1999年以来利用されている土木学会の「コンクリート構造物の補強指針(案)」が改訂され,2018年6月に「セメント系材料を用いたコンクリート構造物の補修・補強指針」が出版された。ポリマーセメントモルタル(PCM)を含むモルタルやコンクリートによる増厚工法と巻立て工法を対象としていることから,共通編,上面増厚工法編,下面増厚工法編,巻立て工法編からなる。さらに付属資料として,本指針が扱う3工法のState-of-the-art,代表的な施工事例,性能照査を含む設計例を作成した。改訂により,新しい材料(PCMなど)への対応,適用実績を踏まえた内容の充実,下面増厚工法の剥離など新しい照査手法の導入,上位規準であるコンクリート標準示方書の改訂への対応が図られた。
本稿に示す改良型鉄筋挿入工法は,RC造耐震壁の乾燥収縮ひび割れ対策として,壁表面に設けた切欠き目地と目地位置の壁中に異形鉄筋を用いたひび割れ誘発材,および壁縦筋を同一断面上に配筋するもので,壁の乾燥収縮ひび割れを目地位置に誘発するとともに,耐震壁の剛性,せん断耐力および曲げ耐力を,目地の無い壁と同等にするものである。その有効性について模型試験体による構造実験等で検証した。その結果,本工法は目地位置に異形鉄筋のひび割れ誘発材を配筋することで切欠き目地によるコンクリートの断面欠損を補い,目地の無い壁と同等の耐力,剛性を与えることを確認した。また,本工法の実建物での検証結果,および目地部の挙動を考慮して新たに開発した目地充填材等について述べる。
小田急小田原線複々線化事業にあたり,下北沢駅付近では京王井の頭線の既設橋脚を撤去し,新しい鉄道橋への架け替えを行う必要があった。構築スペースや架設クレーンの制約および既存躯体への影響低減のため,新設桁にはUFC(超高強度繊維補強コンクリート)を使用し,その架け替えは,営業線の運行に支障がない短時間で完了する必要があった。そのため,最終形式では複数のUFCのプレキャスト桁を超速硬コンクリートによる間詰めとPC鋼材の緊張により一体とする単純ポストテンション方式UFCホロー桁橋構造を採用した。本報では,これらの使用材料・構造の特徴と,夜間の限られた時間内での施工とその品質を確実にするために行った多くの工夫について紹介する。