硫酸還元菌だけに阻害を及ぼす抗生物質を添加することによって, CO
2とH
2を基質とする馴養メタン菌及びこれに共生している硫酸還元菌の挙動を調べた。抗生物質を添加しない場合, 1日間の試験管培養における硫酸還元菌の計数値CFCs (colony-forming-curves) は7.2×10
6個/mLから4.4×10
7個/mLまで6倍以上増加した。一方, メタン菌の初期のCFCs増殖は非常に遅く, 2日目に対数増殖期に入った後, 2日間で1.6×10
9個/mLから2.2×10
10個/mLまで増殖した。これに対し, 抗生物質を添加した場合, 硫酸還元菌のCFCsが増加せず, 4日間で0になり, MPBの増殖は貧弱であった。つまり, これは抗生物質の添加により, 硫酸還元菌の生育が阻害され, 硫酸塩の還元ができなくなったことを示した。また, メタン菌は硫酸塩の還元力を持たないため, 硫酸還元菌が阻害されていない場合と比べ, メタン菌の増殖及びメタン生成は著しい減少を示した。この結果から嫌気性メタン発酵における硫酸還元菌とメタン生成菌との共生関係, 硫酸還元菌によるCOD除去, メタンガスの生成に与える影響に関し, これまでと異なった事実が観察された。硫酸塩は共生している硫酸還元菌によって還元され, 生成した硫化物はメタン生成菌の硫黄源となる。これによって, 硫酸還元菌は硫酸塩を硫黄源とするH
2資化性の馴養メタン菌培養に必要不可欠な菌であると考えられる。
抄録全体を表示