2009年から2022年の13年間における社会情勢の変化,鉄筋コンクリート工事に関わる使用材料・施工技術・品質管理方法の進歩,法令・規格の改正などに対応すべく,資源循環・低炭素の促進,DXによる施工・品質管理の合理化・効率化,コンクリートの高性能化・高品質化,およびJASS 5の位置づけの明確化を改定の旨として,2022年11月に日本建築学会JASS 5の大改定がなされた。本解説では,JASS 5の主要な改定内容を紹介する。
外装PC板の軽量化を目的に,鋼繊維補強コンクリートを用いて薄型にした外装SFRC板が開発されている。これまでの外装SFRC板は,経済性や耐火性に課題があった。本開発では,経済性を向上するため,少ない繊維量で従来と同等の性能を確保することを目的とし,コンクリート調合の最適化を図った。その調合に対し,外装カーテンウォール構法としての構造性能を確認した。さらに,外壁耐火性能を検証するとともに,近接する鋼構造部材の耐火被覆の合理化をねらいとして,外装SFRC板を一体とした合成耐火被覆工法を開発し,耐火構造の大臣認定を取得した。以上の課題解決により外装SFRC板の改良を進め,得られた成果を複数の実建物に展開している。
飛来塩分環境下における築48年の鉄筋コンクリート造建物より取得した鉄筋を対象に,表面観察および成分分析を実施し,劣化原因の推定を試みた。測定は,マイクロスコープおよびSEMによる表面観察に加えて,EDS,XRD・XRFおよびEPMAにより成分分析を行った。試料の表面観察および分析時には,建物の詳細を伏せた中での試験であったが,各試験の結果を総合して検討した結果,内在塩分ではなく,飛来塩分および中性化によって,鉄筋の腐食が進行した可能性があることを推定することができた。さらに,一事例の部位ではあるが,実暴露の環境下における腐食生成物の形状および成分分布の実態を示すことができた。
新潟駅付近連続立体交差事業は,新潟市の都市計画事業として在来線を約2.5 kmにわたり高架化し,2箇所の踏切を解消し4本の都市計画道路を整備する事業である。このうち在来線高架橋は2018年4月に第一期開業,2022年6月に全線高架化開業を迎えた。本稿では新潟駅在来線高架橋の設計・施工における課題と対策から,高架橋構造計画,アルカリシリカ反応対策,工期短縮に向けた施工方法,点群を活用した取り組みについて述べる。
本建物はJR静岡駅から徒歩10分の市街地に建つ営業所である。狭小敷地おけるスモールオフィスの計画にあたり,建築主からの様々な要望の中,柱頭免震を採用した4本の柱で3層の円筒スラブを支持する18mスパンのRC架構を採用した。外側に拡がる円筒スラブの断面形状は空問の開放感を高め,自然光を内部へ導入,床下空間は設備スぺースに活用するなど構造計画が建築・設備計画と高いレベルで融合する建物を実現した。本稿では,特徴的な円筒スラブ架構の実現に対して,設計から施工において工夫した点と3D・先端技術活用を推進して課題解決を図った点について報告する。