土木学会鋼構造委員会では,鋼道路橋の床版について1997年より床版に関する小委員会を設置し,継続的に調査研究している。2013年からの道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会では,その研究成果の一つとして平成28年10月に,「道路橋床版の維持管理マニュアル2016」を鋼構造シリーズ27として出版した。マニュアルは,道路橋において最も劣化の激しい部材の一つである床版に特化したものであり,その構成は,道路橋床版の損傷と劣化,点検・調査方法,劣化進行過程の評価,対策工法の選定,維持管理の事例紹介である。付録には,維持管理事例,詳細調査,評価手法,対策工法の選定事例・設計施工,健全性定量化について詳細に掲載している。
橋梁やトンネルでは,コンクリート片の剥落による第三者被害を防ぐために叩き点検が実施されている。叩き点検は,高所作業車などで点検者がコンクリート面に近づいて,直接,ハンマーでコンクリート面を打撃し,その音を耳で聴き,欠陥の有無を判定する技術である。そのため,結果が客観的ではないこと,危険で苦渋作業になるといった課題があった。ここでは叩き点検を代替するための,人工知能AIを用いた探査の定量化技術と音響探査法を用いた探査の自動化技術について紹介する。
高炉スラグ細骨材を用いる場合,水セメント比が50%以上のコンクリートの配合では,微粒が少なく,ブリーディングが生じやすい。高炉スラグ細骨材の補填材に混和材のフライアッシュを組み合わせることにより,高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートの性状改善を試みた。その結果,フレッシュコンクリートの性状,圧縮強度,耐久性が改善された。現在,大阪では,高炉スラグ細骨材とフライアッシュを組み合わせた生コンクリートが普及してきている。また,広島県の竹原火力発電所新1号機設備更新工事用にこれらの副産物を組み合わせたコンクリートが用いられており,大幅な二酸化炭素排出量低減効果が期待されている。
道谷第二橋は,中国自動車道の徳地IC~鹿野IC間の山間部に位置する橋長115.0mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋であり,供用開始から36年が経過した橋梁である。凍結防止剤の散布による塩害や凍害による複合劣化が発生し,抜本的な対策としてプレキャストPC床版に取替える全面補修を実施することとなった。しかし,本橋は上り線と下り線が分離していることから,片側全面通行規制区間が広範囲に及ぶことが懸念された。そこで,半断面ごとに床版を取替えることができる半断面施工にて,片車線規制による全面補修をパイロット工事として実施した。本稿では,その半断面施工における各種設計・施工技術について報告する。
名古屋の玄関口である「JR名古屋駅」に,JRセントラルタワーズと一体となり名古屋の新たなランドマークとなる「JRゲートタワー」が誕生する。JRゲートタワーは,地上高さ220m,基礎深さGL-35mの大深度地下構造を有する超高層複合ビルであり,建築計画と施工計画上,主に地下および基礎構造に様々なコンクリート技術を取入れている。本稿では,本建物の設計概要とともに採用したコンクリート技術について報告する。