AUDIOLOGY JAPAN
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50 巻, 2 号
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  • I 補充現象の検査 II 短音閾値検査
    石神 寛通
    2007 年 50 巻 2 号 p. 83-100
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    補充現象に関連した心理検査の説明に入る前に, 周波数と強さの関係 (equal loudness contours) と音の大きさ感覚の関数 (loudness growth curve) について述べた。先ず内耳性障害の鑑別に大切な両耳交互音の大きさ平衡検査 (ABLB:Fowler) について実際的手法と幾つかの問題点を解説した。片側中等度感音難聴では, 初めに行われる検査である。弁別閾検K査については, 音の強さの弁別の他, 周波数の弁別, 持続時間の弁別能にもふれた。臨床的検査としては, Difference Limen (DL) 法と Short Increment Sensitivity Index (SISI) 法の手技とその注意点を述べた。現在DL法の実施は少なくなり, SISI法が繁用されている。さらに短音閾値検査の方法と評価について解説した。一見単純な閾値検査であるが, 正確な測定値を得るには難しいのが難点である。
  • 泰地 秀信, 守本 倫子, 飯ヶ谷 七重, 川城 信子
    2007 年 50 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    1歳6ヵ月未満の乳幼児で, ABR検査を行い両側無反応であった28例のCOR閾値について検討した。会話域平均のCOR閾値は平均86.8dB HLであったが, 58~113dB HLとばらつきが大きかった。100dB HL以上の症例は呼吸障害を伴うものが多かった。補聴器装用時のCOR閾値は平均68.6dB HL (会話域) であるが, これも45~94dB HLとばらつきが大きかった。補聴器装用により60dB HL未満となる症例には呼吸障害を伴うものはなく, 21トリソミーなど神経系の未成熟が予想されるものが多かった。またABRで両側無反応の乳幼児19例のASSR閾値につき検討した。ASSRは1000Hzについては33/38耳 (87%) で反応があり, 重度難聴の検査としてはASSRの方がABRより有用なことが示唆された。
  • 畠 史子, 長谷川 賢作, 玉川 友哉, 北野 博也
    2007 年 50 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    鳥取大学医学部附属病院耳鼻咽喉科で行った新生児聴覚スクリーニング検査 (new-born hearing screening test: NHS) 後の精密検査33例と3歳児聴覚検診後の精密検査12例について検討した。NHSに自動OAEを使用する場合は, 1ヵ月健診まで検査回数を重ねて refer 率を減らして精密検査を行った。ABRで40dBnHL未満の閾値を正常聴力とした場合, NHSの偽陽性は自動ABRで37.5%であるのに比べて自動OAEでは50%であった。3歳児聴覚検診後の精密検査では, 4分法平均聴力40dB未満を正常聴力とすると偽陽性は50%であったが, その中にも治療対象となる中耳疾患が検出され, 精密検査例の75%に難聴または治療対象となる耳鼻咽喉科疾患が検出された。聴覚障害児の適切な検出のためには, NHSから乳幼児健診を包括するシステムを構築することが重要と考えた。
  • 中澤 操, 高橋 辰, 佐藤 輝幸, 石川 和夫
    2007 年 50 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    秋田県では平成13年11月より全県出生約半数の4000名前後に行政主導の新生児聴覚スクリーニングが施行され順調に推移している。一方非スクリーニング群からの難聴抽出が当初から課題と推測され, 平成15年4月からはすべての母子手帳に聴覚言語発達リスト (田中・進藤) が添付されている。今回, 非スクリーニング群の難聴抽出方法を考察する目的で, スクリーニング後要精査となった35名について精密検査結果とリスト到達度について検討した。その結果, 3-4ヵ月健診でリスト到達度が乏しい場合には高度難聴が示唆されるので積極的に聴力検査を勧める必要があるが, リスト到達度が正常であれば難聴はないとすることはできないことが判明した。とくに, リストのみから軽・中等度難聴を3-4ヵ月健診で抽出することは困難である。したがって, 両側高度難聴以外の聴力型を早期診断の軌道にのせるためには全員のスクリーニングが望ましいと考えた。
  • 齊藤 優子, 硲田 猛真, 間 三千夫, 中原 啓, 福辻 賢治, 山西 美映, 高橋 千晶, 池田 浩己, 芝埜 彰, 榎本 雅夫
    2007 年 50 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    約7年間の新生児聴覚スクリーニング検査とスクリーニングにて要精査となった症例の精密聴力検査について検討した。1653例に新生児聴覚スクリーニング検査を施行し, 要精査例は54例 (3.2%) であった。県下8施設の産科医院における新生児聴覚スクリーニングにて要精査と判定されて当院を受診した41例と当院要精査例のうち再検査に受診した51例計92例についてその経過を検討した。その結果, 自動化機器による再検査でパスした症例は67% (62例), conventionalABR (cABR) にてパスした症例は12% (11例) で, 21% (19例) に難聴を認め早期介入が可能であった。産科医院よりの紹介例は1ヵ月検診など複数回の検査を経て受診しているため, 要精査例中難聴と診断された例は41% (17例) と高かった。生後3~4ヵ月で施行したcABRにて難聴と考えられた例では, 症例数は多くないものの, 経過を追って正常と診断が変わった例はなかった。
  • 藤崎 俊之, 佐藤 斎, 和田 匡史, 泉 修司, 窪田 和, 大平 芳則, 高橋 姿
    2007 年 50 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    新生児聴覚スクリーニングを契機として2000~05年に当科を受診した64例を検討した。CORとABRによる精密聴力検査の結果, 32例 (50%) が難聴と確定診断された。両側 refer 16例中9例 (65%) が両側難聴と診断され, 片側 refer にもかかわらず両側難聴と判明した例が47例中6例 (12%) あった。2例は難聴の後発進行, 4例はスクリーニング偽陰性が疑われ, 片側 refer 例の慎重な経過観察はきわめて重要と思われた。スクリーニング検査の回数の記載があった37例中34例 (NICU例を除く) が refer 判定までに複数回施行されており, 難聴の診断陽性率とあわせ, 偽陽性を減らす努力が伺われた。公的スクリーニングが未導入の新潟県においても, 手引書の作成配布などがある程度有効と推測されたが, 精密検査機関へ適切に紹介されない例は減少しておらず, 継続的な周知啓発とともに, 公的導入が強く望まれる。
  • 大久保 美紀, 澤田 亜也子, 前山 啓充, 高井 優子, 森 靖子, 宇野 敦彦, 西村 将人
    2007 年 50 巻 2 号 p. 136-143
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    新生児聴覚スクリーニング後当院耳鼻咽喉科小児難聴外来を受診した16例の精密聴力検査の結果及びその対応について検討した。初診時の月齢は平均1.5ヵ月で, スクリーニングの方法はOAEが大半であった。初回精査の結果は難聴11例, 聴力正常5例であった。新生児期のOAEによるスクリーニングで refer が多くなる原因として, 外耳道の狭さや中耳の滲出液による影響が指摘されている。初回精査時に難聴と判定した11例中6例はほぼ6ヵ月以内に閾値が改善し正常となった。閾値改善の要因として, 聴覚伝導路の髄鞘化が成長と共に完成していったものと考えられた。新生児の精密な聴力の評価には時間を要するため, 特定の医療機関に集中して紹介された場合には対応が困難となることが考えられる。偽陽性例を除外し難聴児を早期に発見するためには, 複数の医療機関でスクリーニング後の精査が可能となることが望ましいと考えられた。
  • 内耳循環障害とRhoキナーゼの関連
    土井 勝美, 西村 洋, 川島 貴之, 大崎 康宏, 久保 武, 仙波 治, 朴 秀典, 長谷川 太郎, 清水 智之
    2007 年 50 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    Rhoキナーゼ阻害剤の塩酸ファスジルは, 1) 血管拡張・血流改善作用, 2) 神経・シナプス再生作用を有し, 突発性難聴の主たる病態の1つとされる内耳血流障害を改善させ, 同時に, ラセン神経節細胞―有毛細胞間のシナプス結合の修復を促すことで, 突発性難聴に対して優れた治療効果を示すことが期待される薬剤である。塩酸ファスジル併用ステロイド治療を突発性難聴10症例に対して行い, 完全回復が9例と極めて良好な治療効果が得られた。血管収縮物質エンドセリンによる内耳微小血管の収縮は, 突発性難聴の内耳病態, 分子機構の一つと示唆されている。エンドセリンによる砂ネズミ蝸牛軸動脈の収縮は, Rhoキナーゼ阻害薬により濃度依存性に抑制される。塩酸ファスジル併用ステロイド治療は, エンドセリンによる内耳循環障害を軽減し, ステロイド単剤治療の効果をより高め, 突発性難聴の治療成績を著明に向上させ得る新規治療法となる可能性が示唆された。
  • 森 貴稔, 藤村 和伸, 藤村 武之, 塩盛 輝夫, 上田 成久, 鈴木 秀明
    2007 年 50 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    内耳性聴覚障害に対するステロイドの効果発現部位を明らかにする事を目的に, 内耳での局在が報告されているグルココルチコイドレセプター (GR) の拮抗剤を音響曝露後に投与し, 内耳性聴覚障害の回復過程にどのように働くのかを検討した。加えて, 突発性難聴の予後予測に対する歪み成分耳音響放射 (DPOAE) の有用性を明らかにする事を目的に, 入院の上ステロイド投与および高気圧酸素療法を行った突発性難聴耳を対象として, 聴力予後とDPOAE出力改善との関係についても検討した。騒音曝露後の回復過程では, かなりの強大音曝露後のCAP閾値回復に対しGR拮抗剤は阻害作用を示したが, DPOAE出力は変化せず, 内耳の中でも内有毛細胞周囲に影響を与えたのではないかという結果が示唆された。また突発性難聴の聴力改善とDPOAE出力改善との間には有意な相関は認められず, 治療の効果発現部位は外有毛細胞以外の部位なのではないかと考えられた。
  • 吉田 忠雄, 杉浦 真, 寺西 正明, 中田 誠一, 中島 務
    2007 年 50 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    突発性難聴症例12例に対し Three-dimensional fluid-attenuated inversion recovery (3D-FLAIR) MRIによる検討を行い, 造影前3D-FLAIRでは12例中9例 (75%) で患側内耳に高信号を認めた。その9例中2例は造影後3D-FLAIRで内耳に造影所見を認めた。この2例と造影後3D-FLAIRで患側内耳に造影所見を認めた感音難聴悪化の1例につき報告した。これらの症例では血液迷路関門破綻による内耳障害が疑われた。血液迷路関門の破綻と突発性難聴の予後との関連は今後の検討課題である。内耳性難聴における病態診断についてMRI3D-FLAIRは多大な貢献をすることが期待される。
  • 大和田 健次郎, 園部 紀子
    2007 年 50 巻 2 号 p. 163-164
    発行日: 2007/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
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