農業施設
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34 巻, 3 号
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  • 猫本 健司, 干場 信司, 田村 悠子, 河上 博美, 松本 光司, 森田 茂
    2003 年34 巻3 号 p. 193-198
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    畑酪混同地域である北海道のA町において, 畑作農場と酪農場の全戸を対象に実施したアンケートに基づき, 畑酪間で行われている家畜糞尿と敷料との物々交換や, 交換耕作によって生じた地域内の循環窒素量を調査した。酪農場から発生する家畜糞尿由来窒素の1割弱にあたる200[MgN/年] は, 堆肥等の提供あるいは交換耕作により畑作物に利用された。地域内循環を計算に含めない場合, A町の酪農場から発生する窒素負荷量は年間で1.63[GgN/年] になるが, 地域内循環を含めると1.45[GgN/年] であり, 地域内循環により酪農場の窒素負荷量は11%減少していることが明らかになった。
  • 森山 英樹, 佐瀬 勘紀, 小綿 寿志, 石井 雅久
    2003 年34 巻3 号 p. 199-212
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    2002年10月1日20時半頃に, 台風0221が神奈川県川崎市付近に上陸した。関東地方太平洋側を北上した本台風は, 中心付近の最大風速が35m/sの, 関東地方における戦後最大級の強さの台風であった。そのため, 台風の危険半円に位置した千葉県東総地方および茨城県鹿行地方では, パイプハウスを中心とする多くの園芸施設が倒壊等の被害を受けた。
    今後の台風対策に資するために, 被災した園芸施設7事例に関する現地調査を行った。また調査結果の整理・被災園芸施設の構造解析・接合部および基礎の耐風性の算出を行い, 破壊メカニズムに関する考察を加えた。その結果, (1) 南南東風を中心とする風速35m/s以上の風によって園芸施設の被災が生じたことを確認し, さらに事例毎に, (2) 50m/sの風では基礎が浮き上がることと, さらに施工不良基礎では引き抜き耐力が70%以上低減すること, (3) 基礎を現状よりも10cm深く埋設することにより50m/sの風でも浮き上がらなくなること, (4) 斜材の設置されていない鉄骨補強パイプハウスの柱梁接合部は50m/sの風には耐えられないことを明らかにした。また, (5) 風下側妻面の開放による施設内部の負圧増加が屋根を押しつぶそうとする荷重を増加させたとする破壊メカニズムの可能性を指摘し, (6) 風上側に風の流れを大きく変化させる物体が存在する場合の園芸施設に適した風圧力算定方法の必要性について指摘した。
  • 織田 敦, 坂田 悦朗, 笈田 昭
    2003 年34 巻3 号 p. 213-220
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    繊維性バイオマスのメタン発酵特性を解析するために, 小麦外皮であるフスマを選定し, 有機物濃度と水理学的滞留時間をパラメータとして, 1L発酵槽を用いた中温連続発酵実験を行った。ほぼすべての実験区において, 発酵は定常状態に達し, バイオガスの安定生産が可能であった。発生ガスの組成はメタンと二酸化炭素が約50%ずつ含まれており, 他の有機性廃棄物と比較してメタン含有量が少なかった。有機物濃度が高く, また水理学的滞留時間が短くなるにつれて, 有機物負荷が高くなるため, 発酵状態は悪化し, メタン発生量は減少した。この発酵特性を詳細に検討するために Chen-Hashimoto モデルを適用したところ, フスマを原料としたメタン発酵の最適な有機物濃度と水理学的滞留時間がほぼ明らかになった。
  • 河上 博美, 干場 信司, 森田 茂, 野田 哲治, 池口 厚男
    2003 年34 巻3 号 p. 221-230
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    これまでの酪農生産システムの評価は経営的収益性を用いた評価方法が主流であり, 経済効率は確かに向上した。しかし, その一方で高エネルギー投下や環境問題, 食料自給率の低下等の問題を引き起こしている。
    本研究では北海道東部に位置するA町の酪農家197戸を対象として, 経済性だけではなく, 投入化石エネルギー量および余剰窒素の3指標を用いた酪農生産システムの多面的評価を試みた。
    多面的評価指標を用いた評価結果として, 生産乳量1kgあたりの投入化石エネルギー量は, 6.0[MJ/kg], 1haあたりの環境への負荷 (余剰窒素) は106[kg-N/ha] と求めることが可能となった。
    また, 経済性・エネルギー・余剰窒素の3指標から評価することにより, 全体の傾向としては経済性とエネルギーの間および経済性と余剰窒素量の間には, それぞれ正の相関があるものの, 個別の農家については, 経済性による評価が, 必ずしもエネルギーや余剰窒素量による評価と一致しないことが明らかとなった。このことにより, 経済性のみの評価の欠点を補うという視点から多面的に評価することの必要性が明らかとなった。
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