農業施設
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30 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 内ヶ崎 万蔵, 世良田 和寛, 宮本 眞吾
    2000 年30 巻4 号 p. 325-332
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    種子の中には色や形状の違いう物が多く含まれ, 播種や移植作業を実施するに当たって, 作業性能と効率に種子の影響がある。これらの問題解決策として, 不良種子の検出によって発芽の高い種子を選別することが考えられる。したがって, 高性能で高速に種子色選別が可能な機械を開発する必要がある。本研究では (1) マシンビジョンによる自動種子色選別機の試作, (2) 種子の色を画像処理するプログラムの検討, (3) 色選別で分類した種子と発芽との関係などを行った。種子はトマト (Lycopersicon esculentum Mill.), キャベツ (Brassica oleracea), ブロッコリ (Lactuca sativa) を供試し, マシンビジョン技術による工業用画像処理装置 (FAV-500) を活用した選別では, 0.08~0.1秒間に1粒の選別が可能であった。また, 色選別種子の発芽試験の結果, 同比重のトマト種子では白が大きくなるほど発芽勢が高い (95%以上), キャベツの場合には赤が大きくなるほど発芽勢が高い (94%以上), プロッコリの場合は発芽勢に影響がないことが明らかになった。
  • コンポストの化学的組成と花粉管伸長との関係
    任 順栄, 院多本 華夫, 張 振亜, 前川 孝昭
    2000 年30 巻4 号 p. 333-342
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    強制通気法および切り返し堆積法の高温急速コンポスト化によって豚ふん, 鶏ふんおよび牛ふんを処理し, 経日的に得られたコンポスト水抽出液で培養した花粉管の伸長状況からコンポストの腐熟度を検討した。
    豚ふんおよび鶏ふんの窒素含有量は風乾物当り2.09~3.43%で多く, 牛ふん (1.73%) でもっとも少なかった。窒素含有量の少ない牛ふんの実験区では, 培養した花粉管伸長とコンポストのNH4-N濃度との間に負の高い相関関係 (R2=0.59~0.80)が見られた。また, 牛ふんの実験区では, コンポスト化が進むにつれてNH4-N濃度が高くなっていた。コンポストのpHはいずれも7.57以上であったことから, コンポストには酸性生成物の残留は少なかったと言える。また, コンポストのECとNH4-N濃度との間に正の高い相関関係が見られたことから, EC値の変動には, NH4-N濃度の変動が深く関係していたと言える。
    以上のことから培養した花粉管伸長の抑制にはコンポスト化過程から得られたコンポストの水抽出液のアンモニア (NH4-N) が深く関与したと言える。従って, 花粉管培養はコンポストの腐熟の進行状況を観察するのに有効な手段の一つであると言える。
  • 風洞実験
    奥島 里美, 佐瀬 勘紀, 前川 孝昭, 池口 厚男, B. J. BAILEY
    2000 年30 巻4 号 p. 343-352
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    自然換気における多連棟フェンロ型温室内温度分布に関する風洞実験を行った。実験には床面を加温した縮率1/12の温室模型を用い, 実寸で0, 1, 2mの高さの植物群落がある場合について, 0~3.9m・s-1の屋外風速条件下で測定を行った。相似条件としてはアルキメデス数の一致を採用した。
    群落がない場合, 熱電対により測定した温室内気温は, すべての風速条件で風上側の方が風下側より高かった。これは風速が0の場合でさえ, 循環流が形成されていることを示している。床面温度のわずかな違いもこの理由の一つかもしれない。
    風速が1m・s-1以下では, 壁面や床, 屋根近傍を除いた温室内平均気温は外風速に関係なく, ほぼ一定であった。風速が1m・s-1を越えると外風速の増大とともに, 温室内平均気温は減少した。
    1m高さの群落がある場合, 群落がない場合に比べて高さ1m以下の気温は高かったけれども, 中央高さにおける気温は低かった。群落がない場合には室内のほぼ全体を占めていた弱い循環流が, 群落が存在する場合には群落上の自由空間に存在した。群落高さが2mの場合, 群落から上の自由空間への熱の放出は群落高さが1mの場合よりも小さかっが, 通路部分では逆に大きくなった。また, 自由空間での気温分布は群落高さが2mの場合が最も変化が大きかった。
  • オジジョ オランゴN. K, 木村 俊範, 清水 直人, 小疇 浩
    2000 年30 巻4 号 p. 353-364
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    Hard-to-cook (HTC) を促進するため, 収穫直後の新鮮な大豆を高温高湿条件で貯蔵し, 加熱前に大豆を塩化カルシウム溶液で浸漬した。貯蔵3ヶ月後の煮豆子葉の硬度は, 貯蔵前の煮豆子葉が示した硬度の5倍であった。これは, 貯蔵による細胞壁を構成する高分子全体の相互結合のためである。子葉の硬度減少を導く熱変性高分子の構造的な相互作用全体を‘ソフトニングサブストレイト’とした。ステップワイズ崩壊モデルを用いて解析を行った加熱時間と煮豆子葉の硬度のグラフプロットから, 4つのソフトニングサブストレイトが認められた。これらの4つのソフトニングサブストレイトが見かけの活性エネルギーを用いて特徴づけられた。このうち2つのソフトニングサブストレイトがペクチン様物質のβ-脱離反応と直接的に係わっていることが見出された。したがって貯蔵によりペクチンβ崩壊反応に影響を及ぼす要因が煮豆子葉の硬化を直接的に誘因している一つの機構であると考えられた。
  • 小林 敏道, 苫米地 司, 干場 信司
    2000 年30 巻4 号 p. 365-372
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, 積雪寒冷地域に建設される畜舎施設を対象とし, 1997年3月に制定された畜舎設計規準に基づいて設計した場合の建設コストについて検討を行った。積雪寒冷地域で畜舎を計画する場合には, 温暖地域に比べて外力として加わる積雪荷重と基礎構造の設計に用いる凍結深度が大きくなる。これらの積雪荷重および凍結深度の差異が建設コストに与える影響を, 平屋・切妻屋根の鉄骨構造畜舎を対象として分析した。対象とした畜舎は北海道内で一般的に建設されている畜舎をモデル化したものである。50kgf/m2ごとに400kgf/m2まで変化させた積荷重と, 400mmから1,200mmまで200mmごとに変化させた凍結深度を組み合わせた設計条件で構造設計を実施し, 畜舎施設における建設コストの大部分を占める躯体工事費を積算した。積算は, 躯体工事である土工事, 鉄筋工事, 型枠工事, コンクリート工事および鉄骨工事について行った。垂直最深積雪量が1m以上の多雪区域における躯体工事費は凍結深度を一定とした場合, 積雪荷重100kgf/m2の増加にともない約8%増加する。また, 積雪荷重を一定とした場合, 凍結深度200mmの増加にともない約6%増加する。さらに, いずれの場合も土工事, 鉄筋工事, 型枠工事およびコンクリート工事の基礎工事にかかわる総工事費が躯体総工事費の50%以上を占め, 凍結深度が深くなるとともに基礎工事費の占める割合が増加する傾向が明らかになった。
  • 森岡 理紀, 魏 斌, Christopher P. NORMAN, 前川 孝昭
    2000 年30 巻4 号 p. 373-382
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    小規模なCELSS (閉鎖生態系生命維持装置) の動的状態を決定するため, エントロピー理論が応用された。またその発展状況をテストするために, 拡張ロトカーボルテラ生態学モデルが使われた。エクセルギの変化はCELSSの発展状況に関係していることが発見された。加えてシミュレーションの結果からは, 異なった二種の漸近的定常状態が観察され、数学的に考察された。このシミュレーションモデルは, CELSSの構築における発展状態と過程を研究する上で適切なものであると考えられる。
  • オジジョ オランゴN. K., 木村 俊範, 清水 直人, 小疇 浩
    2000 年30 巻4 号 p. 383-394
    発行日: 2000/03/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    HTC (hard-to-cook) を促すため新鮮な大豆粒を30℃/79% (温度/湿度) の条件で貯蔵した。応力緩和や緩和時間の分布 (Alfrey's 近似法) を用いて貯蔵大豆子葉の粘弾性を解析した。生のままの子葉と吸水した子葉の緩和挙動が3つのマックスウェル要素と弾性要素で, 対照区の吸水した試料が1つのマクスウェル要素と弾性要素で記述されることを確認した。それぞれのモデルの緩和時間 (τ123) が, 生のままの子葉については貯蔵日数とともに急激に減少したが, 吸水した子葉では増加した。Alfrey's 近似を用いてτ123に対応する3つのスペクトルが重ね合わされた緩和スペクトル分布が全ての試料で得られた。生のままの子葉では, 応力緩和が主に緩和時間τ1で特徴づけられ, 緩和スペクトルは貯蔵日数とともに緩和時間の分布幅が狭くなり, 分布が全体的に左側に移動した。吸水した子葉では, 分布の主体がτ2によるものであり, 分布の幅は貯蔵期間が長くなると狭くなり, 分布が右側に移動した。吸水した子葉において緩和機構の特徴を表すτ1が貯蔵とともに著しく増加した。これは5ヶ月間の貯蔵期間でそれらのτ1分布の幅が大きくなったためである。これは貯蔵で促進される緩和に影響する構造的型式が強くなることを示唆している。こうしたHTCが大豆子葉の粘弾性に及ぼす影響は子葉の細胞壁の構造変化に関係いることから, 応力緩和試験を生の大豆子葉における状態の変化の測定に活用できることを示した。
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