農業施設
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26 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 田中 章浩, 奥島 里美, 佐瀬 勘紀, 伊藤 實
    1995 年26 巻1 号 p. 3-11
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    対流熱伝達率と風向・風速の関係を, ビニールハウス構造体を対象に, 風洞模型実験をとおして検討した。本実験には局所的な乱流レイノルズ数一致の相似則, および乱流構造の近似相似則を用いた。斜め流の場合の模型対流熱伝達率を実物値にスケールアップするための係数は, 平板に沿う平行流と垂直流の場合の値を補間して求めた。
    対流熱伝達率の模型値と実物値の関係では, 補間スケールアップ係数を用いて求められた対流熱伝達率を, 近似実物値とすることが可能であると考えられた。
    風速と対流熱伝達率の関係を曲線回帰した結果, 回帰式の傾きは屋根で大きく, 妻面で小さいことがわかった。したがって, 風速の影響は屋根に強く, 妻面に対しては弱いことがわかった。
    風向と対流熱伝達率の関係では, 風向と対流熱伝達率は各壁体ごとにあるきまった変化傾向を示すことがわかった。
    風向の影響は風下側の側壁および妻面で強いことがわかった。また, 他の壁体においてはその影響は15%から20%であることがわかった。
    強風時には対流熱伝達率を風速のみの関数として扱うのでは不十分であり, 風速と風向の両者の関数として表すことが必要であることがわかった。
  • 院多本 華夫, 木下 昌大, 前川 孝昭
    1995 年26 巻1 号 p. 13-20
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    クリスマスや正月の祝いのデコレーションケーキなどでわが国のイチゴ需要は冬季に集中しており, この時期に合わせるイチゴの工場型栽培技術の確立が必要となる。本研究はNFT装置に定植した‘女峰’(Fragaria×ananassa Duch. cv. Nyoho) イチゴの苗の根圏に, 10~15℃に冷却した水道水を20~30日間循環させ, 花芽分化や分化後の苗の発育, 開花状況などに及ぼす冷水処理の影響を調査した。花芽分化は20日間の処理で促進され, 葉柄汁液中の硝酸態窒素濃度が高水準で維持された。また, 処理後の苗の花芽の発達は良好であった。頂花房開花時期は10℃20日間の処理では早まったが, 30日処理では逆に遅れた。しかし, 30日処理によって斉一の頂花房開花状況が得られた。特に30日間による根圏の冷水は腋花房の開花時期を早め, 開花期間も短縮され, 開花状況をそろえた。
  • 松田 従三, 佐久間 忠秋, 米沢 智嗣, 佐藤 雅紀
    1995 年26 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    製氷システムは, 主として, 水排出システム, 外気導入システム, 製氷槽の3つから成り立っている。
    水排出システムの一つである水排出装置は, ファウンテン・ユニットと呼ばれる。このファウンテン・ユニットは, 非常に簡単な時間-温度積算機として使われ, 周囲温度に応じて水排出量を調節する。
    寒冷外気は, ファンとダクトを通して氷表面に吹付けられる。
    製氷槽は, ファウンテン・ユニットとスプレーノズルの下に位置し, 布幕製であり, 足場から吊るしてある。この布幕製氷槽は, 排出された水に濡れて凍れば, 固い製氷槽になり, 氷表面の薄い水の層を保持できる。
    透明な氷を作るためには, 水の1回あたりの排出量を, 数ミリ厚さの氷ができるように制御すべきである。実用上は, ファウンテンユニットの設定温度は2℃にすればよい。凍結指数が150℃・min・mm-1になるよう調節する。寒冷外気を利用した, この製氷システムによって寒冷外気を利用して3m以上の厚さの氷を作ることができる。
    大きな氷塊は, 低温と高湿度を同時に提供できるため, 農産物を貯蔵するには非常に適している。この実験で製造した氷塊110m3を利用して, ナガイモ, ジャガイモを2ヶ月半大きな損傷もなく貯蔵できた。
  • 向 弘之, 小川 秀雄, 道宗 直昭, 豊田 裕道
    1995 年26 巻1 号 p. 31-38
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    堆肥舎の壁に必要な強度を明らかにすることを目的として, 堆肥の密度, 粘着力, 内部摩擦角の測定と, 実際の堆肥舎における切返し作業時に壁面に作用する圧力の測定を行った。その結果, 堆積堆肥により壁面に作用する圧力は, 通常の無機質土に比べて極めて小さいことが明らかとなった。また堆肥の切返し作業時に壁面に作用する最大圧力は, ホイルローダの最大けん引力をバケット前面面積で除した値に相当した。これらの実験結果から, 堆肥舎壁の設計圧力の算定方法を提案した。
  • ファジィ理論によるトマト栽培環境設定値の算出と制御
    連 小東, 中野 和弘, 倉田 和彦, 渡辺 秀一
    1995 年26 巻1 号 p. 39-49
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    ハウス内環境制御を実現するためには, 各環境要因の設定値を決定することが重要である。そこで, 北陸地域におけるトマトの半促成栽培を対象として, 栽培農家への聞き取り調査を行った。この調査結果をもとにルールを作り, トマトの半促成栽培を対象として収量, 品質 (A品率, 空洞果率, 乱形果率), コスト (燃料消費量), 生育ステージ, 天候などに見合った合理的な環境設定 (温度, 湿度) をファジィ推論により算出した。また, 加温ハウスのエネルギー低減, 制御の応答性向上を目的として, 実験用ハウス内の環境制御にもファジィ理論を応用し, 温度, 湿度の変化率に応じて, 設定値に対するスレッシュホールドを変化させて (以下ファジィ制御), 制御特性を検討した。この制御方式と比較する目的で, 通常のON/OFF制御も行った。ヒータによる温度制御をした結果, ON/OFF制御に比べ, ファジィ制御の加温時間と累計誤差はともに少なくてすんだ。換気による温度制御では, ファジィ制御はON/OFF制御より, 設定温度に対する誤差が少なかった。温度, 湿度の複合制御では, 温度制御の差は見られなかったが, ファジィ制御の方が, 設定湿度に対するオーバーシュートや累計誤差が低くおさえられた。
  • 園芸施設の現状と最近の傾向
    豊田 裕道, 佐瀬 勘紀, 大谷 敏郎
    1995 年26 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    ビニルハウスに代表される園芸施設については, 最近, 機械化・自動化の動きと, それに伴う施設大型化の傾向がある。一方, 環境問題がクローズアップされてきており, その対応が今後必要となるが, 施設型農業では閉鎖空間を利用しているため, 肥料等の循環利用により環境へのインパクトを低減するシステムの構築の可能性は高い。このような観点から, 園芸施設の現状や, 施設の大型化等の最近の傾向について述べ, 近年増えてきた養液栽培を用いた大型施設園芸団地について考察した。また, 施設園芸の先進地のヨーロッパおよびアメリカの状況を紹介し, 園芸施設の最近の傾向をふまえて, 環境低インパクト化の要求にも応え得る施設型農業の方向を検討するための資料とした。
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