全日本鍼灸学会雑誌
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61 巻, 2 号
全日本鍼灸学会雑誌
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巻頭言
シンポジウム
  • 後藤 修司, 北小路 博司, 川喜田 健司, 野口 栄太郎, 若山 育郎, 坂本 歩
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 61 巻 2 号 p. 110-129
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 矢野 忠, 朱 江, CHO Ki-Ho
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 61 巻 2 号 p. 130-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
     日本で統合医療を進めるためには、 日本の医療、 鍼灸の特性を理解し、 検討を進めることが重要なカギとなる。 鍼灸を含めた医療は、 社会、 文化、 歴史の影響を受けるため、 国によっては異なった特色をもつ。 多くの鍼灸師にとって、 各国の鍼灸事情を知る機会はほとんどない。 そこで各国の医療制度、 教育、 使用器具、 手技、 治療方針、 診察方法などを知ることにより、 多くの人が鍼灸の特殊性と普遍性を認識し、 国境を越えた相互理解の輪を広げることで、 統合医療を含めた日本の鍼灸の発展に寄与することを目的とする。
総説
  • ミヒェル ヴォルフガング
    原稿種別: 総説
    2011 年 61 巻 2 号 p. 150-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
     現代では東洋医学と西洋医学を対立するものと見る研究者は少なくないが、 近世に遡ると、 互いに理解しにくいものに対する拒絶反応はあるものの、 有用と判断された医薬品や治療法は選択的に受容されていた。
     16世紀中頃から東アジアに進出した西洋勢力に対し、 中国と朝鮮が反発の姿勢を見せる一方で、 日本はいわゆる 「鎖国政策」 以降も一定の交流を保ち続けた。 19世紀初頭まで 「東洋医学」 に関する情報の大半は中国からではなく、 長崎のオランダ商館を通じて西洋に伝わり、 中国の伝統医学のほか、 管鍼法、 打鍼法など日本独特のものも日中共有の治療法として紹介された。
     鍼術と灸術の観察と受容は基本的に別々に進められた。 「火のボタン」 として16世紀に紹介された灸は、 1675年に刊行されたバタビアの牧師の著書により足痛風の治療薬Moxaとして注目され、 日本での研究成果も踏まえつつ、 西洋の医学界において本格的に議論されるようになった。 ケンペルが持ち帰った 「灸所鑑」 とその詳細な説明でさらに関心が高まり、 古代ギリシャやエジプトにも類似の治療法があったことから、 医術としての灸は比較的好意的に受容された。
     灸術と同様に鍼術に関する最古の記述は日葡交流時代に遡るが、 ヨーロッパでの専門家による議論は、 出島商館医テン・ライネ博士が1682年に発表した論文集から始まる。 テン・ライネは鍼術を 「acupunctura」 と名づけ、 出島の阿蘭陀通詞に説明を受けた資料を紹介したが、 「気」、 「経絡」、 「陰陽」 などの理解に至らず読者を困惑させた。 その後商館医ケンペルが疝気を 「疝痛」 (colica) と見なし、 その治療法を詳細に記したが、 西洋の医学界で 「日本人と中国人は、 胃腸に溜ったガスを抜くために腹部に針を刺す」 という誤った解釈が広まり、 18世紀末までは来日した医師達も西洋の読者も、 鍼術に対する疑問を払拭できず、 有用性を認めることに極めて消極的だった。
原著
  • 小笠原 千絵, 新原 寿志, 谷口 博志, 日野 こころ, 早間 しのぶ, 角谷 英治, 北出 利勝
    原稿種別: 原著
    2011 年 61 巻 2 号 p. 164-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼がヒト運動機能に及ぼす効果とその作用機序を明らかにするために、 四肢へのマニュアル鍼刺激が経頭蓋磁気刺激により誘発される運動誘発電位に及ぼす影響について検討した。
    【方法】対象は、 インフォームド・コンセントを得た健康成人男性6名と女性4名の計10名 (年齢27±7歳:平均±標準偏差) とした。 運動誘発電位は、 磁気刺激装置付属 (Magstim model 200、 Magstim社、 USA) の円形コイルを用い、 磁気刺激を左大脳皮質運動野に与えることにより右小指外転筋から誘発した。 測定は、 鍼刺激前、 鍼刺激直後、 5分後、 10分後とした。 鍼刺激はステンレス製の毫鍼 (40ミリ、 18号、 セイリン社、 静岡) による雀啄術 (1Hz、 1分間) とし、 刺激部位は手足の第一背側骨間筋上の経穴 (右合谷穴、 左合谷穴、 右太衝穴、 左太衝穴) のいずれか1穴とした。 また、 右小指外転筋および左小指外転筋の運動想起中さらに左右合谷穴および左右太衝穴への皮膚ピンチ刺激中の運動誘発電位を測定した。 統計解析には、 群間比較に二元配置反復測定分散分析を、 各群の経時データの比較には一元配置反復測定分散分析およびDunnett法を用いた。
    【結果】測定対象筋 (右小指外転筋) の遠隔部である左合谷穴あるいは右太衝穴への鍼刺激は、 その運動誘発電位の振幅を鍼刺激前に対して有意に抑制した (各 P<0.01)。 しかし、 近傍部の右合谷穴への鍼刺激では、 10例中8例が減少するものの有意差は認められなかった (P=0.26)。 一方、 右小指外転筋の想起と右合谷穴皮膚上への侵害刺激は、 運動誘発電位の振幅を鍼刺激前に対して有意に増加させた (各 P<0.001, P<0.01)。 今回の鍼刺激に対し、 被験者の多くは、 「かなり強い」 あるいは 「強い」 と回答した。
    【考察および結語】これらの結果から、 遠隔部への鍼刺激は、 複数のルートを介して運動系を抑制する可能性が、 一方、 近傍部 (右合谷穴) への鍼刺激は、 抑制と共にMEP誘発筋周囲への意識集中による促通をもたらし、 その抑制効果を相殺する可能性が示唆された。
報告
  • 宮嵜 潤二, 久下 浩史, 森澤 建行, 坂口 俊二, 竹田 太郎, 佐々木 和郎, 森 英俊
    原稿種別: 報告
    2011 年 61 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    【目的】本調査は冷え症者の性別と冷え行動因子、 健康関連QOL尺度SF-8 (以下、 SF-8) のサマリ-スコア、 Body Mass Index (以下、 BMI) との関連性を模索し、 鍼灸治療の方向性を検討した。
    【方法】対象は本調査に同意した753名であった。 調査は直接配布形式で2008年9月に実施し、 解析は有効回答者629名 (男538名、 女91名、 平均年齢27.4±6.8歳) で行った。 調査票は年齢、 性別、 身長、 体重、 冷え症状の有無、 先行研究による自覚的冷え症状の行動パタ-ン24項目およびSF-8から構成した。 SF-8による8尺度は専用スコアリングソフトで国民標準値得点を算出し、 今回はそれらを2つの因子にまとめあげたサマリ-スコアである身体的健康度 (以下、 PCS) と精神的健康度 (以下、 MCS) を用いた。 解析にはAmos Ver.7を用い、 冷え症状の行動パタ-ン合計点 (以下、 冷え得点)、 サマリ-スコア、 BMI、 性別について多母集団による構造方程式モデリングにより因果関係を検討した。
    【結果】本調査のモデル適合は比較的適合度指標 (CFI) 1.00、 赤池情報量基準 (AIC) 75.886、 平均二乗誤差平方根 (RMSEA) 0.00で高い適合度を示した。 自覚的冷え症者について男性では冷え得点からPCS (β=-0.175、 p<0.01) とMCS (β=-0.179、 p<0.001)、 PCSからMCS (β=-0.089、 p<0.05) と影響を示し、 一方、 女性では冷え得点からMC (β=-0.601、 p<0.001)、 PCSからMCS (β=-0.244、 p<0.05) と影響を示した。
    【考察】冷え症者について男性ではQOLへの影響は低く、 女性では精神的因子への影響が伺われた。
    【結語】冷え症に対する鍼灸治療は性別を考慮する必要性が示唆された。
国際部報告
  • 高澤 直美, 石崎 直人, 斉藤 宗則, 若山 育郎
    原稿種別: 国際部報告
    2011 年 61 巻 2 号 p. 182-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
     2010年11月6日(土)~7日(日)、 米国サンフランシスコで世界鍼灸学会連合会 (The World Federation of Acupuncture and Moxibustion Societies、 以下WFAS) の国際学会が開催された。 大会テーマは 「鍼灸研究と教育、 臨床実践」 であった。
     今回は1997年に行われた 「NIH鍼のコンセンサス形成会議」 の主催団体の一つであった米国鍼研究学会 (Society for Acupuncture Research: SAR) が共催団体に加わるとともに、 国立補完代替医療センター (National Center for Complementary and Alternative Medicine: NCCAM) から基調講演がなされた。
     近年、 鍼灸関連の国際標準制定の動きが進んでいるが、 WFASは国際的な非政府組織(NGO)であるはずなのにまるで中国の作業部隊のように鍼灸針の規格をはじめとした様々な鍼灸関連の標準案を作成している。 そして、 WFASはそれらを国際標準化機構 (International Organization for Standardization: ISO) 等で世界標準とすることを計画している。 しかしながらその標準案作成作業は非民主的で公正さを欠いている。 また、 会期中に行われた執行理事会の議事録は、 英語版と中国語版では内容が著しく異なるなど、 WFASの運営そのものも極めて非民主的なものである。
     WHOと公的関係のあるWFASがこのような強引な運営を行うことは、 これまで各国で多様な形に発展してきた鍼灸の正当な認知と更なる発展を阻害するものであり、 断固とした対応が必要である。
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