農業施設
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23 巻, 3 号
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  • 岩渕 和則, 松田 従三
    1993 年23 巻3 号 p. 111-116
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    牛糞の嫌気性消化温度, 消化槽への有機物負荷がメタンガス生成に及ぼす影響を調べた。1×10-3m3の容積を持つフラスコを消化槽にし, これに牛糞分離液 (固液分離された液分) を半連続投入することによって消化した。設定した条件は消化温度が20, 30, 35, 40, 48℃, そして有機物負荷が3.0, 6.6, 10.2, 14.8, 21.9kg-VS・m-3・day-1であった。この結果,
    a) 牛糞の最適消化温度が40℃前後にある。
    b) 牛糞の固液分離された液分を供試材料に用いることによって, 従来よりも高い有機物負荷が実現できた。
  • 池口 厚男
    1993 年23 巻3 号 p. 117-125
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    無窓分娩豚舎に対して入気流方向の違いによる舎内気流分布の予測を有限要素法を用いて行なった。なお, 二次元, 定常, 等温, 非圧縮性, 粘性流れを仮定し, 舎内には気流の障害物となる豚房と母豚を置いた。有限要素法で解析すること, 経済性, 第一段階として場の平均的な情報, すなわち平均流のみを得ることまた, マイクロコンピュータでの使用等を考慮して, 乱流モデルには, ゼロ方程式モデルを採用した。計算結果と模型実験の結果とを比較することで, 予測の検証を行なった。その結果, 気流の障害物が存在し, 入気流方向が異なっても, 定性的な流れのパターンに関し, 渦の位置や一次気流などから判断して, その大要は予測可能であると見做された。自己保存型の流れの解法に信頼性があるゼロ方程式モデルでも室内乱流場に一応適応できると思われる。しかし, 気流速に関して予測と模型実験とでは全体的に一致せず, 予測のほうが大きく計算された。気流速の精確な予測を行なうには, 本数値計算で採用しなかった境界条件に対する壁法則, 要素分割を細かくする, また, 乱流モデルを2方程式モデルにすることが必要であると考えられる。本数値計算ではマイクロコンピュータの使用を前提としたが, 定性的な流れの予測のみにその適用が留まると思われる。
  • 福田 直也, 池田 英男, 奈良 誠
    1993 年23 巻3 号 p. 127-134
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    人工環境下での植物栽培において重要な環境要因である光質が, トマトおよびインゲンマメの生育に及ぼす影響を検討した。光質処理に使用した光源は, 陽光 (以下白とする), 赤, 黄, 緑, 青の5種類である。光強度は強弱2段階とし, 各色とも光合成有効放射束密度は, トマトで400および200μmol・m-2・s-1, インゲンマメで300および150μmol・m-2・s-1とした。栽培期間はそれぞれ14日, 30日間とした。試験は, グロースキャビネット内において明/暗各12時間, 気温20/19℃ (昼/夜) の条件下で水耕法により行った。
    1) 強光条件では, 両作物ともに緑, 青色光下において処理開始後5~6日目に葉焼け様の症状が発生した。しかしこの症状は, 弱光条件では発生しなかった。トマトの草姿は, 白色光下においていずれの光強度の場合も徒長的な外観となった。強光条件では, トマト, インゲンマメともに, 白, 赤, 黄の光源間では生育に大きな違いはなかった。それに比べて緑, 青色光下では, 15~30%低かった。また弱光条件では, 光質の違いによる生育差はほとんど見られなかった。
    強光条件の緑, 青色光区で見られた葉焼けや生育抑制は, これらの光源に多く含まれる紫外線がその原因となっている可能性がある。
    2) 強光および弱光条件において, トマトの茎への乾物分配は白色光区が赤, 黄色光区より大きくなった。側枝への乾物分配は逆に, 赤, 黄色光区が白色光区に比べて5~10倍近く大きくなった。このことは, 器官への乾物分配に赤/遠赤比が影響している可能性を示唆している。
    以上のように, 生育に対する光質の影響は, 強光条件では緑, 青色光下における抑制効果として現れた。一方乾物分配, 草姿, 葉の厚さ等の形態については, 光強度に関係なく光質が影響していると考えられる。
  • 大径堆積層の温度分布と周壁への熱移動について
    呉 星五, 清水 浩, 上出 順一, 鳥巣 諒, 太田 義信
    1993 年23 巻3 号 p. 135-141
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    小径堆積層 (直径26.4cm) で行なった既往の研究成果を継承し, 大径堆積層 (直径56.0cm) を用いた以外は可及的に同一となるように条件設定して実験し, 通気量の広い範囲において, 周壁からの熱損失の影響による堆積層半径方向の温度分布と同方向への熱移動の問題を究明した。その結果, 堆積層直径の大小によって発酵温度自体に差異が生ずる場合のあること, 温度分布特性は極めて複雑に推移することを解明した。そして, その特性を通気量別に定量的に把握して, 層毎の面積中心での測温結果のみで温度分布の概要とその時の周壁からの熱損失量を推計可能にすることで, 熱工学的な計算処理を容易にした。
  • ベンチスケール流動床型メタン発酵槽の処理特性
    北村 豊, 前川 孝昭
    1993 年23 巻3 号 p. 143-149
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    メタン発酵システム開発のための基礎資料を得る目的で, ベンチスケールの流動床型メタン発酵槽を試作し, その処理特性の検討を行った。その結果, メタン菌の失活なく流動床循環系の閉塞も起こさない良好なスタートアップを行うためには, 嫌気に近い状態で目開き2mm径メッシュでスクリーニングを行った消化汚泥を用いればよいことがわかった。続いて合成廃水の処理実験から, 流動床型メタン発酵槽は, 在来型メタン発酵槽と比較して菌体保有量が10倍以上高く, pHおよびガス発生量が安定していることを確認した。基質除去率80%以上を達成した処理系においては, 汚泥滞留時間 (SRT) が12日以上確保されており, 流動床型メタン発酵槽は, 菌体を高濃度に保持して槽内に長期間滞留させることにより, 高い基質除去能力を発揮するものであることが判明した。また豚糞尿上澄液による予備的処理実験においては, 最大負荷6.46kg-VS/m3・dの操作で, 二相式メタン発酵法を上回る72%のVS除去率と0.75m3/kg-VSのガス収率を得た。
    以上の結果より, 流動床型メタン発酵槽は, 良好なるスタートアップを行い菌体を高濃度に滞留させれば, 有機物の分解・除去に優れていることがわかった。
  • 夏季における舎内環境
    田中 章浩, 奈良 誠, 伊藤 實
    1993 年23 巻3 号 p. 151-160
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    低コスト型無窓豚舎の夏季における舎内環境を解明した。豚舎はカマボコ型で, 材料費を安くするために, 豚舎骨組みに鉄製パイプを, 壁体に反射フィルムを用いた。夏期の外部からの熱の侵入を少なくするために, 壁体は中間に厚さ0.2mの通気層を有する二重被覆構造である。換気方式は, 豚舎妻面の換気扇で外気を舎内に導入する陽圧換気を用いた。外気をポリダクトを用いて舎内奥行方向に等配分した。ポリダクトには半径方向断面の吹出口1穴, 2穴および4穴を用いた。気流誘導シートを舎内の気流を整える目的で用いた。それの舎内気流への影響を検討した。舎内空気は通気層を通して外部へ排出した。夏季における測定結果からは次のことがわかった。
    1. 舎内気温は外気温に対して日中で約1K, 夜間で1.5Kから1.9Kそれぞれ上昇していた。舎内気温は外気温に追従して変化しており, 日射が直接的に舎内気温に影響しない。
    2. 舎内外気温差を約1K以下に日中抑えるためには, 換気回数は最低でも約20回/hが必要である。
    3. 舎内気流分布は吹出口1穴の条件が, 他の吹出口条件に比較して適していた。その吹出口1穴の条件の中でも気流誘導シート有りの場合が, 気流誘導シート無しの場合と比較して, 豚に均一な気流を当てることが可能となる。
    次に, 豚舎内土壌の熱容量は豚舎部材や舎内空気の熱容量に比べて大きいので, 土壌の熱移動は非定常状態, 豚舎部材や舎内空気における熱移動は定常状態としたシミュレーションの結果から, 次のことがわかった。
    4. 壁体を一重被覆構造にした場合と通気層を有する二重被覆構造にした場合, 舎内気温を比較すると二重被覆構造の方が夜間には約0.2K上昇するが, 日中は約2K低くすることが可能となる。
    5. 通気層を有する二重被覆構造の壁体から舎内への日中の伝達熱量は, 一重被覆構造のそれの約35%となり二重被覆構造が有利となる。
  • パイプハウスの換気用風圧係数について
    黄 裕益, 相原 良安, 瀬能 誠之, 奈良 誠, 佐瀬 勘紀
    1993 年23 巻3 号 p. 161-167
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    換気設計に当たっては, 開口部の風圧係数を知る必要がある。本報告は, パイプハウスを対象とした1/12の模型を供試して, 風洞実験によって壁面風圧係数の分布および換気開口部の風圧係数を求めた。換気開口部は, 側壁開口, つり上げ式天窓および妻面出入口の3つである。実験の結果は, 屋根面が曲面をなすパイプハウスの壁面風圧係数の分布が風向によって変化する傾向が明らかにされた。また, 各風向における開口部の風圧係数が新たに求められた。さらに, 換気開口部の風圧係数と該当個所の壁面風圧係数を比較すると, 風下側では両者はよく一致したが, 風上側では風向角によって両者に幾らかの差が生じることが明らかになった。したがって, 風上側の換気開口部については新たに測定された開口部の風圧係数を用いて換気計算を行なうことが望ましい。
  • 児島 初男, 豊田 浄彦, 竹内 龍三
    1993 年23 巻3 号 p. 169-176
    発行日: 1993/03/30
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, 揺動選別による玄米と籾の分離特性を明らかにするために, 揺動板上の玄米及び籾の移動と分布状態について検討した。幾つかの混合比について揺動選別実験を行ない, 揺動板上で生じる多様な現象を整理し, 分離モデルの作成に必要な仮定について検討した結果, 以下の知見が得られた。
    (1) 揺動板上の玄米, 籾の混合物全体は入口領域, 分離領域, 搬送領域に分けられ, 各領域の大きさは混合比に影響を受ける。(2) 玄米の搬送方向の移動は, ほぼ一様流れと見做せるが, 籾は一様流れとは見做せず, 玄米よりも搬送速度が大きい。(3) 玄米と籾の分離方向分布は mass centroid pathway (質量中心径路), 分布位置の標準偏差及びひずみ度により解析でき, 未分離領域と分離領域の位置と大きさ, 排出端での分離性能がこれらのパラメータにより説明できる。
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