2004年4月から2005年3月の1年間に, 神奈川県と岩手県の全耳鼻咽喉科施設を受療する急性低音障害型感音難聴患者を対象とした疫学調査を行った。初発患者数は神奈川県で10万人対42.8人, 岩手県では10万人対65.7人と推計され, 急性発症する感音難聴として最も頻度の高い疾患の一つと考えられた。初発症例の発症時年齢は平均37.7歳, 男女比1:3.0であった。発症時の自覚症状は耳閉塞感, 難聴, 耳鳴が多く, 発症前の状況は精神疲労, 睡眠不足, 肉体疲労が多かった。初発症例では治癒率は61.0%, 改善率は79.0%, メニエール病移行例は1.8%であった。再発症例では治癒率は73.5%, 改善率は85.7%, メニエール病移行例は3.1%であった。治癒率, 改善率に性差を認めなかったが, 女性は男性に比べ, 再発例, メニエール病移行例が多かった。また, 治癒率でみると, 39歳以下に比べ, 40歳以降で有意に予後が悪かった。
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