農業施設
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30 巻, 1 号
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  • 鈴木 啓太郎, 前川 孝昭
    1999 年30 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    玄米の新しい利用法を開発する目的で, 発芽玄米の製造を試みた。玄米の良好な外観と食品機能性を保持させるため, 発根を抑制した出芽が得られる環境制御法を検討した。発芽に影響する酸素濃度の制御を考慮して, 気相発芽試験と液相発芽試験を行った。玄米を気相下で静置した気相静置発芽では, 静置した液中での液相静置発芽および流動化させた液中での液相振とう発芽と比較して, 玄米発根後の根の発達が最大であった。液相静置発芽においては, 発芽初期の発根が抑制され, さらに幼芽の出芽遅延とその形態むらが多く見られた。一方, 液相振とう発芽は, 発芽初期の発根が抑制され, 液相静置発芽より幼芽の出芽が早く, 形態のむらが少なかった。液相発芽では, 静置および振とう発芽ともに, 液量に対する玄米の供試重量が多いほど, 出芽後の芽の伸長が遅延した。
    玄米の完全浸漬, 液の振とうによる流動化および30℃前後の液温保持によって, 発根を抑制した出芽が得られた。振とうによる液の流動化は, 胚芽部に溶存酸素を供給する効果が認められ, 出芽と芽の発達速度は溶存酸素濃度の影響を受けていることが示唆された。
  • 李 文奇, 張 振亜, 前川 孝昭
    1999 年30 巻1 号 p. 11-20
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本論文は, ロックウールを用いた固定床メタン発酵槽のアンモニアによるメタン発酵阻害および回復特性を調べ, 遊離アンモニアを考慮して検討した。
    その結果, メタン発酵槽へのアンモニアの影響はアンモニア添加濃度, 添加方式, 水理学滞留時間 (HRT) および発酵槽の有機酸負荷によるものであることが判明した。アンモニアの瞬時添加では, HRTを1日および酢酸負荷を1.5, 4.0, 7.0g/L・dayに設定した時, アンモニア態窒素の最大許容瞬時添加濃度はそれぞれ20, 20, 12g-N/Lであった。酢酸負荷を同じく設定し, HRTを5日とした時には, アンモニア態窒素の最大許容瞬時添加濃度はそれぞれ20, 15, 8g-N/Lであった。アンモニアを連続添加した場合のメタン発酵が順調に進行する最大アンモニア態窒素濃度は発酵槽の酢酸負荷と相関していたが, HRTとの相関性は認められなかった。酢酸負荷を1.5, 4, 7g/L・day, HRTを1, 5日に設定した時, メタン発酵が阻害を受けず, 順調に進行するアンモニア窒素濃度はそれぞれ16.5, 15, 12g-N/Lであった。
    発酵阻害が生じてメタン発酵が停止した時, アンモニア濃度の低い培地をメタン発酵槽に供給して発酵槽の中のアンモニアが洗い出されて低濃度になる約2週間経過後にメタン発酵は完全に回復した。
  • 佐竹 隆顕, Ahmad A. ADDO, 前川 孝昭, James A. BARTSCH
    1999 年30 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    MA貯蔵時のリンゴの糖度や酸度などの内部品質およびリンゴの発するアロマの変動予測を3層のBPニューラルネットワークにより試みた。ふじおよび王林の2品種のリンゴをそれぞれポリエチレンバッグに詰め, 3℃, 10℃および室温といった温度条件の下で4~22週間の貯蔵試験を行った。果肉の糖度および酸度, 果皮色, 果肉硬度, 質量およびバッグ内のCO2, O2ならびにアロマ濃度などといったMA貯蔵時の11種類の特性値を貯蔵期間中2週間毎に破壊および非破壊法により測定した。
    このうち, 非破壊の測定が可能であるバッグ内のCO2およびO2濃度, 果皮色情報としての明度指数および色相角, 貯蔵時の質量損失などをリンゴの内部品質等の予測を目的としたニューラルネットワークの入力データとして実測値より選択する一方, ネットワークの教師信号として糖度および酸度の実測値ならびにアロマ濃度の実測値それぞれを入力し, ニューラルネットの学習を行った。
    MA貯蔵時の果肉の糖度および酸度, ならびにアロマ濃度の変動を予測するニューラルネットワーク・シミュレーションの結果, ネットワークの出力値と糖度および酸度の測定値, ならびに同出力値とアロマ濃度の測定値はおおむね良く近似し, 貯蔵したリンゴの内部品質の非破壊評価支援技術としてのニューラルネットワークの可能性の一端が明らかとなった。
  • プラスチックハウス基礎用簡易杭の設計法
    豊田 裕道, 森山 英樹, 瀬能 誠之, 前川 孝昭
    1999 年30 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    関東ローム土 (火山灰質粘性土) 地盤におけるプラスチックハウスの基礎として, 角形鋼管杭を用いた基礎の設計法を検討した。水平方向耐力の算定に必要となる地盤の水平地盤反力係数に関して, 簡易な地質調査法であるスウェーデン式サウンディング試験の結果を用いる推定法を提案した。引抜き抵抗力の算定には, 一般の土木・建築分野で用いられている周面摩擦応力をN値から推定する方法を用いた。地盤強度と杭の施工性から長い杭か短い杭の選定を行い, 杭単体での引抜きに対する抵抗力が不足する場合に井桁を用いて補強する方法を提案した。また, 一般的な連棟ハウスを対象として杭基礎の設計例を示した。
  • 屋根面と壁面の実物大耐力実験
    小川 秀雄, 津下 一英
    1999 年30 巻1 号 p. 41-52
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    大規模化により桁行き方向へ長く続く構造物となるガラスハウスについて, 桁行き方向へ地震波が伝搬された場合の屋根面と壁面の変形状況を再現した実物大実験を行った。実験結果のガラスに損傷が発生する変形はS波を表面波と仮定した地震応答解析結果の変形以上であり, 現状のガラス留め方法で特に問題の無いことが確認された。また, 屋根面へ作用する積雪荷重や暴風時の吹き上げ力を再現した実物大実験も行い, 荷重の作用方向による耐力の相違と決定要因を把握し, 得られた耐力と園芸用施設安全構造基準に示されている各地の荷重値との対応を検討した。
  • 栽植密度および花房より上位に残す葉の数が生育・収量に及ぼす影響
    小林 尚司
    1999 年30 巻1 号 p. 53-60
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    栽植密度と花房より上位に残す葉数が, 養液栽培による一段どり栽培トマトの生育と果実収量に及ぼす影響について調べた。栽植密度300~3,000株/aで検討したところ, a当たり果実収量は栽植密度が高くなるほど大きくなったが, 株当たりの果実収量は, 栽植密度1,500株/a以下で大きくなった。‘桃太郎’に比べ‘マルチファースト’では, 低密度の栽培になるほど着果数が多くなり, 株当たり果実収量が大きくなった。両品種とも, 栽植密度が高くなると平均果重は小さくなり, また, 空洞果が増えて正常果率は低くなった。平均果重の目標を150g~200gにおくと, 栽植密度は‘桃太郎’で700~1,200株/a,‘マルチファースト’で1,000~1,700株/aで目標を達成できる。これらのことと, 苗のコストや作業能率等を考慮すると, 最適な栽植密度は,‘桃太郎’の冬播き春どり栽培では1,200株/a, 他の作型や‘マルチファースト’では1,000株/aと考えられる。栽植密度1,000株/aで秋播き冬どり、春播き夏どり栽培をすると,‘桃太郎’で700kg/a以上,‘マルチファースト’で1,000kg/a以上の高い収量が得られたが, 冬播き春どり, 夏播き秋どり栽培ではそれより低くなった。‘桃太郎’の場合, 茎葉が繁茂する夏播き栽培や低日照期の栽培では空洞果が多く, これを防ぐには, 花房より上位に残す葉を1枚にするのが良く, それ以外の作型や‘マルチファースト’では全般に正常果率が高く花房より上位の葉数は3葉が良かった。
  • 基礎周辺が水浸状態となる場合の杭基礎耐力
    豊田 裕道, 森山 英樹, 瀬能 誠之, 前川 孝昭
    1999 年30 巻1 号 p. 61-67
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    これまでプラスチックハウスの基礎として, コンクリートを用いない杭基礎について検討してきた。ここでは, 豪雨により土壌が飽和し, 基礎周辺にゆるみを生じた場合の対策について検討した。すなわち, 台風時等の豪雨により土壌の飽和・水浸状態がどの程度の時間遅れで生じるかを土壌物理の観点から検討し, プラスチックハウスを設計する上で考慮すべき重要な課題であることを明らかにした。さらに, 井桁補強を行った短杭について, 杭の周辺土を水浸状態にした後に水平引張りおよび鉛直引抜きの現地実験を行った。この結果, 通常時の不飽和状態に比べてピーク荷重で3割程度の減少が見られた。これらの結果から, 長時間飽和状態が続くような地形・地質の場合の強度の低減を考慮する必要性を明らかにするとともにその目安を示した。
  • 1999 年30 巻1 号 p. 68
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
  • 豚糞からのアンモニアの物質伝達率
    福重 直輝, 川西 啓文, 森嶋 博, 宮野 則彦, 都 甲洙
    1999 年30 巻1 号 p. 69-76
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本研究は豚舎内でのアンモニア成分の発生量を推定するため, 豚糞表面からのアンモニアの発生に関わるファクターの定量化を行った。豚糞からのアンモニア成分の発生量は次式から推定できる。
    maDa・CA・(Pa/(Ra・T))
    ma: アンモニアの発生量 (kg/m2/h), αDa: アンモニアの物質伝達率 (m/h)
    CA: 豚糞のアンモニアの揮発率, Pa: アンモニアの飽和蒸気圧 (kg/m3)
    Ra: アンモニアのガス定数 (m/K), T: 絶対温度 (K)
    本研究では, このアンモニアの物質伝達率を求めた。ナフタリンで豚糞のレプリカモデルを作り, 豚糞表面からの物質伝達に関する実験式をシャーウッド数, レイノルズ数, シュミット数の関係式から求めた。その結果, 気流速 (u) に対し, アンモニアの物質伝達率は次式の範囲にあることを明らかにした。
    αDa=91~99u0.78 (u: 気流速)
  • 冷房性能
    小綿 寿志, 佐藤 義和, 干場 信司, 影山 敏司, 杉吉 一行
    1999 年30 巻1 号 p. 77-82
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    実規模アイスポンドシステムを用いてバレイショの長期貯蔵を行い, その際の冷房性能および氷の融解に関わる熱負荷を測定した。その結果, 最大冷房能力はほぼ設計通りの13.3kWであり, この時の冷房成績係数は約1.7であった。3月末から5月末までは貯蔵庫内はバレイショ貯蔵に好適な気温2℃, 相対湿度約93%に維持された。6月以降に電気冷房機を併用した場合, 加湿器を使用することなく庫内を高湿度に維持でき, バレイショの貯蔵のほかアスパラガス,キャベツの予冷でも良好な結果を得た。氷は8月末まで残存し, 8月中旬まで氷を利用した冷房が可能であった。アイスポンド各面の熱負荷の中で底面および法面に比べ氷の上面からの侵入熱量の割合が際立って大きかった。アイスポンドの氷の融解に関わる熱負荷の総和は,製氷完了時に推定した氷の全融解潜熱量とよく一致した。
  • 貯蔵バレイショの品質と流通上の問題
    小綿 寿志, 佐藤 義和, 干場 信司, 鱈場 尊, 安村 敏博
    1999 年30 巻1 号 p. 83-88
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    実規模アイスポンドシステムを用いてバレイショを収穫翌年の6月末までの7か月間にわたり2℃で貯蔵し, 品質の変化を調査した。出庫時のバレイショの品質は極めて良好であり, 減量率は1~6%と小さく, 発芽やしわの発生はなく, サラダに加工した品質も良好で, また還元糖含量の増加により甘味が増した。バレイショ出庫時には塊茎表面に結露を生じるため, 強制通風により速やかに乾かす必要がある。また選果済み品を段ボール箱入りで貯蔵する場合には, 品温上昇による発芽と過飽和によるカビの発生を抑制するために,箱内の通気に留意しなければならない。また出庫後は発芽が早いため, 1~2週間以内に消費されるような流通上の戦略が必要である。
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