人工環境下での植物栽培において重要な環境要因である光質が, トマトおよびインゲンマメの生育に及ぼす影響を検討した。光質処理に使用した光源は, 陽光 (以下白とする), 赤, 黄, 緑, 青の5種類である。光強度は強弱2段階とし, 各色とも光合成有効放射束密度は, トマトで400および200μmol・m
-2・s
-1, インゲンマメで300および150μmol・m
-2・s
-1とした。栽培期間はそれぞれ14日, 30日間とした。試験は, グロースキャビネット内において明/暗各12時間, 気温20/19℃ (昼/夜) の条件下で水耕法により行った。
1) 強光条件では, 両作物ともに緑, 青色光下において処理開始後5~6日目に葉焼け様の症状が発生した。しかしこの症状は, 弱光条件では発生しなかった。トマトの草姿は, 白色光下においていずれの光強度の場合も徒長的な外観となった。強光条件では, トマト, インゲンマメともに, 白, 赤, 黄の光源間では生育に大きな違いはなかった。それに比べて緑, 青色光下では, 15~30%低かった。また弱光条件では, 光質の違いによる生育差はほとんど見られなかった。
強光条件の緑, 青色光区で見られた葉焼けや生育抑制は, これらの光源に多く含まれる紫外線がその原因となっている可能性がある。
2) 強光および弱光条件において, トマトの茎への乾物分配は白色光区が赤, 黄色光区より大きくなった。側枝への乾物分配は逆に, 赤, 黄色光区が白色光区に比べて5~10倍近く大きくなった。このことは, 器官への乾物分配に赤/遠赤比が影響している可能性を示唆している。
以上のように, 生育に対する光質の影響は, 強光条件では緑, 青色光下における抑制効果として現れた。一方乾物分配, 草姿, 葉の厚さ等の形態については, 光強度に関係なく光質が影響していると考えられる。
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