AUDIOLOGY JAPAN
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36 巻, 6 号
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  • 長井 今日子
    1993 年 36 巻 6 号 p. 737-745
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    伝音性難聴および混合性難聴に適合する補聴器の調整条件を, 244例の臨床例から求めた。 さらに, 伝音性難聴および混合性難聴の不快レベルと快適レベルの測定を18例を対象として行った。 その結果は以下のとおりである。 1) 伝音性難聴および混合性難聴に適合した補聴器の最大出力音圧レベルは, 感音性難聴と比べ約4-8dB高かった。 2) 伝音性難聴および混合性難聴の不快レベルは, 感覚レベルで比較すると, 感音性難聴とほぼ同等の値であった。 3) 伝音性難聴および混合性難聴の快適レベルも, 感音性難聴とほぼ同等の値であった。 4) 伝音性難聴および混合性難聴に適合した補聴器の周波数レスポンスは, 約6dB/octの低周波数減衰の特性であった。 以上の結果から, 伝音性難聴および混合性難聴にたいする補聴器の器種の選択では, 高出力, 高利得の補聴器は必要なく, 十分に低周波数帯を増幅できる補聴器が良いと結論した。
  • 熊谷 重城, 大山 健二, 稲村 直樹, 高坂 知節
    1993 年 36 巻 6 号 p. 746-750
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    distortion product otoacoustic emissions (DPOAE) は周波数特異性の高い, 他覚的な聴力検査として臨床応用が有望視されているが, その基本的な性質は未だ不明の点が多い。 筆者らは硫酸カナマイシンによる蝸牛障害モルモットのDPOAEと, その外有毛細胞の組織像とを周波数毎に対応させ, その関連性の検討を行った。 DPOAEの検出が良好な周波数に対応する部分では外有毛細胞の残存率が高く, 逆にDPOAEレベルがノイズレベル以下の周波数では外有毛細胞はほとんど残っていなかった。 この結果より, DPOAEの発生には外有毛細胞が存在していることが必要であり, またDPOAEの測定によって蝸牛病変の分布を推定することができると考えられた。
  • 白石 孝之, 大草 方子, 渡邊 雄介, 久保 武, 投石 保広
    1993 年 36 巻 6 号 p. 751-756
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳患者9名に対し二音弁別課題 (オドボール課題) を課し, 正答率, 反応時間を記録し, 二音弁別能について検討した。 その結果, 人工内耳患者9名の, 1000Hzと, 2000Hzの二つの純音の弁別検査での正答率は平均91.7%で, 反応時間は平均381.5msであった。 二音の周波数差が小さくなるにつれ, 健常者では通常みられないほど, 正答率は低下し反応時間は有意に延長した。 反応時間は大脳での情報処理時間を反映していると思われるので, この検査は人工内耳によって変化する患者の中枢聴覚機能の状態を検出できる可能性を示した。 また成績には大きな個人差が認められた。 さらに二音弁別検査の成績と言語聴取能検査の成績の間には強い相関があり, 純音の二音弁別能がその患者の言語聴取能を評価し得る一つの指標となる可能性を認めた。
  • 白石 孝之, 大草 方子, 中上 哲広, 久保 武, 投石 保広
    1993 年 36 巻 6 号 p. 757-763
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳患者9名において, オドボール課題を用いて, 事象関連電位 (ERP) を測定した。 その結果, N100をはじめ, N200, P300などのERP成分の出現を認めることができ, ERP波形の構成においては健常者と差は認められなかった。 N100の平均振幅は2000Hz条件で-2.7μVであり, 平均潜時は121.5msであった。 P300の平均振幅は2000Hz条件で, 15.1μVであった。 潜時は2000Hz条件で, 351.3ms, 1500Hz条件で370msとなり, 潜時は有意に延長した (P<0.05, t-test)。 事象関連電位の測定は患者の認知能力の進歩を検出できる他覚的な測定であり, リハビリなどと平行して行えば患者の言語聴取能の向上に役立つものと思われた。
  • 三上 純一
    1993 年 36 巻 6 号 p. 764-771
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    補聴器誘導コイル入力の周波数特性はマイク入力特性と差があり, 特に低音域感度の低い傾向がある。 低音部の増幅を必要とする難聴者の中には磁気ループを使用すると音質の違いに不快を感じる者も多い。 そこで, 感度不足を補正できるよう低周波数帯域の磁波を大きくできる磁気ループ回路を開発し, 誘導コイル入力の周波数特性をマイク入力特性にそろえる実験をした結果, 多くの器種が満足できる範囲内に補正できることを確認した。 応用例として試作した磁気ループ内蔵電話機と小型磁気ループを平均聴力レベル80dBから105dBまでの難聴者 (年齢5歳以上で, 補聴器を十分に活用し会話音域を広範囲に聞き取れている者) に試した結果では, 音質とS/Nの良さが確認された。 回路にトリマーを加えた小型磁気ループでは, 聴きたい音源ごとに磁波特性の微調整が可能で従来では考えられなかった性能も確認できた。
  • 簡便法について
    越智 健太郎, 木下 裕継, 釼持 睦, 吉野 清美, 大橋 徹, 竹山 勇
    1993 年 36 巻 6 号 p. 772-776
    発行日: 1993/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    各種蝸牛障害動物の蝸電図による実験が数多く行われてきたが, ほとんどの実験は急性実験であった。 慢性電極を挿入し経時的に記録することが各種動物で行われてきたが, モルモットの報告は非常に少ない。 今回, 私どもはアロンアルファを用い, 簡単にモルモットにおいて慢性電極動物を作製する事に成功した。 18匹のモルモットのうち, 体重250-350gの群では, 8匹全例が1週間以内に記録不能となった。 体重350-450gの群では10匹中6匹 (60%) が, 慢性電極動物として4-6週の安定した記録が可能であった。 今回の結果は, 制限はあるものの, 簡便で比較的容易に蝸牛機能の評価ができ, 種々の基礎的な実験を経時的に行うのに役立つと考えられた。
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