AUDIOLOGY JAPAN
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41 巻, 3 号
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  • 棚橋 汀路
    1998 年 41 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    二度にわたる動脈瘤破裂で両側中大脳動脈の結紮を受け, 高度の難聴を発症した40歳の女性のCTと聴力検査成績を報告した。CTによる脳の画像診断では, 両側側頭葉に横側頭回を含む広範囲の梗塞を証明した。しかしながら被殻, 内側膝状体, 下丘には異常をみなかった。自覚的聴力検査では, 純音聴力検査は右側45dB, 左側20dBのC4 dip型を示した。閾値の弁別は著しく不安定であった。語音弁別能は左耳40%, 右耳80%であった。他覚的聴力検査では, AR正常, ABR波形正常, MLRは右耳刺激の波形は正常, 左耳刺激ではPbは明らかでなかった。環境音弁別は8種類のうち3種類のみ正解であった。学習により獲得される語音情報の分析, 認識には, 純音の情報処理とは異った広い脳機能の参加を必要とするものと推論した。本症例の難聴は両側側頭葉の梗塞による皮質障害によるものと結論した。
  • 狩野 章太郎, 北原 伸郎, 浅沼 聡, 坂本 雅之, 二木 綾子, 加我 君孝
    1998 年 41 巻 3 号 p. 160-167
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    両側被殻出血の結果, 両側聴放線損傷を生じ, 中枢性聴覚障害を呈した一例を経験した。純音聴力検査の結果は良好であった。環境音などの非言語音の認知は経過とともに改善した。文字言語の障害は見られず, 文や単語レベルの音声言語の認知は良好で, 失語症は否定された。語音聴力検査の成績は不良であったため, 単音節の語音に限定された聴覚受容の障害, すなわち語聾の中の語音聾に相当すると考えられた。各種の聴性誘発反応検査の結果, 末梢感覚路から脳幹までの障害が否定された。MRIにて出血巣が両側聴放線を巻き込んでいる像が認められ, 両側聴放線の部分的損傷による中枢性聴覚障害と診断した。
  • 国島 喜久夫, 浅野 進, 荒尾 はるみ
    1998 年 41 巻 3 号 p. 168-175
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1-3次検診で構成された, 6カ月児を対象とした聴覚検診システムを試行した。1次検診はアンケート方式で, 3・4カ月健康診査受診時に神経芽細胞腫ろ紙とともに配布し, 6カ月時に回答, 回収, その中から2次検診の対象児を選別した。2次検診はワーブルトーンとリングベルや紙もみ音を用いたBOA, 3次検診はCOR・ABRを施行した。
    約18,000人の中から感音難聴4例を検出し, 本システムの有効性を確認できた。しかし, 6カ月時の本システムだけですべての難聴を検出することは困難である。今回の試行では3例の感音難聴が検出できなかった。今後の課題は6カ月時で高度・中等度の難聴, 1歳6カ月時で中等度・軽度難聴の検出, 3歳時で最終チェックという体制を整備していくことである。
  • 桜井 淳, 芳川 洋, 市川 銀一郎, 安藤 一郎, 中川 雅文, 徳丸 隆太, 小山 幸子
    1998 年 41 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    双極子追跡法を用いて頭頂部緩反応のN1成分について検討を行った。
    聴力正常成人24名について双極子追跡法による起源推定を行い, そのうち信頼性の高い結果が得られた78波形を検討した。
    N1成分の双極子は側頭部に近似される例が多かった。
    諸家の報告ではN1の起源は聴皮質とする報告が多いが, 今回の検討はそれと同様の結果であった。しかし, 正中に近似される例や正中と側頭部の両方に近似される例も見られ, 側頭部以外にも起源が考えられた。N1の起源は3個またはそれ以上存在し, そのうちの2つは両側の聴皮質と考えられた。
  • 設楽 仁一, 小寺 一興, 斎藤 宏, 北 義子, 工藤 多賀, 田中 美郷
    1998 年 41 巻 3 号 p. 182-187
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳手術を施行した小児4症例の聴覚および言語発達について検討した。3例は髄膜炎による後天性難聴, 1例は先天性難聴で, 年齢は3歳1カ月から4歳3カ月であった。初診時の平均聴力レベルは4症例とも130dB以上であったが, 人工内耳手術後には語音弁別能および語彙数の増加に著明な改善が認められた。5母音の弁別能は術後9カ月でほぼ100%可能となった。髄膜炎後短期間で手術を施行した2症例に比較して, 先天性難聴例と, 失聴期間が長い後天性難聴例では, 子音の弁別能の発達が遅れる傾向を認めた。
  • 小山 幸子, 芳川 洋, 市川 銀一郎, 安藤 一郎, 桜井 淳, 中川 雅文, 徳丸 隆太
    1998 年 41 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頂部緩反応SVRのN2成分の等価双極子を双極子追跡法を用いて求めた。健康な聴力正常成人20名を対象とし, 片耳刺激のSVRを頭皮上21chより記録した。刺激側の左右差に関係なくN2成分の等価双極子は前頭部に認められる傾向があった。双極子の方向は変化に富み一定の傾向を示さなかった。N2成分の双極子の位置, 方向よりその起源は主に前頭部由来であると推定した。双極子が変化に富み, 安定性が悪かった理由として, 1) 実際の脳の活動部位が, 双極子追跡法で推定できる双極子の数よりも多い。2) 被験者の意識レベルや覚醒レベルが影響した。
  • 原田 博文, 池田 宏之, 近藤 毅, 白石 君男, 加藤 寿彦
    1998 年 41 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    自衛官の急性音響性感音難聴20例24耳について, その回復過程を純音聴力検査にて観察した。症例は18歳から48歳までの男性であった。聴力が正常範囲まで回復した治癒群が5耳, 正常範囲までではないが回復の認められた回復群が13耳, 不変群が6耳であった。音響曝露から受診までの日数が長い症例は不変例が多かった。個々の周波数ごとの回復過程を観察すると, 4000Hzの回復が最も不良であり, 次いで8000Hz, 2000Hzの順であった。
    急性音響性感音難聴の予後は, 4000Hzの聴力レベルに着目し, それが徐々に回復していけば, 正常範囲まで回復する可能性が高く, 早期にプラトーに達し動かなくなると, 部分的回復にとどまると推測された。
  • 畠 史子, 田中 真理子, 北奥 恵之, 成尾 一彦, 松永 喬
    1998 年 41 巻 3 号 p. 200-206
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    NICUで管理されるハイリスク新生児の難聴の発生頻度は一般の頻度と比べ高率であるとされ, 早期発見のためにABR等を使った聴力スクリーニングを行っている施設が多い。1990-1995年の6年間に行った329名のABRについて検討した結果33名10.0%がABR異常で, その重要な因子は (1) 10日間以上の長期人工呼吸管理 (2) 脳障害 (3) 頭頸部奇形 (4) 奇形症候群 (5) PPHN (6) 妊娠中の非細菌感染 (7) 1,000g未満の超低出生体重の各因子であった。またこの6年間に初回ABRが正常であったのに, 後に高度難聴と診断された例が4例あり, うち3例は長期人工呼吸管理を受け, high frequency oxygenation (HFO) を使用されていた。また2例にはPPHNも合併していた。こういった後に発症した難聴も見逃さない方法として, NICUを退院した全員に1歳前後にCORを行う方法を提唱する。
  • 中原 はるか, 熊川 孝三, 氏田 直子, 武田 英彦
    1998 年 41 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    コクレア社製人工内耳の電極の評価として, 平均電極電圧 (Averaged Electrode Voltages: AEVs) の測定を行った。臨床的に安定した症例では, 人工内耳埋込後, 6カ月までの時点では, 経時的には大きな変化は認められず, 測定値は極めて安定していた。
    変調をきたした例については, AEVsは電極の状況と経時的変化を良く反映した。波形は, 個々の電極間の電流の方向を反映していると考えられ, 個々の電極の客観的評価に極めて有効であると考えられた。
  • 塚田 晴代, 長井 今日子, 小原沢 昌子, 亀井 民雄
    1998 年 41 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    補聴器未装用の学齢期の軽度, 軽中等度感音性難聴児15例において, 補聴器適合の必要性を以下の分析により検討した。 1. 日常生活における聴性行動及び, コミュニケーション障害についての問診。 2. 語音聴取能の検査 (55dBSPLと自覚域値 (PTA: 4分法) 上40dB入力で)。 3. 子音の異聴傾向の分析。 4. WISC-R知能検査。 1-4のいずれかの検査結果が不良であった12例に補聴器を適合させた。 さらに補聴効果を調べるために, 55dBSPLにおける語音聴取能を検査したところ, 裸耳では平均48.5% (1SD=±21.4) であったのに対し, 補聴耳では79.9% (1SD=±12.9) と改善した。 また, 補聴器を装用し1年以上経過した8例において, 装用前後で言語発達を評価し比較したところ, 毎日補聴器を装用していた症例では, 言語力が強化されていた。 以上より難聴が軽度, 軽中等度であっても, 症例ごとに補聴器の適応について十分検討し, 積極的に装用を考えるべきである。
  • 青柳 優, 横田 雅司, 鈴木 豊, 渡辺 知緒, 伊藤 吏
    1998 年 41 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    80Hz変調周波数追随反応 (80Hz AMFR) の信頼性と周波数特異性を検討するため, オージオグラムの得られた難聴幼児26例27耳を対象として, 搬送周波数を変化させて睡眠時に80Hz AMFRを施行し, 周波数ごとの閾値とオージオグラムを比較検討した。また, 滲出性中耳炎症例2例と心因性難聴症例2例を対象として他覚的聴力検査法としての臨床応用について示した。
    全ての型の聴力像において80Hz AMFR閾値はオージオグラムと良く一致し, 80Hz AMFRは高い周波数特異性を有することが判ったが, 80Hz AMFR閾値と聴力レベルの相関係数は低音域ほど低い傾向にあった。滲出性中耳炎症例では鼓室内チューブ留置術後に80Hz AMFR閾値の改善が認められ, チューブ脱落後に再度悪化が認められた。また, 心因性難聴症例においては500-1000Hzの80Hz AMFR閾値は10-30dBであり, 充分に臨床応用が可能であると考えられた。
  • 1歳6か月児健診にむけての一考察
    土井 玲子, 立本 圭吾, 西山 彰子, 鈴木 敏弘, 中尾 美穂, 志多 真理子, 小宮 精一, 村上 泰
    1998 年 41 巻 3 号 p. 228-234
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    両側高度感音難聴児は, 遅くとも1歳6か月までに診断し, 療育を速やかに開始することが目標である。現状では診断までの経過にどの様な問題点があるか, 京都市児童福祉センター耳鼻咽喉科で過去10年間 (1986年-1995年) に感音難聴と診断した251例について, 初診年齢及び診断までの経過を検討した。平均初診年齢は, 高度難聴で1歳6か月, 中等度難聴で4歳5か月であった。高度難聴のうち約40%は1歳6か月以降の初診であり, 中等度難聴の約50%が3歳6か月以降の初診であった。難聴のリスク因子がありながら適切な指導がなされていなかった症例や, 言語発達遅滞のみが指摘され, 難聴に関する検査が遅れた症例など医療機関の問題点も認められた。これらの問題点をふまえ, 1歳6か月児健診に際しての工夫と注意点を考察した。
  • 佐藤 紀代子, 岡本 途也, 大氣 誠道, 杉内 智子, 柚木 昇, 吉野 公喜, 洲崎 春海
    1998 年 41 巻 3 号 p. 235-241
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1993年に高度難聴者を対象に電話両耳聴システムを試作し, これを用いて電話によるコミュニケーション指導を行ってきた。 今回, このシステムを使用した高度難聴者に, アンケートを用いて本システムを使用する以前の電話使用状況を検討した。 さらに指導を実施した21名に対して, 本システムの使用感と指導前後の電話使用状況を検討した。
    電話両耳聴システムの特徴は, 1) 両耳で聞くこと, 2) 補聴器の外部入力端子から電気的に入力することである。
    アンケートの結果は, 電話を使用していたものは31名中8名と少なく, そのうち100dB以上は2名であった。 また, 電話両耳聴システムを使用してコミュニケーション指導を行った21名中16名は電話での会話が可能となった。
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