AUDIOLOGY JAPAN
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53 巻 , 3 号
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総説
  • 岩崎 聡
    2010 年 53 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    埋め込み型骨導補聴器 (BAHA) は, チタン性のインプラントを側頭骨に埋め込み, 骨導端子を接続することで聞き取る補聴機器である。これまので骨導補聴器の利点を活かし, より安定した聞き取りが得られるようになった。海外ではすでに多くの症例に対して施行され, 本邦では現在医療機器としての承認申請中である。これまでの耳科手術や既存の補聴器を使用しても適切な聴力改善・補聴効果が得られない外耳道疾患・中耳疾患による混合性・伝音性難聴や片側聾に対して施行されている。気導補聴器との比較では, 質問紙による評価で多くの報告がBAHAの優位性を示しているが, 語音聴力検査では検査法, 検査条件により統一した結果がみられず, さらなる検討が必要と思われる。片側聾に対しては難聴耳側からの聴取や雑音下での聴取の改善が認められている一方, 音源定位に関しては評価法も含めて今後の課題と考える。
原著
  • 荻野 真愛, 松平 登志正
    2010 年 53 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    耳覆い形イヤホン (SENNHEISER HDA 200型) および挿耳形イヤホン (EARTONE 3A型) について, 語音聴力検査の基準値の設定を目的に, 30名の耳科学的正常者を対象に67-S数字語表の語音了解閾値 (SRT) を測定し, 耳載せ形イヤホン (Rion AD-02型) と比較した。データは, 各被験者が3つの異なるイヤホンで検査を受ける被験者内計画で収集した。しかし, データの分析過程で2回目, 3回目の測定で一部順序効果によるSRTの低下が認められたので, それぞれのイヤホンで最初に検査された10名からなる3グループの被験者間計画として再分析を行った。その結果, 耳覆い形と挿耳形イヤホンによる10名のSRTの平均は, それぞれ8.9dBSPLおよび9.1dBSPLであったのに対して, 耳載せ形のそれは, 13.7dBSPLと既存の基準値14dBSPLに近い値が得られた。今回得られた3種のイヤホンのSRTは, 純音の基準等価閾値音圧レベルとの整合性が確認された。SRTの基準値の設定には, 被験者数と実施施設を増やして被験者間計画により新たに検討を行う必要があると考えられた。
  • 小林 有美子, 佐藤 宏昭, 岩井 詔子, 村井 盛子, 宇佐美 真一
    2010 年 53 巻 3 号 p. 192-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 1997年から2007年までの間に岩手医科大学耳鼻咽喉科小児難聴外来を受診した, 明らかな外因のない両側感音難聴患者64例を対象とし, GJB2 変異, SLC26A4 変異, ミトコンドリアA1555G変異について解析を行った結果と, それ以前に本人及び家族の聴力検査, オージオグラムの特徴などから遺伝性難聴と診断されていた例と比較検討し, 遺伝性難聴の頻度がどの程度変化したのか, またそのオージオグラムの特徴について検討を行った。両側感音難聴64例のうち, 難聴の病因と考えられる遺伝子変異が見つかったのは11例 (17.2%) であった (GJB2 変異9例, SLC26A4 2例)。遺伝性難聴の頻度は遺伝子検査以外の検査から診断した例に遺伝子検査で確認された例を加えることによって, 全体の45.3%となった。遺伝子変異例のオージオグラムの特徴は, その左右対称性などこれまでに知られている遺伝性難聴の特徴と一致することが多いことがわかった。
  • 白石 君男, 神田 幸彦
    2010 年 53 巻 3 号 p. 199-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    日本語話者が発した音声を, 無響室内で1m前方と外耳道の入口部近傍の等価音圧レベルと等価騒音レベルを測定し, これらを比較検討した。対象は, 男性10名と女性10名の計20名とした。その結果, 日本語音声の1m前方の等価音圧レベルは約60dBで, 等価騒音レベルは約56dBとなった。それらの差は約4dBであった。外耳道の入口部近傍の耳元に到達する音声の等価音圧レベルは約74dB, 等価騒音レベルは約69dBとなることが示された。これらの結果は, 音場で補聴器の適合状態を評価したりするときの条件設定や, 補聴器などによる聴力障害との関係を検討するための基礎資料となると思われた。
  • 岡田 慎一, 姫野 まどか, 新井 峻, 高橋 邦明, 小室 久美子, 阿瀬 雄治
    2010 年 53 巻 3 号 p. 208-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    茨城県メディカルセンターにおいて補聴器を装用した難聴児を対象に, 新生児聴覚スクリーニング検査がpassであった例について調査, 検討した。調査対象112例中60例がスクリーニングを受けていた。passであったのは10例で, 調査対象の8.9%, スクリーニングを受けていた例の16.7%を占めた。pass例は, refer例およびリスクの無いスクリーニング未検例との比較において, 初診年齢・補聴器装用開始年齢とも有意に高かった。スクリーニングがpassであった場合の捉え方について, 保護者, 乳幼児健診関係者の理解が不十分であったために難聴発見が遅れたと考えられる例があった。また, 家族性難聴のリスクがある例では, リスクよりもスクリーニングが優先されている現状であった。家族性難聴のリスク例の取り扱いやpass例に対する説明方法など, 新生児聴覚スクリーニング実施方法についての検討が必要と考えられた。
  • 臼井 智子, 鶴岡 弘美, 増田 佐和子
    2010 年 53 巻 3 号 p. 216-223
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    当院で聴覚精査を行った0歳児222名を検討した。健診や聞こえが心配で受診したものは49名で初診月齢の中央値は4ヵ月であった。このうち6名が両側中等度以上の難聴, 2名が一側性難聴だったが, 軽度難聴例はなかった。新生児聴覚スクリーニング精査児は95名で, 初診月齢の中央値は1ヵ月であった。このうち一側性難聴は35名, 両側難聴は34名で17名が高度, 14名が中等度, 3名が軽度難聴であった。補聴器装用開始の平均月齢はスクリーニング児, 非スクリーニング児の高度難聴でそれぞれ6.8ヵ月, 10.7ヵ月, 中等度難聴で14.8ヵ月, 10.4ヵ月であった。難聴と診断された後聴力閾値が改善し, 正常と診断された児を5名認めた。スクリーニングは難聴の早期発見に有用であるが, 時に, 特に軽~中等度難聴児への適切な補聴器適合は難しい。全新生児へのスクリーニングと軽度難聴児まで含めた早期介入システムの構築が必要である。
  • 岩崎 聡, 喜多村 健, 福田 諭, 小林 俊光, 熊川 孝三, 宇佐美 真一, 土井 勝美, 西崎 和則, 暁 清文, 東野 哲也
    2010 年 53 巻 3 号 p. 224-231
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    2006年12月から2008年9月に9施設が参加して実施した「埋め込み型骨導補聴器 (BAHA) の伝音障害患者および片側聾患者に対する有効性と安全性の臨床試験」で, 既存の補聴器とBAHAにおける比較検討を「補聴器の有効性評価簡略化版 (APHAB)」を使用したアンケート調査で行った結果を報告した。対象は伝音障害で術前に補聴器を使用していた26名 (気導補聴器16名, 骨導補聴器10名), 片側聾で術前に補聴器を使用していた3名 (気導補聴器2名, 骨導補聴器1名) である。BAHAは「コミュニケーションの容易さ」,「騒音下の語音理解」,「反響音」,「満足度」,「役立ち度」に関して気導補聴器・骨導補聴器よりも良好な結果を示した。しかし,「音に対する不快感」,「1週間の装用日数」でBAHAの方が不良な結果であった。語音の聞き取りはBAHAの方が良好であったが, うるささに関してはまだ慣れていない可能性も考えられ, 長期装用による再評価も必要と思われた。
  • 畠 史子, 矢間 敬章, 玉川 友哉, 長谷川 賢作, 北野 博也
    2010 年 53 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/15
    ジャーナル フリー
    鳥取県の新生児聴覚スクリーニングは, 県が各機関の連携のコーディネーター役を果たし, 比較的順調に広がってきた。県はマニュアルを作成し, 関係機関の実績報告を毎年集計している。H20年度は9割の産科がスクリーニングを実施し, 県下の5千人あまりの出生児の約80%がスクリーニングを受けているが, リファーの割合は1%前後で安定し, 偽陽性も全国平均より少ない。聾学校の早期教育の開始年齢は早くなっており, 保護者の精神面の支援には保健師の訪問指導が一定の役割を果たしている。しかし, 集計を行っていく中で, 当初定めた報告書では現状を捉えきれない部分があることがわかり, 保健師による保護者支援の内容が医療機関にフィードバックできていない部分があることがわかったため, 報告書式の変更を行うこととなった。今後も定期的に事業を総括して現状に則した変更を行っていくことが, スクリーニングを発展させることに繋がるであろう。
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