全日本鍼灸学会雑誌
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53 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 光藤 英彦, 丹澤 章八
    2003 年 53 巻 5 号 p. 578-587
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    筆者等の施設は、1979年公立の伝承東洋医術の研究施設として設立された。
    設立にあたり、設立者である愛媛県と医師会のそれぞれから医療上の使命が与えられた。それは、「医師のリーダーシップのもとに伝承東洋医術を提供せよ」という大変重い使命であった。
    私どもは幸いにもクライエント一人一人の健康上のニードを体系的に調査するための方法として時系列分析の発想が与えられ、更に技術を吟味するための時系列ケアシステム及び時系列オーディットシステムが与えられ、これによってチーム医療に関わるスタッフに共通の認識・視野が与えられるとともに私どもの診療の独自性が確立されその結果、トレーニングされた総合診療科医によるチーム医療のリーダーシップが発揮され、重い医療上の使命を達成することが出来た。
    一方、板倉武先輩等から与えられた伝承東洋医術の各技術の指示 (適応) に関する科学的研究をすすめる使命についても、野外科学的研究方法としての時系列ケアシステムが与えられ、研究上での使命にも取り組むことが出来ているのみならず、二次的に各スタッフの治療レベルの向上にも卒後研修にも有用性が発揮できている。
  • 森下 敬一, 越智 久男
    2003 年 53 巻 5 号 p. 588-600
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    ・1975以降、森下世界的長寿郷調査団は、毎年2~3回の頻度で「世界三大長寿郷 (コーカサス、フンザ及び南米・ビルカバンバ) 」の実地調査を実施してきた。
    ・1984年-新彊ウイグル特に南彊が「第四の世界的長寿郷」であることを認定した。
    ・1987年-コーカサス、中央アジア、パミール高原周辺 (フンザを含む) 及び南彊の北緯40度前後、東西8000kmに及ぶベルト地帯を「絲綱之路・長寿郷」と命名し、第16回・自然医学・国際シンポジウムに於いて研究発表を行った。
    ・1991年-広西壮族自治区・巴馬の実地調査を試み、是が「第五の世界的長寿郷」である事を認定した。
    世界の百歳長寿者達は、シルクロード沿いのベルト状地帯に多く存在し、幾つかの共通項があることが判明した。主食が挽きぐるみの未精白穀物であり、竈に貼り付けて焼くこと。生まれた土地を離れず、その土地で収穫できる作物を食していること。文明の侵襲を受けていない長寿郷では、土壌→食物→身体の生命エネルギーが循環していた。
  • 會澤 重勝, 校條 由紀, 東家 一雄, 仲西 宏元, 戸田 静男
    2003 年 53 巻 5 号 p. 601-613
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    灸の生体に及ぼす作用についての研究は, いまだ十分とはいえない.全日本鍼灸学会学術大会では, 1997年にミニシンポジウム, 1998年にパネルデイスカッション「ここまで判った灸の科学」, 2001年にシンポジウム「鍼灸と免疫」などの特集が組まれて, それに対する研究成果の議論がなされてきた。そして, 年を追うごとにその内容が深まってきているといってよい。このようなことから, 2003年の第52回全日本鍼灸学会学術大会 (香川大会) では, 現在日本での最先端の研究者によるシンポジウム「灸研究の現在」が企画され, 以下のようにまとめられた。
    會澤重勝 : 灸基礎研究の概観では, 各種データベースにもとついて現在までの研究論文について述べられている。灸の特に基礎的研究は, 免疫学, 解剖学, 生化学, 神経生理学その他さまざまな方面から研究が試みられている。そして, その研究者の多くは全日本鍼灸学会で発表をしている。そのことから, 本学会の灸研究に果たしている役割は, 多大なものといえる。
    校條由紀 : 施灸部位の組織学的検討では, 施灸後の皮膚組織が変化する範囲が施灸部位を中心として見られた。その範囲は, 施灸終了60分後も拡大していた。特に, 皮下組織の変化の範囲は文の底面の広さを長時間経過しても超えていた.このことは, 施灸刺激の程度を決定する上で参考になる。
    東家作雄 : 灸の免疫系への作用が, 実験動物を用いて施灸皮膚所属リンパ節におけるサイトカインmRNA発現様式について検討された。作L-12, IFN-γのようなサイトカンのmRNAに発現様式が認められ, その作用機序に文含有成分の関与することが示唆された.
    仲西宏元 : 温灸の作用機序の検討から, 灸刺激特に温灸は鍼刺激とは異なる伝達系があり, 灸刺激の局所的な刺激が生理活性物質を奮起し, 機能の活性を引き起こし, この効果が神経系にも影響を与えると考えられた。ただし, 灸の原料であるヨモギの産地によって, 含有する金属元素の含有率の違いが大きく認めたことから, 同質重量の刺激を行ってもその治療効果に差が生じるのではないかと推測された。
    以上のように, 日本ではさまざまな角度から灸研究がなされているといってよいであろう。今回のシンポジウムは, 「灸研究の現在」を情報提供することが出来, 鍼灸医学の発展に寄与出来たものと思われる。
  • 木村 博吉, 小島 賢久, 菅原 之人, 鈴木 盛夫, 武藤 永治, 杉山 誠一, 丹澤 章八
    2003 年 53 巻 5 号 p. 614-625
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    OSCE (Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験) は, 1975年Hardenらによって開発, 提案された方法で, 臨床能力を適正に評価する方法として世界に広く導入されている。わが国では94年に川崎医科大学で初めて実施され, 現在ではほとんどの医学部・医科大学で行われているだけでなく, 看護などコメディカルの教育にも導入されつつある。
    鍼灸教育においては, 97年丹澤らの実験的報告によって紹介されたものの, 当初教育現場の反響はさほど大きなものでなく関心も薄かったが, その後次第に関心が高まっていった。
    2000年, 鍼灸教育におけるepoch makingともいえる「鍼灸等臨床教育におけるOSCE導入に関する研究」 (文部科学省委託研究) が始まり, 以後3ヵ年にわたり東洋療法学校協会加盟校, 盲学校, 大学, 短大の教員が参加のもとに調査・研究が行われ, 多くの意義ある成果を得た。こうした調査・研究活動がOSCE啓蒙の機会を広げ, その進展に伴い, いくつかの専門学校, 盲学校, そして大学においてOSCEが試行されるようになった。
    今や鍼灸教育におけるOSCEは, 「啓蒙の段階」から「実施と成果検証の段階」へと移りつつあるといえよう。
    このような現状を踏まえて, 今回のパネルでは既にOSCEを実施している養成校5校の教員 (OSCEを担当された) から, 1) OSCE導入の目的, 2) 実施状況, 3) 実施の上での問題点, 4) 今後にむけた実施方針などについて報告を頂き, 引き続き「OSCEを実施して学生や教員がどう変わったか?」, 「今後の課題は何か?」などの課題を提示して討論を行った。
    OSCE導入の背景は各校それぞれであるが, 目的は5校のうち3校が卒業や進級判定のための総括評価として実施, 2校が形成的評価として実施しており, 実施の時期や評価の対象者に相違がみられた。設置ステ作ションについては, カリキュラムの移行期にあたる1校を除く全ての養成校で「医療面接」ステーションが設けられ, 鍼灸教育におけるコミュニケーション能力習得に向けた取り組みが徐々に広がりつつあることが伺われたが, 評価の上で重要な役割を担うSP (Standardized Patient;標準模擬患者) の確保や育成に苦慮している様子が報告された。
    OSCEの長所としては, 情意領域と精神運動領域の評価法として優れているだけでなく, OSCEを実施することによる学生の積極的学習に向けた態度の形成や, 教員にとっては学生の出来ている点と出来ない点とが明確になり, 指導上有益なフィードバックが得られることなどが挙げられた。作方, 短所としては, 各校とも労力・場所・時間などの問題点が大きく, これらのことによりOSCE実施に躊躇している養成校も多いと考えられた。
    今後の課題としては, 評価としての信頼作生について検証していくことや, 人材の共同利用と外部評価の導入という観点から, 単独での実施ではなく学校間で協力し合いながら, 共通の評価基準のもとに相互に評価しあうというシステムづくりの検討, さらには卒前教育のみならず, 卒後臨床教育におけるOSCEのあり方についての検討も必要と思われる。
    今回のパネルが, 今後OSCEを実施する養成校にとって参考となれば幸いである。
  • 関節症状の改善とQOL向上について
    山本 一彦, 三村 俊英, 赤尾 清剛, 吉川 信, 粕谷 大智, 山口 智
    2003 年 53 巻 5 号 p. 626-634
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    我々は関節リウマチに対する鍼灸治療の有効性と有用性および安全性を、外来にて薬物療法を行っている群を対照とした多施設ランダム化比較試験により検討した。鍼灸臨床研究において重要なendpoint (評価項目) は、ACRコアセットによる改善基準と、RAのQOL評価法であるAIMS-2日本語版を用いた。介入 (治療法) については関節リウマチの病期別に患者の活動性や機能障害を考慮しながら局所と全身の治療を行えるように病期別治療法チャートを作成し、患者の病態に応じて統一した治療法にした。結果1.症例の収集についてはA群 (薬物療法群) 80例 (女性80例、男性2例) 、B群 (鍼灸治療併用群) 90例の計170例が解析の対象となった。2.ACRコアセット改善基準 (ACR20) を満たしている症例 (改善例) は、A群80例中8例、B群90例中20例で、2×2カイニ乗検定よりP=0.04で両群間において有意差を認め、鍼灸併用群の方が有意に改善を示した。3.AIMS-2質問紙によるQOL変化は12ヶ月時点で両群間においてP=0.001と有意差を認め、鍼灸併用群の方が有意に改善を認めた。4.AIMS-2質問紙の各項目の変化=両群間で有意に鍼灸併用群に改善を認めた項目は歩行能、手指機能、家事、社交、痛み、気分、自覚改善度であった。今回、多施設ランダム化比較試験において鍼灸併用群で上述の項目において有意に改善を認めたことは、従来の治療に鍼灸治療を併用することで身体機能低下を予防し、血行改善や精神的安定も得られ、関節リウマチ患者のQOL向上に寄与することを示唆している。
  • 井上 悦子, 七堂 利幸, 北小路 博司, 鍋田 智之, 角谷 英治, 楳田 高士, 會澤 重勝, 西田 篤, 高橋 則人, 越智 秀樹, ...
    2003 年 53 巻 5 号 p. 635-645
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    風邪症状に対する鍼灸の予防、治療効果に関する多施設ランダム化比較試験 (RCT) の経緯ならびに現状について紹介した。パイロット試験では2週間の鍼治療が明瞭な効果を示したのに対し、多施設RCTによる同様な咽頭部への鍼刺激、さらには普遍的な間接灸刺激 (2週間) の効果は、いずれも300名を超す被験者を集めながら顕著なものとはならなかった。そこで、治療期間を最低8週間として、各施設においてパイロットRCTを実施した結果、より有効性が高まる傾向が認められた。これまでの臨床試験の経験や反省をふまえた議論のなかで、被験者の選択や対照群の設定、実験デザイン等の再検討の必要性が確認された。
  • 主に開業鍼灸師を対象としたアンケート調査
    新原 寿志, 村上 高康, 池宮 秀直, 西村 展幸, 尾崎 昭弘
    2003 年 53 巻 5 号 p. 646-657
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】本調査の目的は、国内の鍼灸の安全性、なかでも感染防止対策の現状の一端を明かにし、その問題点および今後の取り組みについて検討することにある。そこで本調査では、WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン」に沿ったアンケートを作成し、開業鍼灸師を中心に調査を行った。
    【方法】 (社) 全日本鍼灸学会 (n=294) および (社) 日本鍼灸師会会員 (n=600) を対象に、2000年8月と2001年9月にそれぞれ調査を行った。調査項目は、1.回答者のプロフィール、2.清潔な施術環境、3.清潔な手指、4.施術野の準備、5.鍼および器具の滅菌と保管、6.無菌的手技および使用後の鍼具の廃棄に関するものとした。
    【結果とまとめ】アンケート回収率は49.6% (443/894名) であった。調査の結果、国内の鍼灸の安全性に対する取り組みは、緩やかではあるがガイドラインの内容に沿った方向へ進んでいることが示唆された。しかしながら、未だディスポーザブル鍼の使用率は低く、また、多くの鍼灸師が素手で押手を行っていることなど、必ずしも適切な感染防止対策がとられているとは言えない現状が示唆された。今後、学校教育のみならず卒後教育の場においても、感染防止を含む鍼灸の安全性に関する教育を充実させていく必要があると考えられた。
  • 伊藤 和憲, 越智 秀樹, 北小路 博司, 勝見 泰和
    2003 年 53 巻 5 号 p. 658-664
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】全身の癒痛や倦怠感を主訴とする患者に対して、線維性筋痛症候群の概念を取り入れた鍼治療を試みた。
    【症例および方法】44歳の女性で、事故3週間を過ぎた頃から症状が肩・頚部を中心とした全身の痺痛・疲労感に変化し、次第に睡眠障害が見られるようになったため鍼治療の開始となった。治療効果の評価には、VAS (痛みの状態) ・PDAS (痺痛生活障害評価尺度) ・全身の圧痛閾値を用いた。
    【結果】当初、鍼治療は全身的な治療を基本とし、症状が強いときは肩・頚部の局所治療を行ったが、13回の治療にも関わらずVASやPDAS変化が見られなかった。全身の各部位に圧痛が存在していたため、14回目以降は線維性筋痛症候群の概念を取り入れて鍼治療を行ったところ、17回目にはVASの低下と圧痛閾値の上昇が見られ、それに伴いPDASも改善した。
    【考察】全身の痺痛や倦怠感を主訴とする疾患には線維性筋痛症候群の概念を取り入れ
  • 周 恰
    2003 年 53 巻 5 号 p. 665-666
    発行日: 2003/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
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