農業施設
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43 巻, 4 号
第43巻第4号(通巻135号)
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 大橋 慎太郎, 中野 和弘, 田口 弘毅, 古野 伸典
    2012 年43 巻4 号 p. 123-130
    発行日: 2012年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    積雪寒冷地域におけるハウス栽培において,冬期暖房用燃料の高騰により暖房コストの低減が熱望されている。また,地球温暖化効果ガスとしてCO2 排出量の削減が喫緊の課題となっている昨今,化石燃料を使用しないヒートポンプ技術の応用が再注目されている。特に積雪寒冷地域ではデフロストのない水熱源ヒートポンプの応用が期待される。水熱源ヒートポンプの性能向上は目覚ましいが,熱源のための井戸掘削費用等の負担が課題となり普及に至っていない。そこで積雪寒冷地域の生活基盤として普及している既存消雪設備を利用した水熱源ヒートポンプシステムを構築した。灯油式ボイラによるハウス環境制御と比較し,栽培環境の再現性,暖房コスト,CO2排出量,暖房コストに消雪コストを含めたトータルコストから本研究で構築した水熱源ヒートポンプシステムの導入効果を評価した。その結果,積雪寒冷地域において暖房コストおよびCO2排出量削減に貢献するシステムであることが示された。
  • 古野 伸典, 菅原 敬, 高杉 真司, 桂木 聖彦, 奥島 里美, 佐瀬 勘紀
    2012 年43 巻4 号 p. 131-137
    発行日: 2012年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    燃油価格の高騰により,寒冷地域の施設園芸においても導入が進んでいるヒートポンプシステムについて,一次側熱源の違いがシステムCOP(Coefficient of Performance,成績係数)などの運転特性に及ぼす影響について検討した。その結果,地中熱源ヒートポンプシステムのシステムCOPは,調査期間を通して概ね3.5から4.0の範囲で推移し,調査期間中の平均は3.89と高かった。一方,地中熱源ヒートポンプシステムの放熱係数から求めた空気熱源ヒートポンプシステムのシステムCOPは,概ね1.8から2.5の範囲で推移し,調査期間中の平均は2.14と低かった。また,地中熱源ヒートポンプシステムの暖房能力は,空気熱源ヒートポンプシステムに比べて約67%高い結果が得られた。地中熱源ヒートポンプシステムのコンプレッサーユニットの消費電力は,空気熱源ヒートポンプシステムに比べて30%以上少なかった。また,地中熱源ヒートポンプシステムは,コンプレッサーと送風ファンだけでなく,不凍液の循環ポンプを運転する電力も必要であるが,これらすべての消費電力を積算しても,空気熱源ヒートポンプシステムよりも22%少なかった。
  • ヴィチャンポール ブンヤワット, 渥美 寿彦, 帖佐 直, 東城 清秀
    2012 年43 巻4 号 p. 138-144
    発行日: 2012年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,高度に除湿された低温空気を穀物の品質保持乾燥に利用することを検討した。主にコンプレッサとペルティエ素子を使った除湿器で構成される小型除湿空気乾燥試験装置の乾燥性能を湿潤な気象条件のもとで大麦と小麦を供試して試験した。乾燥装置の品質保持効果については香り米を供試して試験した。試作乾燥装置によって,既往文献の報告と同程度以下の低温・低湿度の空気が得られた。空気流量が5 L/min のとき,相対湿度74.9%,RH の外気を取り込んで,17.2%,RH まで排出空気の相対湿度を57.7%低減させることができた。取込空気と排出空気の相対湿度の差は空気流量の増加にほぼ比例して減少した。大麦の乾燥実験において,含水率35%,d.b. から15%,d.b. の範囲では,空気流量が5 L/min と20 L/min の両者ともほぼ同様に乾燥が進んだが,15%,d.b. 以下になると空気流量20 L/min の場合は大きく乾燥速度が低下した。しかし,今回の実験では除湿空気の流量が乾燥速度に及ぼす影響を明確に示すことはできなかった。香り米の香り成分 AcPy の保持効果を乾燥装置の乾燥温度を変えて,比較検討した。その結果,除湿低温乾燥装置によって AcPy 成分は初期成分濃度と同程度に保持できることが確認された。
  • 折笠 貴寛, 武 龍, ロイ ポリトシュ, 村松 良樹, 矢野 歳和, 椎名 武夫, 田川 彰男
    2012 年43 巻4 号 p. 145-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    約10 mm 厚に成形したキウイフルーツスライスの真空乾燥特性と乾燥収縮について検討した。真空乾燥は1.33~2.00 kPa の減圧下,30~70 ℃の5段階の温度条件下において行った。真空乾燥過程における試料収縮(体積変化および表面積変化)について解析し,体積比は含水率の一次関数で,表面積比は含水率の指数関数で,それぞれ近似できることを明らかにした。収縮のデータを基に,キウイフルーツの真空乾燥特性について検討したところ,乾燥過程における含水率変化は,減率乾燥第1段においては指数モデル,減率乾燥第2段においては Page モデルの適合性が良好であった。
  • 森山 英樹, 奥島 里美, 佐瀬 勘紀, 石井 雅久
    2012 年43 巻4 号 p. 152-159
    発行日: 2012年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    2012年5月6日に発生した複数の竜巻によって,茨城県および栃木県下のパイプハウスに甚大な被害が生じた。竜巻の進路上にあって,突風によって構造が破壊されたパイプハウスを現地調査し,被災特徴からパイプハウスと風圧力の関係について整理した。パイプハウスは軽量構造物であり,F1クラス以上の竜巻の直撃に対して抵抗する性能を有していない。パイプハウスの被災パターンは,風上側側面の転倒が顕著であった。これは,台風による被災の場合と近似している。パイプハウスは,竜巻の上昇流ではなく,竜巻の到達初期に水平方向の風で被災する可能性が高い。また,被覆材や構造の差異がパイプハウスの被災パターンに及ぼす影響はみられなかった。急激に増加した風速によって,被覆材が破断せずに風圧力を骨組に伝達した。パイプハウスの補強としては,アーチパイプと桁行直管の接合金具の改良や筋交いの増加が挙げられる。
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