農業施設
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35 巻, 2 号
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  • 李 柏旻, 新屋 文隆, 張 振亜, 前川 孝昭
    2004 年35 巻2 号 p. 75-82
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    従来の固定化担体と, 無機物, 微量金属とビタミンB群を包括した新規包括担体を用い, 完全混合型リアクタ (CSTR) の性能を比較研究した。これらのリアクタ温度を25, 15, 5℃に調整し, 汚水処理場の中温消化リアクタから採取した汚泥を6ヵ月間馴養し, 低温メタン生成菌を接種した。新規包括担体を開発し, 低温バイオガスリアクタにおいて実験した。新規包括担体は従来のものに比べて100, 1000, 5000, 10000倍濃度の無機物, 微量金属とビタミンB群をグルコマンナンゲルに内包し, これをPVAゲルを用いて包括した。担体の外径は, およそ4~5mmである。担体の充填率は有効容積の5~20%, 有機酸負荷は1~4kg-VAm-3d-1, 平均水理学的滞留時間 (HRT) は20日の一定とし, 3連繰り返しの実験を行った。その結果, 新規包括担体を用いたCSTRの最適運転条件は, 1000倍濃度の無機物, 微量元素, ビタミンB群, また有機酸負荷3.5~4kg-VAm-3d-1と充填率10%であった。メタン生成菌活性評価 (CH4-mLd-1g-VSS-1) の視点からは, 低温バイオガスリアクタの運転温度は15~25℃が望ましい。
  • ハウス栽培でのコンポストガス施用が作物生長に及ぼす影響
    加藤 仁, 東城 清秀, 渡辺 兼五
    2004 年35 巻2 号 p. 83-92
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    有機性廃棄物のコンポスト化過程で発生するコンポストガスの二酸化炭素成分の作物栽培施設での利用を検討するため, コンポストガス成分の作物生長への影響ならびにガス成分の回収処理に関する実験を行った。
    コンポストガスの成分である硫化水素やメチルメルカプタン, アンモニアは, 標準ガスを利用した実験により, 栽培ハウスのような閉鎖された栽培環境において, 作物生長に好ましくない成分であった。生物回収はアンモニアに対する回収能力は高いが, メチルメルカプタンや硫化メチルに対する回収能力は低かった。また, 環境の温度により回収能力に変化が生じた。活性炭と触媒フィルタを利用した物理回収ではアンモニアに対する回収能力は低く, 揮発性硫黄化合物に対しては, メチルメルカプタンの回収能力が高かった。しかし, 硫化メチルに関しては, 触媒による化学変化から副次的な成分が発生した。コンポストガスに対して生物回収および物理回収処理を行うことで, 栽培ハウス内の作物へ施用しても, 目だった障害は生じなかった。大気組成条件下で育てた葉ダイコンよりも, 生物回収・物理回収処理したコンポストガスを施用した葉ダイコンの方がSPAD値は高かった。
  • 福重 直輝, 阿部 佳之, 朴 宗洙, 伊藤 信雄
    2004 年35 巻2 号 p. 93-102
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    吸引通気式発酵処理の排気中のNH3は圧送通気式に比べ高濃度となり, 新たな脱臭方法を検討する必要がある。モミガラにリン酸を1:0.5, 1:1.0, 1:1.5, 1:2.0, 1:2.5の比率で添加した材料を回収資材 (吸着材) に使用し, 高濃度アンモニアの脱臭および回収実験を行った。直径約15cmの円形吸着槽に回収資材を50cm (堆積高さ) 充填し, 4000ppmのアンモニアガスを通気した場合, 吸着時間は約28時間で, 回収資材1kgのアンモニア吸着量は159gN (1:2.0) であった。これは添着炭の約2.6倍, ゼオライトの約23倍の吸着量に相当した。吸着操作後の回収資材はpHから推察すると, リン酸二水素アンモニウムとリン酸水素二アンモニウムがモミガラに付着したものと考えられる。吸着操作後, 回収資材からのアンモニアの再揮散は放置期間中気温30℃を超えた日数に関係が見られたことから, アンモニアの再揮散と外気温との関係について, さらなる検討が必要であった。
  • 加藤(河上) 博美, 干場 信司, 野田 直行, 森田 茂, 池口 厚男
    2004 年35 巻2 号 p. 103-111
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    筆者らは, これまで農業生産システムの評価が経営的収益性の評価のみに偏っていたことを反省する立場から, 化石エネルギーの利用量および余剰窒素量をも加えた3指標を用いて, 酪農生産システムを多面的に評価することを試みてきた。前報では草地型酪農専業地帯であるA町を対象として3指標を用いた評価を行ったが, 本研究では, 新たに畑作酪農混合地帯であるB町も調査対象として3指標を用いた評価を行うとともに, 両地域の比較を行った。
    結果として, 単位面積あたりの成牛換算頭数は, A町: 1.4±0.4, B町: 2.5±0.7 [頭/ha] であり, 飼養密度は, B町がA町よりも高かった。また, 成牛1頭あたりの生乳生産量は, A町: 6.9±1.2, B町: 7.8±1.0 [t/頭] とB町の方が高い結果となり, B町の方が所有している経営面積に対して集約的経営をしていた。この結果, 単位面積あたりの農業所得は, B町の方が高い結果 (A町: 212±84, B町: 395±145 [千円/ha]) となったが, 経営の経済効率を示す農業所得率は, A町の方が高かった (A町: 36±10, B町30±8%)。投入化石エネルギーはA町: 39±14, B町91±32 [GJ/ha] であり, エネルギー効率を示すエネルギーの産出投入比は, A町: 2.0±0.5, B町2.4±1.5であった。余剰窒素は, A町: 106±51, B町268±93 [kg/ha] とB町の方が高いという結果であった。単位所得を得るために投入した化石エネルギー量である投エネ所得比は, A町: 210±117, B町: 267±172 [MJ/千円] となっており, B町の方が同じ所得を得るために投入される化石エネルギー量は高かった。単位所得を得る際に余剰となった窒素量である余剰窒素所得比は, A町: 0.6±0.4, B町: 0.8±0.5 [N-kg/千円] であり, B町の方が同じ所得を得るために環境に与える負荷が多いと推察された。以上の結果により, 畑作酪農混合地帯の典型であるB町は農業所得自体では高いものの, 環境に対する負荷の面から見ると, 草地型酪農地帯の典型であるA町の方がより環境に負荷をかけていない生産システムであるといえる。今までは, 農業所得の高かったB町の方が高い評価を受けてきたわけであるが, 環境という側面を加味した多面的な評価指標を用いて評価することにより, 今までとは異なる評価結果が得られた。このことから, 多面的評価指標による評価の必要性が地域間の比較においても明らかになった。
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