日本外科系連合学会誌
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24 巻, 1 号
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  • 小西 宏育, 武藤 徹一郎
    1999 年 24 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    分子生物学の進歩により, 欧米では遺伝子治療が難治癌, 進行癌に対して応用されつつあるが, 癌に対する有効な治療法を開発する際に考慮すべき重要な点は, いかに癌細胞だけを狙い撃ち (標的) にして周囲の正常組織を守るかということである。われわれは癌胎児性抗原 (CEA) 産生腫瘍を標的として, (1) 有効な遺伝子を癌細胞にだけ運搬して作用させる標的ベクターの開発, (2) 有効な遺伝子を癌細胞内だけでしかも高率に発現させる方法を開発している。 (1) の例として, 本来ヒトの細胞には感染しない性質のレトロウイルスのエンベロープにCEAに対する抗体断片を組み込んだ標的ベクターを開発した。 (2) の例として, CEA産生癌細胞内でのみ下流の遺伝子を発現させるCEAプロモーターの性質を利用し, しかもその活性を高めるべく, Cre/loxPの系と強力な活性をもつCAGプロモーターを組み合わせたアデノウイルスの二重感染法を開発した。即ちCEAプロモーターにより部位特異的組換え酵素Creの遺伝子を発現するウイルスと, CAGプロモーターの下流に2つのloxPの配列にはさまれた不要な遺伝子配列と目的の遺伝子を組み込んだウイルスの2種類のウイルスを作成した。いずれの方法にてもCEA産生癌細胞に特異的に目的の遺伝子 (自殺遺伝子) を導入, 発現させ, 抗腫瘍活性を得ることができた。
  • 面川 進, 三浦 亮
    1999 年 24 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    自己血輸血が普及しつつあるがその実施状況には施設間での較差がある。自己血輸血の普及と輸血管理体制との関連性につき検討することを目的とした。秋田大学では貯血式は1990年以降1234例に実施され, 同種血輸血回避率は全体で87%であった。秋田県内主要15施設の検討では, 2施設では自己血輸血が未実施であった。輸血管理部門は4施設で一元化され未一元化の11施設より採血室設置, 専用保冷庫設置等で優位で, 外科系病床100床当りの自己血症例数と採血回数でも一元化施設で高い傾向であった。赤血球製剤使用数に占める自己血の割合は0.5~15.2%と施設間で差があった。輸血管理部門の設置, 充実など施設の姿勢が自己血輸血の普及に貢献している。今後も, 輸血管理部門が中心となった推進が重要である。
  • 矢野 健二, 松尾 由紀
    1999 年 24 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    神経吻合を伴う腹直筋皮弁による一期的乳房再建術を過去3年で29例に施行した。神経吻合は, 筋皮弁の知覚を司る第11肋間神経を乳房の知覚を支配する第4肋間神経外側皮枝に吻合した。調査対象は, 知覚神経付き腹直筋皮弁 (IRAMF) 15例, 対照として知覚神経の再建をしていない腹直筋皮弁 (NIRAMF) 16例も検査した。知覚検査は, 触覚・痛覚・温度覚の3種類について施行した。IRAMFは術後半年から回復を示した後, 徐々に回復し, およそ1年で健側値まで回復した。NIRAMFは, 術前1年以上経過した症例で回復が認められたが, 回復は遅く, いずれの症例も健側値までは回復しなかった。従って, 本法は一期的乳房再建において, 早期の知覚回復を得るために有用な方法と考えられた。
  • 西 宏之, 仲原 正明, 城戸 哲夫, 李 千万, 中森 靖, 中尾 量保, 前田 求
    1999 年 24 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    食道再建に有茎空腸を用いた際のmicrosurgeryによる血行再建の有用性について検討した。過去9年間の有茎空腸による食道再建23例中, 血行再建を行った8例を対象とした。男性6例, 女性2例, 年齢は52~71歳, 原疾患の内訳は, 食道癌4例, 食道癌術後縫合不全2例, 食道再発胃癌1例, 腐食性食道炎1例であった。血行再建には空腸側はJ1~J2の動静脈を用い, 吻合動脈は頸横動脈5例, 内胸動脈2例, 吻合静脈は外頸静脈3例, 前頸静脈2例, 内胸静脈2例であった。1例にはJ2~J3の動静脈間に大伏在静脈を間置した。血行障害による縫合不全を1例に認めた。有茎空腸を用いた食道再建において, microsurgeryによる血行再建は, 症例に応じて種々の対応が可能で, 空腸の頸部挙上と血流保持に有用であった。
  • 森崎 善久, 吉住 豊, 小池 啓司, 愛甲 聡, 杉浦 芳章, 田中 勧
    1999 年 24 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    高度進行食道癌に対して施行しているCDDP少量連日投与同時併用放射線療法の効果予測が可能か否かを免疫組織学的に検討した。対象は本治療を施行した進行食道癌症例21例の治療前生検材料で, 熱ショック蛋白の1つであるHSC73とPCNAおよびp53に関して, これらの発現量と腫瘍縮小率と著効例の頻度との相関を検討した。HSC73総発現量に関しては, 高発現群 (n=12) の平均腫瘍縮小率は55.3±18.5%で, 一方低発現群 (n=9) のそれは74.2±14.3%で, 有意に低発現群での縮小率が高かった (p=0.04) 。さらに著効例の4例すべてが低発現群であり, HSC73発現量が化学放射線療法の効果予測になる可能性が示唆された。また, 発現量を細胞質と核の局在別に検討したが, 局在別の意義は認められなかった。PCNAとp53発現量に関しては, 本治療効果との相関は認められなかった。
  • 弓場 健義, 伊藤 壽記, 井上 善文, 根津 理一郎, 西田 俊朗, 谷口 英治, 川原 央好, 岩瀬 和裕, 上池 渉, 田中 康博, ...
    1999 年 24 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃全摘後には噴門機能の欠落により逆流性食道炎が問題となることがある。噴門形成を付加した空腸パウチ間置にて噴門機能の再建を試み, 胃全摘後の食道逆流に対する有用性を検討した。噴門形成付加空腸パウチを間置した胃全摘症例7例 (JPI群), R-Y法にて再建した胃全摘症例4例 (R-Y群), 幽門側胃切除症例4例 (DG群) を対象とし, 以下の結果を得た。1.下部食道昇圧帯圧はJPI群ではDG群と同等に形成され, R-Y群に比べ有意に高かった。2.ビリテックモニターによる胆汁逆流はpHモニターによるアルカリ逆流とは相関せず, 逆流性食道炎の発生に相関する傾向が認められた。3.胆汁逆流はJPI群でR-Y群に比べ, 有意に低かった。以上より, 噴門形成付加空腸パウチ間置は胃全摘後の食道逆流に対して有用であると考えられた。
  • 上田 順彦, 小西 一朗
    1999 年 24 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    high riskを有する胃十二指腸潰瘍穿孔例に対する穿孔部閉鎖術の有用性と問題点を明らかにする目的で, high risk症例20例を穿孔部閉鎖術11例 (閉鎖群) と胃切除術9例 (胃切群) に分けて検討した。両群のhigh risk因子は様々であるが, いずれも術後経過に影響する重要な因子であった。術中所見では腹腔全体に消化管液や膿汁の貯留を認めたのは閉鎖群9例, 胃切除群7例であった。手術時間は閉鎖群100.9±39.5分, 胃切群162.2±47.8分で閉鎖群が有意に短かった。術後経過は閉鎖群11例中局所経過良好は9例, 不良2例であったが, 不良2例も救命できた。胃切群9例中局所経過良好は4例, 不良5例であった。不良5例中2例は縫合不全を契機に全身状態が悪化し死亡した。長期予後は両群とも潰瘍再発, 腹腔内膿瘍やイレウスの発生はなく経過は良好であった。以上より胃十二指腸潰瘍穿孔例のうちhigh risk症例では開腹による穿孔部閉鎖術が有用であると考えられた。
  • 富田 涼一, 藤崎 滋, 丹正 勝久, 根津 健, 福澤 正洋
    1999 年 24 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌における幽門側胃切除術 (Billroth I法, D2リンパ節郭清, 根治度A) 後30症例について, 十二指腸での空腹期強収縮帯interdigestive migrating motor complex (IMMC), phase III (pIII) 発現の有無別に術後QOLを比較検討し, 以下の結果を得た。1) IMMC-pIII陽性群 (20例) では, 陰性群 (10例) に比較して, 明らかに食欲が有り食事摂取量も多く, 体重減少は少なかった。また, 明らかに早期ダンピング症状 (全身症状) も少なかった。2) IMMC-pIII陽性群では, 陰性群に比較して, 明らかに逆流性食道炎症状 (胸やけ, 逆流感, 嚥下困難), 悪心, 腹痛, 下痢は少なかった。また, 腹部膨満感, 腹鳴も少なかった。以上より, IMMC-pIII陽性群では陰性群に比較して, 術後QOLは良好であった。
  • 山口 紀子, 宮地 和人, 砂川 正勝
    1999 年 24 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌患者62例 (早期癌23例, 進行癌39例) について, 胃癌組織におけるテロメラーゼ活性, 増殖マーカーであるKi-67とアポトーシスとの関係について検討し, 臨床病理学的所見とも比較検討した。テロメラーゼ活性は62症例中, 48例 (77.4%) に認められた。テロメラーゼ活性の陽性率とapoptotic index (A.I.) は早期癌で各々65.2%, 2.8±1.5%であり, 進行癌では84.6%, 6.8±3.1%でともに進行癌で高い傾向にあった。また, 死亡例6例はすべてテロメラーゼ活性陽性群に含まれ, 癌の悪性度とテロメラーゼとの関連が示唆された。癌の分化度別では, テロメラーゼ活性陽性率と活性値は未分化型で60.0%, 21.5±25.6, 分化型では93.8%, 49.1±46.8であり, ともに分化型で高い値であった。分化型では癌の増殖の際により多くの分裂を繰り返している可能性が考えられた。
  • 今岡 真義, 亀山 雅男, 村田 幸平, 佐々木 洋, 古河 洋
    1999 年 24 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移に対し肝切除を施行した81例中根治切除72例を対象として, 肝切除後の補助療法とし施行した経肝動脈制癌剤注入療法 (動注療法) と残肝再発に対する再肝切除の評価を行った。1) 根治切除72例の5年生存率 (5生率) は37%, 2) 肝切除後動注療法施行群 (n=21) は, i) 肝切除後5生率は79%と非動注群 (全身化学療法群, 非補助療法群) より明らかに良好であった (p<0.05), しかし, ii) 再発率には差はなかった。3) 動注療法群は残肝再発に対する再肝切除率 (p<0.1) や肺転移に対する肺切除率が高い傾向にあった。4) 残肝再発に対する再肝切除後の5生率は動注療法群では85%であり, 非動注群の再肝切除後に比して明らかに良好であった (p<0.01) 。大腸癌肝転移に対する肝切除後の動注療法は, 残肝再発巣に対する再肝切除率を高め, また再肝切除後の生存率を向上させる有効な治療であった。
  • 三方 律治
    1999 年 24 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1994年から1997年までの4年間に, 泌尿器科領域癌20症例に末梢血骨髄幹細胞自家移植 (peripheral blood stem cell autotransplantation) を併用しつつ癌化学療法を行った。このうち癌化学療法MVACを行った膀胱癌7例およびVAB-VIを行った精巣胚細胞腫瘍6例を対象に臨床的検討を行った。混合癌化学療法を繰り返して行う場合の骨髄抑制の予防および骨髄抑制からの回復には, 末梢血骨髄幹細胞自家移植は安全かつ簡便であり有用な方法であった。
  • 診療グループ構成員それぞれの変化に着目して
    野末 睦, 工藤 寿美, 井坂 直秀, 丸山 常彦, 金沢 伸郎, 小田 竜也, 福永 潔, 川本 徹, 小池 直人, 石黒 慎吾, 足立 ...
    1999 年 24 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科では入院患者を対象に, 1995年11月より癌告知に関する希望調査を開始した。この研究の目的は, 調査結果の分析と調査実施をきっかけとした癌告知状況の変化, さらにグループ内医師間での告知状況の違いを分析することである。医師の告知状況の解析では, 告知希望調査実施前, 調査実施後前期, 実施後後期を調査期間として, スタッフ7名の術前説明での告知状況について, カルテの記載内容より評価した。告知希望調査では約9割の患者が病名告知を希望し, 約7割が家族が希望しない場合でも告知を希望した。医師の告知状況は, 告知希望調査開始前には医師間で告知率に大きな違いがみられたが, 希望調査実施後は多くの医師で告知率が著明に上昇し, グループ内の統一性がみられるようになった。しかし予後告知については, 後期調査期間で告知率の低下がみられ, 手術説明時に説明項目を網羅し, さらに図も用いた術前説明の用紙の必要性が示唆された。
  • 村山 公, 佐藤 博信, 大塚 善久, 鈴木 武樹, 深瀬 知之, 松下 佳代, 小坂 和子, 宋 圭男, 山形 基夫, 岩井 重富
    1999 年 24 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    術後の吻合部狭窄を予防する目的で, 頸部での食道胃管吻合に対して, 3次元吻合であるDouble Stapling法を36例に臨床応用し, 術後の臨床成績について検討したので報告する。術後合併症では術後出血は1例も認めず, 縫合不全は4例 (11.1%) に認めたが, 2例は造影剤による検査で漏れを確認できず, 空気の漏れを認めた程度であり, 4例とも保存的に加療し軽快した。術後に経内視鏡的にメジャー鉗子を使用して, 吻合部の内径を測定した。DS法を行った36例のうち, 22例に測定を行い, その内径は平均16.3±4.9mmであった。これに対し, 環状吻合だけの症例20例の内径は平均8.3±3.2mmと, DS法を行った症例の方が有意に内径が広かった (p<0.0001) 。術後につかえ感を訴えた症例は1例もなく, 術後に拡張術を必要とした症例も皆無であった。以上より, このDS法は術後の狭窄予防の術式として合併症も少なく, 吻合部内径も十分確保され, 有用であった。
  • 赤間 史隆, 梶原 啓司, 石川 啓
    1999 年 24 巻 1 号 p. 69-71
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌症例において腹膜播種の初期段階を捉えるものとして腹腔洗浄細胞診が行われている。今回腹膜播種を認めない腹腔洗浄細胞診陽性症例でCurB以上の手術が行えた12症例 (Cy群) と近傍の腹膜にのみ腹膜播種を認めるがそれ以外はCurB以上の手術が行えた11症例 (P1群) の比較検討を行った。Cy群の3年生存率は40.9%で, P1群の3年生存率40.0%と比較して有意な差を認めないほど予後不良であった。Cy群はP1群と同じように予後不良であり, 今後洗浄細胞診陽性症例の取扱い上の見直し, および集学的治療の検討が必要である。
  • 服部 良信, 杉村 修一郎, 入山 正, 渡辺 浩次, 根木 浩路, 山下 満, 杉村 裕志, 星野 竜, 山本 徹, 金子 完
    1999 年 24 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科で手術を施行した3例の肺動静脈瘻を考察を加えて報告する。症例1は33歳の男性で, 発熱で入院。心尖部で心雑音を聴取し, 胸部X線写真で左下肺野に異常陰影を認めた。肺動脈造影で, 左S5の肺動静脈瘻と診断し, 舌区部分切除術を施行した。症例2は41歳の女性で, 右片麻痺のため入院。脳梗塞と診断され, 右背部の血管性雑音と胸部X線写真で右下肺野に異常陰影を指摘された。IV-DSAで右S8の肺動静脈瘻と診断し, 下葉切除術を施行した。症例3は52歳の女性で, 労作時の呼吸困難のため入院。手指にチアノーゼを認め, 右前胸部で血管性雑音を聴取した。Rendu-Osler-Weber病を合併していた。胸部X線写真で右下肺野に異常陰影を認め, IV-DSAやヘリカル3D-CT等で右S4とS8の肺動静脈瘻と診断し, 中下葉切除術を施行した。切除した下葉の肺静脈の異常な拡張, 壁の肥厚を認め, 動静脈瘻の潜在的な存在の可能性が示唆された。
  • 森田 敏弘, 熊沢 伊和生, 堅田 昌弘, 山田 慎
    1999 年 24 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸憩室から大量出血することは非常に稀であり, 本邦では43例の報告をみるにすぎない。今回われわれは大量出血をきたした十二指腸憩室の1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する。症例は73歳男性で, 吐下血を主訴に来院した。上部消化管内視鏡検査では食道から十二指腸にいたるまで出血源は確認できなかった。出血性ショック状態となったため緊急手術を施行した。術中内視鏡検査にて十二指腸憩室の露出動脈からの出血と判明した。露出動脈を結紮し, 十二指腸憩室は内翻埋没術を行った。1年後の現在再発の徴候はみられていない。
  • 三上 幸夫, 今村 幹雄, 山内 英生
    1999 年 24 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈性十二指腸狭窄症の1手術例を経験したので報告する。症例は24歳, 女性。主訴は嘔気・嘔吐で, 以前から食後に心窩部膨満感を認めていた。平成8年10月頃, 上記症状が出現した際, 近医で十二指腸狭窄症と診断され, 当科に紹介された。体重は最近の2ヵ月で8kg減少した。術前画像所見 : 腹部単純X線写真;胃泡の増大がみられた。低緊張性十二指腸造影;バリウムは十二指腸水平部から進まず, 口側十二指腸は拡張像を呈した。血管造影;腹部大動脈とSMAとの分岐角度は約10度と狭小であった。上部消化管造影併用CT ; SMAの背側右側に拡張した十二指腸を認めた。手術所見および術式 : 経鼻胃管を通し十二指腸内に注入した空気はSMAを越えなかった。GIA(R)を用い十二指腸水平部と空腸起始部とを側側吻合した。術後経過 : 食事摂取可能となり, 嘔気・嘔吐も消失した。上部消化管造影で吻合部の通過は良好であった。
  • 廣瀬 昌博, 難波 康男, 藤原 恒弘
    1999 年 24 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    イレウスにて発症し保存的治療にて一旦退院したが, 10日後再発し手術を施行した回腸アニサキス症の1例を報告する。症例は46歳, 男性。主訴は腹痛・嘔吐である。患者は, 頬垂イワシを生食後2時間頃より腹痛および嘔吐出現。近医受診し, アニサキス症が疑われたが, イレウスの診断で当科紹介。保存的治療にて第3病日には排ガス・排便を認め, 経口摂取を開始し, 第12病日退院した。10日後再び腹痛出現し, 当科再入院。腹部所見から手術を施行した。手術所見ではBauhin弁から口側に1mの回腸壁が約15cmに亘って肥厚および発赤と膿苔の付着を認めた。このため, 同部を切除した。切除標本を開くとアニサキスの虫体が回腸粘膜に穿通しており, 回腸アニサキスと診断した。アニサキス症は, 保存的治療を施行するのが原則であるが, それが奏効しない場合, 手術が必要であると思われた。
  • 石川 啓, 三根 義和, 吉田 一也, 南 寛行, 本庄 誠司, 佐々木 伸文, 中村 譲, 岩崎 啓介
    1999 年 24 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1982年から96年までの15年間における初発大腸癌922例の中で, びまん浸潤型大腸癌は3例 (0.3%) であった. 症例1は66歳, 男性で占居部位はRb, 腹膜播種と骨転移があり, 病理ではPor, ss, ly3, v1, n2 (+), ew (+) でstageIV, 術後1ヵ月で死亡した。症例2は63歳男性で, 占居部位はRa, 病理ではPor, se, ly3, v2, n3 (+), ew (+) であり, stageIIIb, 術後7ヵ月で局所再発死亡した。症例3は68歳, 男性で, 占居部位はRb, 病理ではPor, se, ly1, v0, n2 (+), ew (+) であり, stageIIIb, 術後13ヵ月で局所再発で死亡した。びまん浸潤型大腸癌の3例は, いずれも占居部位が直腸であり, 組織型は低分化腺癌, リンパ管侵襲とリンパ節転移が高度であり, 根治度Cで予後は著しく不良であった。
  • 竹村 雅至, 岩本 広二, 合志 至誠
    1999 年 24 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    消化管術後縫合不全の2例に対し, 超酸化水洗浄により良好な結果を得た。症例1は57歳・男性。上行結腸癌に対し右半結腸切除術施行後, 術10病日よりドレーンより便汁の排出を認めた。当初, 生理食塩水を用いたが, 術50病日より超酸化水洗浄を開始した。術66病日にドレーンを抜去し, 退院した。症例2は, 33歳・男性。下腹部鈍性外傷に対し, 保存的加療を行ったが入院20病日より発熱があり, 腹壁内に膿瘍を認めた。小腸の腹壁への癒着穿通および直腸穿孔を認めた。小腸は端々吻合を行い, 直腸は直接縫合した。術後, ドレーンより便汁の排出を認めたため, 超酸化水で洗浄を行い, 術65病日にドレーンを抜去できた。超酸化水は局所刺激症状など副作用はなく生理食塩水と比較し, 殺菌作用が強く肉芽増生も早いため, 感染創に対しての洗浄液としての使用は有用であると思われた。
  • 杉本 和歌子, 浅沼 義博, 佐藤 勤, 安井 應紀, 南條 博, 提嶋 眞人, 大久保 俊治
    1999 年 24 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 女性。腹部USで肝尾状葉に5 cm大の腫瘤を発見された。検査成績はHBs-AgとHBc-Abが陽性であったが, 他は腫瘍マーカーを含め異常なかった。腹部USでは内部に低エコーが混在する境界明瞭な高エコー域として描出され, 造影CTでは腫瘍内が不均一に濃染する低吸収域として認めた。腹腔動脈造影では腫瘍濃染像を認めた。手術所見では, 腫瘍は肝尾状葉から発生し, 門脈本幹から2本, 門脈左枝から3本の明瞭な腫瘍流入血管を認めた。肝部分切除を行い, 腫瘍を摘出, 病理組織所見では, 腫瘍は主に成熟した脂肪織からなるが, 拡張した血管や紡錘形の筋細胞も認められ, 血管筋脂肪腫と診断された。本症例において腫瘍に流入する門脈枝が, 通常みられる尾状葉門脈枝に比べて明らかに拡張し, 数も多いことから, 本症における腫瘍血管としての門脈枝の関与が示唆された。
  • 柴地 隆宗, 久永 倫聖, 大橋 一夫, 中島 祥介, 金廣 裕道, 中野 博重
    1999 年 24 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌と胆管細胞癌の同時性重複癌を経験し, 一期的に切除し得たので報告する。症例は72歳, 男性。主訴は発熱・腹痛であった。入院時検査所見ではCA19-9が59.8U/mlと軽度上昇を示したが, 他の血液生化学検査には異常を認めなかった。上部消化管造影および胃内視鏡にて幽門洞小彎後壁にIIc型早期胃癌を認めた。腹部CTでは肝左葉S2に約2 cm大のlow den-sityを示す腫瘤および末梢胆管の拡張が認められた。手術は幽門側胃切除及び肝左葉切除術を施行した。病理組織学的に胃病変は深達度smの乳頭腺癌, 肝病変は管状腺癌を示す胆管細胞癌であり, 同時性重複癌と診断した。画像診断学の進歩に伴い重複癌症例は次第に増加する傾向にある。しかし, 胃癌と肝内胆管癌の同時性重複癌の報告は極めて稀であり, 文献的考察を加えて報告する。
  • 小西 一朗, 上田 順彦
    1999 年 24 巻 1 号 p. 108-110
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹部超音波検査 (以下, US) が術前診断に有用であった胆嚢捻転症の1例を報告した。患者は81歳女性。右季肋部痛を主訴に来院した。腹部USにて, 腫大した胆嚢と内部のdebris, sonolucent layerを伴う壁肥厚に加え, 通常ならみられる肝床部の固定はなく, 胆嚢全体が正中へ偏位した像が認められた。さらに, 胆嚢頸部に, 高エコー像と低エコー像が交互に交錯した像を認めた。胆嚢捻転症と診断し, 直ちに手術を施行した。開腹所見では, 胆嚢は暗赤色壊死性で頸部を支点に反時計方向に270度捻転していた。捻転を解除するとGross-B型の遊走胆嚢と判明した。胆嚢摘出術を施行した。頸部に混成石が3個嵌入していた。胆汁の細菌培養でEnterobacter cloacaeが検出された。組織学的には, 高度の浮腫と出血が胆嚢全体にみられ, 好中球, リンパ球浸潤を伴い, 凝固壊死の所見がみられた。術後は順調に経過し, 16日目に退院した。
  • びまん型原発性硬化性胆管炎の1例
    村瀬 茂, 田中 信一, 花房 茂樹
    1999 年 24 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 血清総ビリルビン値は20mg/dlと上昇しているが, 腹部CT, 超音波検査では肝左葉に軽度の肝内胆管の拡張を認めるのみであった。閉塞性黄疸の診断でPTCDを試み, 穿刺により白色胆汁が吸引できるが, 肝内胆管の拡張が不十分のためドレナージチューブの挿入が不成功に終り, 開腹手術を行った。開腹所見で総胆管, 総肝管は壁肥厚, 硬化が著名でpencil likeの表現が適切と思われた。また膵全体が著しく硬化し, 慢性膵炎様であった。内腔のほとんどない総胆管を横切し, そこからチューブを挿入して施行した胆道造影と総胆管壁および肝の生検よりびまん型, 全胆管型の原発性硬化性胆管炎 (primary sclerosing cholangitis : PSC) と診断した。患者はステロイド剤投与により軽快退院した。退院後約5ヵ月後と11ヵ月後に再燃し, ステロイド剤の再投与および増量を必要としたが現在は改善し外来通院中である。
  • 澤崎 隆, 藤井 恒夫, 矢野 健二, 松尾 由紀
    1999 年 24 巻 1 号 p. 116-118
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    われわれは, 61歳および69歳の2例の外陰癌患者に対し, 広汎外陰切除術を施行した後, 分層植皮術を施行した。 2例の外陰癌III期の患者に対して広汎外陰切除術+両側鼠径, 大腿リンパ節郭清術を施行後, 下腹部より15/1000インチの分層皮膚を採取し, 3倍メッシュとして外陰部に植皮した。術後は良好に経過し, 外陰部や下腹部に拘縮, 炎症なども認められなかった。広汎外陰切除術後の分層植皮術は, 術後の違和感が少ないうえ回復も早く, 機能的にも優れていると考えられた。
  • 工藤 尚文
    1999 年 24 巻 1 号 p. 119
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 福澤 正洋
    1999 年 24 巻 1 号 p. 120
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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