳以下vs76歳以上),深達度(ss/a vs se/si/ai),原発巣切除の有無,根治度,化学療法の有無,Stage Ⅳ規定因子数(1vs2つ以上)で有意差を認めた.多変量解析では根治度B,化学療法施行が独立した予後規定因子であった.
    【結論】術前化学療法を含め根治度Bを目指した治療と積極的な化学療法がStage Ⅳ大腸癌の治療成績の向上につながると考えられた.
臨床経験
  • 松岡 伸司, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次, 小出 欣和, 松岡 宏, 勝野 秀稔, 塩田 規帆, 遠藤 智美
    2013 年 38 巻 5 号 p. 962-967
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の下部尿路・性機能障害は術後合併症の大きな一つとされている.今回直腸癌に対するロボット手術での男性の術後下部尿路・性機能障害を国際的標準指標によるアンケートで検討したので報告する.対象は2011年9月より2012年4月までに当院で行われたロボット補助下直腸手術のうち,男性例の8例で検討した.アンケートは手術前,術後3カ月,6カ月,12カ月後の4回行い,手術前のアンケートは入院後に記入してもらい,術後3カ月,6カ月,12カ月後は郵送法にて行った.排尿機能は8例中で術前より機能が悪くなった症例は1例あったが,自己導尿を要する症例は認めなかった.男性性機能を検討した5例の平均IIEFは術後6カ月から徐々に改善する傾向にあった.また術後6カ月以降にはED,逆行性射精は見られなかった.今回われわれの報告ではロボット手術は比較的下部尿路・性機能が温存できる可能性があると考えられた.
症例報告
  • 髙橋 宏明, 菊地 健, 植村 一仁, 大坂 喜彦, 渡邊 幹夫, 伊藤 美夫
    2013 年 38 巻 5 号 p. 968-975
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で,胸部下部食道癌の診断で右開胸開腹食道亜全摘術をおこなった.術後第3病日に経腸栄養を開始したところ,胸腔ドレーン排液量が1,080mlと増加し色調が乳白色となった.乳糜胸と診断しオクトレオチドを投与したが,排液量は減少したものの治癒には至らなかった.術後第22病日に胸腔鏡補助下に胸管損傷部直接修復術を施行した.術後ドレーン排液量は著明に減少し,再手術後第13日病日に胸腔ドレーンを抜去しえた.食道癌術後乳糜胸の場合は乳糜排液量が多く治療に難渋する場合が少なくないが,治療は一般的な乳糜胸の治療方針に準じておこなわれているのが現状である.そこで食道癌術後乳糜胸の本邦報告例の治療成績を集計し,食道癌術後乳糜胸の治療方針について検討した.その結果,絶食,中心静脈栄養に引き続きまずはオクトレオチドの投与を試み,効果がなければ早期に手術治療を考慮すべきと考えられた.
  • 大城 良太, 中口 和則, 渡辺 康則
    2013 年 38 巻 5 号 p. 976-983
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性,2002年8月,右乳房腫瘤を自覚し当科を受診した.超音波検査では境界やや不明瞭,内部不均一な17mmの腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診は悪性疑いであったため,摘出生検術を行い乳腺neuroendocrine carcinoma(以下NEC)と診断した.右乳腺部分切除術,腋窩リンパ節郭清を施行した(T1N0M0 StageⅠ,ER陽性,PgR陽性,Her2陰性).術後,残存乳腺に放射線照射(50Gy)し,ホルモン療法(TAM)を行った.3年6カ月後,残存乳房再発を認め,右残存乳房切除術を施行した.病理組織で乳腺NECの乳房内再発と診断した.術後はホルモン療法(LH-RHa+TAM)を投与した.初回切除術10年後,肝腫瘍を指摘され,他院で肝外側区域部分切除を施行し,病理組織で乳腺NECの肝転移と診断された.初回術後10年目に肝転移を認めた乳腺NECの1例を経験したので報告する.
  • 藤川 寛人, 利野 靖, 長谷川 慎一, 佐藤 勉, 山本 直人, 湯川 寛夫, 大島 貴, 吉川 貴己, 井元 清隆, 益田 宗孝
    2013 年 38 巻 5 号 p. 984-989
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.嚥下時のつかえ感を主訴に精査を行い,胸部下部食道に全周性の2型扁平上皮癌を認めた.進行度はcT3 cN2 cM0 cStageⅢであった.胸腹部造影CTを施行した際,未治療の弓部大動脈瘤(径40mm,囊状瘤)を認めた.経鼻経管チューブで栄養管理を開始後,動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行した.術前化学療法としてFP療法(5FU 600mg/m2,CDDP 60mg/m2)を開始したが,Grade3の下痢・腎機能障害を認め1サイクルで終了.胸部下部食道切除・後縦隔胃管再建・腸瘻造設術を施行した.術中所見で大動脈周囲の強固な癒着のためNo.106recL・106tbLの郭清は行わなかった.術中および術後合併症は認めず,術後15日で退院した.病理組織結果はpT3 pN1(1/29)pM0 StageⅢで化学療法の組織学的効果判定はGrade 1aであった.
  • 矢野 佳子, 近藤 三隆, 甲村 稔, 武鹿 良規, 加藤 俊男
    2013 年 38 巻 5 号 p. 990-997
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.腹痛,背部痛を主訴に近医受診し,超音波検査で巨大腹部腫瘤を指摘され,当院に紹介された.腹部CTでは肝,膵,胃を圧排する23cm大の巨大な囊胞性腫瘤で,3D-CT angiographyでは左胃動脈,右胃大網動脈が腫瘍の栄養血管で,胃GISTを疑い開腹した.腫瘍は局所切除困難にて,胃全摘術を選択した.腫瘍径は23×20×12cm,重量は2,800g,内部は壊死物質と血液で満たされていた.免疫染色でc-kitとCD34が陽性で,胃GISTと診断した.術後補助化学療法を施行せず3年2カ月無再発生存中である.遺伝子解析にてエクソン11の遠位領域の挿入型変異で,比較的予後良好な稀な変異の型と考えられた.遺伝子解析は,囊胞化し巨大化した胃GISTの予後を決定する独立した危険因子になりえ,治療方針や予後の予測に重要と考えられた.本邦報告17例を集計し,文献的考察を加えて報告する.
  • 髙橋 宏明, 若山 顕治, 蔵谷 大輔, 菊地 健, 植村 一仁, 伊藤 美夫
    2013 年 38 巻 5 号 p. 998-1004
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は精神遅滞を有する24歳の女性で,腹痛,嘔吐のため当院へ救急搬送された.CT検査により,腸間膜軸性の特発性胃軸捻転症と診断した.胃管による減圧で整復されたが,若年で精神遅滞があるため両親の再発に対する不安が強く腹腔鏡下胃固定術を施行した.手術は3ポートで行い,胃底部と横隔膜,胃体部と腹壁を連続縫合で3列固定し,さらに補強のため胃体部と腹壁全層を2か所結節縫合で固定した.経過は良好で,現在術後1年になるが再発を認めていない.胃軸捻転症の誘因のひとつとして,精神疾患による呑気症や過食,慢性的腸管拡張が考えられている1).初発例であれば内科的に整復できた後は経過観察とされるが,特発性の場合は再発率が高く症例によっては予防的手術も治療の選択肢になると考えられた.また,今回われわれは3列の連続縫合で胃と腹壁を固定したが,胃の広い範囲を面に近い形で腹壁に固定することができ有用な方法と考えられた.
  • 横山 康行, 江原 一尚, 八岡 利昌, 中村 聡, 野田 和雅, 岡 大嗣, 福田 俊, 西村 洋治, 川島 吉之, 田中 洋一
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1005-1010
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    胃・直腸またはS状結腸重複癌に対する一期的完全腹腔鏡下手術の報告は少ない.また,本術式の術後短期quality of life(以下,QOL)に関して一期的開腹手術との比較は十分にされていない.症例は61歳,男性.胃・直腸重複癌に対し,一期的完全腹腔鏡下幽門側胃切除術および低位前方切除術を施行した.本術式の術後短期QOLが一期的開腹手術よりも優れているかどうかを検討するために,自験例と当科で施行された胃・直腸またはS状結腸重複癌に対する一期的開腹手術症例(14例)の手術時間,出血量,術後経過を比較した.その結果,自験例は開腹手術症例の中央値よりも出血量が少なく,排ガス確認日や経口摂取開始が早く,術後入院期間は短縮した.本術式は,時間短縮の点で改善の余地はあるが,開腹手術に比べ整容性に優れ,低侵襲であるため,術後短期QOLは大幅に改善すると考える.
  • 木村 準, 吉田 謙一, 佐藤 靖郎
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1011-1016
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.健康診断の上部消化管造影検査にて胃病変を指摘され,上部消化管内視鏡検査にて胃体下部~噴門部の小彎前壁に存在する3型胃癌と診断され当院当科に紹介受診となった.腹部造影CT検査で胃小彎に12mm大に腫大したNo.3リンパ節を認め,肝S2,S3,S8にそれぞれ径9mm,9mm,22mm大のリング状に造影される低吸収域病変を認め胃癌の多発性肝転移と診断した.S-1+CDDP,3週投与2週休薬を4コース施行し,その後の腹部造影CT検査では肝S8の腫瘤が8mm大に縮小しており,他の肝転移巣,No.3リンパ節も消失していた.治癒切除可能と判断し胃全摘術,肝S8部分切除術,胆囊摘出術,D2リンパ節郭清,R-Y再建を施行し,術後1年6カ月無再発生存中である.多発性の胃癌肝転移でも化学療法を併用し,切除の可能性を常に念頭に置いて診療を行う必要があると考えられる.
  • 松本 泰典, 夏目 俊之, 赤井 崇, 川平 洋, 林 秀樹, 松原 久裕
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1017-1021
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,黒色便を自覚し近医を受診した.貧血があり上部消化管内視鏡検査を施行し,十二指腸球部に隆起性病変を認め当院へ紹介された.画像検査により良悪性の判別はできなかったが,貧血の進行があり治療適応と考えた.内視鏡治療は困難と考え,開腹手術による切除の方針とし,術中内視鏡によるマーキングを併用し十二指腸壁切開で腫瘤摘出術を施行した.摘出標本は65mm大で病理組織学的にはBrunner腺過形成であった.これまで “Brunner腺腫” として報告された症例は,病理組織学的に過形成や過誤腫が大半であるとされるが,腫瘍性増殖をきたす腺腫や癌の報告が散見される.また良性病変であっても貧血などの症状を呈し治療適応となることが多く,その治療方針についてはいまだ一定の見解がない.今回われわれは高度貧血をきたした十二指腸巨大Brunner腺過形成に対し外科的切除を施行した症例を経験したので,文献考察を加えて報告する.
  • 蒔田 勝見, 緑川 武正, 八木 秀文, 相田 邦俊, 坂本 道男
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1022-1028
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    転帰の異なる2例の非閉塞性腸管虚血症を経験したので報告する.症例1は78歳の女性で左下腹部痛を主訴に来院.54時間後,腹膜刺激症状が出現し開腹手術,全小腸の虚血と広範な結腸の壊死のためその切除と人工肛門を造設した.3日後,腸管壊死が強く疑われ再開腹を行った.残存結腸,全小腸および胆囊の壊死所見がみられその切除を行った.集中治療を行ったが状態悪化し術後6日に失った.症例2は81歳の女性で嘔吐,腹痛を主訴に来院.25時間後,腹膜刺激症状のため緊急開腹手術,上行結腸~S状結腸および小腸の一部に壊死を認め,その切除と小腸瘻を造設した.長期管理を要したが術後約1年で退院した.自験2例および過去の報告例より,発症から手術までの時間と腹部所見は重要で,腸管壊死が疑われる症例には開腹による早期の確定診断と切除が必要で,術後は腸管の再壊死を高率に併発するため再開腹を念頭においた管理が重要と考えられた.
  • 池田 篤, 小倉 直人, 横田 和子, 内藤 正規, 佐藤 武郎, 渡邊 昌彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1029-1035
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.腹痛と腹部膨満を主訴に来院した.5回の開腹歴があり,10年前より年1回程度の主訴を繰り返すようになった.腸閉塞の診断で保存的治療が行われていたが,次第に症状の出現頻度が増加したために手術治療の希望で当院を受診した.術前検査にて小腸が正中創へ癒着していると考えられ,腸管癒着症の診断で細径鉗子を用いた腹腔鏡下腸管癒着剝離術を行った.手術所見では,正中創直下に小腸が屈曲して癒着した部位が腸管癒着症の原因であり,腹腔鏡下で剝離術のみを行った.第5病日に退院し,1年2カ月を経過して腸閉塞症状の再発や腹痛の出現もない.今回われわれは細径鉗子を腸管癒着症に対して使用した1例を経験した.細径鉗子は整容性や患者の満足度に寄与するが,利点と欠点を十分に理解したうえで使用する必要があると思われる.
  • 鈴木 俊亮, 藤岡 秀一, 兼平 卓, 諏訪 勝仁, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1036-1041
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.既往歴・家族歴に特記事項はなかった.突然の嘔気・嘔吐,腹部膨満感を主訴に当院を受診し,精査にて腹腔内に巨大な腫瘤が認められた.上部・下部内視鏡検査では明らかな異常所見は認めず,腹部エコー,CT,MRIおよび血管造影検査にて下腹部に比較的血流に乏しい16cmの腹部腫瘤を認め,小腸もしくは腸間膜由来の腫瘍との術前診断にて手術を施行した.術中所見として,腫瘍は16.5×9×9cmの大きさで可動性があり,回腸末端の腸管膜より発生し,終末回腸を巻き込みさらに上行結腸と癒着し一塊となっていたため回盲部切除術を施行した.病理組織学的,免疫組織学的に腸間膜線維腫症と診断された.本症例の如く,家族性大腸腺腫症や開腹手術の既往なしに発生する腸管膜線維腫症は比較的稀であるため,文献的考察を加え報告する.
  • 黒田 誠司, 塩谷 猛, 和田 由大, 内間 久隆, 島田 裕司, 大石 卓爾
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1042-1046
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.嘔気,嘔吐を主訴に外来を受診した.腹部症状が軽く,CT検査以外の各種検査で,明らかな異常を認めていなかった.腹部CT検査では右側結腸内に陥入した小腸像と,さらに右下腹部にloop状の小腸の腸管壁肥厚を認め,上行から横行結腸にかけての腸重積および絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.手術所見で,重積により拡張した大腸と回盲部近傍での小腸軸捻転を認めた.重積の先進部を上行結腸まで整復した後,捻転した小腸を含めた右結腸切除術を施行した.標本には器質的病変は存在せず,回腸が約30cmに渡り出血性壊死を呈していた.本症例は移動性盲腸に起因する特発性腸重積と二次性小腸軸捻転と考えられた.成人腸重積のほとんどが器質的疾患を伴い,特発性は稀な1例であり,さらに小腸軸捻転を合併した報告は極めて少ない.
  • 正司 裕隆, 今 裕史
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1047-1051
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.慢性糸球体腎炎による末期腎不全のため血液透析を8年間施行し,高K血症のためポリスチレンスルホン酸Ca(calcium polystyrene sulfonate:CPS)を6年間内服していた.突然の腹痛を認めたため当院を受診し鎮痛剤処方の上帰宅となったが,症状が改善せず翌日外来を受診した.胸部単純レントゲンとCTで遊離ガスを認め,消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した.大腸に多量の硬便を認める他S状結腸に穿孔を認めたためS状結腸を切除しHartmann手術を施行した.術後6日目に下行結腸に再穿孔をきたし,再度緊急手術を施行したが再手術後40日目に死亡した.病理組織学的所見では穿孔した結腸に好塩基性の結晶様異物を多数認めCPSの関与が示唆された.CPSの副作用に便秘があり,腸管穿孔の報告も散見されていることからCPS内服患者の急性腹症は消化管穿孔の可能性を考慮する必要がある.
  • 森園 剛樹, 林 洋
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1052-1057
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    下部消化管内視鏡検査下生検にて術前に確定診断が得られ根治手術を施行しえた早期回腸癌の1例を経験したので報告する.症例は89歳,男性.繰り返す下痢,腹痛を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査,下部消化管内視鏡検査では異常所見は認められず,腹部CTで回盲部近傍の腸重積と判明したがその後症状は自然消失し,経過観察となっていた.数カ月後再び症状が出現し再度下部消化管内視鏡検査を施行したところ,上行結腸内に1型腫瘍を認め,生検結果は腺癌であった.大腸癌の診断で当院に紹介となったが,注腸造影検査の際に重積が整復され回腸癌と判明.回腸部分切除術と所属リンパ節郭清を施行した.腫瘍はBauhin弁から口側20cmの回腸に存在しており,大きさ7.2×5.7cm,うち5%に高分化管状腺癌を含む腺腫内癌であった.癌細胞は粘膜固有層に留まり,TNM分類ではT1,N0,M0,StageⅠであった.
  • 佐久間 晶子, 吉松 和彦, 横溝 肇, 大谷 泰介, 大澤 岳史, 松本 敦夫, 中山 真緒, 矢野 有紀, 岡山 幸代, 成高 義彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1058-1062
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性.下腹部痛を主訴に受診.CT検査でS状結腸に炎症性壁肥厚を認め,S状結腸憩室炎と診断し保存的治療で一旦軽快.1カ月後に再燃し,炎症反応の軽度高値が持続した.血清CEA値は初診時に8.7ng/mlと高値で,2カ月後13.4ng/ml,4カ月後16.3ng/mlと上昇した.注腸検査,大腸内視鏡検査とも充分な検査ができず,高CEA血症のためCTとPET-CTを行ったが,S状結腸の肥厚と同部へのFDG集積以外に所見はなかった.憩室炎が難治性で大腸癌の可能性も否定できないため手術の方針とした.手術所見ではS状結腸から直腸S状部に炎症を認め,高位前方切除術を行った.病理組織学的にはS状結腸の多発憩室と炎症性壁肥厚を認めたが,悪性所見はなかった.CEA染色では上皮表層と周囲の好中球にCEAの染色性を認めた.血清CEA値は術後正常化し,高CEA血症の原因はS状結腸憩室炎と考えられた.
  • 満山 喜宣, 春木 孝一郎, 柴 浩明, 小川 匡市, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1063-1067
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.前医で高度局所進行S状結腸癌に対し双孔式S状結腸瘻造設術施行.化学療法目的で当院紹介となる.来院時CTで骨盤内に最大径15cmのS状結腸癌,周囲リンパ節腫大,膀胱浸潤,右水腎症,左肺S4の転移性肺腫瘍を認めた.診断はS状結腸癌,cSI(膀胱)cN2cH0cM1(肺),cStage Ⅳであった.FOLFOX4/bevacizumab(5mg/kg)レジメン6コース施行後,CT上腫瘤は著明に縮小し膀胱浸潤,水腎症も消失した.転移性肺腫瘍に変化を認めなかった.切除可能と判断し,S状結腸切除D3郭清を施行.二期的に肺部分切除を施行した.術後病理組織診断で癌細胞は認められず,治療効果判定はGrade 3であった.術後補助療法としてS-1施行しているが,術後12カ月経過した現在,再発兆候なく経過観察中である.今回FOLFOX/bevacizumab療法で組織学的完全奏効が得られた1例を経験したので報告する.
  • 五井 孝憲, 中澤 俊之, 村井 アトム, 奥田 智之, 山口 明夫
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1068-1071
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    Ogilvie症候群は大腸の機能的な通過障害により大腸閉塞をきたす疾患であり,その病変範囲は結腸に発生することが多く,直腸まで及ぶことは少ない.今回病変が直腸にまで及ぶOgilvie症候群の1例を経験したので報告する.症例は63歳,女性.平成19年頃より腹痛,腹部膨満感が出現しており,大腸内視鏡による腸管内減圧ならびに内服加療にて加療を行っていた.しかし平成22年初旬頃から腹部膨満感,腹痛が毎月出現するようになり,急性偽性結腸閉塞症(Ogilvie症候群)の緩快,再燃を繰り返す難治性症例と判断し,外科的治療(上行結腸に人工肛門を造設)にて軽快が得られた症例を経験したので報告する.
  • 田邉 和孝, 徳家 敦夫, 影山 詔一, 中村 公治郎, 杉本 真一, 高村 通生, 尾﨑 信弘
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1072-1076
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後4年目に異時性孤立性脾転移を認めた1例を経験した.症例は75歳の男性で,下行結腸癌とそれに伴う閉塞性イレウスに対して,下行結腸切除術(D2)を施行した.Stage Ⅲaであったため,LV/5-FUによる術後補助化学療法を6クール施行し,以後外来にて経過観察していた.術後4年目の血液検査にてCEAの上昇を認め,腹部造影CTにて脾臓に低濃度の占居性病変を認めた.他に転移・再発を疑う所見はなく,上部および下部内視鏡検査を施行したが,原発巣となるような異常を認めなかったため,大腸癌の異時性孤立性脾転移と診断し開腹下で脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検査所見は腺癌で,下行結腸癌の転移に矛盾しない所見であった.現在脾摘術後4年8カ月経過したが,再発を疑う所見は認めていない.大腸癌の他臓器への転移を伴わない孤立性脾臓転移は比較的稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 徳永 行彦, 松枝 重樹
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1077-1080
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    複雑痔瘻は治癒が難しいとされる.複雑痔瘻に対してseton変法を施行してきた.クローン病では時に複雑痔瘻が合併する.症例は20歳,女性.主訴は肛門痛と排膿.理学所見で深い裂肛と複数の二次口を認め,CTで複雑痔瘻を認めた.Seton変法で治癒した.2年後にクローン病を呈したが,メサラジンで寛解した.術後4年経過し再発を認めていない.痔瘻の手術適応は,内科的治療にもかかわらず,膿瘍を繰り返す例などに限られる.Seton法の成績は良好だが,ドレナージとして長期間留置される.最近の薬物でクローン病の治療成績が改善された.痔瘻も外科療法と薬物の組み合わせが期待される.Seton変法は二次瘻管を切除し,括約筋を温存して原発口と原発巣にseton法を行う方法で,複雑痔瘻でも肛門機能と形態を保持して根治できる.本例は複雑痔瘻治癒後,クローン病を呈したが寛解し,痔瘻の再発を認めていない.
  • 宮澤 美季, 吉松 和彦, 中山 真緒, 矢野 有紀, 大澤 岳史, 松本 敦夫, 大谷 泰介, 藤本 崇司, 横溝 肇, 成高 義彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1081-1085
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.平成16年2月,慢性関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)に対してステロイド,Methotrexate(MTX),Non-Steroid Anti-inflammatory Drugs(NSAIDs)投与中,腹痛を主訴に当科受診した.S状結腸穿孔,横行結腸および下行結腸の多発潰瘍の診断で,左半結腸切除術,横行結腸人工肛門造設術を施行した.術後,残存結腸に多発潰瘍瘢痕を認め,人工肛門閉鎖術,残存結腸切除術を施行した.その後,RAの治療を再開したが術後7年経過後,腹痛を認め,当科受診した.下部消化管穿孔の診断で緊急手術となった.回腸結腸吻合部の肛門側に穿孔を認め,直腸局所切除術を施行した.病理組織学的に特異的所見はなく,薬剤性の穿孔が疑われた.RAの経過中に2度の大腸穿孔をきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 濱田 侑紀, 稲田 涼, 母里 淑子, 近藤 喜太, 永坂 岳司, 藤原 俊義
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1086-1090
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は60代男性.2005年肛門管癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行.病理組織は粘液癌,pA,pN0,pH0,pP0,pM0,pStageⅡ,curAであった.術後観察していたが,2010年会陰部痛出現し,CTで骨盤内に長径90mmの多房性の充実性腫瘍を指摘され,局所再発と診断.再発病変に対して骨盤内臓全摘術を施行.術後大きな合併症なく第25病日に退院となった.病理診断にて粘液癌で初回手術後の再発を示唆,切除断端は陰性であった.再発手術後2年4カ月現在も無再発生存中である.大腸癌の組織型は多くが,高分化ないし中分化の腺癌であり,粘液癌の頻度は低い.粘液癌は分化度の高い癌に比べ,進行が早く,化学療法に抵抗性で,予後不良とされている.今回われわれは初回手術から5年を経て局所再発した粘液癌に対して骨盤内臓全摘術による治癒切除を行い,長期の無再発生存を得た症例を経験したので報告する.
  • 新庄 幸子, 上西 崇弘, 金田 和久, 栄 政之, 竹村 茂一, 久保 正二
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1091-1096
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    患者は66歳,女性.58歳時,直腸原発の消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,以下GIST)に対して腹会陰式直腸切断術が施行された.腫瘍径と核分裂数より高リスクGISTと診断された.術後7年目に施行された腹部超音波検査において,肝S5に径1.5cm大の腫瘤性病変が認められた.腹部ダイナミック造影CT検査上,同腫瘤は動脈相において淡い造影効果を示し,静脈相では低吸収域を呈した.超音波ガイド下経皮的肝生検を施行したところ,境界明瞭な紡錘形細胞の錯綜配列が認められ,直腸GISTからの肝転移が疑われたため腹腔鏡補助下肝部分切除術を施行した.病理組織学的検査において紡錘形細胞の密な索状配列とその交錯像が認められ,免疫組織染色検査でCD34は陽性であり,GIST肝転移と最終診断した.術後経過は良好で肝転移切除術後1年6カ月が経過した現在,再発兆候はみられていない.
  • 矢島 浩, 斉藤 良太, 柳澤 暁, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1097-1100
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.右季肋部痛を主訴に近医を受診した.腹部超音波検査で胆囊結石と診断され,当科で腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術中,胆囊体部漿膜面に肝臓との連続性のない,肝臓と同色の結節を認めた.病理組織学的検査で6×3mm大の結節は,グリソン鞘,中心静脈を有し,小葉構造を呈する正常肝組織で異所性肝と診断された.今回われわれは,腹腔鏡下胆囊摘出時に発見された異所性肝の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 野口 智史, 渡部 秀樹, 池田 哲也, 尾嶋 英紀, 小西 尚巳, 登内 仁
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1101-1104
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    患者は82歳,男性.平成22年5月頃近医にて便潜血陽性を指摘され,また半年で7kgの体重減少あり6月精査目的に当院紹介受診となった.下部消化管内視鏡検査で横行結腸肝彎曲部に20mm大の隆起性病変,その2cm肛門側に30mm大の1/4周性の2型病変を認めた.生検で類円形から紡錘形異型核腫瘍細胞の粘膜下増殖,浸潤が認められ,ケラチン陰性,白血球共通抗原陰性であり間葉系肉腫が疑われた.腹部超音波検査,腹部CTにて胆囊の内腔に充実性腫瘤が認められ,胆囊間葉系肉腫の横行結腸浸潤と診断し7月に手術施行した.術中所見では胆囊底部より壁外性に横行結腸へ浸潤する腫瘍を認め,拡大胆囊摘出術,および結腸右半切除術を施行した.摘出標本では病理学的には胆囊癌肉腫に胆囊癌を合併していた.術後合併症なく第15病日に退院した.今回胆囊癌肉腫と胆囊癌が並存した1例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 正司 政寿, 根塚 秀昭, 江嵐 充治, 藤井 久丈, 武川 昭男
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1105-1110
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性.心窩部痛,食欲不振を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で胃角小彎に潰瘍性病変を指摘され,生検で低分化腺癌と診断された.CTでは肝外側区域に胃腫瘍と広く連続する9cm大の乏血性腫瘤を指摘され,胃小彎と脾動脈幹近位のリンパ節腫大を認めた.CT angiographyでは,腫瘍は左胃動脈と左肝動脈の両方から血流支配を受けていた.以上から胃癌肝転移または肝腫瘍胃浸潤と考えたが鑑別は困難であった.いずれにせよ手術で根治性が得られると考え,D2郭清を伴う胃全摘,肝外側区域切除術を行い,en blocに摘出した.病理組織学的所見は腫瘤形成型肝内胆管癌胃膵浸潤,リンパ節転移であった.術後補助化学療法は行わず経過観察したが,術後8カ月後に肝内再発を認め予後は不良と考えている.症例数の少ない報告であるが他臓器浸潤を伴う肝内胆管癌は予後不良とされており,術前診断が可能であれば手術適応には慎重になるべきと考えられた.
  • 長谷川 傑, 佐藤 勤, 高清水 清治, 藤田 正太, 新保 知規, 若林 俊樹, 太田 栄, 提嶋 眞人
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1111-1115
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    腎癌の膵転移に対して切除により長期生存を得たという報告はしばしば見られるが,その後の残膵再発に対して手術を施行したという報告は少ない.われわれは18年の経過中に2度の孤立性膵転移を認め,2度とも膵切除を行った症例を経験した.症例は70歳代の女性.1993年に左腎癌に対して左腎摘出術を受けた.術後13年が経過した2006年に膵頭部に再発し,膵頭十二指腸切除術を施行した.その4年後に残膵の尾部に2個の転移巣を認め,膵体尾部切除術を施行した.病理はいずれもclear cell carcinomaで,原発巣の病理像と一致した.術後は26カ月無再発生存中である.転移性膵腫瘍の多くは癌の終末期に認められることが多いが,腎癌の膵転移に関しては積極的に膵切除を施行することで予後の改善が見られると考えられた.また,晩期再発することが多いのも特徴であることから,10年以上が経過してもフォローアップする必要があることが示唆された.
  • 佐藤 耕一郎, 貝羽 義浩, 阿部 隆之, 福島 大造
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1116-1120
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    センターバンドタイプバリテックスコンポジットメッシュを用い,腹腔鏡下傍ストマヘルニア根治術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例1:39歳の男性でクローン病にて回腸に双口性ストマ術後,ストマ周囲の膨瘤と,皮膚びらん出現にて当科紹介.CTで傍ストマヘルニアが認められ,腹腔鏡下に7×5cmのOrificeを径15cmの同メッシュを用いて,センターバンド部分のみコラーゲンで覆われている側に腸管をマッチさせるようにメッシュをダブルクラウン法にて固定し,1年を経過した現在再発を認めない.症例2:63歳の男性で膀胱癌にて膀胱全摘,回腸導管の手術を受け,回腸導管部に傍ストマヘルニアを発症,増大したとして当科紹介.腹腔鏡下に6×5.5cmのOrificeを径15cmの同メッシュにてヘルニア門より3cmのマージンを取ってメッシュをダブルクラウン法にて固定し,6カ月を経過した現在再発を認めない.
  • 飯室 勇二, 王 孔志, 近藤 祐一, 鈴村 和大, 藤元 治朗
    2013 年 38 巻 5 号 p. 1121-1126
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/31
    ジャーナル フリー
    複数回の妊娠,出産を契機に発症したと考えられる上腹壁ヘルニアの1例を経験した.症例は40歳,女性.約5年前より上腹部正中皮下に小隆起を自覚し,1カ月前より同部に疼痛が出現した.Multi detector-row computed tomography(MD-CT)による精査では,上腹部正中に約6mmの白線腱膜欠損と同部から皮下に連続する10mm大の薄いヘルニア囊を認め,ヘルニア内容は脂肪組織が疑われた.3次元画像による解析により,ヘルニア門である腱膜欠損部が明瞭に描出され,診断に有用であった.上腹壁ヘルニアの診断のもと,全身麻酔下に手術を行った.ヘルニア囊は菲薄化した腹膜でヘルニア内容は大網であり,ヘルニア門として径6mm大の腱膜欠損が確認された.大網を腹腔内に還納し,健常部腱膜を含めた単純結節縫合を行った.術後経過は良好で,術後第2病日に退院し,2年6カ月の時点で再発を認めていない.
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