農業施設
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39 巻, 3 号
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  • 大橋 慎太郎, 中野 和弘, 栄木 隆志
    2008 年39 巻3 号 p. 183-189
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    近年のエネルギー問題において, 石油代替エネルギーの利用が取りただされている。このような事態を背景に, これまで筆者らは石油代替エネルギーとして炭窯排熱に着目し, そのエネルギー賦存量における農業生産への有益性を示してきた。本研究では炭窯排熱のうち, 煙道口からの排熱を回収することについて検討した。
    製炭技術者 (以下, 技術者) は煙道口からの煙色, 煙臭を指標として, 窯内環境の制御を行っている。しかし, 排熱回収のため煙道口に熱交換器を設置することになれば, 技術者による従来法での製炭が不可能となる。従って, 炭化における窯内環境を機械的に制御する必要がある。そのための制御指標を製炭時における各測定データから抽出した。すなわち, 技術者の製炭ノウハウを窯内温度, 昇温速度, 排ガス中の水分量, タール量の変化および炭化プロセスから比較, 解析することで, 製炭ステージが移行する時点の判断指標を定量的に得た。また, 炭窯の煙道口からの排熱を安定的に回収するための方法について検討した。
  • 奥島 里美, 水谷 孝一, 佐瀬 勘紀, 石井 雅久, 池口 厚男, 森山 英樹
    2008 年39 巻3 号 p. 191-198
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    施設栽培において気流を保つことは, 気温の均一化や結露防止といった効果を生むが, 施設内の空気に振動を与えるならば, 植物体などの障害物の後ろでも空気の振動が伝わるので, 群落内部でも気流速を均一に確保しやすいのではないかと考えられる。そこで, まず, ボックス内において空気振動を発生させ, 空気振動がどのように培地やトマト苗個体からの蒸発散量に影響を及ぼしているかを調べた。振動数を0, 5, 15, 24Hzと変えた場合, トマト苗および培地から大気への水蒸気拡散抵抗 (蒸発抵抗および蒸散抵抗) は15Hzで最も小さくなる傾向が見られ, その時のボックス内気流速は共振により15Hz付近で大きくなっていた。すなわち蒸発散は振動数自体ではなく, 振動により発生したボックス内気流速に左右されていた。振動数が5, 15, 24Hzいずれの場合でも, 蒸散抵抗は気流速の-0.5乗にほぼ比例した。ただし, 同じ気流速でも, 空気振動により発生した場合の培地からの蒸発抵抗はファンにより発生した場合の約1.5~2倍となった。トマト苗からの蒸散抵抗は培地ほどには大きな違いはなかった。
  • 片平 光彦, 鵜沼 秀樹
    2008 年39 巻3 号 p. 199-205
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本報は, 高能率化が必要なエダマメ精選別作業に対し, 低コストで作業内容が改善できる調製作業台について検討し, 生産現地で実証した。
    エダマメ精選別作業では, 調製作業台の高さを70cmにした場合, 上体の傾斜角と屈伸幅が高さ30cmよりも小さくなるため, 作業内容を改善した。調製作業台は, 表面に灰色のポリ塩化ビニル製プレートを敷設し, 作業者の手が届く距離を20cm以上にした選別スペースを持つ調製作業台B型が作業内容の改善に適した。また, 調製作業台B型は, 作業者によるアンケート評価が他の調製作業台よりも良好であった。調製作業台B型を利用した生産者は, 慣行調製作業台よりも精選別作業時の作業能率について71%が“向上”, 総合評価について85%が“使いやすい”と評価し, 作業内容の改善に有効であることを確認した。
  • マイクロ波照射がナタネ圧搾および貯蔵性へ与える影響
    加藤 仁, 小林 有一, 金井 源太, 飯嶋 渡, 竹倉 憲弘, 冨樫 辰志
    2008 年39 巻3 号 p. 207-214
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    搾油施設におけるナタネ圧搾工程でのマイクロ波を利用した前処理法を検討するため, マイクロ波照射処理したナタネの圧搾およびナタネ油の貯蔵性, 子葉細胞への影響について実験した。
    ナタネの誘電損率は種子水分に関係し, 種子水分が高くなるほど誘電損率が高くなり, 単位体積当たりのエネルギー損失が大きくなる傾向を示した。マイクロ波照射処理は, 120℃以上で圧搾率に差異が見られ, 同じ設定温度では,外部加熱処理よりマイクロ波照射処理したナタネの圧搾率が高い結果となった。また, ナタネ油の貯蔵性では,マイクロ波照射処理後に圧搾したナタネ油は, 未処理および外部加熱処理後に圧搾したナタネ油に比べて貯蔵中のナタネ油の酸価の上昇が抑制され, 45℃の条件で120日間貯蔵後の酸価は3mgKOH/g程度であった。さらに, それぞれの処理されたナタネの子葉細胞のSEM観察では, 加熱されることで脂質顆粒周辺の構造体が破壊されるのが確認され, その破壊の度合いは外部加熱処理に比べてマイクロ波照射処理が大きい結果となった。
  • 送入空気の温湿度がアンモニア除去性能に与える影響
    原田 泰弘, 道宗 直昭, 古山 隆司
    2008 年39 巻3 号 p. 215-221
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    畜舎から排出される空気等, 低濃度の臭気成分を含む悪臭ガスの脱臭を目的とした生物脱臭技術について, アンモニア除去性能, 窒素成分の分解・除去性能を変動させないために, 送入する空気の温湿度がヤシガラチップを担体とした脱臭材料の温度に及ぼす影響, 排水量を低減する散水方法について検討した。空気の温湿度の影響について検討した結果, 脱臭材料は, 材料中を通過する空気によって潜熱が奪われて温度が低下するため, 脱臭材料の温度対策が必要なときには, 加熱だけでなく, 加湿も必要と考えられた。脱臭試験装置に対して送入空気への加湿機能を追加し, さらに脱臭槽からの余剰排水の排出量を低減できるように散水量を制御して濃度20ppm程度のアンモニアを供して試験した。その結果, アンモニア除去性能, 窒素成分の分解・除去性能は低下することなく安定し, アンモニア除去性能は70~80%程度, 窒素成分の分解・除去性能は57%程度であった。
  • 森山 英樹
    2008 年39 巻3 号 p. 223-229
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    強風下の雨よけ施設の被災特徴を明らかにすること, および設計に必要な雨よけ施設の荷重条件を求めることを目的に, 被災したブドウ栽培雨よけ施設3事例の現地調査を行った。その結果, 以下を明らかにした。
    (1) 被災挙動として, 柱の浮き上がり,もしくは柱 -梁接合および梁- アーチパイプ接合の脱落による骨組構造の破壊が顕著であった。柱が傾く被害はわずかであった。また, 接合部の脱落に起因するアーチパイプの二次被害を除き, 骨組部材自体の破壊はなかった。そのため, 強風下の雨よけ施設では, 水平方向よりも垂直上向き方向の風荷重が支配的であると考えられる。骨組を補強する際は, 屋根面に作用する垂直方向の負圧が主要な荷重であると想定して設計することが合理的である。
    (2) 一般的な温室とは異なり, 雨よけ施設は側面が被覆されていないため, 気流の流れが温室とは大幅に異なり, 構造にかかる風圧分布も異なることが推測される。被災調査結果からもそのことが示唆された。雨よけ施設の耐風設計のためには,正確な風力係数の把握が必要である。
    (3) 緩斜面に建設された雨よけ施設で最大の被害が生じた。緩斜面では風速が速くなる傾向があるため, 雨よけ施設の設計の際は, 立地条件を考慮しなければならない。
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