AUDIOLOGY JAPAN
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32 巻, 6 号
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  • 河野 淳, 間 三千夫, 舩坂 宗太郎, 野々村 英一
    1989 年 32 巻 6 号 p. 725-729
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ホルマント強調音声を作製し, その 「聞き易さ」 と聴力レベルの関係について調べた。 正常者20名, 難聴者83名を被検者とした。 二つの条件, A群; (1): 原音, (2): ホルマント成分を6倍 (15.5dB) 強調したもの, (3): ホルマント成分のみ, B群; (4): 原音に20dB S/N比の白色雑音を付加したもの, (5): (4) に於いてホルマント成分を6倍 (15.5dB) 強調したもの, を聞かせた。 各々の群より最も 「聞き易い」 ものを選ばせた。 この結果, A群では難聴レベルに差がなく, 原音が聞き易く, B群では, 40dB以上の難聴者ではホルマント強調音声が聞き易かった。 難聴者にとって, 雑音下ではホルマント強調音声が聞き易いということが分かった。
  • 脇園 茂樹, 小宗 静男, 野口 敦子, 上村 卓也
    1989 年 32 巻 6 号 p. 730-738
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 原因不明の感音難聴が, ABR波形, 各波潜時にどのように影響するか調べた。 対象は明らかな器質的な中枢障害のない原因不明の感音難聴症例73耳で, それぞれについて, ABRのI, III, V波の潜時や出現率と聴力閾値との関係について検討し, 以下の結果を得た。 各波の出現率は, 聴力閾値の上昇とともに低下するが, V波は70dB付近まで, ほぼ100%出現した。 潜時については, I, III波は聴力閾値の上昇に関係なく一定であったが, V波は70dB付近より延長傾向がみられた。
  • 上田 晋介, 麻生 伸, 武田 精一, 渡辺 行雄, 水越 鉄理
    1989 年 32 巻 6 号 p. 739-745
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    15人の感音難聴患者において, 電極位置を変えて鼓室内誘導法で蝸電図を記録した。 記録部位は4箇所でありAP, SP振幅, SP/AP比を測定し, 特に正円窓近傍のSPの極性を中心に検討した。
    結果は以下の通りである。
    1) 最大AP, SP振幅は, 当科で通常採用している記録部位から得られた。
    2) +SPは正円窓近傍から多く記録された。
    3) 刺激周波数が高くなると-SPは減少し, 正円窓近傍では特に+SPが優位となった。
    4) -SP/AP比は記録部位によらず一定であった。
    5) +SPは正円窓または基底回転鼓室階の電位を反映していると推察された。
  • 上原 紀夫, 市川 銀一郎, 江渡 篤子, 桜井 淳, 佐藤 潔
    1989 年 32 巻 6 号 p. 746-754
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    短絡術後の小児水頭症28例に対し, 脳幹機能の障害の有無を検討する目的でABR検査を行うとともに, MLR, SVRの検討も加えた。 その結果,
    1. ABRに異常を認めたものは28例中6例で, 先天性重度水頭症 (脳形成不全性水頭症) に高頻度に異常が見られた。 キアリ奇形II型では脳幹形態の異常が明らかであるにもかかわらず, ABR上の変化は認めなかった。
    2. 今回のABR検査の結果から, 先天性重度水頭症とキアリ奇形II型とでは脳幹の聴覚路に及ぼす影響が異なることが推測された。
    3. MLR, またはSVRに異常を示したものが61%存在した。 なかでも, ABRは正常であったがMLRとSVRともに異常であったものが37%存在した。
    4. MLR, SVR検査の結果から, 水頭症例は脳幹よりもさらに高位中枢の聴覚路に影響を及ぼすことが多いと思われた。
  • 立本 圭吾, 進藤 昌彦, 志多 真理子, 安野 友博, 村上 泰, 大島 渉, 寺薗 富朗, 小宮 精一, 真島 玲子, 塔之岡 彰子, ...
    1989 年 32 巻 6 号 p. 755-762
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    京都市の難聴学級健康診断結果を報告する。 結果は以下の通りである。
    1) 児童の裸耳および矯正聴力の平均はそれぞれ93.7dBHL, 57.6dBHLであった。
    2) 発語明瞭度は平均が37%であったが, 矯正聴力より裸耳聴力に強い相関を示した。
    3) 聞き取り検査では絵カードを参考させることで有意に正解率が上昇した。
    4) 難聴学級児の構音は確立されたものではなく容易に変化を示した。
    5) 就学前教育として一般保育・幼稚園へ通園していた者が未経験者より発語明瞭度が有意に高かった。
  • 細田 泰男, 牛呂 公一, 投石 保広, 下河内 稔
    1989 年 32 巻 6 号 p. 763-771
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    CNV (contingent negative variation) は他の誘発反応と比較して, その再現性に問題があるとされる。 そこで今回2dB stepでCNVを用いた聴力検査 (CNV聴検) を行ない, その再現性について以下の結果を得た。
    2dB stepでCNV聴検は可能であり, 求められた聴覚閾値は自覚閾値と±2dB stepの範囲で一致した。 このことは反応時間より求めた聴覚閾値からも裏付けられた。 これを連続して3回の測定を行なって再現性を検討したが, ±2dB stepの範囲で十分な再現性を示した。
    ただし, CNV聴検においてその聴覚閾値の決定には, 単に平均電位からCNV陽性, 陰性を機械的に判断するのではなく, 刺激音圧の変化に伴うCNV平均電位の系列的変化からの判断が必要であった。
  • 睡眠の影響
    鈴木 篤郎, 小林 潔子, 青木 記美恵
    1989 年 32 巻 6 号 p. 772-777
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    500Hz正弦波的振幅変調音 (SAM音) 及び500Hz短音による40Hz聴性定常反応 (SSR), 500Hz短音によるABR (緩徐波) 及びMLR (Pa) の振幅に見られる両耳相互作用 (BI) を聴力正常成人につき覚醒時と睡眠時に区分して測定した。 得られたサンプルは各々11。 参加した被検者は計20名である。 左右単耳刺激合算反応振幅 (M) と両耳刺激反応振幅 (B) を計測し, B/MをもってBI値とした。
    4種反応のBI値はすべて睡眠時>覚醒時で, 両者間に有意差があり, これら反応のBIに対する睡眠の抑制的作用の存在が推測された。 BI値は覚醒時, 睡眠時ともにABR>SAM音SSR>短音SSR>MLRの順で, 睡眠時においてはMLRのBI値と他の3反応との間に有意差が認められたが, 覚醒時においてはMLRと短音SSR間の有意差は消失した。 このことから, SSRにおけるMLRの比重は睡眠時において低下し, これが睡眠時SSRの著明な振幅縮小と関連があるものと推論した。
  • 飯田 覚, 細井 裕司, 太田 文彦, 今泉 敏
    1989 年 32 巻 6 号 p. 778-783
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    刺激音に無意2音節語を用いて右利き正常聴力者に対して両耳分離能検査を行った結果次のような所見を得た。
    1) 個々の刺激音の単耳聴明瞭度が両耳聴の結果に大きく影響を与える。
    2) その原因の一つとして一側耳への刺激が他側耳へ競合して聴取を妨害するように思えた。
    3) 1) の影響を除くため単耳聴100%明瞭度の無意2音節語を用いて検査すると右耳優位を示した。
    以上の結果より両耳分離能検査を行うにあたり目的に応じて刺激音の選択には注意を要することがわかった。
  • 阿瀬 雄治, 原 晃, 草刈 潤
    1989 年 32 巻 6 号 p. 784-798
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    両側外耳道閉鎖症に於ける術前検査として内耳機能の確認のため骨導ABRを試みた。 骨導ABRの測定に先だって4種の骨導受話器の振動特性を測定し選択した。 また, 骨導受話器より発振される電磁誘導が誘導電極を通して聴性反応の誘導波形に混在し, 解析波形に混乱をおこす。 この点を十分に考慮した。
    伝音難聴の骨導ABRの反応波形で特に, 交叉骨導による反応波形のI波の出現現象の波形解析から, 中耳の形態的障害によって, 反応波形の違いのあることを見いだした。
    対象とした疾患は, 先天性両側外耳道閉鎖症, 先天性中耳奇形 (耳小骨連鎖離断症), 両側耳硬化症ならびに滲出性中耳炎である。
    対照群として正常耳ならびに一側正常, 反対側高度感音難聴耳についても測定し検討した。
  • 隈上 秀高, 中田 孝重, 宮崎 誠, 中尾 善亮, 海江田 純彦
    1989 年 32 巻 6 号 p. 799-803
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴力正常な20名20耳 (ボランティア) を6歳から28歳までの10耳 (Aグループ平均17.9歳) と35歳から52歳の10耳 (Bグループ, 平均42.3歳) に分けAP(N1) およびCM反応について, 蝸電図の鼓室内誘導法により検討した。
    AP(N1) の出力電位については, すべての音圧においてA, B両グループで有意差 (5%の危険率) を認めた。 AP(N1) の潜時については30dBnHL以下の刺激音圧で有意差 (1%の危険率) を認めた。
    CM反応においては, 各周波数の90dBnHLの刺激音圧において, A, B両グループに出力電位の有意差 (5%の危険率) がみられた。 以上の有意差は加齢による高周波数領域の有毛細胞の変化 (Bグループが平均聴力レベルが高い) あるいは加齢による内耳骨胞の化骨化の影響と考えられる。 1kHz CMは最も低い検出域値を示し, その検出域値は1kHz純音聴力レベルと同程度であった。
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