鋼コンクリート合成構造に於いて,異種材料や異種の構造部材・システムを接合する接合部は,重要な構造要素である。接合部の基本的な応力伝達及び抵抗機構としては,付着,摩擦力及び機械的ずれ止めが挙げられる。機械的ずれ止めは,建築分野に於いて,主に頭付きスタッドが多用されているが,合成構造の多様化傾向を鑑みると,頭付きスタッドのみでなく,土木分野で適用されている孔あき鋼板ジベル等の高耐力,高剛性の機械的ずれ止めも,今後,建築分野に取り入れていく必要がある。「鋼・コンクリート機械的ずれ止め構造設計指針」は,頭付きスタッド及び孔あき鋼板ジベルを対象に,建築分野の接合部ディテールに即した構造性能評価法を構築し,刊行されたものである。
2050年のカーボンニュートラル化に向けて,各方面でCO2削減に関する技術開発が進んでいる。コンクリートの分野では,材料,製造,養生,供用の各ステージにおいてCO2を削減する技術開発が必要である。著者らは,コンクリート製造時にCO2を固定化させる技術を開発するため実験的検討を行った。その結果,コンクリート1m3当たり10kg程度のCO2を固定できることを確認した。また,コンクリートの製造を2つのステップに分ける分割練りを行うことで,CO2を固定しても圧縮強度の低下や強アルカリ性の喪失はなく,鉄筋コンクリート構造物にも適用可能な技術であることを確認した。
コンクリート表層の透気性はコンクリートの耐久性の観点から重要であると考えられており,様々な研究の実施や,国内規格の制定が行われている。著者らは,可搬性が高く,電源供給が不要な測定装置であるシリンダーを用いた簡易透気試験(シリンダー法)を開発し,その測定方法や評価についての検討を進めている。本稿は,これまでの研究で得られたシリンダー法の有用性に関する主な検討結果をまとめたものである。
コンクリート構造物の鉄筋の腐食を,一般に適用している酸化性腐食だけではなく,酸化性腐食時における酸素の消費により酸素濃度が非常に小さくなっていき,還元性雰囲気に移行することを考慮して,長期の耐久性が要請されているRC構造物の耐久性を評価する方法を提案した。コンクリートの高緻密化と併せて,供用中に想定したひび割れ幅を減少して零にまで制御できるプレストレストコンクリートや,ひび割れ制御レベルを高めたケミカルプレストレストコンクリートを併用することで,還元性腐食環境下における腐食速度の減少効果を期待できる可能性について示唆した。
NATMにおける一般強度の吹付けコンクリートのポンプ吐出量は12m3/h程度で施工することが多く,設備能力の約半分程度しか用いられていない。本工事では,ポンプ圧送による圧送負荷低減の観点からスランプの最適化,水平換算距離の低減を行うことで吐出量の増大に取り組んだ。その結果,吹付けコンクリートのはね返り率を増加させることなく,吐出量の吐出量を20m3/hまで増加することができた。また,あわせて,配合の改良がはね返り率,粉じん濃度に及ぼす影響について検討した。本報では,これらの結果について報告する。