AUDIOLOGY JAPAN
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August
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総説
  • 渡辺 宏久
    2021 年 64 巻 4 号 p. 279-288
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨 : 加齢において認知機能が保たれる機序を理解し, 認知症の発症プロセスや進展様式を考える上で, 脳のネットワークの空間的な関係や形状を可視化し, ネットワークの持つ可塑性や抵抗性を理解することは重要である。特に, 多種感覚統合ネットワークやデフォルトモードネットワークを中心とする脳のハブ領域は, 加齢において良く保たれるとともに, 様々な代償において重要な働きを示す。一方, アルツハイマー病をはじめとする神経変性性認知症では, このハブ領域が病変の好発部位となる。我々の研究結果は, 聴覚, 視覚, 運動感覚など一次情報処理関連ネットワークの破綻が, それらの上位に位置する多種感覚統合ネットワークの過活動を引き起こし, 認知症の原因となる病的タンパク質の蓄積を引き起こしている可能性を示唆している。中年期における聴力低下が, 長いプロセスを経て認知症を引き起こすプロセスを推定する上でも有用であると考えている。

原著
  • 伊藤 まり, 大石 直樹, 小川 郁, 田路 正夫
    2021 年 64 巻 4 号 p. 289-295
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨 : Jastreboff らにより一側性難聴における Contralateral routing of signals (以下 CROS) による音響療法での耳鳴改善が報告されていたが, 装用時の違和感や調整の難しさから本邦では CROS が一般に普及していないため装用効果に関する臨床での報告も少ない。

    2018年1月から2018年12月までの1年間で耳鳴難聴外来を受診した患者のうち補聴器あるいはサウンドジェネレーターによる音響療法を施行した症例は92例 (男54例, 女38例) であった。一側性難聴の定義を患側が高度ないし重度難聴, 健側が正常とすると92例中6例が一側性難聴であり, 3例の一側性感音難聴症例に CROS を試みた。 CROS を装用することで耳鳴難聴が改善した2症例と改善しなかった1症例の具体的な経過を提示した。 CROS は装用時の違和感や調整の難しさから報告された症例数は少ないが, 非侵襲性で治療導入が簡便である。 CROS 装用にて患側方向の音も健側で聴取することで, 両側の周囲の外界音が充分に入力され耳鳴感が軽快し得たと考えられた。

  • 窪田 俊憲, 伊藤 吏, 松井 祐興, 新川 智佳子, 千葉 寛之, 欠畑 誠治
    2021 年 64 巻 4 号 p. 296-300
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨 : 急性感音難聴74症例における音響性耳小骨筋反射 (AR) 欠如率と Metz test 陽性率を検討し, 感音難聴と機能性難聴の鑑別や内耳障害の診断におけるARの有用性を検討した。刺激音周波数 (0.5, 1, 2, 4kHz) に関わらず, 難聴が重症になるほどAR欠如率は上昇した。刺激音 0.5kHz と 4kHz の比較では, 聴力レベル 60, 70, 80dB の症例にて有意に刺激音 4kHz の AR 欠如率が高かった (p<0.05) 。刺激音0.5, 2, 4kHz では聴力レベル 50dB 以上, 刺激音 1kHz では聴力レベル 60dB 以上の症例でMetz test陽性率は100%であった。AR 有無を用いた感音難聴と機能性難聴の鑑別には刺激音周波数 4kHz の反応をみるのが有用であると考えられた。 Metz test 陽性は 60dB 以上の聴力障害症例で内耳障害の診断に有用であると考えられた。

  • 北野 雅子, 臼井 智子, 竹内 万彦
    2021 年 64 巻 4 号 p. 301-307
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨 : 先天性サイトメガロウイルス (Cytomegalovirus: CMV) 感染児は, 無症状で経過する症例もある一方で先天性難聴や遅発性難聴を合併することがある。

     先天性 CMV 感染児21例中3例に難聴があった。難聴の経過はそれぞれ異なり, 慎重な聴力経過観察が重要である。1例の難聴原因は内耳奇形によるものと考えられ, 先天性 CMV 感染児に先天性 CMV 感染症以外の原因で難聴が合併しうる可能性も考慮すべきである。血液 CMV DNA 量が低値であっても先天性 CMV 感染症に伴う難聴に留意が必要である。先天性 CMV 感染児には非初感染妊婦からの感染もあり, 遅発性難聴のリスクもあることから, 母体初感染例や新生児聴覚スクリーニング refer 例のみでなく, 新生児全例に先天性 CMV 感染症のスクリーニングが望まれる。

  • 亀井 昌代, 佐藤 宏昭, 上澤 梨紗, 米本 清, 小田島 葉子
    2021 年 64 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨: 補聴器が音声を実質的にどれだけ増幅しているか測定する方法として2015年に JIS より「音声に近い試験信号による補聴器の信号処理特性の測定方法」が発行された。我々は, 4機種の補聴器に国際音声試験信号 (以下 ISTS) を提示したときの長時間平均音声スペクトル (以下 LTASS) やパーセンタイル音圧レベルを測定算出し, 種々の機能を on や off の条件で比較検討した。また, 難聴症例50例を対象として装用している補聴器の LTASS やパーセンタイル音圧レベルを測定しその結果と, 補聴器適合検査結果と比較検討した。一般的に補聴器の特性は機能を on と off の条件で同じであることが望ましいが, 本研究の結果では補聴器メーカによっては差がみられることがわかった。また難聴症例の中には, 補聴器適合検査結果と ISTS の測定結果との間に乖離のある症例もみられた。しかし, この測定方法 (分析方法) は補聴器を装用している条件で分析でき, その特性に会話音域が十分含まれているかの判断材料となると考えられた。

  • 笹目 友香, 城間 将江, 小渕 千絵, 野口 佳裕
    2021 年 64 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究では, 学齢期にある健聴児と聴覚障害児の複合語の合成と分解の獲得過程を明らかにし, さらに前部要素の構成品詞および後部要素の連濁化による成績の差異について検討することを目的とする。健聴児41名, および聴覚障害児6名に対し, 複合語の合成課題と分解課題を実施した。その結果, 健聴児については合成に比して分解の獲得が遅れること, 前部要素を構成する語が形容詞, 動詞である場合, 特に低学年で成績が低いこと, 聴覚障害児の複合語の獲得は, 合成課題では該当学年の健聴児と類似したが, 分解課題では品詞毎の正答率に一定の傾向はなく, 個人差が認められたことが明らかとなった。聴覚障害児の複合語の理解を助けるためには, 名詞に限らず, 形容詞や動詞に関するより丁寧な指導, 様々な活用形を意識した声掛けが望まれる。

  • 立入 哉, 鶴旨 由子
    2021 年 64 巻 4 号 p. 322-327
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨: 一側性難聴者を対象にして, 12個のスピーカからホワイトノイズを提示し, ①裸耳, ②裸耳で学習した場合, ③CROS 補聴器装用, ④CROS 補聴器装用で学習した場合の計4条件で, 音源を定位させる実験を行った。一側性難聴者は両側健聴者より音源定位が有意に困難であった。良聴耳側は非良聴耳側に比べて有意に良く, 前後では差はなかった。一側性難聴者に CROS 補聴器を装用することによって, 音源定位はさらに困難となった。 CROS 補聴器からの出力音を分析した結果, 原音に遅れて, 装用者が「機械音」と表現する補聴器経由音 (増幅音) が聞こえることで, 音源定位が向上する可能性はある。

  • 石川 一葉, 松本 希, 東野 好恵, 田泓 朋子, 中川 尚志
    2021 年 64 巻 4 号 p. 328-335
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/22
    ジャーナル フリー

    要旨: 聴覚情報処理障害の検査として使われている聴覚情報処理検査 (APT) の正常聴力成人の基準値を決定した。健聴ボランティアを募集し, 20歳から37歳の成人21名の協力を得た。標準純音聴力検査, Fisherの聴覚的問題に関する質問紙日本語版, 小渕の聞こえにくさのチェックシートの全てで異常なしと判定された20名の APT 結果を集計した。平均 ± 2 × 標準偏差を基準範囲とし, 低成績側の限界を基準値とした。各項目の設問数と基準値を元に, 基準を満たす最低の正答数の百分率を各項目のカットオフ値とした。また, 検査項目毎の正答率とカットオフ値が一覧できるように工夫した APT 記録用紙を作製した。

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