鉄骨コンクリート(CES)構造は,鉄骨鉄筋コンクリート構造の鉄筋コンクリート部を繊維補強コンクリートに置き換えた,繊維補強コンクリートと内蔵鉄骨のみで構成される新しい建築合成構造システムである。日本建築学会では,CES構造の発展および適正な設計・施工法の普及等を目的として,2022年3月に「鉄骨コンクリート(CES)造建物の性能評価型構造設計指針(案)・同解説」を刊行した。本稿では同指針の概要を紹介する。
社会基盤として長期間の供用を前提に建設される構造物には高い耐久性が求められる。昨今,世界的な潮流となっている脱炭素化に貢献する意味においても,構造物の長寿命化やそれに資する技術開発の重要性が高まっている。著者らは,コンクリートの水分浸透抵抗性を実構造物で評価する技術,特に簡易な評価技術の実用化と実務への導入に注力してきた。硬化したコンクリートの水分浸透抵抗性を発注者が建設工事の途中段階で確認し,必要に応じて施工方法の見直しや改善に繋げることで,耐久性の高い構造物の構築を実現する取組み等を行ってきている。本稿では,散水後の目視による簡易な評価技術である「散水試験」の概要と適用事例を報告する。
コンクリートに鋼製の短繊維を混入した鋼繊維補強コンクリートは,その力学特性を大幅に改善できるため,古くから多くの研究開発が行われてきた。今回,両端にフック形状の定着部を有する鋼繊維を体積比で1.0%程度混入した設計基準強度30~60 N/mm2クラスのコンクリートを適用した短スパンRC梁の構造性能確認実験と打込み時の施工性改善のための調合検討を実施した。本報では両検討の概要と結果を報告する。
建設業界の長年の課題である配筋検査の生産性向上のため,国土交通省のPRISMや現場試行を中心に積極的な技術開発が行われている。筆者らも簡単な操作で迅速に鉄筋計測や帳票作成が可能な3眼カメラ配筋システムを開発し,国内で初めて段階確認に採用された。阪神高速道路(株)の駒栄工区開削トンネル工事などでも採用,日常使用されているが,並行して継続的なアルゴリズム改善による計測精度向上も行っている。本報では,システムの構成や機能,今回新たに実施した鉄筋の個別間隔検討結果,現状の平均間隔計測や鉄筋径判別精度とシステム機能について記載する。また,土木分野だけでなく建築分野での適用性に関しても紹介する。
横須賀線武蔵小杉駅は駅利用者が急増しており,抜本的な対策が必要となった。そこで,横須賀下り線用のホームを新たに設置することとなった。横須賀線新下りホームの構造は既設高架橋と一体化させたRCラーメン高架橋となっている。今回,高架橋のすべての柱30基に現場ならびに工場製作のいずれかの方法によるプレキャスト構造を適用することで,短い工期で手戻りなく作業を完遂した。また既設高架橋との一体化を図るために貫通アンカーを用いた計画とし,既設高架橋の配筋状況の把握や施工図の作成について三次元情報を活用した施工を行うことにより,作業時間の削減を行うことができたので,その内容について報告する。