AUDIOLOGY JAPAN
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38 巻, 2 号
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  • 大久保 英樹, 立原 成久, 佐藤 重規, 秋月 浩光, 森田 康久, 阿瀬 雄治, 原 晃, 中田 穂出美, 草刈 潤
    1995 年 38 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内リンパ水腫作製前および作製後12週までのDPOAEs, EP及びCAPの経時的変化を18匹のモルモットを用いて測定した。
    1. 低音域 (4, 6kHz) のDPOAEsは内リンパ水腫作製1週後で既に有意に低下したが, 8kHzのDPOAEsは12週後に初めて有意に低下した。
    2. EPは2週後で既に有意に低下し, 時間経過とともにさらに低下した。
    3. CAP閾値の上昇は2週後には認められず, 4週後で初めて低周波数域 (2-6kHz) にて有意に認められ, 12週後には測定した全ての周波数 (2-16kHz) で認められた。
    4. イソソルビドを経口投与すると, 内リンパ水腫作製後に低下したDPOAEsが回復する傾向が認められた。
    したがって, DPOAEsは内リンパ水腫の存在を最も鋭敏に判定しうる検査法であると考えられた。
  • 坂下 哲史, 久保 武志, 楠木 誠, 久内 一史, 中井 義明
    1995 年 38 巻 2 号 p. 128-134
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    メニエール病患者39名39耳を対象に, 聴力と誘発耳音響放射 (EOAE) のパワースペクトラム中最大のピークを示す周波数 (主周波数) およびその変化との関係を中心に検討した。その結果, 本疾患においては低い傾向のある主周波数の値と低音域の聴力との間には明らかな関係は認められず, また浸透圧利尿剤投与による主周波数の変化が認められるのは低音域の聴力が正常か, あるいは難聴があってもごく軽度の時が多かった。また, そのような聴力の例の中に, 聴力変化がないにもかかわらず浸透圧利尿剤負荷後やめまい発作の前に主周波数の変化を認めた例が存在した。これらの結果より, 聴力が正常か, 正常に近い状態において純音聴力検査ではとらえられないような内耳の変化をEOAEでとらえることができる可能性が示唆された。そして, 難聴が進行していない初期のメニエール病においては, EOAEが有用な検査となりうると考えられた。
  • 泰地 秀信
    1995 年 38 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    EOAEの遅延成分とDPOAEについて, ヒト基底板モデルによりシミュレーションを行った。EOAEの遅延成分は2次のブラッグ反射とみなせば説明可能なものと思われた。2f1-f2のDPOAEは, f1とf2の基底板での重なりにより発生するものと考えてモデル計算を行ったところ, 入出力特性などについて説明することができた。いずれも蝸牛増幅機構を仮定しなくても説明可能と考えられた。
  • 大沢 広秀, 藤原 敏浩
    1995 年 38 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内耳性難聴の誘発耳音響放射 (EOAE) においては, 1kHzの純音聴力閾値とEOAEのslow componentの検出閾値とがよく相関する。突発性難聴においてもEOAEの検出閾値はその時点での純音聴力閾値と一致する。しかし予後良好な突発性難聴症例において, 純音聴力閾値の改善よりも早くEOAEの検出閾値の改善が認められるものがあり, この様な症例においてはEOAEが聴力の良好な予後を意味する。
  • 服部 琢, 邱 向丹, 柳田 則之
    1995 年 38 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    誘発耳音響放射 (EOAE) が他覚的内耳機能検査法として評価されるためには, 他の部位からの影響を受けにくいことが必要である。チンパノグラムA型の範囲として除外されてきた中耳伝音障害や, 治療薬剤の影響を検討するため, 高気圧酸素治療を受けた突発性難聴や, 同内容の治療を受ける顔面神経麻痺をモデル症例に設定し, 経時的な測定を行った。EOAEのみかけの検出閾値は聴力正常耳では経時的に, 急性感音難聴への一般的な薬剤には長・短期的ともに, 安定していた。急性感音難聴の経過中における, EOAEのみかけの検出閾値の変化は内耳由来であることが確認されたが, チンパノグラムがA型以外となるような中耳伝音障害には大きく影響を受けて上昇した。中耳伝音障害が発生する場合には充分留意しなければならないが, EOAEは他の因子には左右されにくく, 内耳機能を反映し, 感音難聴の経過を追跡するのに適していると結論した。
  • 深澤 達也, 田中 康夫
    1995 年 38 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    正常耳における誘発耳音響放射遅延成分 (EOAE slow component) の入出力曲線を求め, 次に計算機シュミレーションでそのデータを再現した。その結果, (1) 現実的なEOAEの生成には, 基底板に周囲より1.5倍程ダンピングが高い不規則点があれば十分であること, (2) slow componentの飽和性は, 蝸牛の能動的なフィードバック機構に強く関連すること, などが推測された。
  • 佐藤 利徳, 大山 健二, 和田 仁, 高橋 辰, 高坂 知節
    1995 年 38 巻 2 号 p. 159-167
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    大口径火器の取扱いに従事し, 強大音に暴露される機会の多い自衛隊員に, 従来の聴覚検査とDPOAEの測定を行い, DPOAEを用いた音響性聴器障害の早期検出の可能性を検討した。その結果, DPOAEレベルの低下のほうが純音聴力検査の域値の上昇よりも早期に現れると見られる結果が得られた。また, DPOAEの入出力特性のデータも組み合わせることで, 聴力域値上昇がまだ軽微なうちに障害の早期発見ができる可能性が示された。しかし, このようなDPOAEレベルの低下が, 音響性聴器障害の初期像であるという確証はまだなく, このことを確かめるには, 今後も長期にわたる追跡調査が必要である。
  • 鄭 玉蓮, 大山 健二, 朴沢 孝治, 和田 仁, 高坂 知節
    1995 年 38 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    スナネズミでDPOAEを測定する際に, 麻酔剤としてpentobarbitalを使用した場合とケタミンを使用した場合とで, 記録されるDPOAEの様相が異なることが偶然わかった。しかし, このようなDPOAEに対する麻酔剤の影響の違いが動物のbullaを開けることにより消失することから, これは内耳に対する影響によるものでなく, 中耳圧を変化させることによっておこるものだと推定された。本研究では, pentobarbitalと中耳腔内圧負荷がDPOAEの周波数特性 (frequency characteristics) に及ぼす効果を比較検討し, 以下のような結論を得た。1) スナネズミにおいてpentobarbitalの投与は中耳圧を陰圧に変化させた。2) pentobarbitalにより生じた中耳陰圧は中耳におけるDPOAEの伝達を強く抑圧した。3) したがってOAEsなどを測定するスナネズミにおける実験では麻酔剤の選択は重であると思われた。
  • 佐藤 信清, 川浪 貢, 柏村 正明, 千田 英二, 福田 諭, 犬山 征夫
    1995 年 38 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    我々は難聴が疑われ1991年1月-1994年6月に当科を受診した純音聴力検査施行不能の4歳未満の乳幼児140例に覚醒状態および自然睡眠で誘発耳音響放射測定を試み, その結果に検討を加えるとともに乳幼児の難聴スクリーニングにおける誘発耳音響放射の意義について検討を加えた。誘発耳音響放射を試みた226耳中, 203耳と大半の症例で測定可能であり, そのうち半数で良好な反応が得られ高い確率で正常耳を判別できた。難聴の早期発見という観点から, 特に保健所乳幼児小児検診後の紹介例における検討では, 正常聴力と診断された例は多数あり, 簡便で正確なスクリーニング検査法として誘発耳音響放射は適しており今後臨床応用を進めるべきと考えられた。難聴例及び滲出性中耳炎症例では, 誘発耳音響放射は認められなかったが, 高音急墜型の聴力像を示す感音難聴症例では, 一見良好な反応が得られることがあり, その反応の周波数分析を考慮し, 今後検討すべき点と考えられた。
  • 田中 康夫, 井上 庸夫, 仁木 博文, 井上 良江, 佐竹 究, 内藤 永恵
    1995 年 38 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 1995/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    純音聴力検査におけるディップ型聴力損失と誘発耳音響放射 (EOAE) の持続の延長 (C-EOAE) との間に関係があり, C-EOAEが内耳の音響易傷性を表現しているらしいことを示唆されている。そのような関係を実証するための一連の研究の一つとして某高等学校剣道部員の聴覚検査とEOAEの測定が行われた。自記オージオグラム上において, 規定した小ディップは44耳中34耳に見られ, C-EOAEは44耳中24耳に認められた。C-EOAEのある耳における小ディップのある頻度は95.8%であり, 両者の間にはユールの連関係数Q=0.90で強い関連性のあることが示された。この成績は以前に報告した中学校吹奏楽部員における調査結果に近いものであった。今までの一連の研究結果から, C-EOAEは音響易傷性の内耳素因を表わしているという考えが支持され, EOAEの測定は音響障害の易傷性の予知に役立つ可能性が示唆された。
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