既設PCポストテンション橋を今後も健全な状態で供用するためには,PCグラウトの再充填やPC橋の安全性を確保するための外ケーブルによる補強等の対策を実施する必要性が年々増大してきている。PCグラウトの再充填工法についてはいくつかの工法が開発され,実際に用いられているが,再充填に関する具体的な要求性能および性能照査方法などが明確にされていない。また,PCポストテンション橋の補強方法としてよく用いられている外ケーブル補強工法についても具体的な規準等が明らかにされていない。以上のことから,プレストレストコンクリート工学会において,「既設PCポストテンション橋保全技術指針」を刊行した。ここでは本技術指針の概要について述べるものである。
環境配慮型コンクリートの全体像を示すとともに,i-Constructionが目指す建設施工現場の省人化と環境配慮型コンクリートによるCO2削減を同時に達成する技術について言及する。締固め作業の省人化に寄与する高流動コンクリートの粉体としてコンクリートスラッジにCO2を吸収させて製造した炭酸カルシウム微粉末を混入する技術と,CO2吸収コンクリートを埋設型枠に適用する技術を併用することで,省人化とCO2削減を同時に達成することが可能となる。さらに,将来的には,埋設型枠のコストダウンが想定されており,現状コストと同程度で,大幅な工期短縮とCO2削減の達成の可能性について論じる。
周知のとおり,社会資本ストックは戦略的に維持管理・更新することが求められている。橋梁ではこの手段として,点検・補修工事などによるメンテナンスサイクルが実施されている。しかしながら,近年は断面修復工法等の補修工事を実施した後の再劣化事例が多く報告されており,補修工事での品質管理方法を高度化することが必要になると考えられる。そこで,非破壊試験の一手法である衝撃弾性波法を用いた,第三者機関による品質管理を実構造物に適用し,その妥当性を検証した。その結果,2016年に断面修復工法を適用した橋梁で実際に施工不良箇所が存在すること,衝撃弾性波法によりこの不良箇所を検出できること,これらを明らかにした。
暑中期のコンクリート工事の施工性改善や品質確保を目的に,流動性保持成分と凝結遅延成分を混合した特殊混和剤を用いた新しい暑中コンクリートを開発し,種々の検討を行った。その結果,流動性保持と許容打重ね時間間隔の確保を両立するには,流動性保持成分と凝結遅延成分を混合した混和剤を用いるのが適当であること,特殊混和剤を用いることで35℃を超える環境下でも,20℃程度の標準的な時期のコンクリートと同程度の流動性保持時間や許容打重ね時間間隔を確保でき施工性を改善できること,特殊混和剤の使用は硬化コンクリートの品質に影響しないこと等を示した。
古平町複合施設新築工事は,北海道で初めて「ゼロカーボンシティ宣言」を発した環境配慮に関心の高い古平町が計画した環境配慮型建築物の建設工事である。建築全体で道内の公共施設で初のZEB Readyの環境性能を有するだけでなく,北海道産のカラマツ集成材とプレキャストプレストレストコンクリート(PCaPC)梁とを一体化させた複合梁を開発・適用して,鉄筋コンクリート(RC)造建築物の木質化を実現した。本報では,同施設の設計と施工の概要を報告する。