インフラの維持管理においてモニタリング技術の活用が注目される中,モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)が内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム,2014~2018年度)に参加して,インフラの点検,診断,補修・補強など様々な場面で有効なモニタリング技術を取りまとめた。土木学会では,この成果をインフラメンテナンス総合委員会の新技術適用推進小委員会において評価を行うと共に,現場での実装を念頭に再編集し,維持管理に携わる技術者に向けたモニタリング技術の現場実装指針として新たに刊行した。本稿では,この指針の概要について紹介する。
「コンクリート構造物の劣化予測における学術研究の役割とその成果の活用に関する研究委員会(TC 201 A)」では,2年間の活動による成果を取りまとめた委員会報告書を発刊した。この委員会では,維持管理における劣化予測に用いる工学的なモデルと学術研究で得られた精緻な環境・現象評価の結果を結び付ける方法について検討した。その結果,水に着目した移動場の整理に基づき,コンクリートの物性と劣化の関連性および鉄筋腐食の環境を整理できた。また,その結果に基づいた,性能評価の一つの手法について提案した。
原子力規制庁の研究事業として受託した,放射線によるコンクリートの劣化に関する研究の概要をここで示す。中性子照射により骨材中の鉱物が膨張を起こすことがある。この膨張は鉱物種に依存が大きいが,特に石英で膨張が大きい。放射線によるアモルファス化で膨張する石英量が多い骨材を用いる場合にはコンクリートの劣化が顕著であることを確認した。その他,ガンマ線の影響は熱・乾燥影響とほぼ同様であるとの結果も得た。熱・乾燥影響についてはセメントペーストのコロイド的性質による強度変化と骨材とペーストの乾燥後の体積変化の差異に起因する骨材周囲のひび割れによってコンクリートの強度が決定することが明らかになった。
中日本高速道路は,日本の産業・経済に不可欠な存在である高速道路ネットワークの機能を今後も永続的に活用できるように,高速道路リニューアルプロジェクト(大規模更新・大規模修繕)に着手している1)。本報告は,建設から半世紀以上経ち,老朽化の進んだ庄内川橋および神領橋の床版取替工事を行った記録として,プレキャストPC床版の構造検討,床版取替施工計画(鉄道交差部施工における施工事例,都市部で限られた用地での床版搬入出方法),交通運用の安全対策事例を紹介する。
群馬県吾妻郡に位置する八ッ場ダムは2020年に竣工し,その運用を開始している。八ッ場ダムは全国でも施工例の少ない巡航RCD工法により建設が進められ,放流管設備などの構造物が多く含まれる構造においても施工効率を大幅に向上させる可能性を示した。また,ELCM工法を組み合わせ,寒中養生を徹底することで冬期においても打込みを行い,通年で施工を継続している。本稿では,これらの取組みの概要について報告する。