「電話コミュニケーション指導」を行った重度聴覚障害児3例の電話での会話の改善状況を3か月ごとに1年間分析した。その結果, 3名は指導初期ではきき取れないことが多く,『あいづち』や無言などの『不適切応答』で応答し, 会話が成立しにくかった。しかし, 指導によってきき取れない時には『きき返し』『要求』『確認』などの「ストラテジースキル」を使うようになり, 1年後には補助なしで会話が成立するようになった。これらの「ストラテジースキル」は電話の相手である指導者の語りかけによって導かれ, まず『きき返し』などの容易なスキルが使用され, 後期に思考をはたらかせていく『想像』や『集約確認』などの高度なスキルが観察された。
重度聴覚障害児の音声コミュニケーションは健常児とは異なり, ストラテジースキルを頻繁に用い, お互いの発話を確認し伝え合うという特有なパターンを示した。本法のようなコミュニケーションを用いた言語指導が思考を育て, 重要なストラテジースキルを獲得させる指導方法になると考えられる。
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