二度にわたる動脈瘤破裂で両側中大脳動脈の結紮を受け, 高度の難聴を発症した40歳の女性のCTと聴力検査成績を報告した。CTによる脳の画像診断では, 両側側頭葉に横側頭回を含む広範囲の梗塞を証明した。しかしながら被殻, 内側膝状体, 下丘には異常をみなかった。自覚的聴力検査では, 純音聴力検査は右側45dB, 左側20dBのC
4 dip型を示した。閾値の弁別は著しく不安定であった。語音弁別能は左耳40%, 右耳80%であった。他覚的聴力検査では, AR正常, ABR波形正常, MLRは右耳刺激の波形は正常, 左耳刺激ではPbは明らかでなかった。環境音弁別は8種類のうち3種類のみ正解であった。学習により獲得される語音情報の分析, 認識には, 純音の情報処理とは異った広い脳機能の参加を必要とするものと推論した。本症例の難聴は両側側頭葉の梗塞による皮質障害によるものと結論した。
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