農業施設
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44 巻, 1 号
第44巻第1号(通巻136号)
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • ─矩形導波管型マイクロ波アプリケータを用いたナタネの連続加熱法の検討─
    加藤 仁, 小林 有一, 飯嶋 渡, 竹倉 憲弘, 重田 一人, 薬師堂 謙一
    2013 年44 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    ナタネのマイクロ波連続加熱を行うために矩形導波管型マイクロ波アプリケータを試作してナタネの連続加熱試験と搾油試験を行い,小型搾油機での搾油の前処理法としての検討を行った。矩形導波管を利用したマイクロ波アプリケータにて短絡板を管内波長の1/4の距離を0.5 Hzの間隔で断続的に移動させながらマイクロ波を照射することで,アプリケータ内に強い電界を形成し,ナタネを効率よく加熱することが可能であった。この原理を応用した矩形導波管型マイクロ波アプリケータでは,ナタネを35 kg/hの処理量で115±4 ℃に連続加熱することが可能であった。マイクロ波加熱後に行った搾油試験では,搾油機の出口開度を7.5 mmとした場合,非加熱の搾油率 22.6%に比べ5.8%向上し28.4%となった。搾油後のろ過油の品質では,マイクロ波加熱による酸価や酸化安定性への大きな影響は無く,クロロフィル含量は高くなる傾向にあった。結果,矩形導波管型マイクロ波アプリケータによるナタネの連続加熱処理は小型搾油機の前処理法として有効であった。
  • 野口 剛
    2013 年44 巻1 号 p. 7-13
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    全農飼料畜産中央研究所で実施した406頭の3元交雑肉豚の肉質試験を取りまとめ,飼料中のリノール酸等の栄養成分摂取量が豚の背脂肪の脂肪酸組成への影響ついて検討した。肥育試験は生体重65 kgから112 kgまでとした。肥育試験データの取りまとめは5~6頭群飼育の平均値とし,データ解析の母数は77である。1日当りの栄養成分摂取量は,可消化養分総量(TDN)が2 249 g/日,粗蛋白質が399 g/日,粗脂肪が111 g/日,可溶無窒素物(NFE)が1 794 g/日であった。各脂肪酸の摂取量はパルミチン酸が18.3 g/日,ステアリン酸が5.2 g/日,オレイン酸が37.9 g/日,リノール酸が43.7 g/日,内因性脂肪酸が61.4 g/日であった。NFE,粗脂肪,パルミチン酸,オレイン酸,リノール酸の栄養成分摂取量は体脂肪の脂肪酸組成との間に有意な相関が認められた。特にリノール酸の摂取量は体脂肪の脂肪酸組成に大きく関係していた。飼料中のリノール酸摂取量が増加すると体脂肪のリノール酸が連動して増加し,逆に内因性脂肪酸は減少した。リノール酸摂取量が45 g/日以下であれば,C18:2/C18:0が変わらず,脂肪の硬さに大きく影響しないことを示した。飼料中のリノール酸を減少させても必須脂肪酸であるリノール酸は体脂肪中には一定割合(約7%)で蓄積することが明らかになった。一方,TDNおよび粗蛋白摂取量は体脂肪の脂肪酸組成との間に相関が認められなかった。
  • ─市販牛乳を用いた基礎試験─
    吉田 弦, 井原 一高, 豊田 淨彦, 梅津 一孝
    2013 年44 巻1 号 p. 14-21
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    酪農業において搾乳施設廃水とともに排出される廃棄乳の処理が大きな課題となっている。メタン発酵による廃棄乳からのバイオガス回収が望ましいが,含有する乳脂肪や高級脂肪酸が発酵阻害を引き起こす。本研究では,廃棄乳を含む酪農廃棄物を対象としたメタン発酵の前処理として電解酸化法を検討した。消化液を種汚泥として乳牛糞尿を投入した37 ℃でのバッチ式メタン発酵において,牛乳を発酵汚泥の全量に対して15%投入したところ阻害が確認された。陽極材料にDSA(Dimensionally Stable Anode)を用いて電解酸化処理した牛乳を投入すると,未処理牛乳と比較してメタン生成量は増加した。これはオレイン酸などの難分解性物質が,電気化学的に易分解性物質へと転換されたためと考えられる。しかしながら,メタン生成までの遅延も観察された。Ti/PbO2 電極を用いた電解酸化法で前処理した牛乳を投入したところ,メタン生成量が減少するなど,DSAを用いた場合よりも強い阻害強度が観察された。これは牛乳中のラクトースなどの電気化学的酸化により生じたギ酸が,消化液や乳牛糞尿における菌叢のメタン生成菌では資化できないためと考えられた。本研究の結果から,DSAのような活性電極を陽極に用いた電解酸化法による前処理により,廃棄乳のメタン発酵性能を向上できることが示唆された。
  • 野田 崇啓, 日髙 靖之, 横江 未央, 松田 和一郎, 渡邉 大輔
    2013 年44 巻1 号 p. 22-29
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    循環式乾燥機による省エネ乾燥実現に向け,ヒートポンプを用いた穀物乾燥システムを設計した。本システムは最大張込量500 kgの循環式乾燥機を対象に,CO2 冷媒ヒートポンプ給湯器で生成した温水と常温空気を熱交換して,穀物乾燥用の熱風を生成する構造とした。さらに,システム内に温水を貯める貯湯ユニットを設け,温水を蓄熱媒体として利用することで,低温条件下で懸念されるヒートポンプの除霜運転作動時にも継続的な穀物乾燥が行えるため,着霜の発生と除霜運転の作動の頻発による穀物乾燥への悪影響を回避可能な構造とした。本システムによる籾乾燥試験の結果,乾燥速度は1.0 %w.b./hと循環式熱風乾燥機と遜色無い値であった。品質面では,胴割れの多発は認められなかった。比エネルギ消費量は,2.6 MJ/kg-H2O,穀物水分1 kgの乾減に要したCO2 排出量は3.1× 10-4 t-CO2/kg-H2Oであった。一般的な循環式熱風乾燥機の値と比較して,比エネルギ消費量は54%,CO2 排出量は23%の低減効果となった。乾燥期間中の平均外気温は15.4 ℃であり,ヒートポンプユニットの成績係数(COP)は3.2であった。これより,設計した穀物乾燥システムは,循環式乾燥機における慣行の作業能率を維持しつつ,ヒートポンプの性能を発揮することで,穀物乾燥の省エネ化およびCO2 排出量の低減が可能であることを確認した。
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