AUDIOLOGY JAPAN
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66 巻, 4 号
August
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総説
  • 小渕 千絵
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 4 号 p. 221-229
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/14
    ジャーナル フリー

    要旨: 音は聞こえるが聞き取りにくいという症状に対しては, 他覚的, 自覚的な聴覚検査を組み合わせ末梢聴覚系での問題を鑑別することとなるが, 最近では拡張高周波数聴力測定の有用性も指摘されている。これらの鑑別後にもその症状が残存する場合, Listening difficulties (LiD) である可能性が考えられる。聞き取りにおける認知機能, 特に注意機能の弱さが関与するとされ, 必要な音やことばへの選択的注意や他刺激への分散的注意などの問題が実証されている。また, 頭に浮かぶとりとめのない思考であるマインドワンダリングに時間を要したり, マインドレスな状態である例もみられ, 不要な情報の抑制と必要な情報への注意集中がうまくいかない可能性が考えられた。現在の評価方法では, 日常生活での困り感があっても検査上で検出できない, 困り感はなくても検査上で弱さを示す例の存在により, LiD 例の実態の把握が困難である。評価法の再検討や特異的な例の機序解明などが急務といえる。

  • 片岡 祐子
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 4 号 p. 230-236
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/14
    ジャーナル フリー

    要旨: 聴覚情報処理障害 (APD)/聞き取り困難 (LiD) は, 聴覚閾値は正常であるが中枢性聴覚情報処理が困難である状態で, 騒音下や複数音声下の聞き取り困難を呈する。そのため, 学校や社会生活の様々な場面において聴取および理解が難しく, コミュニケーションや学習, 業務に支障を来すことが多い。APD/LiD の診断には, 聴覚検査にて末梢性聴覚障害を除外し, 聴覚情報処理検査 (両耳分離聴検査, 早口音声聴取検査, 雑音下聴取検査等) を用いて行うが, 質問紙での自覚的認知検査結果も参考にする。APD/LiD の介入と支援の方法は, 音声入力情報の調整, 環境調整, 機器を用いた情報強化, トレーニングがある。音声入力情報の調整以外は, 聴取の困難さに対するアプローチであるボトムアップ式と, 内容を推測しやすくするアプローチであるトップダウン式の手段があり, 各人の課題を分析した上で, 必要な介入・支援方法を選定している。

  • ―原因病理に対する考え方と診断上の問題点―
    川瀬 哲明
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 4 号 p. 237-246
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/14
    ジャーナル フリー

    要旨: Listening difficulties with clinically normal audiogram の原因病理に対する考えかた, 現状の診断の問題点などについて考察した。本症では, 注意などの認知機能の問題の関与が少なくないことが指摘され, 診断にはいわゆる聴覚情報処理検査が有用とされているが, 1) 他の臨床データからは本病態が強く疑われる場合であっても, 聴覚情報処理検査では明らかな異常所見が検出されない場合があること, 2) Subclinical な末梢病理の共存が疑われる場合は, 聴覚情報処理検査の診断的意義が限定的になること, 3) 聞き取り難さの質, 程度 (重症度) を適切に評価できる検査指標がないこと, などの問題がある。病態の理解や診断の質の改善を可能とする, より良い評価手法, 検査材料の開発,確立が望まれる。

原著
  • 島貫 茉莉江, 山田 浩之, 今村 香菜子, 和泉 光倫, 太田 久裕, 本間 大和, 大石 直樹, 小澤 宏之
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/14
    ジャーナル フリー

    要旨: 慢性耳鳴に対する治療として, 教育的カウンセリングや音響療法, 認知行動療法などが行われており, 特に難聴を伴う耳鳴に対しては補聴器による音響療法も普及してきている。今回, 難聴を伴う慢性耳鳴に対して宇都宮方式聴覚リハビリテーションで補聴器調整を行った症例95例を対象とし, 耳鳴改善効果について評価した。治療前の平均 THI 値は55±24点であったが, 治療開始3カ月後の平均 THI 値は22±23点, 治療開始1年間の THI 最低値の平均は14±18点であり, 治療前と比較し有意に低下した。THI 値低下率は75%, 全症例の92%で THI 値が軽症化または20点以上の低下を認め, 難聴を伴う慢性耳鳴に対する補聴器による音響療法は有効な治療法であると考えられた。また両側耳鳴・片側耳鳴群では THI 値低下率に有意差は認めなかった。聴力左右差が20dBHL 以上の症例では, 20dBHL 未満の症例と比較して THI 値低下率が高く, 改善した症例の割合が多い傾向があった。

  • 立入 哉, 南 垠景
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 4 号 p. 255-263
    発行日: 2023/08/30
    公開日: 2023/09/14
    ジャーナル フリー

    要旨: 20歳代の成人女性10名 (平均20.9歳) の自由会話を録音し, 日本語の長時間平均音声スペクトル (LTASS) を求めた。その後, 聴力正常の20歳代の成人20名を対象とし, Filtered 音声を用いて, 補聴器の装用閾値測定で使用される周波数を中心周波数とする帯域について, 帯域明瞭度貢献度 (BIF) を求めた。これらの結果から, 日本語 Count-the-Dots Audiogram (CDA) を作成した。次に, 補聴器装用者14名を対象に, 補聴器装用閾値と補聴器装用時の最高語音明瞭度を求め, 平均聴力, 最高語音明瞭度, 語音明瞭度指数 (AI), 日本語 CDA を用いた可聴ドット数 (CDAドット数) との相関を求めた。この結果, CDA ドット数は補聴器装用時の最高語音明瞭度との相関がR2=0.7831と極めて高く, CDA を利用した装用閾値の数値化により, 補聴効果を評価することは臨床的に合理的であると考えた。

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