AUDIOLOGY JAPAN
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42 巻, 3 号
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  • 小林 一女, 工藤 陸男, 中村 誠, 洲崎 春海
    1999 年 42 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    16歳以上の機能性難聴症例を7例, 13耳経験した。 症例は16歳から59歳で男性3例, 女性4例であった。 全例難聴, 難聴の増悪が主訴であった。 器質的障害のある症例 (疑い例を含む) が4例あった。 3例は心因性難聴, 身体障害者手帳の更新が目的であった2例は詐聴, 残り2例は詐聴か心因性難聴か診断困難な症例であった。 誘因には学校生活・仕事場での対人関係, 家庭環境の変化などが考えられた。 難聴の程度は高度難聴を呈した症例が多く, 水平型3耳, 聾型8耳, 混合型2耳であった。 純音聴力検査の他, 語音聴力検査, 耳小骨筋反射, ABRを適宜行った。 また持続音を用いた聴力検査を行ったが, 通常の断続音による検査と異なる聴力域値が得られる症例があり, この検査は簡便に行うことができるので機能性難聴を診断するのに有用な検査であると思われた。 器質的障害のない症例では神経科でのカウンセリング, 内服療法で自覚的, 他覚的に改善を認めた。 器質的障害を認める症例では改善傾向を認めなかった。
  • 斎藤 久樹
    1999 年 42 巻 3 号 p. 170-178
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本療法は, デキサメタゾンとリドカインとの混液を, 外耳電極を陽極としたイオン浸透法によりほとんど無痛に鼓膜内に投与して耳鳴の抑制を図る局所療法で, デキサメタゾンがリドカインと水の移動に伴って鼓膜内に浸透し, さらに蝸牛機能に影響を与えると推測され, 軽症耳鳴を中心に即効的に耳鳴の軽減消失を認め, 副作用もほとんどない。 本療法を行った聴力正常群, 耳鳴患者で本療法有効群, 無効群, 生理食塩液を用いた実験治療群の歪成分耳音響放射 (DPOAE) の変化を検討した結果, F2が1001Hzにおいて有効群のDPレベルが無効群よりも有意に高値を示し, 通電した全群に高音部のDPレベル低下を認めた。 低音部はノイズレベルが大きく, 高音部は通電の影響を受けることから, 中音部, 特に, 1001Hzを中心としたDPレベル変化幅の検討が本療法における耳鳴改善のパラメーターとして有用と推測された。
  • 植田 広海, 朝日 清光, 中島 務
    1999 年 42 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アブミ骨手術施行し術前後で耳鳴のあった耳硬化症患者に術後耳鳴アンケートを行い, 純音聴力域値と比較検討した。 耳鳴は, 36耳中22耳が術後改善し, そのうち7耳が消失した。 一方, 11耳が不変であり, 3耳が術後悪化した。 耳鳴の改善は, 多種類の耳鳴をもつ例, 術前4k骨導値が30dB以内の例, 会話領域の術後気導値が30dB以内例, 4k・8kの術後気導値が40dB以内例に有意に多くみられた。 一方, 術前の耳鳴の高さに関する自覚的評価及び会話領域の術後気骨導差の改善とは関連を認めなかった。 患者の自覚的擬声語表現では, 術前多い耳鳴は, ピー, キーン, ジーンであり, 一般的な感音あるいは伝音難聴患者と同じ傾向を示した。 しかしながら, それ以外にも多彩な自発的擬声語がみられた。 アブミ骨術後は, 耳鳴の種類が減少したが上記の耳鳴の消失は少ない傾向を認めた。
  • 原田 博文, 白石 君男, 周防屋 祐司, 毛利 毅, 太田黒 元, 加藤 寿彦
    1999 年 42 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ロジスティック回帰分析を用いて, 急性音響性感音難聴の予後に関連する因子を検討した。 対象は1988年7月から1998年4月までに経験した自衛官56名である。 検討した因子は, 年齢, 患側, 治療開始までの日数, 耳栓の有無, 治療薬, 入院・外来別, pure tone average (PTA), high tone average (HTA), 1000Hz聴力レベル, 4000Hz聴力レベルである。 予後と関連の強い因子は, まず治療開始までの日数, 次いで4kHz聴力レベル, PTAの順であった。 不変群と回復群の2群で分析を行うと治療開始までの日数のみが有意な関連を認めた。 不変群と治癒群の2群で同様の分析を行うと, 治療開始までの日数, 4kHz聴力レベル, PTAの順で有意な関連を認めた。
  • 仲野 敦子, 仲野 公一, 沼田 勉, 今野 昭義
    1999 年 42 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    SLEによる自己免疫性内耳障害が, SLE発症初期に出現し, ステロイド治療に反応し聴力の改善を得られた症例を経験した。
    症例は初診時13歳の男子である。 数ヵ月間に徐々に進行した原因不明の両側性高音漸傾型の感音難聴があり, 当初突発性難聴に準じたステロイド治療が施行されたが聴力は改善せず, 約1ヵ月後, 他の症状が出現してSLEの診断が確定した。 SISIテスト, 自記オージオメトリでは, 内耳障害を示唆する所見であった。 SLE診断確定後, PSL 60mg/日の内服により聴力は改善したが, PSL 40mg/日に減量したところで聴力の再悪化があり, またその後も原疾患の病状と平行する様に聴力は変動した。 発症後, 三年余が経過したが, ステロイド治療の他, 免疫抑制剤, 血漿交換, および高気圧酸素療法を併用し, 原疾患のコントロール及び聴力の改善が得られている。
  • 鶴岡 弘美, 増田 佐和子, 鵜飼 幸太郎, 坂倉 康夫
    1999 年 42 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1996年10月から1998年3月までに当科小児聴覚外来を受診した乳幼児児童について, その診断に至る過程及び実態を調べ, 早期発見, 療育に対する今後の取り組みを検討した。 紹介元は小児科を主として医療機関が最も多かった。 受診児の約半数が聴覚障害を示し, 両側性難聴児の7割が高度・重度難聴であった。 また, 中等度難聴を示す滲出性中耳炎罹患児も認められた。 診断時の平均年齢は軽・中等度難聴児では4歳2ヵ月であったのに対し, 高度・重度難聴児では1歳6ヵ月で, 聴力レベルが高度であるほど低年齢で診断されていた。 しかし, 早期発見の観点からすると十分に早期とはいえなかった。 聴覚障害の原因は原因不明が多く, 17%に家族歴が認められ, 35%に重複障害が認められた。 軽度難聴児以外は何らかの形で療育機関に関わっていた。 乳幼児健診のさらなる充実, 重複障害児への対応, 及び関連諸機関との連携, 療育施設の充実が重要と考えられた。
  • 数理モデルによる検討
    和田 仁, 中島 隆哉, 大山 健二
    1999 年 42 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    誘発耳音響放射 (Transiently Evoked OAEs: TEOAEs) が生じる一因として, 蝸牛内基底板インピーダンスの不連続性が有力視されているが, その機序は明確になっていない。 そこで本研究では, 基底板インピーダンスに不連続性を有する蝸牛の数理モデルを用いて, TEOAEsの数値シミュレーションを行い, TEOAEsの発生機序について, 理論的に解明することを試みた。 その結果, TEOAEsの波形は, 刺激音周波数に近いCFをもつ部位で, OHCの働きが正常であり, なおかつ基底板のインピーダンスが不連続をもつ場合に発生すると推察された。 従って, トーンバースト音により発生するTEOAEsは, 内耳蝸牛の一部の状態のみを反映していると考えられた。
  • 鍋倉 隆, 東野 哲也, 植木 義裕, 坪井 康浩, 小宗 静男
    1999 年 42 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    極めて稀とされる突発性難聴再発例 (60歳男性) の発症初期, 回復期, 治癒期に蝸電図を施行した。 発症初期に陽性summating potential (SP) が認められ, 回復期には-SP/action potential (AP) 比の増大を認め, 治癒期には-SP/AP比が正常範囲に回復した。 この蝸電図パラメーターの変化は, フロセミド静注による一過性血管条障害モデル (モルモット) におけるAPとSPの変化, 特に内リンパ静止電位の回復過程で認められるAPとSPの解離現象に合致する所見であった。 したがって本例における突発性難聴のメカニズムは, 血管条障害であることが推定された。
  • 金子 賢一, 庄司 和彦, 児嶋 久剛, 安里 亮, 平野 滋
    1999 年 42 巻 3 号 p. 217-221
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    時間領域増幅型デジタル補聴器TD-1と, 出力制限装置としてpeak clipping (PC) またはautomatic gain control (AGC) をもつ従来式アナログ補聴器とを用いて, 中等度感音性難聴者7名に対し衝撃音下における語音聴取成績を調べた。 従来式補聴器の場合, 衝撃音がない状況では全例が良好な語音認知を示したにもかかわらず, 500ms毎の衝撃音が加わることによりこのうち4名 (PC 3名, AGC 1名) で認知が低下した。 一方, TD-1では衝撃音の有無に関係なく全例良好な成績が得られた。 TD-1は衝撃音下の環境でも感音性難聴者にとって有用であると考えられた。
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