稲発酵粗飼料(WCS)生産システムの環境側面を定量的に評価するために,ライフサイクルアセスメント手法を用いて温室効果ガス(GHG)排出量を推計するとともに米国産乾草を用いて同等量の可消化養分総量(TDN)を供給する場合のGHG排出量と比較した.千葉県内の生産事例を参考に,代表的な稲WCS生産システムとして移植栽培での作付管理作業および専用収穫機や中型汎用機,大型汎用機を用いた収穫調製作業からなる機械化体系を整理して評価対象システムとした.作付管理作業に伴うGHG排出量は作業機械の違いの影響は小さく,水田土壌の違いによる湛水由来のCH
4の影響が大きかった.収穫調製作業では,作業機械の製造段階の影響が大きく,特に作業面積の少ない中型汎用機の事例ではGHG排出量が大きかった.また,米国産乾草を利用した場合に比べて,移植栽培と専用収穫機,大型汎用機を用いたシステムではGHG排出量が330-620kg-CO
2eq/10a程度少ないと推計できた.ただし,泥炭土に分類される水田土壌で稲WCS生産に取組んだ場合や米国産乾草の生産地域や輸送条件が異なる場合には,稲WCS生産に伴うGHG排出量が米国産乾草利用と同程度になる可能性があった.
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