膜分離技術は, 溶液中の物質を分離するのに非常に効果的な方法である。限外ろ過膜を用いることで, 溶液を加圧するだけで特定の物質を溶液から分離できる。また, 逆浸透膜を使用することで, 加熱することなく溶質を濃縮することが可能である。本資料では, 施設園芸における環境問題を改善するため, 膜分離技術の応用の可能性について検討する。
まず, 膜分離技術を概説した後, 農業分野における過去の応用研究についてまとめた。その結果, 園芸分野への膜分離技術の応用はわずかしか報告されていないことが明らかになった。一方, 地下水中の農薬や肥料成分の濃度が上昇していることから, わが国では地下水の水質規制が始まろうとしている。従って, 農業分野, もちろん施設園芸分野においても排水や農薬, 肥料成分の排出を抑え, 再利用をはかる必要がある。そこで著者らは, 水耕栽培においては水や養液の再利用に, 膜分離技術, 特にナノろ過膜が重要な技術の一つであることを提案する。
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