遮蔽音は, 実験Iでは上向性FM音 (1.2kHz→2.8kHz), 実験IIでは下向性FM音 (2.8kHz→1.2kHz) で, 信号音は2kHz純音である。 信号音レベル15dB, 20dB SLでは臨界帯域は成立しない。 信号音レベル30dB, 35dB SLでの同調曲線は実験Iでの高域勾配は低域勾配より急峻であり, 実験IIでの高域勾配は, 急峻な低域勾配に較べ, 相対的に緩やかである。 信号音レベルによる勾配の変化は, 実験Iでは高いレベルで, 低域が緩やかとなり, 高域が急峻となるが, 実験IIではこの関係が逆になる。 同調曲線の帯域幅は, 実験Iではrestricted PTCに等しく, off-frequencyを聴取していないことを示す。 実験IIではunrestricted PTCに等しいが, これは低域勾配が急峻なことによる。 下丘レベルには周波数一定の純音, FM音にのみ特異的に応答する広い側抑制野を持つニューロンがある。 同調曲線 (また, 臨界帯域) は, これらニューロンの応答を含めた, 並列段階的情報処理機構によって下丘レベルで成立する。
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