循環式乾燥機による省エネ乾燥実現に向け,ヒートポンプを用いた穀物乾燥システムを設計した。本システムは最大張込量500 kgの循環式乾燥機を対象に,CO
2 冷媒ヒートポンプ給湯器で生成した温水と常温空気を熱交換して,穀物乾燥用の熱風を生成する構造とした。さらに,システム内に温水を貯める貯湯ユニットを設け,温水を蓄熱媒体として利用することで,低温条件下で懸念されるヒートポンプの除霜運転作動時にも継続的な穀物乾燥が行えるため,着霜の発生と除霜運転の作動の頻発による穀物乾燥への悪影響を回避可能な構造とした。本システムによる籾乾燥試験の結果,乾燥速度は1.0 %w.b./hと循環式熱風乾燥機と遜色無い値であった。品質面では,胴割れの多発は認められなかった。比エネルギ消費量は,2.6 MJ/kg-H
2O,穀物水分1 kgの乾減に要したCO
2 排出量は3.1× 10
-4 t-CO
2/kg-H
2Oであった。一般的な循環式熱風乾燥機の値と比較して,比エネルギ消費量は54%,CO
2 排出量は23%の低減効果となった。乾燥期間中の平均外気温は15.4 ℃であり,ヒートポンプユニットの成績係数(COP)は3.2であった。これより,設計した穀物乾燥システムは,循環式乾燥機における慣行の作業能率を維持しつつ,ヒートポンプの性能を発揮することで,穀物乾燥の省エネ化およびCO
2 排出量の低減が可能であることを確認した。
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