誘発耳音響放射 (TEOAE) の臨床研究から年齢差, 性差, 左右差があることが最近報告されている。当科では平成12年10月より276例 (552耳) の産科入院の正常満期産の新生児に対して入院時あるいは1ヵ月検診時に, TEOAE, 歪成分耳音響放射 (DPOAE) を用いて聴覚スクリーニングを行っている。TEOAEとDPOAEを併せた検査結果では, 初回検査で要精査耳が32耳でその内訳は, 右耳が13耳 (41%), 左耳が19耳 (59%), 男児が20耳 (62%), 女児12耳 (38%) と右耳, 女児で要精査率が低い傾向にあった。今回我々は条件を満たしたTEOAE反応の得られた新生児および1ヵ月児253例506耳を対象としてTEOAEの性差, 左右差, 周波数差について検討した。結果はTEAOE反応が男児よりも女児に, 左耳より右耳において有意に大きいことを示した。周波数の検討では3kHzで他の周波数より大きかった。原因として自発耳音響放射 (SOAE) の影響, 特に蝸牛の解剖学的形態, 有毛細胞に対する遠心線維の抑制効果に性差, 左右差があることなどが示唆される。
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