人工臓器
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15 巻, 2 号
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  • 福増 廣幸, 伴 敏彦, 湯浅 貞雄
    1986 年 15 巻 2 号 p. 463-468
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全置換型人工心臓を植え込み最低1カ月以上良好な健康状態にて生存し得た動物を選んで、生体内の末梢血管の生理学的薬理学的性状の研究を行った。完全置換型人工心臓によって自然の心臓を置換された動物では、心拍数や心拍出量を自由にコントロールすることが可能であり、また心臓血管系に作用する薬物の影響も藁けることがない。健康な時期を選んで常用量の約2~3倍量の心血管系薬(ジギタリス・Ca++、プロタノール他)投与した結果は教科書的効果を確認した。運動負荷(トレッドミル)における末梢血管抵抗は明らかに低下した。心拍出量の急激な変更によっても末梢血管抵抗は約7分を要して徐々に変化安定する。静止状態でのファイティング負荷では全か無かの法則の如き急激な末梢血管抵抗の変化を認めた。死に直面する時の末梢血管の拡張は最も特長的に血液pHの変化に反応する現象が明らかとなった。血清透過性も亢進する。
  • 古川 斉, 中川 康次, 芝入 正雄, 増田 政久, 山本 和夫, 北川 学代, 椎原 秀茂, 鶴田 好孝, 柏木 福和, 奥井 勝二
    1986 年 15 巻 2 号 p. 469-472
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    LVADの装置機器は高価であり, また入手の困難さから一般の施設に普及するに至っていない。そこで我々は, 拍動流体外循環用バルーンを利用したLVAD (PBP-LVAD)を考案し, その機械的特性についてMock回路を用いて調べた。逆流防止弁を内臓するハウジングは硬質アクリル製で, PBPを1基使用する直型(Single type)と2基併列使用するとY型(Double type)を作製した。最大ポンプ流量は収縮時間比36%で得られ, Single typeで4.3l/m Double typeで6.7l/m拍出し得た。駆動陽圧300mmHg, 陰圧30mmHgと設定すると, 後負荷40~140mmHgの範囲では, Single typeで3.5~3.7l/m, Double typeで3.9~4.9l/mとほぼ満足すべき流量が得られた。総充損量は各々, 約100ml及び180mlと比較的少く, 今後の改良により十分臨床使用が可能と思われた。
  • 福増 廣幸, 山里 有男, 藤原 康典, 曽根田 純一, 岡本 好史, 伴 敏彦, 広瀬 光, 湯浅 貞雄
    1986 年 15 巻 2 号 p. 473-477
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年本邦でも拍動型人工心臓による左心補助や両心補助の臨床応用がなされるようになった。しかし、末だその成績は良くない。その主な原因はピアス等の補助心臓の適応基準よりはるかに重症の症例に適応されているためと言える。本研究は細く長い送脱血管を有し経心房性に脱血する補助拍動型人工心臓の機能の限界を明らかにすることであった。机上テストでは、補助心臓によって臨床例使用標準送血量4.54l/min (60kg成人の場合のC. I. 2.5l/m2/minに相当)を送血しようとすると最低260mmHg陽圧50mmHg陰圧を必要とすることが判明した。できるだけ短い送脱血管の使用を勧める結果であった。さらに重症心不全動物における補助では、心房脱血の場合には心室内に流入する血液を完全になくすることは不可能で、その結果として容量負荷は軽減できても圧負荷を軽減することは不可能である結果を得た。重症心不全患者の場合は心室脱血の工夫が必要と示唆された。
  • 片平 美明, 仁田 新一, 山家 智之, 田中 元直, 香川 謙, 本郷 忠敬, 堀内 藤吾
    1986 年 15 巻 2 号 p. 478-481
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は人工心臓の流体力学的性質, 特に拍出量を変化させた際の流れの様子を解明するために, 固体トレーサ法で得られた可視化写真にコンピュータ処理を加えることにより, 人工心臓内の流れの解析を行なった。この方法によれば, 人工心臓内の各時相における流速ベクトルの2次元分布, 流線形状及び渦度の2次元分布を得ることができ, 人工心臓内の流れの詳細の定量的な解析が可能である。その結果, 拍出量の低下に従つて全周期における流速は低下するが, ある拍出量から流速及び拡張期の旋回流に急激な変化が生じてくることが観察された。この点が低流量駆動の限界点と考えられ, 実際の駆動に際して, この限界点以上に一回拍出量を維持することの必要性が示唆され, 低流量駆動時の問題点と幅広い流量変化に対応し得る人工心臓の設計上の問題点が明らかにされた。
  • 城山 友廣, 赤松 映明, 福増 廣幸
    1986 年 15 巻 2 号 p. 482-485
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    無拍動流型, 歳差遠心型血液ポンプであるティースプーン型血液ポンプ(TSポンプ)について, 羽根形状, ポンプ内流路幅および軸シールドなどの改良を行ない, 定常流特性を調べた。その結果, 実際的な3次元構造をもつ本TSポンプは, 無拍動流型血液ポンプとして十分な性能を有していることがわかった。また, 定常運転時のTSポンプ各構成部における消費動力についても測定し, 偏心回転盤と羽根の旋回運動による損失が多いことがわかった。なお改良したダイヤフラム型の軸シールは, 摩擦損失や漏れのない良好なシール方法であることもわかった。そこで, これらの定常流特性をもとに, 本TSポンプの拍動流特性について実験を行ない, 平均流量4l/min, 平均圧力100mmHg, 圧力振巾140/60mmHg程度の拍動流を得ることができた。今後, 工学的には, ポンプの効率向上や非定常特性についてさらに詳細に検討するとともに, 臨床応用を目指した溶血試験などを行なう予定である。
  • 武沢 厳, 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 村下 純二
    1986 年 15 巻 2 号 p. 486-489
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓による左心補助循環法において、補助流量を容易かつ確実に制御する目的にて、独立した3個の駆動室をもつ補助人工心臓を新たに設計、作製し、その有効性について確認した。予測最大拍出容量90ml/BPMの補助人工心臓は容量30mlの駆動室3室を有し、最大拍出容量60mlの人工心臓は20mlの駆動室を3室有する。各人工心臓とも3段階の流量制御が可能で、In vitro実験にて40 BPMから100 BPM間で60ml人工心臓は0.7L/minから4.8L/min、90ml人工心臓は0.75L/血inから6.7L/minの流量を確認した。犬を用いた急性動物実験にても駆動室個数に応じた段階的補助効果が認められた。以上より、今回新たに設計、作製した補助人工心臓は、それぞれの心機能に応じた補助流量制御が可能で、不全心の程度によつて適切な補助流量を、心拍同期も含めた適切な駆動回数で制御でき、特に心不全回復期、及び補助循環離脱期の補助循環流量の段階的削減が望まれる状態に有用性があると考える。
  • 香川 謙
    1986 年 15 巻 2 号 p. 490
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 並木 義夫, 山崎 昭, 長谷川 陸光, 宮本 晃, 塩野 元美, 小笠原 弘二, 折目 由紀彦, 畑 博明, 栗原 和直, 八木 進也, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 491-494
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年, 機械的補助循環法の進歩は著明であり, 左心バイパス法の臨床応用も開始されている。しかしながら, その離脱時の条件, 方法などは未知であり, 今回低流量補助時の各種重要臓器の反応について検討した。ブタに心筋梗塞を作成して心不全とし, この時点の心拍出量を基準として, その10%~60%までの流量補助をLVADで行い, 冠静脈洞血流量, 腎および頸動脈血流量の変化を測定した。その結果, 左心バイパスポンプの補助流量・補助率の増加にともなって, 左室のDecompression効果およびDiastolic augmentation効果は著明に増加した。心拍出量に対する冠静脈洞血流量の比は, 補助率の増加とともに必ずしも増加せず, 補助率40%前後で最大値を有した。また, 腎動脈および頸動脈血流量の心拍出量に対する比は, 補助率の増加にともなって増加傾向を示すが, 40%以上の補助では定常状態に達した。
  • 塩津 一男, 薦田 烈, 清水 明, 喜岡 幸央, 村上 泰治, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋, 高谷 節雄
    1986 年 15 巻 2 号 p. 495-499
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全を, 救命する為, 短期使用を目的とした左心バイパスを行った。心不全モデルを使用し, 左房脱血, pusher-plate pump, non-synchronous, variable rateによる左心バイパスを行い, 心補助, 体循環補助を検討した。心不全モデルは, 松村らの方法により, 5N NaOHを直接左室自由壁心筋内に注入した。犬を用い, 予備実験を行い, 急性左心不全モデルを作成, 次いで, 山羊を用い, 正常心, 梗塞心, それぞれに, 左心バイパスを行った。LV max dp/dt, TTI, A-VDO2, PASPは有意差が, 認められなかったが, AoSP, C.O. は梗塞心において, 有意に上昇し, 体循環効果を認めた。
  • 畑 博明, 山崎 昭, 長谷川 隆光, 宮本 晃, 塩野 元美, 小笠原 弘二, 折目 由紀彦, 並木 義夫, 栗原 和直, 八木 進也, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 500-503
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左前下行枝結紮法によりブタの左室自由壁に約40%の急性心筋梗塞を作成し左心不全状態とし, 左房脱血による左心バイパスポンプ(LVAD)を装着した。上行大動脈送血法と下行大動脈送血法の2種類の異なる送血法による補助法を各々単独に施行し, その補助効果と冠静脈洞血流量, 腎動脈血流量, 頸動脈血流量を測定し, 比較検討した。
    その結果, 全身循環に対する補助効果及び左室仕事量の軽減効果は, 上行大動脈送血, 下行大動脈送血の両者とも著明であり有意差を認めなかったが, 腎動脈血流量は下行大動脈送血群に著明な増加を, 冠静脈洞血流量及びEndocardial viability ratioは上行大動脈送血群に著明な増加を認め, それぞれ有意差を認めた。虚血に陥った自己心の機能回復を考慮すると下行大動脈送血法に比し, 上行大動脈送血法がより効果的であると思われた。
  • 高木 啓之, 早川 政史
    1986 年 15 巻 2 号 p. 504-507
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在の左心補助人工心臓(LVAD)は, 高価, 大規模で, いわゆる人工心臓であって, IABPの様な予防的使用は考え難いので, その簡便化, 低価格化のために, 我々の自動制御式血液ポンプと, 東女医大, 心研, 小柳, 遠藤氏等のBlood accessによる左房―股動脈バイパス法のドッキングを試み, 犬で基礎実験を行った。
    その結果は, (1)ヘパリン不要, (2)誰でもスタートできる, (3)自動制御による維持, (4)正常心拍出量の50%以上のバイパス量, (5)低価格, (6)移動が容易等の諸条件を満足したが, Blood accessには多少の問題が残っていて, その一部をバルーンカテーテルの使用で解決したが, 更に改善を加えれば, (7) Weaningも簡単になり, 体外循環終了直後から, IABPと併用して, 予防的な使用も可能になると思われる。
  • ―Two-chamber systemとFour-chamber systemの比較―
    高 義昭, 北村 惣一郎, 大山 朝賢, 河内 寛治, 小林 博徳, 森田 隆一, 西井 勤, 谷口 繁樹, 関 寿夫, 井上 毅, 湯浅 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 508-511
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓(AH)を患者の心臓とみなし, これにおんぶ補助心臓(Piggyback heart)を装着し, ドノバン縮小型模擬循環回路に接続した新しい補助循環モデルを作成した。Four-chamber systemにて補助人工心臓TMG-40-Nの機能テストを行い, 先に行ったTwo-chamber systemと比較した。AHの駆動条件等を設定することにより, 平均大動脈圧(MAP) 43~73mmHg, Total Flow (TF) 1.8~2.61/min, 平均肺動脈圧(MPAP) 38~43mmHg, LAP28~41mmHg, RAP8~11mmH2Oの左心不全模擬状態を作った。VADのDriving Pressure (DP) 180mmHg, Rate 100/minでcounterpulseすることにより, MAP75~83mmHg, TF3.3~3.9l/min, LAP9~24mmHg, MPAP30~32mmHgとなった。最大1.5l/minの流量補助, 最大32mmHgのMAPの上昇がえられ, これはTwo-chamber systemの結巣とほぼ同様であった。今回更にPAP, LAPの変動を検討でき, MPAPは最大11mmHg, LAPは最大19mmHg低下した。Piggyback heartによる新しい補助循環モデルは, 補助人工心臓そのものの機能テストのみならず臨床に即した補助循環効果を見ることができた。又, 駆動装置の評価及び駆動方法の検討なども行いうる有用なモデルと考えられた。
  • 北村 惣一郎
    1986 年 15 巻 2 号 p. 512
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 川内 基裕, 田中 修, 田中 公啓, 関口 昭彦, 和気 一夫, 高浜 龍彦, 須藤 憲一, 水野 明, 浅野 献一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 513-515
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1981年4月より1985年3月までの4年間に教室においてIABPを施行して死亡した症例16例を検討した。10例はIABPによっても良好な血行動態が得られなかったためであり、2例はIABPよりの離脱時期が不適切であったためであり、4例は血行動態以外の要因が主因と考えられた。
    IABPによっても良好な血行動態が得られない症例には、手術による修復が不完全な症例と著しい心機能低下症例とがある。体外循環離脱時の800ml/min/M2以上の補助循環流量と、IABP開始後早期の進行性の腎不全は、insufficient supportのよい指標であるが、血圧、左房圧、心係数と予後の間に一定の傾向は認められなかった。
  • 宮 淳, 前田 肇, 朝倉 利久, 堀 原一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 516-520
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肺高血圧症(PH)に起因した急性右心不全に対する肺動脈外バルーン・パンピング(EPABP)の右心補助効果を, polymethyl metacrylateビーズ静注による肺梗塞によって作製した急性PH性右心不全モデル犬8頭を用いて検討した。バルーンはパンピング効果の向上, 合併症の防止を目指した改良型を用いた。その結果EPABPはPH性右心不全に対して肺動脈平均圧・大動脈平均圧の上昇, 右心室圧・中心静脈圧の低下をもたらし, 心拍出量は中等度PH群では9.0%, 高度PH群においては22.4%増大した。EPABPは右心後負荷の減少によって循環補助効果をもたらすものであり, 着脱に外科的侵襲を伴うものの不整脈や血栓発生及び全身的副作用の危険が少なく, 血流抵抗にならない等の利点が多い。更に, 臨床的適応の中心となる慢性PHを伴った急性右心不全においては主肺動脈幹の拡大が存在するため, 1心拍当りの循環補助量が増大し, より大きな右心補助効果が得られると考えられた。
  • 塩野 元美, 長谷川 隆光, 宮本 晃, 北村 信三, 川野 幸志, 進藤 正二, 陸川 秀智, 折目 由紀彦, 並木 義夫, 瀬在 幸安, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 521-524
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓手術の前後において, 機械的補助循環法, とくに大動脈内バルーンパンピング法および左心補助人工心臓を施行した症例は, 各々110例, 3例であるが, うち多臓器不全を来して死亡したと思われるそれぞれ13例と2例の計15例について, retrospectiveな総括を行った。その結果, 多臓器不全の中核を形成すると思われる低心拍出量症候群と腎不全に対しては, 術中心筋保護法の徹底化や体外循環中の全身血流の維持が, 予防法として重要であることが示された。また, 基礎疾患の病態によって, 各臓器の障害が潜在的に進行し, 長期化すれば, いかなる手術によって心機能を回復しても, また機械的補助循環法による循環維持を行っても, 多臓器不全となることが多かった。すなわち, 術前から合併しているMOFや, 術中に形成された潜在的なMOFに対しては, 補助循環法も限界を有すると思われた。
  • 山田 眞, 渡辺 俊明, 横川 秀男, 井上 恒一, 舟波 誠, 山本 登, 高場 利博, 石井 淳一, 後藤 英道
    1986 年 15 巻 2 号 p. 525-528
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和56年以後の4年間にIABPを47例に使用したが, 8例においては経皮的挿入法を施行し, うち6例について刺入部位を外科的に観察した。6例のIABP施行期間は6時間から23日間であった。阻血症状あるいは血栓形成は半数の3例にみられたが, 外科的に挿入した39例は認められなかった。経皮的挿入法は緊急処置としては有効であるが合併症も多く, 早期に外科的に留置し直すか, 少なくともIABP離脱時にはFogarty catheterを用いて血栓除去術を施行すべきと考えられた。経皮的挿入法, 抜去法の安全な実施のためにはより優れたballoon catheterの開発と確実な抗凝固療法の施行, および手技の習熟が必要であると考えられた。
  • 岡田 昌義, 飯塚 正史, 塩沢 拓男, 奥野 邦男, 司尾 和紀, 松田 昌三, 中村 和夫
    1986 年 15 巻 2 号 p. 529-534
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に対する補助循環としてIABPを実施し, 本法の有効性を確認した。今回はとくに, balloon catheterの形態(single, double, triple, balloon)からみたIABPの効果を血行動態の面から検討した。その結果, diastolic angmentationとsystolic unloadingの効果が十分にえられたが, singleおよびtriple balloonでは中枢側並びに末梢側の両側への効果が認められた。一方, double balloonでは中枢側のみの効果がえられ, 末梢側の循環への効果はあまり芳しくなかった。以上の事実より, 実地臨床面で長期間のIABPを行うにあたってはballoonとして前二者の選択がよく, とくにtriple balloonの使用が推賞された。他方, balloonサイズもIABPの効果を最大限に発揮するためには重要な因子であるが, stroke volumeに近い容量のballoonが適切であった。かかる点から臨床面では体重50kg以下の人には容量20mlのballoonを, 50kg以上の人には30mlのballoonがよく, これで満足すべき成績をえている。しかし一方では, 日本人の体格に適合したサイズのballoonがあまりなく, これの開発が望まれるところである。
  • 水野 明
    1986 年 15 巻 2 号 p. 535
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 高浜 龍彦, 須磨 幸蔵, 竹内 靖夫, 井上 健治, 城間 賢二, 小山 雄次, 金子 秀実, 郡 良文, 寺田 康, 浅野 献一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 536-540
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンに代えてprostacyclin誘導体を抗凝固剤として投与し, 24時間の左心バイパス(LHB)を施行, 血小板, 血液凝固系, 溶血に及ぼす影響を遠心ポンプ(Biopump)とローラーポンプを対比し検討した。両群において, prostacyclin誘導体単独投与で長時間のLHB施行が可能であり, 血小板, 赤血球への傷害を軽減できると考えられた。血液凝固線溶系への影響は小さく, 生体のhomeostasisにより代償可能と考えられた, 遠心ポンプは, 血液凝固内因系の賦活化防止の上で, ローラーポンプよりやや有利と考えられた。
  • 金子 秀実, 須麿 幸蔵, 竹内 靖夫, 井上 健治, 城間 賢二, 小山 雄次, 成味 純, 高浜 龍彦, 西山 清敬, 郡 良文, 寺田 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 541-544
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ローラーポンプ, と遠心ポンプ(Bio-pump)とによる血液破壊の差を比較検討した。牛血を用いた, 閉鎖循環回路に論ける2時間の実験では, 遠心ポンプはローラーポンプに比べ溶血の程度が低い傾向にあった。24時間の実験では, 両群ともに遊離ヘモグロビンの経時的な増加傾向が認められたが両群間に有意差は認められなかった。遠心ポンプの臨床使用では, ローラーポンプと比べ溶血の程度に有意差は認められなかったが, 操作性の面で, autoflow modeの使用で容易に定常流が得られた。ローラーポンプのようにポンプヘッドとチューブの間のクリアランス調整の必要がなく, 麿耗の心配もないため今後臨床使用に有用なポンプであると考えられた。
  • (Roller pumpとの比較検討)
    古謝 景春, 国吉 幸男, 池村 冨士夫, 伊波 潔, 草場 昭, 島袋 正勝, 神里 隆, 豊田 義一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 545-548
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Bio-PumpとRoller Pumpの両者間の血液成分に及ぼす影響を厳密に比較検討する目的で本実験を行なった。実験群を1群(対照群: 室温放置群), 2群(Bio-Pump群), 3群(Roller-Pump群)に大別し, 犬の25%希釈ヘパリン加血液を使用して, 2, 3群では4l/minの流量で6時間にわたってポンプを作動させ, 血液成分に与える影響を観察した。
    血液遊離ヘモグロビンはいずれも経時的に有意に増加するが, 1, 2群ではその平均増加率は低く(1群1.88mg/dl/h, 2群1.85mg/dl/h), 両群間に有意差はない。3群の平均増加率は12.60mg/dl/hと, 前2群と比べて著明に増加した。LDHの変動も遊離ヘモグロビンとほぼ同様に増加し, 1, 2群と3群の間に有意差を認めた。トロンボキカンB2は経時的に漸増するが, 3群間に有意差はなく, 血小板数, ブイブリノーゲン, アンチトロンビンIIIは3群とも有意な変動を示さなかった。
  • 名和 清人, 喜岡 幸央, 薦田 烈, 清水 明, 宮地 康夫, 江原 和夫, 辻 尚志, 中山 頼和, 村上 泰治, 内田 発三, 妹尾 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 549-553
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    薬剤に抵抗性の循環不全は今日なお存在し, 機械的循環補助に依らなければ改善不能の場合がある。比較的簡便で普遍的補助循環法に, IABP, VAB, 広義ECMOおよびその併用療法があり, これら循環法の対象, 効果, 臨床結果ならびに不成功例の原因を検討し, 補助成績の向上と, 各手段の限界を検索した。
    先天性疾患群ではかゝる補助手段は無効の場合が多く, 手術適応, 手技, 効果に負う所が大きい。後天性弁膜症群ではIABPのLOS予防的使用により手術成績の向上が期待できる。VABでは2.4l/min/m2以下で100分以下例で生存が得られ, また100mmHg以上に体血圧の上昇の得られないものは予後不良と判断された。VABまたはECMOとIABP併用療法は効果的であり, ECC離脱時の早期IABPが有効であった。しかし, 併用療法にも限界があり, 長時間高流量補助を要する症例では, 他の更に強力な補助手段導入を考慮すべきである。
  • 折目 由紀彦, 山崎 昭, 長谷川 隆光, 宮本 晃, 塩野 元美, 小笠原 弘二, 並木 義夫, 畑 博明, 栗原 和直, 八木 進也, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 554-557
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左前下行枝結紮法によりブタに急性心筋梗塞モデルを作成し, 大動脈内バルーンパンピング(IABP)と左心補助人工心臓(LVAD)による補助を行った。両者を様々な駆動法で単独使用, あるいは併用して, その補助効果について比較検討した。
    その結果, IABPよりも有効なLVADの心補助効果を確認した。また, LVAD単独でもIABP, LVAD併用と同様の心補助効果が得られた。IABPとLVADを共にcounterpulsation法で駆動すると著明な血圧上昇が得られ, 心筋への酸素需要供給バランスも良好に保たれることが示された。しかし, LVADにIABPを併用すると, 腎動脈血流量はLVAD単独時よりも有意に低下し, 腎機能に悪影響を及ぼす可能性が大きく, 腎不全症例に対する両者の併用法の検討がさらに必要と思われた。
  • 小笠原 弘二, 長谷川 隆光, 宮本 晃, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 並木 義夫, 畑 博明, 山本 知則, 八木 進也, 栗原 和直, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 558-561
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後の低心拍出症候群に対し, 近年拍動流ポンプを用いた左心バイパス法が注目を集めているが, その駆動時相及びIABPとの併用法については未解決な部分も多い。そこで我々は実験的にブタを使用し, 冠動脈結紮により急性心筋梗塞に伴う左心不全モデルを作成し, これに対し左心バイパスポンプ(LVAD)を用いてcopulsation法, counterpulsation法で補助を行い, 経時的に血行動態的変化を測定して自己心機能に与える影響を比較検討した。そめ結果低流量補助におけるLVADの駆動方法は, counterpulsation法が必須であり, また折目らの報告からIABPとの併用は優位性に乏しく, 腎機能に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
    しかし末梢循環不全を伴った臨床例において, LVADのみでは十分な補助効果が得られなかったが, IABPを併用することで急速に血行動態の改善を経験し, 知見を得たので報告する。
  • 須磨 幸蔵
    1986 年 15 巻 2 号 p. 562
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • (正常心での基礎的検討)
    福田 幸人, 高野 久輝, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 安達 盛次, 田中 隆, 梅津 光生, 阿久津 哲造
    1986 年 15 巻 2 号 p. 563-566
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)駆動による右心機能におよぼす影響について, イヌ5頭ヤギ3頭をもちいた正常心での急性実験にて検討した. バイパス率を0%, 25%, 50%, 75%, 100%と変化させ, その時の血行動態を測定した. その結果バイパス率の増加に伴い, 右室拡張末期圧, 平均肺動脈圧, 脈拍は変化せず右室一回拍出量の上昇傾向, maxRVdp/dtの低下傾向を認めた. maxRVdp/dtを指標とする右室収縮能の低下を伴う右室一回拍出量の増加は, 左心補助による相対的右室容量負荷のためと思われる. この時右室拡張末期圧の上昇が認められなかったのは, 右室の良好な拡張性によるためと思われる. 従って, 良好な拡張能の保たれているような正常心では, LVAD駆動によって右心機能は抑制されないと考える.
    今後, 右室の容量負荷の程度との関連を知るために容量計測等の方法も含めた検討, 更に不全心及び慢性実験による検討が必要と思われる.
  • ―RV pressure-dimension curveの有用性についての検討
    西垣 恭一, 広瀬 一, 松田 暉, 中埜 粛, 榊原 哲夫, 大谷 正勝, 川口 章, 笹子 佳門, 松若 良介, 野村 文一, 川島 康 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 567-570
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    右室pressure-dimension curve (R-PDC)をreal timeに自動的に描出できるシステムを作成し, 心筋の局所的障害の存在下に左心バイパスを施行した際の右心機能変化を血行動態とR-PDCをあわせて検討した。雑種成犬18頭をI-正常心群5頭, II-右室自由壁虚血群5頭, III-心室中隔虚血群8頭の3群に分け, 完全左心バイパスを施行した。このとき右心機能変化を各群間で比較した。3群とも肺動脈平均圧および肺血管抵抗は有意に変化しなかった。血行動態的にはI, II群とも右心機能変化はみられなかったが, III群では, 右房圧はI, II群に比し有意に高値をとり, 右室拡張末期圧はII群に比し, 有意に高値であった。また, RV maxdp/dt, 右室短軸径短縮率(RV-FS)はI群に比し, 有意に低値であった。同時に描出したR-PDCでは, III群では虚血作成より経時的にloopは右上方へ横幅を減じながら移動した。このことより, III群において右室収縮機能は低下していることが示唆された。
  • 田中 志信, 山本 修三, 山越 憲一, 神谷 瞭
    1986 年 15 巻 2 号 p. 571-574
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    モータ直結小型渦巻式血液ポンプを用いた補助循環システムにより24時間の犬左心バイパス実験を行い, 補助循環による減負荷が心筋のタンパク質合成反応に及ぼす影響を検討した. 心筋細胞のタンパク質合成能を表す指標としては, 負荷変化に対する反応が早く, さらに心筋細胞核のRNA合成能を直接的に反映していると考えられるRNAポリメラーゼ活性を採用した. 活性値測定の為の心筋細胞核の分離は, 2.2Mの高張ショ糖溶液を用いて行った. 核収率はDNA量で約40%であった. 左室心筋のRNAポリメラーゼ活性値を右室の活性値で規格化した値は, バイパスを行わない対照ではほぼ1に近い値であったのに対し, 減負荷心ではバイパスを行った左室の方が右室に比べ低値を示した. この結果から左室心筋細胞のRNA合成能低下が予想され, 補助循環による減負荷に対し, 肥大心と逆の方向に心適応反応が進行する可能性が示唆された.
  • (急性実験:による不全心左室全体および局所心筋仕事量の検討)
    中村 孝夫, 林紘 三郎, 関 淳二, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 福田 幸人, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1986 年 15 巻 2 号 p. 575-578
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓の生体心臓に与える影響を心力学的に検討するため、急性動物実験で冠動脈左前下行枝を結紮して不全心を作成し、空気駆動式ダイヤフラム型ポンプでの左心補助下に、左室径および局所心筋長を超音波変位計で連続測定した。左心補助時と非補助時の左室全体および局所心筋のなす仕事量を、これらの変位量と左室圧とから計算して検討した。その結果、左室全体の仕事量は健常心でも不全心でも左心補助によって同程度に減少した。健常部位の局所心筋仕事量は、非補助時には健常心と不全心での差がなぐ、左心補助によっていずれも同程度に減少した。一方、虚血部位は不全心の場合非補助時にほとんど仕事をしなくなり、左心補助下でもほとんど変化しなかった。このことから、補助心臓は虚血に陥った心筋局所部位に負荷を与えたり、膨隆をおこすことなく左室全体の仕事量を減少させることができると考えられた。
  • 秦 紘, 大橋 直樹, 岡田 行功, 西内 素, 庄村 東洋
    1986 年 15 巻 2 号 p. 579-582
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左前下行枝および回旋枝の分枝結紮により急性左心不全モデルを作製し, これに対して左心バイパスポンプ(LVAD)による循環補助を行ない, 心不全時とLVAD駆動時の肝血流量, 腎血流量, 腎機能を測定した。その結果, 肝血流量, 腎血流量とも心拍出量に比例して心不全時に減少し, LVAD駆動によって改善するが, LVAD流量がコントロールの心拍出量に等しくなっても, 肝および腎血流量はすぐには回復しない。また, 心不全のみ, LVADのみで腎血流と腎機能について検討すると, 心不全ではいったん低下した腎機能の回復を認めたが, LVADでは腎機能は徐々に低下し回復の傾向が認められなかった。しかしその間, 血清電解質や血清BUN, クレアチニンは正常範囲内にあった。従ってLVADによって総流量を維持しても, 臓器機能(腎)の低下がその早期(4時間まで)に認められ, 今後検討を要する問題である。
  • 中谷 武嗣, 高野 久輝, 野田 裕幸, 福田 幸人, 安達 盛次, 西村 恒彦, 山田 幸典, 小塚 隆弘
    1986 年 15 巻 2 号 p. 583-586
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞(AMI)に対する左心補助人工心臓(LVAD)の心補助効果について, 核磁気共鳴法(NMR)を用いて, 虚血域及び心筋性状の面から検討した. 雑種成犬5頭においてAMIを作成し, 左房-下行大動脈間にLVADを装着し, 循環補助を行なった. 虚血部のenhancemenもを行なうために, Gd-DTPAを静注した. NMRはシーメンス社Magnetom(超伝導型, 1.5 Tesla)を用いた. LVAD駆動時には, 非駆動時に比し, enhancementされる領域が減少し, signal intensityも低値となった. MRコントラスト[(梗塞部ech-健常部echo)/(健常部echo)×100%]も, 1st echoで平均104%から40%へ, 2nd echoでも152%から44%へ減少した. 基礎実験より, 虚血部位は, signal intensityが増大し, MRコントラストも高値を示した. 従って虚血心にLVADを適用することにより, 虚血域の減少及び虚血による心筋の変化を減少せしめると考えられた.
  • 松田 暉
    1986 年 15 巻 2 号 p. 587
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 中谷 武嗣, 高野 久輝, 梅津 光生, 安達 盛次, 野田 裕幸, 福田 幸人, 田中 隆, 岩田 博夫, 松田 武久, 公文 啓二, 由 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 588-591
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後重症心不全に対する左心補助人工心臓(LVAD)の心補助効果について、実験(成山羊を用い、常温下大動脈遮断にて心筋保護不良による心不全モデルを作成)及び臨床例(当センターで経験した7例)の検討を行ない、以下の結論を得た。(1)心筋保護不良による重症心不全では、両心不全を呈するが、容量負荷下にLVADを適用することにより、全身及び冠循環の維持が可能である。(2)心機能の回復は、壊死心筋の結合織化による残余心筋発生エネルギーの有効利用、心拍数の増加、左房圧の上昇、左室容積の拡大により、もたらされると考えられる。(3)心筋損傷が広範囲に及ぶものは、心機能の回復を期待できない。しかし肺血管抵抗が正常であれば、LVADにより心移値等他の手段をとるまでの循環維持が可能である。(4)開心術後重症心不全に対し、LVADは、有力な治療手段である。
  • 高野 久輝, 中谷 武嗣, 福田 幸人, 梅津 光生, 野田 裕幸, 安達 盛次, 松田 武久, 岩田 博夫, 妙中 義之, 田中 隆, 高 ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 592-595
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Single artificial heart (SAH)とは, 機能を停止した心臓に代わり, 左心系に挿入した1つの血液ポンプのみで, 全身の循環維持を計る方法である. 今回山羊を用いた慢性実験で長期間の循環維持に関し検討を加えた. (1) PVR.I(肺血管抵抗×体重)が10,000-15,000 dynes. sec. cm-5. kg以下であれば, 右房圧を10-16 (-18) mmHgに保つ事により, 全身の循環維持(血流量が80ml/kg/min以上)が可能であり, 山羊は普通の生活が可能であった. (2) RAPを高く保つために, 胸水や腹水の貯溜を認め, 頻回の胸腔穿刺を必要とした. (3)胸水の貯溜は総蛋白量を高く (6.0g/dl以上) 保つことにより, 軽減せしめ得ることを見いだし, 32日間の長期生存例を得た. (4)臨床におけるFontan手術のごとく, 人間においてもSAHによりかなり長期間循環を維持せしめ得るものと考える. LVAD施行の心停止や心室細動は, 本法の原理に基づき対応でき, 回復不能の場合でもTAH置換や心臓移植までの時間を十分に稼ぎ得ると考える.
  • ―特に心筋代謝の変化から―
    魏 啓明, 井村 正史, 服部 良二, 斉藤 圭治, 福山 守, 矢田 公, 湯浅 浩, 草川 實
    1986 年 15 巻 2 号 p. 596-599
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬15頭を用い, 左前下行枝結紮により左心不全心を作製し, 遠心ポンプにて左房―大動脈間Bypass (LHB)を行い, LHB Flowを全心拍出量の50%, 75%及び100% (Max. Flow)として, 各流量での冠状動脈血流量(CSBF), 心筋酸素消費量(MOC), 局所心筋血流量(MBF)及び右室(RV) E maxを測定した。75%LHBを行うとMOCは冠静脈洞酸素含有量の増加によって著明に減少し, 左室梗塞境界域のMBFは増加し, 左室健常域のMBFは逆に減少した。これは重要領域への血液のdistributionの変化が考えられた。Max LHB Flowにすると, CSBF, MOC, MBFは各々有意に低下したが, 左室境界域MBFの低下は少なかった。さらにMax LHB Flow時RV E maxは著明に低下し, RV MBFは右室仕事量の増大により増加した。つまりMax LHB Flowでは著明な左心仕事量の減少が得られるが, LVのdecompressionによってRVの弾性率と収縮効率は著明に低下した。75%LHB Flowは両心機能のバランスから考えると最も適切であると思われた。
  • 本郷 忠敬, 香川 謙, 佐藤 尚, 内田 直樹, 三浦 誠, 秋野 能久, 仁田 新一, 片山 美明, 山家 智之, 堀内 藤吾
    1986 年 15 巻 2 号 p. 600-603
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    東北大学胸部外科では昭和59年より従来の補助循環手段でも改善しない重症心不全症例に対して, 3例の臨床応用を圧縮空気駆動のサック型補助人工心臓を用いて行なった. 補助人工心臓の臨床使用は主として左心補助を主目的としたものが多く, 右心単独で症例は世界的にもまれである. われわれはEbstein病で三尖弁置換手術, ASD閉鎖及び心房化右心室縫縮術施行後, 大量のカテコールアミン及びIABPで血行動態の改善の得られない症例で循環維持のため右心補助人工心臓を使用した. 右心補助は150時間施行し, 術後第7病日には補助心臓から離脱したが, 術後の急性腎不全及び感染症で離脱より10日目で患者は不幸にも死亡した. しかしながら補助人工心臓の補助効果は絶大であったので, 術後の臨床経過を報告し, さらに3週間にわたる山羊を用いた慢性実験において右心補助人工心臓の装着手技の検討を行い送脱血カニュレーション法の安全性を確認した.
  • 宮本 晃, 長谷川 隆光, 北村 信三, 梅田 正五, 川野 幸志, 進藤 正二, 陸川 秀智, 塩野 元美, 小笠原 弘二, 並木 義夫, ...
    1986 年 15 巻 2 号 p. 604-607
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後のLOS症例と, 体外循環からの離脱困難症例2例に補助循環として補助人工心臓を使用した。症例1は61才女性, AR+MRの診断にて二弁置換術を施行, 症例2は23才女性, MR+TRの診断にて僧帽弁置換術と三尖弁弁輪形成術を施行, 症例3は急性心筋梗塞症に心室中隔穿孔と左室瘤を合併し, 穿孔部閉鎖術と瘤切除を施行した。このうち2例は離脱可能であったが, 3例とも救命できていない。補助人工心臓の効果についての異論はないが, 成績向上のためには補助心臓シヌテム運用面における問題点を解決する必要があり, 本シヌテムの改良点を含めて経験症例を検討した。補助心臓ポンプの容量およびカニューレのサイズは, 抗血液凝固剤の使用を減少させる意味で最小限とした。適応基準については既に確立されているが, 運用面では補助心臓適用時期の問題, 補助心臓とIABP併用の際の駆動時相の問題, さらに補助循環中の心拍出量等について解析を加えた。
  • 松山 謙, 新田 隆, 原田 厚, 五味 渕誠, 池下 正敏, 田中 茂夫, 山手 昇, 庄司 佑, 高野 照夫
    1986 年 15 巻 2 号 p. 608-611
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後人工心肺離脱不能例3例に対し左房脱血による左心バイパスを行ない2例に右心不全を認めた。心マッサージ, 循環血液量負荷, イソプロテレノール使用等により1例は左心バイパスより離脱したが, 他の1例は右心不全にて左心バイパス続行不能となり失った。次に左心バイパス時及び左心容量負荷時の右心機能を検討するため, 雑種成犬の右心拍出量を一定としたモデルにて実験を行った。左心バイパス率及び左心容量負荷率を変化させ血行動態の各種パラメーターを測定し, さらに冠動脈第1中隔枝を結紮後にても同様に行ない, 中隔の関与につき検討した。左心バイパス率を上昇するにしたがい右室dp/dtは有意に減少した。又逆に左心容量負荷を加えると負荷率が増加するにつれ, 右室dp/dtは有意に上昇, 右室自由壁ストレンゲージは有意に減少した。中隔枝を結紮すると, 左心容量負荷を加えても右室dp/dtの上昇はみとめず, RVSGは低下した。
  • 渥美 和彦
    1986 年 15 巻 2 号 p. 612
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 梅津 光生, 田中 隆, 高野 久輝, 永田 敬博, 土屋 喜一, 阿久津 哲造
    1986 年 15 巻 2 号 p. 613-616
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓に使用するのにいかなる弁が適切かをin vitro試験において取得した水撃のデータをもとに検討した. 試験弁は従来から用いているBjork-Shiley弁(B-S), B-S弁のステント部を強固にしたモノストラット弁(BS(MS)), BS(MS)のディスクをデルリンに置きかえた人工心臓用試作弁(BS(MSD)), 臨床用人工心臓JARVIK-7に使用されているHall弁(M-H), それに現在我々が開発中のConduit―体型のポリウレタン弁(P-U)の5種類である. 実験の結果, 1) BS(MS)の水撃値はB-Sよりも高く, 流入弁として使用した場合, ディスクが不安定な動きをおこす領域が存在した. 2) BS(MSD)では同じ構造であるにもかかわらずBS(MS)よりも水撃は軽減された. 3) M-HはB-Sよりも若干高値の水撃値を示した. 4) P-Uは閉鎖応答性が良好であるため, ディスク弁より20~50%も水撃の値を低減させることができた. 5) 人工心臓の水撃の大小は弁の種類によるちがいよりもむしろ駆動方法を変更する効果が大と思われた.
  • ―速度勾配が加えられている時間について―
    橋本 成広, 杉浦 庸介, 笹田 直
    1986 年 15 巻 2 号 p. 617-620
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    速度勾配が加えられている時間を変化させたときの溶血をin vitroにおいて調べた. コーン・カップ(アクリル樹脂製)型試験機を用いて, イヌの全血液に0~1500s-1の一様な速度勾配を24℃において0~120分間加えた(速度勾配が一定の場合と正弦波状に周期的に増減する場合の2通り). 溶血の程度については, 溶血率(遊離ヘモグロビン濃度/全ヘモグロビン濃度)を算出して比較した. 実験の結果, 速度勾配が「一定」の場合, 「正弦波状に上下する」場合ともに, 速度勾配が加えられている時間が長くなるとともに溶血率が大きくなること, 0s-1と500s-1との間を周期10sで正弦波状に増減する場合よりも500s-1一定の速度勾配を加え続けた場合の方が溶血率が大きくなることがわかった. 以上より, 速度勾配が加えられている時間を短縮することによって溶血が抑えられることが示された.
  • 松田 武久, 岩田 博夫, 高野 久輝, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 野田 裕幸, 福田 幸人, 安達 盛次, 高谷 節雄, 阿久津 哲造
    1986 年 15 巻 2 号 p. 621-624
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究はセグメント化ポリウレタンを血液接触面に有する補助心臓のシステムとしての抗血栓性を保証する機構およびその支配因子を明確にすることを目的とした。対象とした実験系は成山羊健常心への慢性移植および不全心モデルでの回復・離脱過程を含む急性移植および臨床応用例である。システムの抗血栓性は, 1) 材料本来の血液適合性に加えて, 2) 流体力学的要素(バイパス流量)および 3) 移植期間の3つのパラメータによって概して支配されることを示した。1) の血液との相互作用は 2) のバイパス流量の低下によって, その強度は増加するが 3) の移植期間の延長によって漸減する。システム抗血栓性の移植期間依存性は時変数的な多重蛋白質層形成と密接な関係があることを示した。臨床応用に際しては, 移植早期(約一週間位まで)における離脱に際しては, 特に上記の生体適合化過程を理解して血栓形成を回避することが重要であることを指摘した。
  • ―安全かつ簡便な挿入法の開発と抜去後の影響の検討―
    西田 博, 市原 哲也, 清野 隆吉, 副島 健市, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1986 年 15 巻 2 号 p. 625-628
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心バイパスとして, 左房一大動脈間バイパスを施行する際, 左房よりの脱血経路として, 経心房中隔法は, 左房自由壁, 左心耳, 肺静脈よりの脱血に比し, 安定し良好な脱血が得られ補助循環効果が大である, air suckingの恐れがないなどの多くの利点を有している。しかし, 実際の脱血カニューレの挿入に際しては, 人工心肺使用下, inflow occlusion法, 穿刺法など, いずれも安全性, 簡便性を共に満たす方法がなく普及されるには至らなかった。そこで, ガイドワイヤーの通るスタイレットを作成し, Seldinger法を応用し右房壁より経心房中隔的に左房に挿入可能なカニューレを作成した。雑種成犬を用いた実験では迅速かつ安全に挿入が可能で, 内径6mmのカニューレで100~120ml/kg/minのバイパス流量が得られた。また本カニューレ抜去後には有意の心房間短絡は認められず, 1週間の挿入後も, 抜去2週間後には心房間孔は修復され閉鎖されていた。
  • 佐藤 尚, 本郷 忠敬, 香川 謙, 内田 直樹, 三浦 誠, 秋野 能久, 堀内 藤吾, 仁田 新一, 片平 美明, 依田 隆一郎
    1986 年 15 巻 2 号 p. 629-632
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは乳幼児期に施行された先天性心疾患に対する開心術後LOSの治療を目的に小型補助人工心臓システムを開発している. 今回は体重3~10kgの患児に使用する送, 脱血カニューレを該当患児群の解剖学的データーに基づいて作成し, モデル循環, 急性動物実験にて血行動態的評価をおこなった. 送血カニューレの先端は5mmφのリング付きEPTFE人工血管, 脱血カニューレの先端形状は成人用のものと同様であるが, 内径5mmとした. カニューレを1回拍出量15mlの小型補助人工心臓に連結したシステムのin vitro評価では一般的な駆動条件下にシステム拍出量が1.0L/minを越え, また急性動物実験によるin vivo評価でも, 800~900mlの拍出が計測されて, 本システムにより, 対象患児群に対し, 十分な心補助効果が期待できることが確認された.
  • 高野 久輝
    1986 年 15 巻 2 号 p. 633
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 下岡 聡行, 三田村 好矩, 岡本 英治, 三上 智久
    1986 年 15 巻 2 号 p. 634-637
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々はダイアフラムの動きと空気駆動圧を用いて動脈圧と心房圧を間接的に測定し、その値を用いて動脈圧、心房圧を制御するシステムを開発しin vitroにおいて間接計測法および動脈圧、心房圧の制御実験を行ない良好な結果を得ていた。本研究では、犬を用いて左房バイパスを行ない、システムの機能を検討した。間接測定法と動脈圧制御を実験し動脈圧と左房圧の間接測定値とカテーテルを用いた直接測定値の間の相関係数はそれぞれr=0.959(n=50)r=0.982(n=54)で、動物実験においても十分によい線形性を保って測定できることを示した。
    動脈圧制御実験では細動を行なわせ実験的に不全心をつくり動脈圧を急激に低下させた後、設定値に保つように制御させた。その結果、駆動数を変化させることにより補助人工心臓の拍出量が増加すると動脈圧が上昇し、本システムによる循環の維持の有効性を示した。
  • 秋野 能久, 三浦 誠, 内田 直樹, 佐藤 尚, 本郷 忠敬, 香川 謙, 堀内 藤吾, 片平 美明, 仁田 新一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 638-641
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    幼小児心疾患開心術後の早期死亡例を解析, これら症例に対する補助人工心臓(PAH)応用の可能性を検討した。1982年1月より1985年7月までに185例の小児開心術が行なわれ, このうち術後7日以内に死亡したものは, 1才未満(A群)12例, 1才以上(B群)8例, 計20例であった。死亡原因を分類すると, 体外循環離脱不能例7例(A群5例, B群2例), 術後LOS 11例(A群6例, B群5例), その他2例であった。ECMO, IABP等循環補助を施行したもの5例(B群5例)であった。PAHの適応と判断されるのは, 手術適応, 根治性に問題なく, 術後管理にも問題ないと判断されたA群4例, B群3例, 計7例であった。このうち術前の病態より判断し, 左心不全が主であるもの2例, 右心不全が主であるもの3例, 特定しがたいもの2例であった。ECMO等の循環補助は限界があった。小児例にPAHを応用する場合問題となるのはポンプ, カニューラの大きさである。
  • 永田 敬博, 梅津 光生, 田中 隆, 高野 久輝, 植木 豊, 西川 秀幸, 稲田 和男, 土屋 喜一
    1986 年 15 巻 2 号 p. 642-645
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓駆動時の人工弁の閉鎖に伴う異常な圧力上昇(水撃:Water Hammer)に注目し、この異常な圧力上昇の軽減方法について検討した。実験は従来からのin-vitro装置を用い弁の種類、ポンプ膜の厚さ、弁取り付け部の材質、形状の変化に対する水撃値の変化を測定した。その結果人工弁では厚肉のPU弁が、良好左弁閉鎖機能のために他の弁に比べ圧倒的に圧較差の減少をみた。ポンプ膜に関しては、薄くすることによる有為左差は認められなかった。取り付け部材質に関しては、ヤング率の小さいものにすれば圧較差は減少する。しかし、流量特性や動脈圧波形より考えて、肉厚1.5mmのラテックス管が適当であると判断した。また取り付け部形状に関してバルサルバの形状が、肉薄のPU弁の場合にのみ閉鎖特性を改善できることがわかり、ディスク弁等を使用する場合にはバルサルバの形状によってはかえって逆効果であることも判明した。
  • ―各種マイクロセンサのin vivo評価―
    仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 田中 元直, 香川 謙, 本郷 忠敬, 堀内 藤吾, 内田 直樹, 三浦 誠, 高橋 明則
    1986 年 15 巻 2 号 p. 646-649
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    臨床用補助人工心臓自動制御システムに応用するマイクロセンサの検討を行なった。圧センサはピエゾ抵抗を応用したダイヤフラム型を補助人工心臓の流入及び流出カニューラの先端近傍に装着し, その表面に抗血栓材料を塗布した。pH及びPco2センサはポリエーテル型ポリウレタンを種々の割合に配合し, それぞれ表面に塗布して使用した。圧センサのカニューラへの装着加工は容易で, 抗血栓材塗布による感度の低下は問題にならなかった。しかし心房への流入カニューラの結紮固定が強すぎる場合はドリフトが大きくなることがわかった。pH及びPco2センサ表面の抗血栓材料処理は, 材料を選択することにより計測に耐え得ることが証明された。山羊を用いた補助人工心臓慢性実験では, カテーテルを介した左心房圧と大動脈圧と圧マイクロセンサの計測値を比較したが感度, 応答性とも極めて良好であり, 人工心臓に組み込んだ圧マイクロセンサとして充分使用に耐え得るものと判断された。
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