本稿では,少量の試料でも測定が可能で,取り扱いが容易であり,かつ,配管にも設置可能な,食品の製造工程に適した粘度計を提案する。この粘度計は,円板状の圧電振動子を容器および配管の底面または壁面に埋め込んだ形態を有しており,圧電振動子の共振特性から等価回路パラメータを推定することで,粘度を測定する。また,圧電振動子の円周部を容器に固定しても粘度を測定できるよう,電極配置を工夫することで,圧電振動子の主に中央部が振動するモード(中央部振動)を利用している。提案する粘度計の有効性を検証するために,実際に容器底面に圧電振動子を埋め込んだ粘度計を作製し,圧電振動子の直列共振周波数における等価回路の抵抗成分R
s と粘度標準液の粘度ηの関係を検証した。この際,試料となる粘度標準液は10 mL とした。その結果,径方向振動ではηとR
s が一対一に対応しないが,中央部振動では9.1-478(mPa・s)の範囲においてηとR
s が一対一に対応し,ηがR
s2 に比例する傾向が見られた。したがって,提案する粘度計は,容器底面に埋め込むことが可能かつ,少量の試料でも粘度を測定することが可能であり,食品の製造工程に適していることが明らかになった。
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