日本腹部救急医学会雑誌
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23 巻, 4 号
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  • 津村 裕昭
    2003 年 23 巻 4 号 p. 575-580
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【目的】穿孔性十二指腸潰瘍82例の治療法別成績を検討し治療法選択基準について考察した。【方法】保存療法 (CTr) の適応は60歳以下, リスクなし, 発症6時間以内, full stomachなし, CT上の遊離ガスまたは腹水貯留範囲が50mm未満, かつ腹膜刺激症状の限局化した症例とし, 腹腔鏡下手術 (LC) の適応は重症。重篤基礎疾患例を除外した発症24時間以内, かつ保存療法の適応外症例とした。開腹手術 (OC) の適応は重症・重篤基礎疾患例, 長時間経過または潰瘍単閉鎖困難例として, 治療法別の手術所見, 治療後経過, 合併症を検討した。【結果】治療法選択の内訳はCTr12例, LC65例, OC5例であった。絶食期間, 鎮痛剤使用期間, 入院期間はCTrとLCが良好であり, 診療費用はCTr, LC, OCの順に低額であった。【結論】重症度に応じて適応を選択すれぼ各治療法とも安全かつ有効であったが, 保存療法と腹腔鏡下手術の適応基準を明確にすることが今後の重要な課題である。
  • 経肛門イレウスチューブの有用性
    田中 豊彦, 坂本 力, 井本 勝治, 山崎 道夫, 古川 顕, 高橋 雅士, 村田 喜代史
    2003 年 23 巻 4 号 p. 583-587
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌は, 癌を切除する前に緊急減圧処置を必要とするoncologic emergencyの一つであり, 処置のタイミングや方法を誤ると致命的となる.近年, 閉塞性大腸癌の緊急の減圧治療において経肛門的イレウスチューブを用いた減圧洗浄術が行われている. われわれも経肛門専用のチューブを開発し, その有用性について報告してきた. 今回, 癌により大腸閉塞をきたした45症例 (直腸癌10例, S状結腸癌24例, 下行結腸癌8例, 横行結腸癌2例, 膀胱癌直腸浸潤1例) に対し経肛門的イレウスチューブ留置を試み, 良好な治療効果が得られたので報告する. また, 最近, 欧米を中心に行われ, 我が国でも増えつつある金属ステントを用いた減圧術について文献的考察も加えながら比較検討する.
  • 近森 文夫, 片岡 友和, 国吉 宣俊, 国吉 和重, 河島 孝彦, 渋谷 進, 高瀬 靖広
    2003 年 23 巻 4 号 p. 589-596
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) に先行するinterventional radiology (IVR) には経皮経肝胆管ドレナージ (PTBD), 経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD), 経皮的乳頭バルーン拡張術 (PPBD) がある。1996年11月から2002年9月までにPTBDを前提としたPPBD併用LCを有症状胆嚢胆管結石43例に, PTGBD先行LCを急性胆嚢炎36例に施行した。前期17例はPPBDによる除石2~7日後にLCを施行, 後期26例は全身麻酔下にLCと同時に一期的にPPBDを施行した。PTGBD後LCは状態の落ちついた1~7日後に施行し, PTGBD周囲残存胆嚢粘膜はアルゴンプラズマ凝固法にて焼灼した。PPBD併用LCにおいては, 全例で胆管結石の除石が可能で, 開腹移行率は0%, LC手術時問は73±26分, LC術後入院期間は11±4日であった。PTGBD先行LCにおいては, 術中胆管造影成功率は97%, 開腹移行率は3%, LC手術時間は82±29分, LC術後入院期間は10±3日であった。胆嚢胆管結石, 急性胆嚢炎, 胆管炎に対してLCに先行するIVRは有用と思われた。
  • CT像と血管造影所見との比較を含めて
    竹吉 正文, 木村 浩二, 西原 春實, 島 弘志, 谷脇 智, 黒田 久志, 岡崎 正敏
    2003 年 23 巻 4 号 p. 597-605
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    鈍的肝, 脾損傷における出血病変の描出を造影CTと血管造影で比較し, それらに対する動脈塞栓術の手技について述べた. 肝損傷20例 (IIIa2例, IIIb18例) ではCT分類が重症なものほど造影CTや血管造影で血管外漏出像が描出される頻度が高くなり, 損傷分類が同じ場合には, より損傷区域が広範なものにその頻度が高かった. 術後に胆汁痩を発症した6症例では67%にCTか血管造影で血管外漏出像が描出されていた. 一方, 脾損傷9例 (IIIc5例, IIId4例) に関しては造影CTと血管造影の出血性所見の描出は非常に類似し, ほぼ一致していた. また肝損傷と同様にCT分類が重症なものほど血管外漏出像の描出率は高かった. 肝, 脾損傷の動脈塞栓術後には時に遅発性の出血性合併症が報告されているが, これらは塞栓方法を工夫することでその頻度を減少させることが可能と思われた. われわれは区域あるいは亜区域動脈レベルでの塞栓術を施行し, 良好な止血効果と再出血の防止, および非損傷部肝, 脾の臓器機能温存が得られた.
  • 大森 浩明, 旭 博史, 井上 義博, 入野田 崇, 遠藤 重厚, 斎藤 和好
    2003 年 23 巻 4 号 p. 607-612
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    画像診断の進歩とともに, 救急医療におけるinterventional radiology (IVR) の重要性は高まっており, 今や不可欠の分野となっている. 本稿では腹部鈍的外傷, とくに肝・脾・腎損傷, 多臓器損傷に対するtranscatheter arterial embolization (TAE) を中心としたIVRの適応, 方法について, 自験例を交えて述べる. TAEは循環動態の安定が得られた, 単独の実質臓器損傷に対する第一選択の治療法として考慮されるべきである. また, “damage control”の概念を拡大して, TAEと手術を併用して治療を行うことも行われている. しかしながら, 適応を拡大しTAEにこだわるあまり, 逆に侵襲を拡大しIVRの本来の意義を損なうといった問題も懸念されている. また, 腹部鈍的外傷は多発外傷を合併している場合が少なくなく, 治療の決定には, 局所の理学所見や画像所見のみならず, 全身状態, 出血傾向なども考慮に入れることが重要である.
  • 岡 博史, 李 喬遠, 島田 守, 山本 紀彦, 辻 慶久, 谷口 一則, 岡田 善祐
    2003 年 23 巻 4 号 p. 613-619
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部内臓動脈瘤は破裂すると大量出血により死に直結する重篤な疾患である. 特に仮性動脈瘤は外傷や感染, 膵炎などの炎症性疾患に加え最近では手術や穿刺術などの合併症として増加している. われわれは8例の動脈瘤破裂症例を経験し, その内7例に対してコイルを主体としたTAEを行った. その結果TAE7例全例に止血が得られ, 6例 (86%) は救命された. IVRそのものの合併症は認めなかった. 動脈瘤破裂における死亡率は高く, 手術治療成績も不良であることからTAEが低侵襲で有効であり, 治療としては第一選択と考えられた. 動脈瘤破裂の緊急事態に際しては, 早急に血管撮影で確定診断し, 同時にTAEで止血術をすることが望ましい. また手術的治療が必要な場合も一時的にTAEで止血を得て循環動態を安定させた上で治療に移ることが予後の改善に役立つと考えられた.
  • 田島 廣之, 隈崎 達夫, 川俣 博志, 村田 智
    2003 年 23 巻 4 号 p. 621-627
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症骨盤外傷は, 交通事故や高所からの転落などの強大な外力により生じ, 大量後腹膜出血をきたすため予後不良である. 本疾患に対するInterventional Radiology (IVR) のうち, 特に内腸骨動脈に対する経カテーテル的動脈塞栓術は, 出血点を確認した上で直接的な止血が可能で, 側副血行を介する出血を抑制できることから, 優れた止血法として評価されている. 本稿においては, 適応, 効果, 限界など手技のポイントの解説に加え, 近年のカテーテル・塞栓物質・放射線機器など周辺機器の進歩や新しい開発により, 本疾患に対するIVRの治療成績が向上してきている点を強調した.
  • 舟塚 雅英
    2003 年 23 巻 4 号 p. 629-632
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    Spigelヘルニアは, 腹壁ヘルニアの中でも非常にまれな疾患とされている. 今回われわれは, 小腸が嵌頓したSpigelヘルニアの1例を経験した. 症例は85歳, 男性. 主訴は突然の左下腹部痛. 既往に手術歴なし. 触診所見では左下腹部の腹直筋外縁に4.5×4.0cm大の圧痛を伴う硬結が触知された. 緊急に施行した腹部3D-CT検査で, 左腹直筋外側に約2.0cmの筋膜欠損を認め, この欠損部から腹壁内外腹斜筋を貫いて外腹斜筋腱膜下に小腸が脱出しており, Spigelヘルニアと診断した. しかし, 用手的還納ができないため, 緊急手術を施行した. 術中所見では, 小腸の虚血性変化は軽度で, 小腸切除を行うことなくヘルニア門の単純縫合閉鎖術を行った。術後経過は良好で第10病日に退院した.
  • 五十嵐 章, 伊藤 孝
    2003 年 23 巻 4 号 p. 633-636
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    今回われわれは膀胱憩室炎により腹膜炎症状をきたしたまれな1例を経験したので報告する. 症例は84歳男性, 2001年12月10日頃より他院にて発熱があり尿路感染症として加療していた. 12月13目より腹痛が出現し当院紹介となった. 受診時, 下腹部を中心として筋性防御, Blumberg signを認めた. 腹部造影CT検査にて膀胱から連続する周囲が造影される腔がみられたため, 膀胱穿孔による腹膜炎と診断し当日緊急手術を施行した. 術中にて膀胱憩室炎と診断し膀胱憩室切除, 膀胱部分切除を施行した. 術後は経過順調で術後28日目に退院となった. 膀胱憩室は, しばしば認められるが膀胱憩室炎から腹膜炎症状を伴った症例はまれであり報告する.
  • 井上 育夫, 川野 裕, 岡本 亮, 永井 啓之, 福田 淳
    2003 年 23 巻 4 号 p. 637-641
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は35歳, 女性, 幼少時より消化管出血, 貧血を繰り返してきたが原因不明であった. 今回下血, 下腹部痛で来院. 精査で小腸重複症の関与した出血が疑われ緊急手術となった. 回盲部より約85cm口側の回腸と接する腸間膜内に15×3cmの管状の小腸重複腸管が認められ切除した. 病理組織学的に粗大結節状粘膜は胃底腺と幽門線からなる異所性胃粘膜で同部に発生した潰瘍が出血源と判明した. 小腸重複症は比較的まれな疾患で大半は小児期に腹痛, 腹部腫瘤触知で手術されることが多いが下血の頻度は少ない. 小腸出血が疑われる 時は, まれではあるが成人であっても先天性奇形を考慮した検査・治療が必要と考えられた.
  • 中澤 哲, 瀬下 明良, 小川 真平, 板橋 道朗, 城谷 典保, 亀岡 信悟
    2003 年 23 巻 4 号 p. 643-647
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    十二指腸水平脚を穿通した魚骨による腸間膜膿瘍の1例を経験したので報告する。症例は48歳・男性。4ヵ月来の腹痛を繰り返し, 徐々に増強し発熱も加わったため来院した。来院時体温39.5度, 膀周囲に圧痛を有する固い腫瘤を触知した。超音波検査, CTで十二指腸水平脚に接し, 内部に線状の石灰化様陰影を伴う腫瘤を認めた。改めて病歴を聴取したところ鯛を摂取したことが判明し, 魚骨の十二指腸穿通による腸間膜膿瘍を強く疑った。1週間の抗生剤投与にても改善せず手術を施行した。開腹時, 腸間膜根部に鶏卵大の腫瘤を認め, その頭側は十二指腸水平脚に接していた。超音波ガイド下に上腸間膜動静脈を避け, 内腔より2cmの魚骨を摘出し, 膿瘍を開放しドレナージした。術後全身状態はすみやかに改善し, 治癒退院となった。本邦において魚骨による十二指腸穿通の報告例は10例のみで, 自験例は珍しい症例と考えられた。
  • 北上 英彦, 須永 道明, 加藤 紘之
    2003 年 23 巻 4 号 p. 649-652
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹腔内伏針に対し腹腔鏡下手術にて摘出した1例を経験したので報告する. 症例は71歳, 女性で, 鍼灸治療中に針が折れとれなくなり放置していたが, 約1ヵ月後より腹痛が出現したため来院した. 腹部単純X線写真上, 左側腹部に50mm長の伏針を認め, 腹部CT検査で左側腹部の後腹膜腔に針を認め, 周囲の壁側腹膜の肥厚が認められた. 手術は腹腔鏡下に行った. 術前診断とは異なり伏針は大網内まで移動しており, 腸間膜血腫と少量の血性腹水を伴っていた. 術中, 伏針の発見にはX線透視が必要であったが, 摘出は容易であった. 術後経過良好で第5病日に退院した. 伏針に対する腹腔鏡下摘出術は従来の開腹手術に比べ利点が多く, まず試みるべき方法である. この手術は手技的にも容易であり, 伏針の移動による臓器損傷や伏針自体の腐食の可能性があるため, できるだけ速やかに行うべきと考えられる.
  • 中川 俊一, 長渕 英介, 久慈 麻里子, 鈴木 友己, 高木 知敬
    2003 年 23 巻 4 号 p. 653-657
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは腹部を貫通した銃弾により小腸, 膀胱, 子宮, 膣を損傷した1例を経験した. 症例は22歳のウクライナ人女性. 2001年6月14日, 知人宅にいるところを暴漢に銃撃され被弾し, 当院へ救急搬送された. 来院時血圧119/78mmHgで意識清明. 右鼠径部と左磐部に銃創を認めた. 下腹部を中心に腹膜刺激症状があり, 肉眼的血尿, 性器出血を認めた. CTで腹腔内出血の所見があり, 緊急手術を施行した. 回腸に20cmの範囲に6個の穿孔があり, 子宮前壁と膀胱後壁に裂創を認めた. 子宮の裂創は子宮膣部から膣を貫通していた. 弾丸は右鼠径部から進入して小腸を3回貫通した後に膀胱子宮窩に進入して両者を削るように進み, 膣を貫通して轡部から体外に出たものと思われた. 損傷腸管は切除して端々吻合を行い, 子宮, 膀胱, 膣はそれぞれ縫合して修復した. 術後経過は良好で術後3日目より食事を開始, 術後21日目に膀胱留置カテーテルを抜去し退院となった.
  • 佐藤 浩一, 前川 武男, 矢吹 清隆, 前川 博, 工藤 圭三, 町田 理夫, 櫛田 知志, 和田 了, 松本 道男
    2003 年 23 巻 4 号 p. 659-663
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 女性. 2001年4月頃より下血が出現したため, 6月, 当科紹介入院となった. 大腸内視鏡検査で潰瘍性大腸炎と診断し, メサラジン, プレドニン投与を開始したが, 腹痛は増強, 粘血便も頻回となったため, 白血球除去療法を開始. さらに上・下腸間膜動脈にプレドニン, ウリナスタチンを注入した. 以上の治療後も臨床症状および大腸内視鏡所見は悪化. 腹部単純X線上toxic megacolonが認められたため, 8月, 緊急手術を施行した. 術中所見では大腸全体は菲薄化し, 盲腸に穿孔が認められたため, 大腸全摘, 回腸痩造設術を施行した. 術後はSystemic innammatory response syndrome (SIRS) を呈したため, エンドトキシン吸着療法を2回施行した. その結果, 全身状態は徐々に改善し, 11月軽快退院した. Toxicmegacolonの合併により穿孔をきたし重症化した潰瘍性大腸炎の1救命例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 安達 尚宣, 和田 靖, 青木 豪, 吉松 軍平, 横山 智, 富永 剛
    2003 年 23 巻 4 号 p. 665-668
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    経皮的に腹腔内に迷入した金属片異物 (鋼線) に対して, 術中X線透視ガイド下に腹腔鏡下手術で安全に摘出し得た症例を経験した. 患者は64歳, 男性. グラインダーでの作業中に, 左腹部に痛みを自覚したため, 翌日近医を受診し, 腹部X線検査にて腹腔内への鋼線の迷入が疑われ当院に紹介された. 腹部CT検査にて, 実質臓器損傷, 腹腔内出血および消化管穿孔が否定されたため, 厳重に経過観察を行いながら術前検査および前処置を行い, 受傷7日目に腹腔鏡下に摘出術を試みた. 鋼線は左腹部の大網内に完全に迷入していたため, 術中X線透視を用いて位置を同定しながら摘出した. 術後経過も良好で第4病日に退院した. 腹腔鏡下手術は低侵襲であり, 術中X線透視を併用することで, より安全な手術が可能であった.
  • 水上 健友, 大毛 宏喜, 香山 茂平, 竹末 芳生, 横山 隆, 末田 泰二郎
    2003 年 23 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    アレルギー性肉芽腫性血管炎 (AGA) は, 末梢血と組織中の好酸球の増加による壊死性血管炎に基づく多臓器病変を特徴とする. 今回, 急激な増悪で胃穿孔をきたしたAGA症例を経験した. 症例は32歳, 女性. 喘息の既往があり, 原因不明の腹痛を主訴として入院した. 末梢血中白血球数29, 000/mm3 (好酸球44%) と上昇し, 臨床症状からAGAを疑った. 胃内視鏡では前庭部にびらんを認めるのみであったが, 6日後, 腹痛の急激な増悪をきたし, スデロイドパルス療法にて血液検査上改善傾向を示したが, 腹部X線写真で遊離ガス像, 腹部CTで肝内グリソン鞘に沿ったairの進展を認め, 消化管穿孔性腹膜炎と診断し, 緊急手術を行った. 小穹側胃角部に径約2.5cmの穿孔を認めこれを縫合閉鎖した. 切除標本では, 潰瘍周囲組織内の血管壁に好酸球の浸潤を高度に認め, AGAと診断した. 術後は好酸球を指標としたプレドニン投与を行い, 2ヵ月後に退院した.
  • 村松 友義, 丸高 雅仁, 松三 彰
    2003 年 23 巻 4 号 p. 673-677
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹壁膿瘍を形成したMeckel憩室炎の1例を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は76歳男性, 右下腹部痛を主訴に来院した. 右下腹部に手術療痕があり, 同部に圧痛を認めた. 腹部CTおよび経口小腸造影にてMeckel憩室炎と診断し, 抗生剤投与により症状はいったん軽快したが, 術前検査にて冠状動脈の狭窄および心機能低下を認めたため, 経皮経管冠状動脈形成術 (以下, PTCA) およびstentの留置を行い, 引き続き抗凝固療法を約1ヵ月間施行した. この間憩室炎が再燃したため抗生剤投与を行ったが, 病状は軽快せず徐々に手術瘢痕直下に腹壁膿瘍を形成した. 下腹部正中切開にて開腹するにMeckel憩室は手術瘢痕直下の腹壁に癒着し穿通しており, 癒着を剥離した後, 回盲部切除術を施行した. 術後の経過は良好であった.
  • 宇高 徹総, 徳毛 誠樹, 山本 寛斉, 高尾 智也, 白川 和豊, 加地 充昌
    2003 年 23 巻 4 号 p. 679-683
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    非外傷性の脾破裂は血液疾患や感染症に続発するものが大部分であり, 基礎疾患を認めない自然脾破裂は極めてまれな疾患である. 今回, 自然脾破裂の1例を経験したので報告する. 症例は13歳の女性で, 突然の心窩部痛を主訴に来院し入院となった. 腹部CTで脾内に多数のlow-density areaと腹腔内出血を認め, 脾破裂による腹腔内出血と診断し緊急手術を施行した. 腹腔内に700mlの血液および凝血塊と脾下極に破裂を認めたため脾摘出術を施行した. 摘出標本の割面では大小多数の血腫を認め, 病理組織学的検査では腫瘍を疑わせる所見は認められなかった. 明らかな外傷の既往がなく, 脾破裂を引き起こす可能性のある基礎疾患を有さないため, 自然脾破裂と診断した. 術後経過は良好で, 術後10日目に退院となった. 突然発症の腹痛の患者を診察するとき, 外傷や基礎疾患のない場合でも脾臓が破裂することがあることを念頭に置かなければならない.
  • 生方 英幸, 春日 照彦, 本橋 行, 片野 素信, 佐藤 茂範, 田渕 崇文
    2003 年 23 巻 4 号 p. 685-689
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    化膿性尿膜管嚢胞に起因すると思われる腹腔内膿瘍にて緊急手術となった1例を経験したので報告する. 症例は38歳女性. 下腹部痛を主訴に来院. 下腹部に限局する腹膜炎症状あり, 腹部CTにて下腹部正中に, 膀胱に接する腫瘤性病変を認めた. 水様便からはCoagulase-negative Staphylococcus (CNS) が検出された. また, 未治療の糖尿病を合併していた.開腹術を施行し, 膀胱の近傍に膿瘍形成みられ大網がその中に嵌入していた. 膿瘍腔を可及的に切除しドレナージを施行した. 膿瘍からはCNSが検出された. CT所見および術中所見から尿膜管嚢胞が原因疾患であることが最も考えられた. 尿膜管嚢胞は胎生期の遺残構造物であり, 感染の合併や腫瘤の増大を契機に発見されることが多い. 自験例のように腹腔内膿瘍を形成する症例はまれである. 尿膜管嚢胞の感染原因は糖尿病による易感染性が基礎にあり, 腸炎の起炎菌が血行性に波及したことが疑われた.
  • 横山 雄二郎, 信原 宏礼, 林谷 康生, 首藤 毅
    2003 年 23 巻 4 号 p. 691-694
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    腹部US, CT検査にて術前診断し得た回腸脂肪腫による成人腸重積症を経験したので報告する。症例は32歳男性。約1週間持続する腹痛と嘔吐を主訴に来院した。右下腹部に約5cm大の腫瘤を触知し, 同部に圧痛を認めた。腹部超音波検査では同部にmultiple concentric signを認め, 腹部CTでも上行結腸内に低吸収域の腫瘤を認め, その周囲に同心円上の構造物を認めた。造影CTでは上行結腸の内部にenhanceされる腸管を認めた。以上より回腸脂肪腫による腸重積症を診断し, 開腹術を施行した。 重積は回盲弁より50cm口側に存在する回腸脂肪腫を先進部とした順行性の回腸回腸結腸型であり, 重積していた腸管に虚血性変化を認めたため, 小腸部分切除術を施行した。腫瘤は亜有茎性で大きさは3×2.5cmであり, 組織学的には良性脂肪腫であった。
  • 鈴木 徹也, 片見 厚夫, 朝蔭 直樹, 佐々木 森雄, 龍 美佐
    2003 年 23 巻 4 号 p. 695-698
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性. 1999年7月頃より右下腹部に違相感を自覚. 2000年2月より黒色便認め, 当院受診. 来院時右下腹部に手拳大の腫瘤を触知した. 大腸内視鏡検査にて上行結腸内に血液の貯留を認めるも腫瘍は認められず, 小腸出血の疑いで入院となった. CTおよびMRIで骨盤内腫瘍を認め, 子宮に接しているため付属器由来の腫瘍の小腸浸潤, 虫垂腫瘍または小腸腫瘍を考え, 4月5日手術を施行した. 腫瘍は盲腸下端に認め, 回腸末端を巻き込み一塊となり, 右卵巣, 子宮に浸潤していたため, 回盲部切除, 子宮全摘および両側付属器切除術を施行した. 病理組織学的には虫垂粘液嚢胞腺癌であり, 下血の原因は虫垂癌の回腸浸潤によるものと考えられた.
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