ミルキングパーラーにおいて, ミルカーの諸仕様変更前後における真空系内圧力変動, 搾乳速度, 搾乳作業能率および乳房に与える影響を比較検討した。主な変更内容は, (1) 設定真空度を380から350mmHgに下げ, (2) 拍動は左右交互方式から前後偏率方式とし, 拍動比を狭く, 拍動数の少ないものとした。(3) ミルクジャーの位置を1450から1200mmに下げ, (4) ユニットを3共用型から6専用型とした。(5) 真空ポンプの排気量を380から1,500
l/minとし, (6) 真空パイプおよびミルクパイプの口経を大きくした。
搾乳時および水を2.7kg/minの速度で吸わした模凝搾乳時の圧力変動を, 真空ポンプ直近の真空パイプ内, ミルクジャー内およびライナー内で測定したところ, ミルカー更新後は更新前よりも明らかに改善され小さくなった。
更新前後とも, 最も大きな圧力低下は, 乳流出最盛時のライナー内でみられたが, 搾乳速度の早い牛ほどその低下が大きかった。搾乳速度の最も速い牛の例でこの値は, 更新前には設定真空度に対して平均値で200mmHg以上の低下, 平均値に対する最高値および最低値のふれ幅は100mmHgであったが, 更新後のこれらの値は前者で100mmHg, 後者は50mmHgと縮少された。
ジャー内の乳あるいは水を送乳 (水) した時の圧力低下は, ジャー内が他の2点にくらべて大きく, 最大40mmHgであったが, 更新後には30mmHgに減少した。
搾乳牛各個体の搾乳速度は更新後に有意に遅くなったが, マシンストリッピング時間およびその量は更新後に有意に減少した。
14頭の総搾乳所要時間は更新後に短縮され, 2週間目頃からこの傾向は顕著となった。
更新前後2ヵ月にわたってCMTによる乳房炎検査を行ない, 陽性反応分房延数の検査分房延数に対する割合で比較したところ, 前後にその差を認めなかった。
更新前1ヵ月間に4回測定した分房ごとの乳中細胞数の総平均値に対して, 更新後の2週間内では有意に高い平均細胞数を認めたが, それ以後漸減し次の2週間の平均値との間では有意な差を認あなかった。この事は, 乳牛にとってあるいは作業者にとっても, 新しいミルカーに適応するのに若干の日数が必要なことを示唆している。
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