音声言語医学
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60 巻 , 3 号
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総説
  • 中森 正博, 細見 直永
    2019 年 60 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
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    発声・発語には頭頚部諸筋の運動が関与している.運動系は上位運動ニューロン,下位運動ニューロンを経て筋へ興奮伝達する経路を主体とし,その途中で大脳基底核・小脳を中心とした制御系によって協調運動が遂行される.dysarthriaはそれらの障害によって生じる.dysarthriaは高位診断と対応してpyramidal,extrapyramidal,ataxic,flaccidに分類される.pyramidal dysarthriaは上位運動ニューロン障害によって生じ痙性麻痺を呈する.extrapyramidal dysarthriaは大脳基底核障害で,hypokineticとhyperkineticに分けられる.ataxic dysarthriaは小脳系の障害によって生じる.flaccid dysarthriaは下位運動ニューロン以遠の障害によって生じる.

  • 金子 真美, 杉山 庸一郎, 平野 滋
    2019 年 60 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル 認証あり

    声帯結節・声帯ポリープの難治症例に対する音声治療戦略について検討した.声帯結節の難治例に対しては,音声治療の阻害因子への対応と結節の線維化の有無について音声外科医と協議することが重要である.また音声治療手技についても検討し,より効率的・効果的な音声治療を今後検証していく必要がある.声帯ポリープに対しては基本的に手術を行うのがよいと考えるが,難治予測例の術前コントロールとして音声治療が奏効する可能性がある.また術後の音声治療が,創傷治癒を促進し瘢痕抑制につながることが示唆されているため,術後の声のケアとして音声治療をいかせる可能性がある.つまり,両疾患の難治例に対しては,音声外科医と言語聴覚士が連携し,症例ごとの対応が必要と考えられる.

  • 田中 康博, 南都 智紀, 中谷 謙, 福永 真哉
    2019 年 60 巻 3 号 p. 190-195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル 認証あり

    dysarthria患者に対するリハビリテーションについて文献検索を行い,国際生活機能分類(ICF)の枠組みで音声言語治療の整理を試みた.心身機能面には,発話に必要な発声発語器官の運動範囲や筋力・速度の向上を図るアプローチが分類され,活動面には,現状の機能を活用して発話明瞭度改善に直接つなげるアプローチと拡大・代替コミュニケーションの活用,そして,参加・心理的側面に,患者の社会参加を促し治療意欲を高めることなどにかかわるアプローチが分類される.本稿では言語聴覚士によって行われる行動科学的アプローチを中心に紹介する.また,系統的レビューによる報告を基に,dysarthria患者のQOL向上に対して今後われわれが行うべき課題についても提示する.

原著
  • 冨澤 文子, 河野 淳, 野波 尚子, 小松 禎, 前田 沙知, 白井 杏湖, 太田 陽子, 西山 信宏, 塚原 清彰
    2019 年 60 巻 3 号 p. 196-204
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル 認証あり

    小児の人工内耳は,新生児聴覚スクリーニングの普及やその聴取,言語力などの有効性から増加の一途である.またそれに伴い,さまざまな難しい症例に施行され,特に内耳形態異常症例に人工内耳が応用されている.今回は,当科で経験した内耳道狭窄を伴う人工内耳装用5症例について検討した.その結果,マップでは全症例でパラメータを変更し電荷量を増やす必要があった.全症例で音知覚が得られたが,反応が出るまでに長期間を要する者が多く,最長で4年半掛かった.全症例で語音聴取は不良であり,トータルコミュニケーションを使用していた.術前に聴覚反応が少しでもあれば人工内耳の適応と考えられた.内耳道狭窄を伴う症例の人工内耳植込み術にあたっては,反応が見られるまでに時間が掛かること,術後反応不良の可能性があること,人工内耳を介した会話には限界があることなどの術前の十分なインフォームドコンセントと術後早期の適切なマップ作成が必要であると思われた.

  • 奥村 優子, 小林 哲生
    2019 年 60 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,日本語レイト・トーカー(LT)と呼ばれることばの遅れを示す子どもの語彙発達の特徴を調べるために,24ヵ月のLTの表出語彙を,LTと表出語彙数が同程度の定型発達児である語彙数統制群(vocabulary-matched:以下,VM群)と,LTと月齢が同程度の定型発達児である年齢統制群(age-matched:以下,AM群)の2つの統制群と比較した.日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙を用いて測定した表出語彙を,語彙カテゴリ(動物,乗り物など)および意味カテゴリ(普通名詞,述部,社会語,幼児語)に分類し,その表出割合を調べた.その結果,語彙カテゴリ構成は,LT群とVM群で非常に類似していることがわかった.意味カテゴリの分析の結果,LT群とVM群で社会語と幼児語の表出割合が高く,AM群で普通名詞と述部の表出割合が高いことが明らかになった.これらの結果から,日本語LTは語彙の遅れは見られるものの,その獲得パタンは,年齢は低いが同程度の語彙数をもつ定型発達児と似ている傾向が示唆された.

  • 井手 美稀, 川越 仁, 湯本 英二, 兒玉 成博
    2019 年 60 巻 3 号 p. 214-219
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
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    MDVPは高価にもかかわらず音響分析に広く使用されている.一方,Praatはフリーソフトウェアである.無関位持続発声母音/アー/を用いて,正常声60音声(男性30名,女性30名)と嗄声73音声(男性21名41音声,女性17名32音声)を分析した.正常音声と病的音声を録音しデジタル化された音声ファイルであり,定常的な中央1秒区間を分析に使用した.同じ音声ファイルを用いて2つの異なるソフトウェア(MDVPとPraat)で音響パラメータ(F0,jitter,shimmer,HNR)を測定し両ソフトウェアで得られた結果を比較した.著者らはMDVPとPraatの両ソフトウェアを使用し各パラメータの測定値を比較し正常値を設定した.両ソフトウェアの測定結果は高い相関が見られた.F0は両ソフトウェアの測定結果がよく一致したがjitterはMDVPよりPraatの測定値が有意に小さく,HNRはPraatの測定値がMDVPの約2倍と有意に大きかった.shimmerは有意差がなかった.そのため,施設およびおのおののソフトウェアごとに正常値を設定する必要があり,学会発表や論文記載時には録音時の機器を含めた状況および測定に用いたソフトウェア(バージョン)を明記しておくことが望ましいと考えられた.

  • 平田 暢子, 渡嘉敷 亮二, 小内 仁子, 荻野 亜希子, 新明 一星, 原田 紗衣, 井上 瞬
    2019 年 60 巻 3 号 p. 220-229
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル 認証あり

    機能性発声障害の定義は臨床家間でも一致しておらず,発声習慣,発声の仕方の問題に情緒的要因が重なっているともいわれている.そこで,当院受診の機能性発声障害患者65例の発症の背景について調査した.対象者はすべて過緊張性発声障害を呈していた.調査項目は,発症時期,発症の主観的誘因,発症前後半年以内のライフイベント,STAIとし,声帯に器質的異常を認めた32例(コントロール群)と比較した.その結果,20代での発症が約半数を占め,STAIで段階Ⅳ以上が半数以上と高い不安傾向を認めた点は両群間で共通していた.発症の主観的誘因では,対象群で精神的ストレスが高かった.また,対象群では主観的誘因は「特にない」と答えた者が32%存在し,その中の64%がストレスを誘発するライフイベントを経験していた.機能性発声障害のうち過緊張性発声障害患者の背景には無自覚なものも含め精神的ストレスの関与があることが示唆された.

  • 樋口 大樹, 奥村 優子, 小林 哲生
    2019 年 60 巻 3 号 p. 230-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/24
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    本研究では,カタカナ読み書き習得に及ぼす文字特性の影響を明らかにすることを目的として,国立国語研究所が公開している5歳児のカタカナ読み書き正答率順位と各文字特性(絵本における文字頻度,五十音表順位,視覚的複雑度,ひらがな読み書き正答率順位)との関連を検討した.その結果,カタカナ読み正答率順位は文字頻度,ひらがな読み書き正答率順位と弱いが有意な相関を示し,絵本によく出てくる文字のほうが習得されやすい傾向があることが示された.また,カタカナ書き正答率順位は文字頻度,五十音表順位,ひらがな読み書き正答率順位と弱い相関を示した.さらに,これらの文字特性がカタカナ読み書き正答率順位を有意に予測するのか順序ロジスティック回帰分析を用いて検討したところ,文字頻度がカタカナ読み正答率順位を有意に予測していた.一方,カタカナ書き正答率順位を有意に予測する文字特性は検出されなかった.また,モデルの的中率は読み書きともに50%程度とやや不良だった.同一手法を用いてひらがな読み書きと文字特性との関連を検討した先行研究と比較すると,相関値,モデルの的中率ともに低い傾向であり,カタカナ読み習得には絵本における文字への接触が関与するが,その関与度合いはひらがなと比較すると小さいことが示唆された.

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